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建設DX・IT

建設DXとは?意味と国の施策、中小建設会社が進める5ステップとつまずく理由

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執筆者
執筆:建設AIシフト編集部(株式会社Digital&)
建設DXとは?

建設DXとは、デジタル技術とデータを使って、建設会社の仕事の進め方そのものを変えることです。単にタブレットやソフトを入れることではありません。紙や手入力に頼っていた流れを見直し、少ない人数でも回る会社に変えていく取り組みです。

国土交通省は2016年度から「i-Construction」を進め、2024年4月には「i-Construction 2.0」をまとめました。一方、総務省の調査では、中小企業の約7割がデジタル化の取組を「未実施」と答えています。国の施策と中小企業の現場の間には、まだ大きな差があります。

この記事では、建設DXの意味と国の施策を整理します。そのうえで、中小の建設会社が現実的に進められる5つのステップと、よくあるつまずきの理由と対策を紹介します。

この記事でわかること

  • 建設DXの意味と、IT化・デジタル化との違い
  • i-Construction 2.0・BIM/CIM・遠隔臨場など国の施策の要点
  • 中小企業のデジタル化の現状と課題(総務省の調査)
  • 中小建設会社が進める建設DXの5ステップ
  • 建設DXでつまずく6つの理由と対策

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建設DXとは?IT化・デジタル化との違い

DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略です。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」では、DXを次のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

少し難しい表現ですが、ポイントは「変革」です。道具をデジタルに置き換えるだけでなく、仕事の流れや組織まで変えることを指しています。建設DXは、これを建設会社にあてはめたものと考えてください。

IT化・デジタル化・DXの違い

中小の建設会社では、次の3つの段階で考えるとわかりやすくなります。

段階 やること 建設会社での例
1. 紙をデータにする 紙・手書きの情報をデジタルで記録する 手書きの日報をスマートフォンの入力に変える。写真をクラウドに保存する
2. 業務の流れをデジタルでつなぐ 同じ情報の二重入力や転記をなくす 日報のデータから週報・原価の集計が自動でできる
3. 仕事のやり方・会社を変える(DX) データをもとに判断し、少人数で回る体制にする 現場ごとの工数データで見積の精度を上げる。事務を集約して現場監督が現場に集中する

※段階の分け方は、中小の建設会社向けに編集部が整理したものです。

多くの中小企業では、1と2を進めることがDXの土台になります。いきなり3を目指すより、1つずつ積み上げるほうが確実です。

国が進める建設DXの施策

国土交通省は、公共工事を中心に建設現場のデジタル化を進めています。主な施策を表にまとめます。

施策 内容 主な時期
i-Construction 調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までICTを活用し、生産性を2割向上させる目標 2016年度〜
ICT施工 3次元データやICT建機を使った施工。直轄土木工事では、実施できる工事の87%で実施(2022年度時点) 2016年度〜
遠隔臨場 立会い・段階確認などを、カメラとWeb通信で現場に行かずに行う。直轄工事で原則適用 2022年度〜(検査への拡大は2024年度〜)
BIM/CIM 3次元モデルなどで建設事業の情報をデジタル化する。直轄土木業務・工事で原則適用 2023年度〜
i-Construction 2.0 2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性1.5倍を目指す 2024年4月策定

※国土交通省「i-Construction 2.0」(令和6年4月)より。直轄工事は国が発注する工事のことです。自治体や民間の工事では、発注者ごとに対応が違います。

i-Construction 2.0の3本の柱

i-Construction 2.0は、「施工」「データ連携」「施工管理」の3つのオートメーション化を柱にしています。中小企業にも関係が深いのは、データ連携のオートメーション化です。同じデータを繰り返し手入力することをなくし、資料を探す手間や待ち時間を減らすとしています。

都道府県・政令市でも、ICT施工の公告件数は2016年度の84件から、2022年度には13,429件に増えています。公共工事を受注する中小企業にとって、デジタル対応は避けて通れないテーマになりつつあります。建設業法の改正で求められるICT活用については、建設業法改正のポイントで解説しています。

中小企業のデジタル化の現状と課題

総務省の「令和8年版 情報通信白書」は、日本・米国・ドイツ・中国の企業のデジタル化を調べています。日本の企業では、デジタル化の取組を「未実施」と答えた割合が約50%でした。企業規模別では、大企業の約25%に対し、中小企業は約70%が「未実施」です。

同じ調査で、日本企業が挙げたデジタル化の課題は次のとおりです。

デジタル化の課題(日本企業、上位4つ) 回答割合
人材不足 39.4%
明確な目的・目標が定まっていない 29.5%
DXの役割分担や範囲が不明確 26.0%
アナログな文化・価値観が定着している 23.9%

※総務省「令和8年版 情報通信白書」より。全業種の値で、建設業だけの数値ではありません。取組状況は「わからない」と答えた人を除いて集計されています。

「人材不足」に加えて、「目的が決まっていない」「役割分担が不明確」が上位に入っています。ツールや予算より先に、「何のためにやるか」と「誰がやるか」を決めることが大切だとわかります。

中小建設会社が進める建設DXの5ステップ

ここからは、従業員10〜300名程度の建設会社を想定した進め方です。大きな投資をせず、1つずつ積み上げることを重視しています。

  1. 困りごとから目的を決める「DXをやる」ではなく、「現場監督の残業を減らす」「見積の回答を早くする」など、困りごとを目的にします。目的は1〜2つに絞ります。
  2. 業務の流れを書き出す目的に関係する業務について、誰が・何を・どの書類で・誰に渡しているかを書き出します。二重入力や転記、紙の受け渡しがある場所が改善の候補です。
  3. 紙と手入力をデータに置き換える日報、写真、打合せ記録など、毎日発生する情報からデータにします。いま使っているExcelやGoogleスプレッドシートを活かせば、費用を抑えられます。
  4. 1業務・1現場で試す全社で一斉に始めず、協力的な現場で1〜2か月試します。導入前後の作業時間を測り、効果と使いにくい点を確認します。
  5. 手順を決めて広げ、データを活かす効果があれば手順書を作り、他の現場に広げます。たまったデータは、見積や工程の見直しなど次の判断に使います。

ステップ3と4では、生成AIも有力な道具になります。日報の清書や議事録の下書きなど、どの業務にAIが向くかは建設業のAI活用ガイドで業務別に整理しています。日報を例にした仕組み化の手順は日報を自動化する方法をご覧ください。

何から手を付けるか|施策の比較表

施策 初期の負担 効果が出るまで 中小企業の始めやすさ
写真・書類のクラウド共有 小さい 早い 始めやすい
日報・勤怠のデジタル入力 小さい 早い 始めやすい
生成AIによる書類の下書き・チェック 小さい 早い 始めやすい(ルールづくりが前提)
Excelの転記・集計の自動化 小さい〜中程度 早い〜中程度 始めやすい
施工管理アプリの導入 中程度 中程度 協力会社も使うかで効果が変わる
ICT施工・3次元測量 大きい 工事の受注状況による 公共土木工事が多い会社向き
BIM/CIM 大きい 長い 発注者の要求や設計との連携が前提

※評価は編集部による一般的な目安です。工事の種類や取引先によって変わります。

建設DXでつまずく6つの理由と対策

建設DXは、始めることより続けることのほうが難しい取り組みです。よくあるつまずきと対策をまとめます。

つまずく理由 よくある症状 対策
1. ツール選びから始める 何を解決したいか決まらないまま契約し、使われない 困りごとと目的を先に決め、それに合う道具を選ぶ
2. 現場の負担が増える 紙とアプリの両方に記入することになり、現場が嫌がる 新しい方法を入れたら、古い方法をやめる
3. 担当者1人に任せきり 詳しい社員が1人で抱え、異動や退職で止まる 経営者が目的を示し、手順書で誰でも回せるようにする
4. 効果を測らない 「便利になった気がする」で終わり、次の投資を判断できない 導入前後の作業時間を測って比べる
5. データがばらばら 現場ごとにファイル名や様式が違い、集計できない 様式と命名ルールを先に統一する
6. 取引先と様式が合わない 発注者・元請の指定様式に合わず、結局手で作り直す 提出書類は指定様式を優先し、社内の作業部分からデジタル化する

とくに1と2は、中小企業で多いつまずきです。DXは「足し算」ではなく「置き換え」だと考えると、現場の負担を増やさずに進められます。

AIで楽にする方法|業務の流れからDXの候補を洗い出す

ステップ2の「業務の流れを書き出す」作業は、AIに整理を手伝ってもらうと速く進みます。紙の受け渡しや転記を箇条書きで伝えると、デジタル化の候補と順番の案を作ってくれます。ChatGPTでもClaudeでも使えます。

コピーして使えるプロンプト

あなたは中小建設会社の業務改善の相談役です。
当社は【従業員数】名の【土木/建築/設備】の会社です。
DXの目的は【例:現場監督の残業を減らす】です。

以下は、ある業務の流れです。
【例:
・現場監督が紙の日報を手書きし、夕方に事務所へFAX
・事務担当が日報をExcelに転記
・月末に事務担当がExcelから原価を集計し、社長に紙で報告】

# 依頼
1. 流れを「誰が/何を/どの形式で/誰に」の表にしてください。
2. 二重入力・転記・紙の受け渡しがある箇所に印を付けてください。
3. デジタル化の候補を、手間が小さく効果が早い順に3つ挙げてください。
4. 最初の1か月で試す内容を、3行以内で提案してください。

# 条件
- 高額なシステムの導入を前提にしない
- 発注者・元請に出す書類の様式は変えない前提にする
- わからない点は推測せず「確認が必要」と書く

出力イメージ(例)

| 誰が | 何を | 形式 | 誰に | 印 |
|---|---|---|---|---|
| 現場監督 | 日報 | 紙(手書き)→FAX | 事務担当 | 紙の受け渡し |
| 事務担当 | 日報の内容 | Excelに転記 | ― | 転記 |
| 事務担当 | 原価の集計 | 紙で報告 | 社長 | 紙の受け渡し |

デジタル化の候補(手間が小さく効果が早い順)
1. 日報をスマートフォンの入力フォームに変え、Excelに自動で記録する
2. 月末の原価集計を、Excelの集計表で自動化する
3. 社長への報告を、共有フォルダの集計表の確認に置き換える

最初の1か月で試すこと
1つの現場だけで入力フォームの日報を試し、転記にかかる時間を比べる。
※削減できる時間は、実際に測って確認が必要です【要確認】

AIの提案はたたき台です。取引先との約束や社内の事情を踏まえて、最終的な計画は人が決めてください。

使える支援制度と相談先

ITツールの導入費用には、国の補助金を使える場合があります。中小企業・小規模事業者向けの「IT導入補助金」は、2026年から「デジタル化・AI導入補助金」という名称になっています。対象となるツールや補助の枠、申請の時期は年度ごとに決まっています。最新の公募要領を事務局の公式サイトで確認してください。

社員のデジタル・AIの研修には、厚生労働省の人材開発支援助成金が使える場合があります。制度の内容はAI研修で使える助成金で解説しています。どの制度も要件や期限があるため、申請前に公式情報や社会保険労務士などの専門家に確認することをおすすめします。

建設AIシフトでは、業務整理から、貴社の書式・既存ツールに合わせた仕組みづくり、担当者研修(2時間×6回)、稼働後の運用サポートまでを行います。まず1業務から始めて、効果を確かめながら広げる進め方ができます。AI導入の進め方の詳細は建設会社のAI導入の進め方で解説しています。

注意

この記事の施策・統計・制度は、2026年9月30日時点で確認した情報です。ICT施工やBIM/CIMの要件、提出書類の様式は、発注者・自治体・元請によって違います。発注者の指定・最新の仕様書が優先です。補助金・助成金は年度ごとに内容が変わるため、必ず最新の公募要領を確認してください。AIの出力は下書きとして使い、最終確認は人が行います。

建設DXを始める前のチェックリスト

  • 建設DXで解決したい困りごとを、1〜2つに絞った
  • 経営者が目的と担当者を社内に伝えた
  • 目的に関係する業務の流れ(誰が・何を・誰に)を書き出した
  • 二重入力・転記・紙の受け渡しがある箇所に印を付けた
  • 最初に試す業務と現場を1つずつ決めた
  • いまの作業時間を測った
  • 新しい方法を入れたら、やめる古い方法を決めた
  • 発注者・元請の指定様式を確認した

よくある質問

建設DXとは何ですか?

デジタル技術とデータを使って、建設会社の仕事の進め方や組織を変える取り組みです。ツールを入れることだけでなく、紙や手入力に頼る流れを見直し、少ない人数でも回る体制にすることを目指します。

建設DXとi-Constructionの違いは何ですか?

i-Constructionは、国土交通省が2016年度から進める建設現場の生産性向上の施策です。2024年4月には「i-Construction 2.0」がまとめられました。建設DXは、個々の会社が自社の仕事の進め方を変える取り組み全体を指す、より広い言葉です。

中小の建設会社は建設DXを何から始めればよいですか?

困りごとから目的を1〜2つ決め、関係する業務の流れを書き出すことから始めます。そのうえで、日報や写真など毎日発生する情報をデータにし、1つの業務・1つの現場で試してから広げます。

建設DXがうまくいかない理由は何ですか?

よくあるのは、目的を決めずにツールから選ぶこと、紙とデジタルの二重作業で現場の負担が増えること、担当者1人に任せきりになることです。効果を測らないことや、データの様式がばらばらなことも原因になります。

建設DXに使える補助金はありますか?

ITツールの導入には「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)を使える場合があります。対象や時期は年度ごとに決まるため、事務局の公式サイトで最新の公募要領を確認してください。

まとめ

  • 建設DXは、デジタル技術とデータで仕事の進め方そのものを変える取り組みです。
  • 国はi-Construction 2.0で、2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍を目指しています。
  • 中小企業の約7割はデジタル化が未実施で、人材不足や目的の不明確さが課題です。
  • 困りごとから目的を決め、業務の流れを書き出し、紙をデータにして1業務から試すのが現実的です。
  • 新しい方法を入れたら古い方法をやめ、効果を測ってから広げると、つまずきにくくなります。

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「AI化できる業務 可否判定リスト(建設業版)」では、日報・工程表・見積・発注・請求・写真整理・議事録・安全書類などの業務ごとに、AIに向くか/条件付きか/人がやるべきかを一覧にしています。建設DXの最初の一歩を決める材料にお使いください。

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