酒類販売免許の取り方|酒蔵が自社の酒をネット通販するまでの手順と費用

執筆:ものがたりコマース編集部 読了目安 7分
酒類販売免許の取り方|酒蔵が自社の酒をネット通販するまでの手順と費用

お酒をネットで売るには、店頭で売るための免許とは別の免許がいります。しかもこの免許には「大手メーカーのお酒は扱えない」という制限があり、さらに申請書にECサイトの画面レイアウトを添付する必要があります。この記事では、酒蔵や酒販店が自社サイトでお酒を売り始めるまでの手順を、国税庁の手引きに沿って整理します。

免許の要件とサイトの作り方は、本来セットで決めるものです。

ネットで売るなら「通信販売酒類小売業免許」

酒類販売業免許は、売り方によって種類が分かれます。ネット通販で必要になるのは通信販売酒類小売業免許です。

免許 何ができるか
一般酒類小売業免許 店頭での小売。通信販売は同一都道府県内の消費者のみ
通信販売酒類小売業免許 2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象にした通信販売
酒類卸売業免許 酒販店・飲食店など、酒類販売業者への卸売

国税庁は通信販売を、次の条件をすべて満たす小売と定義しています。

  • 2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象に、カタログ等(インターネットを含む)で販売のための誘引行為を行う
  • 通信手段により購入の申込みを受ける
  • 配達により商品を引き渡す
  • 購入申込者が20歳未満でないことを確認できる方法で行う

自社サイトで全国に売るなら、まずこの免許です。県内だけに届ける前提なら一般酒類小売業免許で足ります。

出典:国税庁「通信販売酒類小売業免許申請の手引」

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通信販売できるお酒は限られている

ここが最初の分かれ目です。通信販売免許を取っても、売れるお酒には制限があります。

扱えるのは次の3つだけです。

① 特定製造者が製造・販売する酒類

カタログ等の発行年月日が属する会計年度の、前会計年度の品目ごとの課税移出数量が、すべて3,000キロリットル未満の酒類製造者を「特定製造者」と呼びます。この特定製造者のお酒であれば、通信販売できます。

裏を返すと、大手ビールメーカーや大手清酒メーカーのお酒は、この免許では売れません。 「全国の地酒を集めたセレクトショップを作る」という企画は成立しますが、「有名銘柄も一緒に並べる」はできない、ということです。

② 地方の特産品等

製造委託者が所在する地方の特産品を原料に、一定の要件で製造委託した酒類です。この場合は製造委託契約書・同計画書等が必要になります。

③ 輸入酒類

輸入酒類に数量の制限はありません。

証明書を先に取る

国産のお酒を扱う場合、酒類製造者が発行する「通信販売の対象となる酒類である旨の証明書」を申請書に添付します。様式例は手引の61ページにあります。

他の蔵のお酒も並べたいなら、その蔵ごとに証明書を出してもらう必要があります。取引の話をする前に、この証明書を出してもらえるかを確認してください。 ここでつまずくと、サイトの企画ごとやり直しになります。

申請から販売開始まで:2か月と3万円

項目 内容
提出先 販売場の所在地の所轄税務署
標準処理期間 2か月(申請書等の提出があった日の翌日から)
登録免許税 免許1件につき3万円
提出時期 いつでも提出できる

書類の補正が必要になった期間は、この2か月から除外されます。 つまり不備があれば、その分だけ後ろにずれます。10月に申請して年末商戦に間に合わせる、といった計画を立てるなら、余裕を見てください。

なお、「通信販売を除く小売に限る」という条件が付いた一般酒類小売業免許を持っていて、その条件の緩和を受けて通信販売を始める場合は、登録免許税の納付は不要です。

個別の相談は、所轄税務署を担当する酒類指導官が受け付けています。設置税務署は国税庁サイトで確認できます。

出典:国税庁「酒税やお酒の免許についての相談窓口」

どの免許が必要か、どの蔵の証明書が要るかは、売り方の設計と一体です。

免許より先に、ECサイトの画面設計がいる

ここが見落とされがちな点です。申請書の添付書類には、次のものが含まれます。

酒類の通信販売における表示を明示したカタログ等(インターネット等によるものを含む。)のレイアウト図、申込書、納品書(案)等

つまり、免許を申請する時点で、ECサイトのどの画面に何を表示するかが決まっていなければなりません。 「免許が下りてからサイトを作る」という順番では進みません。

ECサイトの9か所に、決まった表示を入れる

手引には、インターネットで酒類を販売する際の表示例が9つ示されています。

# 画面・書類
1 通販カタログ(商品一覧ページ)
2 商品ページ
3 買い物かご
4 購入者情報入力画面
5 注文確認画面
6 注文確定通知メール
7 前払式通信販売の承諾等の通知
8 納品書・請求書
9 特定商取引法等に基づく表記

入れる文言は次の2つです。

20歳未満の者の飲酒は法律で禁止されています。

20歳未満の者に対しては酒類を販売しません。

そして文字の大きさに規定があります。

価格表示に使用する文字以上の大きさで表示する。

「小さく書いておけばいい」ではありません。 価格と同じか、それより大きく表示します。デザインを決めてから気づくと、レイアウトを作り直すことになります。

Shopify・MakeShopでの実装メモ

  • 商品一覧と商品ページ:テンプレートに直接入れます。商品説明文に個別に書くと、商品を追加するたびに入れ忘れが起きます
  • 買い物かご・注文確認:カートのテンプレート改修が必要です。アプリで対応できる場合もあります
  • 注文確定通知メール・納品書:メールテンプレートと帳票の設定です。ここが一番忘れられます
  • 年齢確認:購入申込者が20歳未満でないことを確認できる方法が必要です。入口のモーダルだけで足りるか、注文フローのどこで確認するかは、税務署と設計を詰めてください

【要一次情報】ものがたりコマースで実際に構築した酒類ECの事例を、ここに入れる。構築期間・免許申請との並行スケジュール・つまずいた点・年齢確認の実装方法を、数字とセットで書く。

よくある失敗

1. 大手メーカーのお酒を並べる前提で企画してしまう

特定製造者の要件(前会計年度の品目ごとの課税移出数量がすべて3,000キロリットル未満)を知らないまま商品構成を決め、あとから作り直しになるケースです。

2. 証明書の取得を後回しにする

他の蔵のお酒を扱うなら、蔵ごとに証明書が要ります。先に商品ページを作り込んでから断られると、企画が崩れます。

3. 表示を商品ページにだけ入れる

カート・注文確認画面・注文確定メール・納品書にも必要です。9か所を一覧にして、ひとつずつ潰してください。

4. 免許が下りてからサイトを作ろうとする

申請書にレイアウト図の添付が必要なので、順番が逆になります。

申請前チェックリスト

  • 2都道府県以上に売るか(=通信販売免許が必要か)を確認した
  • 扱う予定のお酒が、特定製造者・地方の特産品等・輸入酒類のどれに当たるか整理した
  • 国産酒については、製造者から証明書を出してもらえる見込みを確認した
  • 登録免許税3万円を予算に入れた
  • 標準処理期間2か月+補正期間を、公開スケジュールに織り込んだ
  • ECサイトの9か所の表示を決め、レイアウト図として出せる状態にした
  • 表示の文字サイズが、価格表示と同じかそれ以上になっている
  • 年齢確認の方法を決め、所轄税務署の酒類指導官に確認した
  • 販売場の所在地の所轄税務署を確認した

よくある質問

Q1. 免許が下りるまでどのくらいかかりますか?

標準処理期間は、申請書等の提出があった日の翌日から2か月です。ただし書類の補正が必要になった期間は、この2か月から除外されます。

Q2. 費用はいくらかかりますか?

登録免許税が免許1件につき3万円です。ほかに書類取得の実費がかかります。「通信販売を除く小売に限る」旨の条件が付いた免許の条件緩和を受ける場合は、登録免許税は不要です。

Q3. 有名な銘柄のお酒も一緒に売れますか?

国産酒については、前会計年度の品目ごとの課税移出数量がすべて3,000キロリットル未満の製造者のお酒に限られます。規模の大きいメーカーのお酒は、この免許では通信販売できません。

Q4. 同じ県内だけに売る場合はどうなりますか?

同一都道府県内の消費者のみを対象とする通信販売は、一般酒類小売業免許の範囲です。通信販売酒類小売業免許は、2都道府県以上の広範な地域を対象とする場合に必要になります。

Q5. 免許を取る前にECサイトを作る必要がありますか?

サイトを公開する必要はありませんが、表示を明示したレイアウト図・申込書・納品書(案)を申請書に添付します。画面設計は申請前に固めておく必要があります。

【要確認】自社の製造場で、自社が製造したお酒を直接販売する場合の取り扱い(酒税法第9条関係)。通信販売酒類小売業免許申請の手引には記載がないため、所轄税務署または酒類指導官に確認してから記載する。蔵元にとって関心の高い論点なので、確認が取れ次第Q6として追加する。

まとめ

  • 全国にネットで売るなら通信販売酒類小売業免許が必要
  • 売れるのは特定製造者(前会計年度の課税移出数量がすべて3,000キロリットル未満)のお酒、地方の特産品等、輸入酒類のみ
  • 標準処理期間は2か月、登録免許税は3万円
  • 免許申請にECサイトのレイアウト図が要るので、サイト設計が先
  • 表示は9か所に、価格表示と同じかそれ以上の大きさで

免許の要件は、そのまま商品構成とサイト設計を縛ります。順番を間違えると、作り直しになります。

ものがたりコマースは、免許の要件を踏まえたうえで、売れるECサイトの設計から支援しています。

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