施工要領書とは、特定の工種(防水、塗装、鉄骨、設備など)について、使う材料・施工の手順・品質の確認方法を具体的に定めた書類です。工事全体の計画を示す施工計画書に対し、施工要領書は「その工種をどう施工するか」を細かく書きます。
施工要領書は、実際にその工種を施工する専門工事会社(協力会社)が作ることが多い書類です。国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」でも、元請は工事全体の施工計画書等を作成し、下請が作成した施工要領書等を確認する役割とされています。
この記事では、施工計画書との違いを比較表で整理します。あわせて、施工要領書の記載項目と記載例、元請の確認から承諾までの流れ、AIで下書きを作る方法を紹介します。
この記事でわかること
- 施工要領書の意味と、誰が作るのか
- 施工計画書・作業手順書との違い(比較表)
- 施工要領書の記載項目と記載例
- 作成から確認・承諾までの流れ
- AIで施工要領書の下書きを作るプロンプトと注意点
施工要領書・施工計画書・工程表など、建設書類の下書きに使えるAIテンプレートを無料で配布しています。
施工要領書とは?誰が作る書類か
施工要領書は、工種ごとの「施工のやり方」を決める書類です。読み方は「せこうようりょうしょ」です。どの材料を、どの順番で、どんな基準で施工し、どう確認するかを書きます。
施工要領書の目的
- 品質をそろえる:職人や班が変わっても、同じ手順・同じ基準で施工できるようにします。
- 事前に合意する:施工方法を、元請や監督職員・工事監理者と着手前にすり合わせます。
- 記録の基準にする:検査や写真撮影で「何を確認すればよいか」の基準になります。
作るのは主に専門工事会社
国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」では、元請と下請の技術者の職務が表で示されています。施工計画の作成について、概要は次のとおりです。
| 立場 | 施工計画の作成に関する役割 |
|---|---|
| 元請の主任技術者・監理技術者 | 請け負った工事全体の施工計画書等の作成/下請の作成した施工要領書等の確認/設計変更等に応じた施工計画書等の修正 |
| 下請の主任技術者 | 元請が作成した施工計画書等に基づき、請け負った範囲の工事に関する施工要領書等の作成/元請等からの指示に応じた施工要領書等の修正 |
同じ整理は、国土交通省の通知「一括下請負の禁止について」にも示されています。元請が工事に「実質的に関与」するために行う事項として、下請負人の作成した施工要領書等の確認が挙げられています。つまり、施工要領書は下請が作って終わりではなく、元請が中身を確認する書類です。
施工要領書と施工計画書の違い【比較表】
施工計画書は「工事全体をどう進めるか」、施工要領書は「その工種をどう施工するか」を書く書類です。現場では、作業の安全な手順を書く「作業手順書」とも混同されがちです。3つを比べると次のとおりです。
| 比較項目 | 施工計画書 | 施工要領書 | 作業手順書 |
|---|---|---|---|
| 範囲 | 工事全体(総合)、または工種ごと | 特定の工種・部位 | 特定の作業 |
| 主な作成者 | 元請 | 専門工事会社(協力会社) | 作業を行う会社・職長 |
| 主な読み手 | 発注者・監督職員、元請の現場 | 元請、監督職員・工事監理者、職人 | 作業員 |
| 主な内容 | 工事概要、工程、組織、仮設、品質・安全・環境の管理計画 | 材料、施工手順、管理値、検査方法、納まり | 作業の順番、危険のポイント、安全対策 |
| 重視する点 | 全体の段取りと管理の方針 | 品質(仕様どおりに施工すること) | 安全(けがをしない手順) |
| 提出先の例 | 発注者(公共工事は監督職員) | 元請(元請経由で監督職員・工事監理者) | 元請(安全書類とあわせて求められることが多い) |
※一般的な整理です。書類の呼び方・範囲・提出先は、発注者や元請によって異なります。
公共工事では「工種別施工計画書」との関係に注意
公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版の1.2.2では、施工計画書を2つに分けています。
- 総合施工計画書:工事全般に関する総合的な計画。工事の着手に先立ち作成し、監督職員に提出
- 工種別施工計画書:品質計画、施工の具体的な計画、一工程の施工の確認内容と確認の段階を定めたもの。工事の施工に先立ち作成し、監督職員に提出
このうち品質計画に係る部分は監督職員の承諾を受けることとされています。施工要領書という名前は、この仕様書には出てきません。ただし関東地方整備局の「施工計画書(記載項目等参考例)」に、両者の関係が示されています。工種別施工計画書の「施工要領」の章は、協力会社から提出された施工要領書とする(代替する)ことができるとしています。
土木工事では、国土交通省の「土木工事共通仕様書(案)」で施工計画書の記載事項が定められています。工事概要、計画工程表、施工方法、施工管理計画などです。監督職員が指示した事項については、さらに詳細な施工計画書(詳細施工計画書)を提出するとされています。
施工計画書そのものの書き方は施工計画書とは?書き方・記載項目で詳しく解説しています。
施工要領書の書き方|記載項目と記載例
施工要領書に決まった全国共通の様式はありません。元請や発注者の指定がなければ、次の項目で構成すると抜けが出にくくなります。項目は、関東地方整備局の工種別施工計画書の参考例を参考に整理しています。参考例の章立ては、一般事項・工事概要・施工一般・品質管理・施工要領・安全衛生管理・添付資料です。
| 項目 | 書く内容 | 記載例(塗膜防水の場合) |
|---|---|---|
| 1. 一般事項 | 適用範囲、適用図書(特記仕様書・標準仕様書・設計図など) | 本要領書は○○庁舎屋上の塗膜防水工事に適用する |
| 2. 工事概要 | 工事名、場所、施工範囲、数量、工期 | 屋上防水 約○○㎡、施工期間 ○月○日〜○月○日 |
| 3. 施工体制 | 責任者、職長、有資格者、連絡体制 | 職長 ○○(防水施工技能士)ほか○名 |
| 4. 使用材料 | メーカー名、製品名、規格、使用量、保管方法 | メーカー○○ 製品名○○(仕様書の規格に適合) |
| 5. 施工手順 | 作業の流れ(フロー)、各工程の方法、養生・乾燥時間 | 下地確認→清掃→プライマー→補強布→主材2層→トップコート |
| 6. 品質管理 | 管理項目、管理値、確認の時期と方法、記録 | 膜厚、塗布量、下地の含水状態を工程ごとに確認し記録 |
| 7. 検査・立会い | 自主検査、元請検査、監督職員等の立会いの段階 | 主材完了時に元請立会い、完了時に監督職員検査 |
| 8. 安全衛生 | 墜落防止、有機溶剤の扱い、火気管理など | 屋上端部の親綱設置、換気と保護具の着用 |
| 9. 添付資料 | 納まり図、製品カタログ、SDS、施工図 | ドレン回り・立上り部の納まり図 |
※記載例は説明用の例です。材料・管理値・手順は、特記仕様書、標準仕様書、メーカーの仕様を必ず確認してください。
書くときの3つのポイント
- 設計図書の要求を先に拾う:特記仕様書や標準仕様書で指定された材料・工法・試験を、先に一覧にします。
- 「確認の段階」を明確にする:どの工程が終わったら、誰が、何を確認するかを書きます。検査や写真撮影の計画とつながります。
- 納まりは図で示す:端部、取り合い、貫通部など、文章で伝わりにくい部分は図を添付します。
確認の段階を決めておくと、工事写真の撮り忘れも減ります。写真の整理方法は工事写真台帳の作り方で紹介しています。
施工要領書の提出・確認・承諾の流れ
公共工事と民間工事で細部は違いますが、基本の流れは同じです。
- 元請が施工計画書・工程を示す元請が全体の施工計画書と工程表を作り、専門工事会社に共有します。
- 専門工事会社が作成する設計図書と元請の施工計画書に基づき、請け負った範囲の施工要領書を作ります。
- 元請が確認し、修正を指示する設計図書との整合、他工種との取り合い、工程、安全の観点で確認します。必要なら修正を指示します。
- 元請が提出する公共工事では、工種別施工計画書として、またはその一部・添付として監督職員に提出します。民間工事では、契約に応じて工事監理者や発注者に提出します。
- 承諾を受ける公共建築工事では、品質計画に係る部分について監督職員の承諾を受けます。承諾が必要な範囲は発注者・契約で確認します。
- 現場で周知する承諾を受けた内容を、職長と作業員に説明します。着手前の打合せで読み合わせると確実です。
- 変更時は報告・再確認する材料や工法が変わった場合は、元請に報告し、必要に応じて再提出・再承諾を受けます。
提出の時期は、「その工種の施工に先立ち」が原則です。材料の発注や施工図の承諾と時期が重なるため、工程表に提出予定日を書き込んでおくと遅れを防げます。
元請が確認するときの観点
| 確認の観点 | 見るポイント |
|---|---|
| 設計図書との整合 | 材料・工法・管理値が特記仕様書・標準仕様書と合っているか |
| 他工種との取り合い | 前後の工種の完了条件、納まり、養生の分担 |
| 工程 | 養生・乾燥時間を含め、全体工程に収まるか |
| 品質の確認 | 確認の時期・方法・記録が決まっているか |
| 安全 | 作業手順書や安全書類と矛盾がないか |
AIで施工要領書の下書きを作る方法
施工要領書は、似た工種なら構成がほぼ同じです。生成AI(ChatGPTやClaudeなど)に構成と文章の下書きを作らせ、材料や数値を人が入れる進め方が効率的です。
AIに任せやすいこと
- 記載項目の目次と、各章の書き出しの文章
- 施工手順をフロー(箇条書き)に整理すること
- メーカーの資料や過去の要領書を渡したうえでの要約・書式合わせ
- 元請の確認コメントを反映した修正版の作成
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設工事の専門工事会社で、施工要領書を作成する担当者です。 次の条件で、施工要領書の下書きを作ってください。 【工事名】:【例:○○庁舎屋上防水改修工事】 【工種】:【例:ウレタン塗膜防水(改修)】 【施工範囲・数量】:【例:屋上 約○○㎡】 【適用図書】:【例:特記仕様書、公共建築改修工事標準仕様書】 【使用材料】:【例:メーカー名・製品名を記入】 【元請の指定様式・章立て】:【あれば記入。なければ「なし」】 出力ルール: 1. 章立ては「一般事項/工事概要/施工体制/使用材料/施工手順/品質管理/検査・立会い/安全衛生/添付資料」 2. 施工手順は工程ごとに「作業内容・確認事項・記録」を表で書く 3. 管理値・塗布量・乾燥時間など数値は書かず、【要確認:メーカー仕様】と置く 4. 設計図書で確認が必要な点を、最後に一覧で出す 5. です・ます調ではなく「〜する」の常体で書く
出力イメージ(例)
5. 施工手順 工程 |作業内容 |確認事項 |記録 下地確認 |既存防水層の浮き・劣化確認|範囲を元請と確認 |写真 清掃 |高圧洗浄・乾燥 |含水状態【要確認:メーカー仕様】|記録表 プライマー |規定量を塗布 |塗布量【要確認:メーカー仕様】|写真・記録表 … 設計図書で確認が必要な点: ・既存防水層の撤去範囲 ・立上り部の仕様と高さ
※出力はイメージです。AIは現場の条件や製品の仕様を知りません。
AIにできないこと・人が確認すること
- 材料の規格、塗布量、管理値などの数値は、メーカーの仕様書と設計図書から人が転記します。
- 特記仕様書の内容は、渡さない限りAIは知りません。条文を推測で書くことがあります。
- 他工種との取り合いや現場の制約は、元請との打合せで決めます。
- 提出前の最終確認と、承諾に向けた説明は人が行います。
業務別のプロンプト例は建設業のプロンプト集に、AIで自動化できる業務とできない業務の見分け方は建設会社のAI導入の進め方にまとめています。
注意
施工要領書の様式・記載項目・提出先・承諾の範囲は、発注者、元請、契約によって異なります。発注者の指定、特記仕様書、最新の標準仕様書が優先です。この記事の記載例はすべて説明用の例です。材料や管理値はメーカーの仕様と設計図書で確認し、AIの下書きは必ず人が確認してから提出してください。
施工要領書の提出前チェックリスト
- 元請の施工計画書・工程表と矛盾していない
- 特記仕様書・標準仕様書で指定された材料・工法・試験を反映した
- 材料のメーカー名・製品名・規格を正しく書いた
- 施工手順に養生・乾燥時間を含めた
- 工程ごとの確認事項・確認の時期・記録方法を決めた
- 元請・監督職員等の立会い・検査の段階を明記した
- 納まり図、カタログ、SDSなど必要な添付資料をそろえた
- 安全衛生の対策が作業手順書・安全書類と合っている
- 【要確認】の箇所がすべて埋まっている
- 提出日を工程表に書き込み、施工開始に間に合う
施工要領書に関するよくある質問
施工要領書と施工計画書の違いは何ですか?
施工計画書は工事全体の進め方(工程・組織・仮設・管理計画など)を示し、主に元請が作ります。施工要領書は特定の工種の材料・手順・品質確認の方法を示し、主に専門工事会社が作ります。
施工要領書は誰が作成しますか?
その工種を施工する専門工事会社(下請)が作るのが一般的です。国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルでも、下請の主任技術者の役割として施工要領書等の作成、元請の役割としてその確認が示されています。
施工要領書に決まった様式はありますか?
全国共通の様式はありません。元請や発注者が様式や章立てを指定している場合は、それに従います。指定がなければ、一般事項・工事概要・使用材料・施工手順・品質管理・安全衛生などの項目で構成します。
施工要領書は承諾が必要ですか?
発注者や契約によります。公共建築工事標準仕様書では、工種別施工計画書のうち品質計画に係る部分について監督職員の承諾を受けることとされています。施工要領書をその一部として使う場合は、承諾の対象になることがあります。
施工要領書と作業手順書は同じものですか?
目的が異なります。施工要領書は品質を確保するための施工方法を、作業手順書は安全に作業するための手順を中心に書きます。現場によっては1つにまとめる場合もあるため、元請の指定を確認してください。
施工要領書はAIで作れますか?
章立てや文章の下書きはAIで作れます。ただし材料の規格や管理値などの数値、特記仕様書の内容はAIが推測で書くことがあるため、人が設計図書とメーカー仕様で確認して仕上げます。
まとめ
- 施工要領書は、特定の工種の材料・手順・品質確認の方法を定めた書類です。
- 主に専門工事会社が作成し、元請が確認します。元請は全体の施工計画書を作ります。
- 公共建築工事では、工種別施工計画書の「施工要領」を協力会社の施工要領書で代替できる例があります。
- 作成→元請確認→提出→承諾→周知→変更時の再確認、の流れで進めます。
- AIで下書きを作り、数値と仕様は人が設計図書・メーカー資料で確認します。
施工要領書・施工計画書の下書きをAIで
施工要領書や施工計画書、工程表など、建設書類の下書きに使えるAIテンプレートとプロンプトをまとめた資料を無料で配布しています。次の書類づくりからお使いください。
