建設現場の年末年始の安全対策は、「休工前」「休工中」「作業再開時」の3つの場面に分けて準備するのが基本です。休工前は片付けと第三者対策、休工中は緊急連絡と火災の防止がポイントです。再開時は、設備の点検と、体と気持ちの切り替えが大切です。
建設業労働災害防止協会(建災防)は、毎年12月1日から1月15日までを「建設業年末年始労働災害防止強調期間」としています。同じ期間に、中央労働災害防止協会(中災防)も「年末年始無災害運動」を実施しています。
この記事では、両団体の実施要領をもとに、休工前後の注意点と、朝礼でそのまま読める資料の例をまとめました。自社の現場に合わせて作り直すためのAIプロンプトも紹介します。
この記事でわかること
- 年末年始に建設現場の事故リスクが高まる理由
- 建災防・中災防の年末年始の安全運動の期間と内容
- 休工前・休工中・再開時のチェック項目
- 休工前と仕事始めの朝礼で使える資料の例
- 自社の現場に合わせた朝礼資料をAIで作る方法
朝礼資料やKYシートなど、建設書類のひな形とプロンプトをまとめています。
年末年始に建設現場の事故が起きやすい理由
建災防の令和7年度実施要領は、年末年始の危険を次のように説明しています。長期の休業前の慌ただしさによる気持ちの焦りや、休業後に気持ちの切り替えが追い付かない中での不安全行動です。また、例年12月は労働災害の多発する時期であるとしています。
さらに冬は、積雪や凍結、暖房器具の使用、日没の早さといった季節特有の危険が重なります。年末年始の対策は、「時期の危険」と「季節の危険」を分けて考えると整理しやすくなります。
| 場面 | 起きやすいこと | 主な対策 |
|---|---|---|
| 休工前(12月中旬〜下旬) | 工程の追い込み、急ぎの片付け、大掃除での非定常作業 | 無理のない工程への見直し、片付け作業のKY |
| 休工中(年末〜年始) | 第三者の立入り、火災、強風・積雪による仮設物の損傷 | 立入禁止措置、電源の遮断、緊急連絡体制 |
| 再開時(仕事始め〜1月中旬) | 体が慣れていない、段取りの思い込み、仮設物の変状 | 足場などの点検、再開時のKY、体調確認 |
| 冬季全般 | 凍結による転倒、一酸化炭素中毒、スリップ事故 | すべり止め、換気、冬用タイヤへの早めの交換 |
長野労働局の資料(令和3年11月)では、冬季は降雪や凍結による転倒、交通事故、墜落などが多いとしています。特に1月は、労働災害の発生件数がほかの月より大幅に多いと示しています。雪の多い地域では、とくに1月の再開直後に注意が必要です。
年末年始の安全運動|期間と実施要領
年末年始の安全運動は、建設業向けと全産業向けの2つがあります。どちらも期間は12月1日から翌年1月15日までです。
| 項目 | 建設業年末年始労働災害防止強調期間 | 年末年始無災害運動 |
|---|---|---|
| 主唱 | 建設業労働災害防止協会(建災防) | 中央労働災害防止協会(中災防) |
| 後援 | 厚生労働省、国土交通省 | 厚生労働省 |
| 対象 | 建設業 | 全産業 |
| 令和7年度の期間 | 令和7年12月1日〜令和8年1月15日 | 令和7年12月1日〜令和8年1月15日 |
| 令和7年度のスローガン | 無事故の歳末 明るい正月 | 「年末」感謝の総点検 「年始」も笑顔で 無事故の発進 |
| 主な内容 | 経営トップの現場点検、墜落・転落防止、建設機械・クレーン災害防止、交通・火災・転倒・積雪災害の防止、作業所閉所中の対策など | 経営トップの決意表明、安全衛生パトロール、機械設備の点検、年始の作業再開時の安全確認など |
令和8年度(2026年12月〜2027年1月)の実施要領は、この記事の確認日時点では公表されていません。令和7年度の建災防の要領は、令和7年11月1日発行です。最新年度の要領が出たら、スローガンや重点事項を確認してから朝礼資料に使ってください。
休工前にやること|片付け・点検・第三者対策
建災防の実施要領には、「作業所閉所中の対策」として次の4項目が挙げられています。
- 年末年始休業中の緊急連絡体制の確認
- 仮囲い・保安柵・保安灯・工事標識などによる第三者の立入禁止措置の徹底と、保安施設の点検
- 警備員などによる現場巡回の徹底(出入口の施錠確認など)
- 仮設事務所・休憩所などのブレーカーを落とす、不要なコンセントを外すなどの火災防止対策
これを現場の点検表に落とし込むと、次のようになります。担当者と確認日を書く欄を付けて使ってください。
| 分類 | 点検項目(例) | 担当(例) |
|---|---|---|
| 第三者対策 | 仮囲いの破れ・すき間、出入口の施錠、保安灯の点灯と電池、工事標識 | 現場監督 |
| 火災防止 | 事務所・休憩所のブレーカー、ストーブの撤去または消火確認、可燃物の片付け | 職長 |
| 強風・積雪対策 | 足場の養生シート、資材の飛散防止、仮設物の固定 | 職長・足場業者 |
| 重機・車両 | キーの保管、定位置での停止、バケットを地面に下ろす | 重機オペレーター |
| 開口部・掘削部 | ふた・手すり・バリケードの確認、転落防止の表示 | 現場監督 |
| 連絡体制 | 休業中の連絡先一覧、警備会社・近隣への連絡先の掲示 | 現場代理人 |
※上の担当は説明用の例です。現場の体制に合わせて決めてください。
片付け作業そのものにも危険がある
休工前の片付けや大掃除は、ふだんと違う作業(非定常作業)です。中災防の実施要領も、危険予知活動による非定常作業の対策を挙げています。片付け作業の前にも、短いKYを必ず行うようにしましょう。KYの進め方はKY活動とは?進め方と工種別の例文集で解説しています。
冬季特有の災害を防ぐ|転倒・一酸化炭素中毒・火災・交通
凍結・積雪による転倒
建災防の要領は、転倒災害の防止として、屋外通路や階段の積雪・凍結対策を挙げています。暗くなる前に早めに点灯し、明るさを確保することも挙げています。朝は通路や足場の踏板が凍っていないかを、作業前に確認します。
一酸化炭素中毒
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、建設業での一酸化炭素中毒の例を挙げています。冬場のコンクリート養生作業や、トンネルなどでの発電機の使用です。一酸化炭素中毒は、軽い頭痛や吐き気から始まり、無意識のうちに被災するのが特徴です。火気や内燃機関を使うときは十分に換気し、換気できない場所では使わないことが基本です。
火災
建災防の要領は、喫煙場所や採暖用ストーブの使用場所の指定と消火の確認、作業終了後の残火の確認を挙げています。休工前は、ストーブを使わない状態にしてから現場を閉めます。
交通事故
建災防の要領は、冬用タイヤへの早めの履き替えなどによるスリップ事故の防止を挙げています。年末年始は帰省などで長距離運転も増えます。通勤や資材運搬の車両についても、朝礼で注意を呼びかけましょう。
積雪地の除雪作業
積雪地では、高所での除雪作業で親綱を設置し、フルハーネス型安全帯を使うことが挙げられています。気象状況に応じて、高所作業そのものを中止する判断も必要です。
作業再開時の安全確認とKY
仕事始めの日は、「いつもの作業」のつもりで始めてしまいがちです。再開初日は、作業の前に点検と確認の時間を取ります。
- 現場の変化を確認する休業中の強風・積雪・地震の有無を確認します。仮囲いや保安施設に異常がないかを見て回ります。
- 足場を点検する労働安全衛生規則第567条の定めです。強風・大雨・大雪などの悪天候や中震以上の地震の後は、作業開始前に点検者が足場を点検します。点検の結果と点検者の氏名は記録して保存します。
- 重機・電気設備を点検する作業前点検を行い、バッテリーや漏電の有無を確認します。
- 体調を確認する休み明けは生活リズムが戻っていないことがあります。睡眠や体調を声かけで確認します。
- 再開時のKYを行う休業前の作業の続きから始める場合も、段取りと危険を全員で確認し直します。
- 工程を無理のない形に見直す建災防の要領も、年末年始における無理のない作業工程への見直しを挙げています。
休業中に何も起きていないように見えても、凍結や風で状態が変わっていることがあります。「前と同じはず」という思い込みを捨てることが、再開時の一番の対策です。
朝礼で使える資料の例|休工前と仕事始め
そのまま読み上げられる朝礼資料の例です。現場名や工程に合わせて書き換えてください。以下は説明用の例文です。
休工前の朝礼(例)
出力イメージ(例)
おはようございます。今日と明日で年内の作業は終わりです。 年末は「早く終わらせたい」という気持ちが事故につながります。 今日は3つのことをお願いします。 1. 片付けもKYをしてから始める 資材を運ぶ、足場の上を片付ける作業は、ふだんと違う作業です。 2. 最後に火の元と電源を確認する ストーブ、休憩所のブレーカー、延長コードを確認します。 3. 第三者が入れないように閉める 仮囲いのすき間、出入口の鍵、保安灯を確認します。 休業中の緊急連絡先は、事務所の入口に貼ってあります。 全員が無事に新年を迎えましょう。
仕事始めの朝礼(例)
出力イメージ(例)
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 休み明けの今日は、いつも以上に「確認」を大事にしてください。 1. 足場は点検が終わるまで使わない 休み中の風や雪で状態が変わっていないか、点検者が確認します。 2. 通路・踏板の凍結に注意 朝は凍っている場所があります。足元を見て歩きましょう。 3. 体調が悪い人は申し出る 休み明けは体が慣れていません。無理をしないでください。 今日の作業は【作業内容】です。このあとKYで危険を確認します。
安全大会や講話の資料づくりは安全大会の進め方とネタでも紹介しています。
AIで楽にする方法|自社の現場に合わせた朝礼資料を作る
朝礼資料は、現場の工種・地域・工程によって話すべき内容が変わります。現場の情報をAIに渡すと、自社向けの朝礼資料と点検表の下書きを短い時間で作れます。ChatGPTでもClaudeでも使えます。
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設会社の安全管理担当者です。 次の現場情報をもとに、年末年始の安全対策資料を作ってください。 # 現場情報 ・工事の種類:【木造住宅新築/RC造改修/道路工事など】 ・地域と気候:【積雪あり/凍結が多い/雪はほぼ降らない】 ・休工期間:【12月○日〜1月○日】 ・年末に予定している作業:【足場の一部解体、内装の仕上げなど】 ・再開後の最初の作業:【作業内容】 ・使っている設備:【足場、移動式クレーン、発電機、ジェットヒーターなど】 # 作ってほしいもの 1. 休工前の朝礼で読む文章(3分程度、ポイントは3つまで) 2. 仕事始めの朝礼で読む文章(3分程度、ポイントは3つまで) 3. 休工前の点検表(分類/点検項目/担当/確認欄) 4. 再開時のKYで取り上げる危険と対策(5つまで) # ルール ・現場情報にない設備や作業は書かない ・法令や数値を書く場合は、根拠が確認できないものに【要確認】を付ける ・一文を短く、現場の職人に伝わる言葉で書く
出力イメージ(例)
【入力した現場情報(※説明用の例です)】 RC造改修、積雪あり、発電機とジェットヒーターを使用、 再開後の最初の作業は3階の外壁補修(足場上) 【出力イメージ(例)】 ■再開時のKY(抜粋) 危険1:休み中の積雪で、足場の踏板が凍結・積雪している → 対策:足場の点検と除雪が終わるまで足場に上がらない 危険2:発電機やジェットヒーターを締め切った室内で使う → 対策:屋内で使わない。使う場合は換気の方法を事前に決める 危険3:休み明けで、外壁補修の手順を思い込みで進める → 対策:作業前に手順書を読み合わせる ■点検表(抜粋) 足場|悪天候後の点検(点検者の指名・記録)|職長|□
AIが作った資料は、現場の実態と合っているかを必ず確認してください。業務別のプロンプトは建設業のプロンプト集にまとめています。
注意
年末年始の安全運動の期間・スローガン・重点事項は、毎年の実施要領で変わることがあります。建災防・中災防が公表する最新の実施要領を確認してください。元請・発注者から休工中の措置や連絡体制の指示がある場合は、そちらが優先します。AIで作った朝礼資料や点検表は、現場の責任者が内容を確認してから使ってください。
年末年始の安全対策チェックリスト
- 最新年度の建災防・中災防の実施要領を確認した
- 年末の工程に無理がないかを見直した
- 休業中の緊急連絡体制を決め、現場に掲示した
- 仮囲い・出入口の施錠・保安灯・工事標識を点検した
- 事務所・休憩所のブレーカーを落とし、不要なコンセントを外した
- ストーブなどの暖房器具の消火と撤去を確認した
- 足場の養生シートや資材の飛散防止を確認した
- 再開初日に、足場などの点検と記録の段取りを決めた
- 再開初日の朝礼とKYの内容を準備した
- 凍結・一酸化炭素中毒・スリップ事故の注意を朝礼で伝えた
万一事故が起きたときの報告の流れは、事故報告書の書き方で確認できます。
よくある質問
建設業の年末年始の安全運動はいつからいつまでですか?
建災防の「建設業年末年始労働災害防止強調期間」は、12月1日から翌年1月15日までです。中災防の「年末年始無災害運動」も、令和7年度は同じ期間でした。最新年度の期間は各団体の実施要領で確認してください。
休工中の現場で特に注意することは何ですか?
建災防の要領は、次の4つを挙げています。緊急連絡体制の確認、第三者の立入禁止措置と保安施設の点検、現場の巡回と施錠確認、ブレーカーを落とすなどの火災防止です。強風や積雪で仮設物が壊れないよう、休工前に固定しておくことも大切です。
仕事始めに足場の点検は必要ですか?
労働安全衛生規則第567条は、悪天候(強風・大雨・大雪など)や中震以上の地震の後、足場の作業開始前の点検を求めています。休業中にこうした天候や地震があった場合は点検が必要です。なかった場合も、その日の作業前点検は行います。
年末年始の朝礼では何を話せばよいですか?
休工前は「片付け作業のKY」「火の元と電源」「第三者の立入防止」が話しやすいテーマです。仕事始めは「点検が終わるまで設備を使わない」「凍結への注意」「体調の申告」などです。ポイントは3つまでに絞ると伝わりやすくなります。
冬の現場で一酸化炭素中毒を防ぐにはどうすればよいですか?
発電機やエンジン付きの機械、火気を使うときは十分に換気します。地下やトンネル内など換気できない場所では使わないのが基本です。冬場のコンクリート養生で火気を使う場合も、換気の方法を事前に決めておきます。
まとめ
- 年末年始の安全対策は「休工前」「休工中」「再開時」の3場面で準備する
- 建災防の強調期間は12月1日〜1月15日。最新年度の実施要領で重点事項を確認する
- 休工中は、緊急連絡体制・第三者の立入防止・火災防止が基本
- 再開時は、悪天候や地震の後の足場点検、再開時のKY、体調確認を行う
- 朝礼資料や点検表の下書きはAIで作り、現場の責任者が確認して使う
朝礼資料・KYシートのひな形をまとめて入手
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