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IT業界の離職率は本当に高い?最新データと定着策をわかりやすく解説
「IT業界は離職率が高い」というイメージから、採用や定着に不安を抱く人事担当者・経営者の方は少なくありません。しかし最新の公的データを見ると、IT業界の離職率は他業種と比べて突出して高いわけではなく、背景には業界特有の事情があります。本記事では、IT業界の離職率の実態と高いと言われる理由、定着に向けたポイントをわかりやすく解説します。
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IT業界の離職率は本当に高い?最新データで見る実態

「IT業界は離職率が高い」というイメージは根強く残っています。しかし公的統計を丁寧に読み解くと、IT業界(情報通信業)の離職率は、他業種と比べて突出して高いわけではありません。まずは最新データをもとに、実態を確認していきましょう。
そもそも「IT業界の離職率」を示す公的統計は存在しない
意外に思われるかもしれませんが、厚生労働省をはじめとする公的統計に「IT業界」という区分はありません。最も近いのは、雇用動向調査などで使われる「情報通信業」という分類です。
ただし情報通信業には、ソフトウェア開発やSIerだけでなく、通信・放送・出版・映像制作なども含まれます。「情報通信業=IT業界」ではない点を押さえておくと、ネット上に出回る離職率のデータを正しく読み解けるようになります。
本記事でも、公的データを引用する際は「情報通信業」の数値を用いつつ、IT業界(ITエンジニアやIT企業)の実態に近づける形で解説していきます。数字を鵜呑みにせず、前提を確認することが第一歩と考えられます。
新卒3年以内の離職率は全体で約3割|IT業界は中間的な水準
離職率を語るうえでよく引用されるのが、新卒者の「就職後3年以内離職率」です。厚生労働省の最新データ(令和4年3月卒業者)によると、就職後3年以内に離職した割合は、大学卒で33.8%、高校卒で37.9%となっています。
いわゆる「3年で3割」は、学歴を問わず続いている全体的な傾向です。学歴別に整理すると、次のようになります。
| 学歴 | 就職後3年以内離職率(令和4年3月卒) | 前年差 |
|---|---|---|
| 中学卒 | 54.1% | +3.6ポイント |
| 短大等卒 | 44.5% | ▲0.1ポイント |
| 高校卒 | 37.9% | ▲0.5ポイント |
| 大学卒 | 33.8% | ▲1.1ポイント |
産業別に見ると、離職率が高いのは宿泊業・飲食サービス業などの対面型サービス業で、大学卒では5割前後に達します。一方で情報通信業は、これらのサービス業より低い中間的な水準にとどまる傾向があります。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
「IT業界だけが極端に辞めやすい」というわけではないと考えられます。
「年間離職率」と「3年以内離職率」は別物|数字の読み違いに注意
離職率のデータを比較するときに注意したいのが、指標の定義の違いです。「3年以内離職率」は新卒入社から3年間の累計で辞めた割合を示すのに対し、「年間離職率」は1年間に辞めた人の割合を示します。
同じ「離職率」でも、対象期間や母集団が異なれば数字は大きく変わります。他社の数値や求人サイトの情報を参照する際は、どの指標を指しているのかを必ず確認することが望ましいでしょう。
自社の離職率を算出する場合も、「新卒のみ」「中途のみ」「全社員」のどれを対象にするかで結果が変わります。社内で基準をそろえておくと、経年での比較や他社との比較がしやすくなります。
IT業界で離職率が高いと言われる5つの理由

データ上は突出して高いわけではないIT業界の離職率ですが、「辞めやすい」という印象が広がる背景には、業界特有の構造があります。ここでは主な5つの理由を整理します。
理由1:深刻な人材不足による転職市場の活発化
IT業界の離職を語るうえで欠かせないのが、慢性的な人材不足です。経済産業省の調査では、IT人材は2030年に最大で約79万人不足すると試算されています。
出典:経済産業省・みずほ情報総研「IT人材需給に関する調査 調査報告書」(2019年3月)
人材が足りない状況では、企業からのスカウトや好条件のオファーが増え、転職のハードルが下がります。IT関連職種の有効求人倍率は全体平均を上回る水準で推移しており、売り手市場が離職を後押ししている側面があると考えられます。
出典:内藤一水社「【2026年5月 採用市場レポート】IT技術者求人が前年比2.3倍増。顕著となる職種間・採用チャネル間の二極化」
つまりIT業界の離職の一部は、「職場に不満があるから辞める」というより、「よりよい条件を選べる環境があるから動く」という市場構造に起因していると捉えられます。
理由2:スキルアップ・キャリアアップを目的とした前向きな転職
IT業界では、経験を積んで市場価値を高め、より高度な仕事や報酬を求めて転職するケースが多く見られます。特定の技術領域を極めたい、マネジメントに挑戦したいといったキャリア形成を目的とした前向きな離職も少なくありません。
この場合の離職は、必ずしもネガティブな要因だけで説明できるものではありません。企業側が社内でキャリアパスを提示できていれば、外部に流出せず定着につながる可能性があります。
理由3:長時間労働・多重下請け構造による負荷
一方で、労働環境に起因する離職も無視できません。システム開発は納期に追われやすく、繁忙期には長時間労働が発生しやすい傾向があります。
また、IT業界特有の多重下請け構造のなかで、下流工程を担う企業ほど裁量が小さく、待遇面で不利になりやすいという課題も指摘されています。働き方や待遇への不満が、離職の引き金になりやすい環境があると考えられます。
理由4:給与・評価への不満
離職理由として根強いのが、給与や評価に対する不満です。厚生労働省の調査では、転職者が前職を辞めた理由として、男性では「給料等収入が少なかった」、女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が上位に挙がっています。
IT業界はスキルによる市場価値の差が可視化されやすく、「同じスキルなら、より評価してくれる会社へ」という動きが起きやすい業界です。評価制度が実態に合っていないと、優秀な人材ほど流出するリスクが高まると考えられます。
理由5:技術の陳腐化と学び直しへの不安
IT業界では技術の移り変わりが速く、数年で主流の言語やツールが入れ替わることも珍しくありません。学び続けなければ市場価値を維持しにくいという特性があります。
社内に学習の機会や新しい技術に触れる環境が乏しいと、「このままではスキルが陳腐化する」という不安から転職を選ぶ人が出てきます。そのため継続的に学び、成長できる環境を整えることが人材の定着につながる重要なポイントといえます。
IT業界の離職を防ぐための定着ポイント

離職の背景を踏まえると、対策は「入社前」「入社直後」「入社後」の各段階で講じることが効果的です。ここでは実務で取り組みやすいポイントを紹介します。
入社前の期待値調整でミスマッチを防ぐ
早期離職の多くは、入社前の期待と入社後の現実のギャップから生じる傾向があります。求人票や面接で好条件ばかりを強調すると、入社後の落差が離職につながりかねません。
仕事の魅力だけでなく、大変な面や求めるスキルレベルも正直に伝えることで、入社後のミスマッチを抑えやすくなります。採用サイトや面談で、実際の業務や1日の流れを具体的に示すことも有効と考えられます。
オンボーディングと早期フォローを仕組み化する
入社直後のフォロー体制も、定着を大きく左右します。特に最初の数か月は不安を抱えやすく、放置すると早期離職につながりやすい時期です。
メンター制度や定期的な1on1、質問しやすい雰囲気づくりなど、「困ったときに相談できる相手がいる」状態を仕組みとして用意することが大切です。属人的な対応に頼らず、フローとして整備しておくと再現性が高まります。
キャリアパスと学習機会を明確に示す
前向きな転職やスキル不安による離職を防ぐには、社内での成長イメージを描けるようにすることが有効です。等級制度やキャリアパスを整備し、「この会社で何を目指せるか」を可視化しましょう。
あわせて、資格取得支援や勉強会、新しい技術に挑戦できる機会を提供することで、「ここにいれば成長できる」という実感を持ってもらいやすくなります。学習環境の充実は、採用時の魅力づけにもつながると考えられます。
労働環境・評価制度を実態に合わせて見直す
長時間労働や待遇への不満が離職につながっている場合は、根本的な環境改善が必要です。稼働状況の可視化、無理な多重下請け依存の見直し、柔軟な働き方の導入などが挙げられます。
評価制度についても、スキルや貢献が正しく報酬に反映される仕組みかを点検することが望ましいでしょう。「頑張りが正当に評価される」という納得感が、定着の土台になります。
【チェックリスト】自社の離職リスクを点検する

自社の離職リスクがどの程度あるかは、日々の運用のなかに表れます。以下のチェックリストで、当てはまる項目がないか点検してみましょう。当てはまる項目が多いほど、離職リスクが高まっている可能性があります。
- 求人票・面接で、仕事の大変な面や必要スキルを正直に伝えられていない
- 入社後3か月間のフォロー体制が仕組み化されておらず、現場任せになっている
- 1on1や面談の場が定期的に設けられていない
- 社員がキャリアパスや昇進の道筋をイメージできていない
- スキルアップや資格取得を支援する制度・予算がない
- 評価基準が曖昧で、貢献が報酬に反映されているか社員が納得していない
- 特定の社員に業務が集中し、長時間労働が常態化している
- 退職者が出ても、離職理由の振り返り(退職者面談など)を行っていない
すべてを一度に改善する必要はありません。優先度の高い項目から一つずつ着手することで、離職リスクを段階的に下げていくことが期待できます。
IT業界の離職率に関するよくある質問

Q1.IT業界の離職率は他業種より高いのですか?
公的統計を見る限り、IT業界(情報通信業)の離職率が他業種より突出して高いという事実は確認できません。新卒3年以内離職率でも、宿泊業・飲食サービス業などのサービス業のほうが高く、情報通信業は中間的な水準にとどまる傾向があります。転職市場が活発なため「動きやすい」という特性はあると考えられます。
Q2.IT業界で離職率が高いと言われるのはなぜですか?
深刻な人材不足による売り手市場、スキルアップを目的とした前向きな転職、長時間労働や多重下請け構造による負荷、給与・評価への不満、技術の陳腐化への不安などが背景にあると考えられます。ネガティブな理由だけでなく、キャリア形成のための前向きな離職も含まれる点が特徴です。
Q3.エンジニアの離職を防ぐには何が有効ですか?
入社前の期待値調整、入社直後のオンボーディング、キャリアパスと学習機会の提示、評価制度の見直しが有効と考えられます。特に「この会社で成長できる」という実感を持ってもらうことが、前向きな転職を防ぐうえで重要です。
Q4.「情報通信業」と「IT業界」は同じ意味ですか?
厳密には異なります。情報通信業には、IT企業やソフトウェア開発だけでなく、通信・放送・出版・映像制作なども含まれます。公的統計の離職率データは「情報通信業」を対象としているため、IT業界そのものの数値とは必ずしも一致しない点に注意が必要です。
Q5.中小IT企業の離職率は大手より高い傾向にありますか?
新卒3年以内離職率を事業所規模別に見ると、規模が小さいほど離職率が高くなる傾向が確認されています。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
中小IT企業では、大手に比べて教育・フォロー体制に差が出やすいため、定着の仕組みづくりが特に重要になります。
自社の採用課題を整理したい方は、お気軽にご相談ください。
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まとめ|IT業界の離職率は「構造」を理解して対策を

IT業界の離職率は「高い」というイメージが先行しがちですが、データ上は他業種より突出しているわけではありません。重要なのは、人材不足による売り手市場や、キャリア志向の高さといった業界特有の構造を理解したうえで対策を講じることです。
入社前の期待値調整からオンボーディング、キャリア支援、評価制度の見直しまで、各段階で打てる施策があります。まずは本記事のチェックリストで自社の状況を点検し、優先度の高いところから改善に取り組んでみてください。
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