採用に関するお役立ち情報
採用業務の生成AIガイドライン|社内ルールの作り方とそのまま使える雛形
社員が求人原稿やスカウト文を生成AIで作り始めた。便利なのは分かるが、応募者の情報を入れていないか、差別的な表現が混ざらないかが心配。そんな理由で「社内ルールを作らなければ」と考えている経営者や総務担当者は多いはずです。
一方で、ネット上の生成AIガイドラインの雛形は、全社向けの一般的なものがほとんどです。採用業務には、応募者の個人情報、公正な採用選考、求人情報の正確な表示といった、採用ならではのルールがあります。
この記事では、採用業務に絞った生成AIの社内ルールの作り方を、公的資料にもとづいて5ステップで解説します。そのまま使える社内ルールの雛形(表)、業務別の可否表、指示文と出力例、導入前チェックリストも載せています。
※本記事は2026年10月時点で確認できた法令・公的資料をもとにした一般的な情報提供です。法律相談ではありません。個別の事案の最終判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
採用業務には「採用専用」のAIルールが必要な理由
全社向けの生成AIガイドラインがあっても、採用業務では足りない部分が出てきます。理由は、採用業務が次の3種類のルールに同時にかかわるからです。
| 採用ならではのルール | 根拠 | AIを使う場面で起こりやすい問題 |
|---|---|---|
| 応募者の個人情報の扱い | 個人情報保護法、職業安定法第5条の5 | 履歴書をそのまま対話型AIに貼り付ける |
| 公正な採用選考 | 厚生労働省「公正な採用選考の基本」、職業安定法の指針 | AIが作った面接質問に、家族や出身地を尋ねる質問が混ざる |
| 求人情報の正確な表示と労働条件の明示 | 職業安定法第5条の3、第5条の4 | AIが書いた求人原稿に、実際と違う待遇や誇張した表現が入る |
出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)/職業安定法(e-Gov法令検索)/公正な採用選考の基本(厚生労働省)
職業安定法第5条の4は、労働者の募集を行う者に、広告等で募集情報を提供するとき、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないこと、正確かつ最新の内容に保つことを求めています。AIが書いた文章でも、掲載すれば会社の表示です。
厚生労働省の公正採用選考特設サイトも、AIの活用を含むいかなる方法による選考であっても、公正な採用選考の基本的な考え方を遵守する必要があると明記しています。採用業務のAIルールは、この前提を社内の言葉に落とし込む作業だと考えると分かりやすくなります。
ルールづくりで参照したい公的資料
社内ルールは、自社で一から考える必要はありません。次の公的資料の要点を押さえ、採用業務に当てはめれば骨格ができます。
| 資料 | 発行元・時期 | 社内ルールに取り込む要点 |
|---|---|---|
| AI事業者ガイドライン(第1.2版) | 総務省・経済産業省/2026年3月31日 | AI利用者向けの取組(U-2〜U-7):適正利用、バイアスへの配慮、個人情報・機密情報の不適切な入力防止、評価に使う場合の通知と人による判断 |
| 生成AIサービスの利用に関する注意喚起等 | 個人情報保護委員会/2023年6月2日 | 利用目的の範囲内かの確認、入力データが機械学習に利用されないこと等の確認 |
| 募集・求人業務取扱要領 | 厚生労働省職業安定局/令和7年6月 | 個人情報の目的は具体的に明示する。第三者に保管を依頼する場合はその旨を明示する |
| 公正な採用選考の基本 | 厚生労働省 | 適性・能力と関係のない事項を把握しない |
| AIと著作権に関する考え方について | 文化審議会著作権分科会法制度小委員会/2024年3月15日 | AI生成物の利用も、既存の著作物との類似性・依拠性があれば著作権侵害となり得る |
| 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律 | 令和7年法律第53号 | 基本理念として、活用の過程の透明性の確保などの必要性を示す |
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(総務省・経済産業省・2026年3月31日)/生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(個人情報保護委員会・2023年6月2日)/募集・求人業務取扱要領(厚生労働省職業安定局・令和7年6月)/公正な採用選考の基本(厚生労働省)/AIと著作権に関する考え方について(文化審議会著作権分科会法制度小委員会・2024年3月15日)/人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号・e-Gov法令検索)
AI事業者ガイドラインの「AI利用者」向け項目
AI事業者ガイドラインは、AIを業務で使う事業者を「AI利用者」と位置づけ、取り組む事項を示しています。採用業務に関係の深いものを抜き出すと、次のとおりです。
- U-2:AI提供者が定めた利用上の留意点を守り、出力の精度とリスクを理解したうえで使う
- U-3:プロンプトに含まれるバイアスに留意し、責任をもって出力結果の事業利用を判断する
- U-4:AIシステム・サービスへ個人情報を不適切に入力しないよう注意を払う
- U-5:機密情報等を不適切に入力しないよう注意を払う
- U-7:出力結果を特定の個人の評価の参考にする場合は、AIを利用している旨を対象者に通知し、自動化バイアスも踏まえて人間による合理的な判断のもと、求めに応じて説明責任を果たす
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(総務省・経済産業省・2026年3月31日)
同ガイドラインは法的拘束力のない「ソフトロー」とされています。ただ、社内ルールの各条文に「何を根拠にした決まりか」を添えると、社員の納得感が高まります。経済産業省のページでは、チェックリストやワークシート(別添7)、活用の手引き(案)も公開されています。
なお、EU域内の拠点で採用する会社は、EUのAI法が採用・選考に使うAIを高リスクAIに分類している点にも注意が必要です(附属書IIIの4(a))。適用日は改正規則(EU)2026/1744により2027年12月2日とされています。該当しそうな場合は専門家に確認してください。
出典:Regulation (EU) 2024/1689(EU AI法・EUR-Lex)/Regulation (EU) 2026/1744(Digital Omnibus on AI・EU官報2026年7月24日)
採用業務のAIルールを作る5ステップ

従業員数十名の会社なら、次の5ステップで1〜2週間あれば初版を作れます。完璧を目指すより、まず使える初版を作り、運用しながら直すほうが定着します。
| ステップ | やること | 決めること・成果物 |
|---|---|---|
| 1. 業務を棚卸しする | 採用業務を作業単位に分け、AIを使いたい作業を書き出す | 業務別の可否表(AIに任せる/人が確認/使わない) |
| 2. 道具と管理者を決める | 使うAIサービス・プラン・アカウントを決め、利用規約で学習利用・保存期間・保存場所を確認する | 承認サービス一覧、管理責任者 |
| 3. 情報区分と禁止事項を決める | 入れない情報、ID化すれば使える情報、入れてよい情報を決める。AIに任せない業務を決める | 情報区分表、禁止事項 |
| 4. 確認の流れを決める | 求人原稿・連絡文・選考資料ごとに、誰が確認して公開・送信するかを決める | 確認フロー、利用記録の様式 |
| 5. 周知・研修・見直し | 説明会を開き、指示文の例を配る。年1回と法令・規約の変更時に見直す | 研修資料、見直し記録 |
ステップ1では、現場の担当者に「いまAIで何をしているか」を正直に聞くことが大切です。禁止前提で聞くと、実態が見えなくなります。まず実態を把握し、安全な使い方に置き換えるという姿勢で進めましょう。
ステップ5の研修は、面接官向けの研修と一緒に行うと効率的です。進め方は面接官トレーニングとは?目的・スキル・進め方も参考にしてください。
そのまま使える「採用業務の生成AI利用ルール」雛形
ここからが本題の雛形です。〇〇の部分を自社に合わせて書き換えれば、そのまま社内ルールの初版として使えます。右の列は、調整するときの考え方です。
| 条 | 項目 | 規定の例 | 調整のポイント |
|---|---|---|---|
| 第1条 | 目的 | この規程は、当社の採用業務において生成AIを安全かつ公正に利用するため、利用の方法と禁止事項を定める。 | 全社のAIガイドラインがある場合は「全社規程を補う規程」と位置づける |
| 第2条 | 対象 | この規程は、採用業務に携わる役員、社員、パート・アルバイト、および採用業務の委託先に適用する。 | 採用代行などの委託先にも守ってもらう場合は契約にも反映する |
| 第3条 | 基本原則 | 生成AIの出力は下書きとして扱い、公開・送信・判断は、担当者が内容を確認したうえで行う。 | 「下書きはAI、送る・決めるのは人」と短く言い換えて周知する |
| 第4条 | 利用できるサービス | 採用業務では、別表1に定める会社承認のサービス・プラン・アカウントに限り利用できる。個人のアカウントでの利用は禁止する。 | 別表1にサービス名、プラン、管理者、確認日を書く |
| 第5条 | 管理責任者 | 採用業務における生成AIの管理責任者は〇〇部長とし、サービスの承認、設定の確認、記録の管理を行う。 | 学習利用・保存期間・保存場所の確認結果を記録する |
| 第6条 | 入力禁止情報 | 別表2に定める入力禁止情報は、いかなるサービスにも入力しない。 | 氏名・連絡先・写真・生年月日・健康情報・家族・本籍などを列挙する |
| 第7条 | 応募者情報の扱い | 応募者に関する情報を入力する場合は、応募者IDに置き換え、個人を特定できる記述を除いてから入力する。ID対照表は入力しない。 | 応募者に示した利用目的の範囲内の作業に限る |
| 第8条 | AIに任せない業務 | 次の業務は生成AIに行わせない。①合否の決定、点数づけ、順位づけ ②書類にない情報の推測 ③求人媒体・採用管理システムの操作 ④応募者への自動送信 | 自社で導入するシステムのAI機能も同じ考え方で扱う |
| 第9条 | 公正な採用選考 | 評価基準・面接質問・指示文に、応募者の適性・能力と関係のない事項を含めない。 | 厚生労働省「公正な採用選考の基本」の配慮事項を別紙で配る |
| 第10条 | 求人情報の確認 | 生成AIで作成した求人原稿は、労働条件の明示事項と、虚偽・誤解を生じさせる表示がないかを〇〇が確認してから掲載する。 | 確認者を担当者とは別の人にする |
| 第11条 | 著作権等 | 他社の求人原稿や写真を入力して似せる指示をしない。生成した文章・画像は既存の著作物に似ていないか確認してから使う。 | 画像生成を使う場合は利用規約の商用利用条件も確認する |
| 第12条 | 記録 | 求人原稿・選考資料にAIを使った場合は、日付、業務、サービス、確認者を利用記録に残す。 | 表計算ソフトの1シートで十分 |
| 第13条 | 誤入力時の報告 | 入力禁止情報を入力した場合、または入力したおそれがある場合は、直ちに管理責任者に報告する。報告した者を報告を理由に不利益に扱わない。 | 報告を受けたら、専門家と報告・通知の要否を検討する |
| 第14条 | 研修 | 採用業務で生成AIを使う者は、利用開始前と年1回、研修を受ける。 | 30分程度の説明と、指示文の練習で足りる |
| 第15条 | 見直し | この規程は年1回、および法令・ガイドライン・サービスの利用規約が変わったときに見直す。 | 見直した日と内容を記録する |
別表2(入力禁止情報)は、次の区分表を基本にすると作りやすくなります。
| 区分 | 具体例 | 扱い |
|---|---|---|
| 入力禁止 | 氏名、住所、電話番号、メールアドレス、顔写真、生年月日、マイナンバー、病歴・健康状態、本籍・出生地、家族に関すること、思想・信条に関すること、ID対照表 | どのサービスにも入力しない |
| ID化すれば入力可 | 職務経歴、資格、スキル、志望動機、面接メモ | 応募者IDに置き換え、社名・学校名・地名などをぼかしてから入力する |
| 入力可 | 自社の求人票、職務内容、評価基準表、連絡文のひな形 | 個人情報を含めずに使う |
第6条・第7条の根拠は、個人情報保護委員会の注意喚起(2023年6月2日)と、職業安定法第5条の5です。条文の理由を一言添えて周知すると、守られやすくなります。
ルールと一緒に用意する3つの書式
規程だけを配っても、現場は「この作業はAIを使ってよいのか」で迷います。次の3つの書式を一緒に用意すると、運用が回り始めます。
書式1:業務別のAI利用可否表
| 業務 | AIの使い方 | 人が確認すること | 可否 |
|---|---|---|---|
| 求人原稿・キャッチコピー | 職務内容と労働条件をもとに下書きを作る | 労働条件の明示事項、実際との違い、誇張表現 | 可(確認後に掲載) |
| スカウト文・連絡文 | 氏名を差し込み枠にして下書きを作る | 内容、宛先、送信タイミング | 可(人が送信) |
| 応募書類の整理 | ID化した職務経歴を評価基準の順に要約する | 原文との照合 | 可(判定はしない) |
| 面接質問案 | 職務内容から質問案を作る | 適性・能力と関係のない質問が入っていないか | 可 |
| 面接記録の要約 | ID化したメモを要約する | 発言の取り違え、評価の書きぶり | 可(ID化が前提) |
| 合否・点数・順位 | 使わない | 人が評価基準に沿って決める | 不可 |
| 求人媒体・管理システムの操作 | 使わない | 人が操作する | 不可 |
求人原稿の材料をそろえるときは、募集要項とは?必須項目と書き方で必須項目を確認しておくと、AIの下書きの抜け漏れに気づきやすくなります。
書式2:AI利用記録(1行1件)
| 日付 | 業務 | 使ったサービス | 入力した情報の区分 | 確認者 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026/10/15 | 求人原稿(営業事務) | 承認サービスA | 入力可のみ | 総務部長 | 賃金表記を修正 |
| 2026/10/16 | 書類の要約(A-0012〜A-0015) | 承認サービスA | ID化して入力 | 採用担当 | 原文と照合済み |
書式3:応募者向けの説明文
応募フォーム・受付メールに載せる文例
ご提出いただいた個人情報は、採用選考と選考に関するご連絡のために利用します。
連絡文の作成や応募書類の整理のため、氏名・連絡先を除いた情報を、
当社が契約する外部の生成AIサービスで処理することがあります。
合否はすべて当社の担当者が判断します。
業務別の可否表、利用記録、説明文の書式は、無料資料『採用×生成AI リスクとルールの手引き』にまとめています。社内ルールの初版づくりにご活用ください。
そのまま試せる指示文と出力例
ルールづくりそのものにも、生成AIを使えます。ここでは、雛形を自社用に調整する指示文と、作ったルールに沿って求人原稿を点検する指示文を紹介します。どちらも個人情報を含まない内容なので、社内で認めたサービスで試せます。
指示文1:雛形を自社の状況に合わせて調整する
指示文の例
あなたは中小企業の総務担当者を支援するアシスタントです。
次の「採用業務の生成AI利用ルール(雛形)」を、当社の状況に合わせて調整してください。
【当社の状況】
・従業員25名、採用担当は総務部の1名が兼務
・採用の一部を外部の採用代行会社に委託している
・使う予定のAIは、会社契約の対話型AIサービス1つだけ
・求人は自社サイトと求人媒体2つに掲載
【依頼】
・調整が必要な条文と、変更後の文案を示す
・委託先に関する条文を追加すべきか意見を述べる
・法的な判断が必要な点は「専門家確認」と明記する
(雛形の表を貼る)
出力例(※説明用の例です)
■調整が必要な条文
第2条(対象)
変更案:「…および採用業務の委託先(採用代行会社を含む)に適用する。
委託先には、委託契約においてこの規程と同等の取扱いを求める。」
第5条(管理責任者)
変更案:担当者が1名のため、管理責任者を「総務部長」、確認者を「代表取締役」とし、
担当者本人が自分の作業を承認しない形にする。
第10条(求人情報の確認)
変更案:掲載先が3つあるため、「掲載後、内容を変更した場合は全掲載先に反映する」を追加。
■追加を検討したい条文
・委託先がAIを使う場合の報告ルール(使うサービスと入力情報の区分を事前に報告)
→ 委託契約の条項に入れるかどうかは専門家確認
※この案は一般的な調整例です。最終的な規程は社内で決定してください。
指示文2:AIで作った求人原稿をルールに沿って点検する
指示文の例
次の求人原稿を、当社の「採用業務の生成AI利用ルール」第9条・第10条に沿って点検してください。
【点検の観点】
1. 業務内容、賃金、労働時間、勤務地など労働条件の記載に抜けがないか
2. 実際より有利に見える表現、誤解を生じさせる表現がないか
3. 年齢・性別・家族・出身地など、適性・能力と関係のない条件や表現がないか
指摘は「該当箇所の引用」「理由」「修正案」の順で示し、問題がない観点は「指摘なし」と書いてください。
【求人原稿】
(AIで作った下書きと、元にした労働条件のメモを貼る)
出力例(※説明用の例です)
■観点1:労働条件の記載
・「残業ほぼなし」
理由:元のメモでは月平均10時間の残業があり、実態と違う印象を与えるおそれがあります。
修正案:「残業は月平均10時間程度」
・試用期間の記載がありません。メモにある「試用期間3か月(条件変更なし)」を追記してください。
■観点2:誤解を生じさせる表現
・「年収600万円も可能」
理由:メモに該当する実績や条件の記載がありません。根拠がなければ削除してください。
■観点3:適性・能力と関係のない表現
・「20代が活躍中の若い職場」
理由:年齢層を強調すると、年齢で応募をためらわせるおそれがあります。
修正案:「入社3年以内の社員が多く、先輩に相談しやすい職場」
※最終確認は掲載前に担当者と確認者が行ってください。
指示文2の点検は、あくまで補助です。労働条件の記載ルールや年齢に関する表現の扱いには細かい決まりがあるため、判断に迷う表現は労働局や専門家に確認してください。
ルールを定着させる運用と、導入前チェックリスト
ルールは作っただけでは守られません。定着させるために、次の3点を運用に組み込みます。
- 毎月1回、利用記録を管理責任者が見て、困っている点を担当者に聞く
- 指示文の良い例を社内で共有し、「こう使えばよい」を増やす
- サービスの利用規約や料金プランが変わったら、第4条の別表1を更新する
違反があったときに罰するだけだと、誤入力が隠れるようになります。第13条のように、報告した人を不利益に扱わないことを明記しておくのが大切です。
AIの活用範囲を広げるときは、面接への活用も含めて段階的に進めましょう。AI面接の考え方はAI面接とは?仕組み・メリット・主要サービスの比較で整理しています。
導入前チェックリスト
- □ 採用業務を作業単位に分け、業務別のAI利用可否表を作った
- □ 使うAIサービス・プラン・アカウントを決め、学習利用・保存期間・保存場所を利用規約で確認した
- □ 管理責任者と、求人原稿・選考資料の確認者を決めた
- □ 入力禁止情報の区分表(別表2)を作った
- □ 合否・点数・順位づけ、媒体操作、自動送信をAIに任せないことを明記した
- □ 評価基準・面接質問・指示文に、適性・能力と関係のない事項を含めないことを明記した
- □ 応募者向けの利用目的の説明文を、応募フォームや受付メールに載せた
- □ 採用業務の委託先にも同等の扱いを求める方法を決めた
- □ 誤入力時の報告ルートを決め、報告者を不利益に扱わないことを明記した
- □ 研修の日程と、年1回の見直し時期を決めた
ヨビコムの取り組み:「手引き」と「正式な社内規程」を分けて整える
Digital&が運営するヨビコムでは、採用業務でのAI活用について、個人情報、公正な採用選考、著作権、求人媒体の規約などを整理した手引きを作っています。そのうえで、現場の判断基準としての手引きと、会社として正式に承認・施行する社内規程を区別して扱っています。

手引きは早く作って現場で使いながら直せますが、それだけでは「誰が責任を持つのか」「使ってよいサービスはどれか」があいまいなまま残りがちです。そこで、次の項目を継続して整備しています。
- 運用上の責任者を決める
- ルールの承認方法を決める
- 業務で使ってよいAIサービスを決める
- ルールが守られているか、利用状況を確認する
手引きに入れているAIの注意点
実際にAIを使っていて特に注意が必要だと感じているのは、次の3つです。ルールを作る際の参考にしてください。
| 注意点 | 起きやすいこと | 対策 |
|---|---|---|
| ありきたりな文章 | 「アットホームな職場」「やりがいのある仕事」など、どの会社にも当てはまる表現になる | 現場のエピソード、実際の仕事内容、社員の声など、企業固有の情報を加える |
| 確認できていない情報 | 給与、休日、制度などが不足していると、もっともらしい内容で補ってしまう | 根拠のある情報だけを使い、不明な項目は推測せず「確認事項」として残すよう指示する |
| 採用広告に適さない表現 | 文章として自然でも、媒体規約に合わない表現や労働条件に誤解を与える表現が混ざる | 事実確認に加え、媒体のルールや採用関連の法令に照らして人が確認する |
ルールは一度で完成させるものではなく、手引きから始めて正式な規程へ育てていくという進め方が、中小企業でも無理なく続けやすい方法です。
よくある質問
Q1. 全社のAIガイドラインがあれば、採用専用のルールは不要ですか?
全社ルールで足りる部分もありますが、応募者の個人情報、公正な採用選考、求人情報の表示は採用業務に特有です。全社ルールを補う「採用業務編」として、本記事の第6条〜第11条に当たる部分だけでも追加しておくことをおすすめします。
Q2. 生成AIの利用を全面禁止にしたほうが安全ではありませんか?
禁止すると、社員が個人のアカウントで隠れて使う状況が生まれやすく、かえって管理できなくなります。会社が認めたサービスと使い方を示し、入力してはいけない情報をはっきりさせるほうが、実際のリスクを下げやすくなります。
Q3. 社内ルールは就業規則に入れる必要がありますか?
どこに位置づけるかは会社の規程体系によります。懲戒と結びつける場合などは就業規則との関係を整理する必要があるため、社会保険労務士などの専門家に相談してください。まずは業務マニュアルや運用規程として定める会社も多くあります。
Q4. 採用代行会社がAIを使っている場合、自社のルールは関係ありますか?
関係があります。個人情報保護法第25条は、個人データの取扱いを委託する場合に、委託先に対する必要かつ適切な監督を求めています。委託先がどのAIサービスに何を入力するのかを確認し、必要に応じて契約で取り決めてください。
Q5. ルールはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
年1回の定期見直しに加え、法令・ガイドライン・サービスの利用規約が変わったときに見直します。2026年7月には改正個人情報保護法が公布され、施行に向けて政令やガイドラインが整備される予定です。AI事業者ガイドラインも改訂が続いているため、公表元のページを定期的に確認してください。
出典:「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の公布について(個人情報保護委員会・2026年7月17日)/AI事業者ガイドライン(第1.2版)概要(総務省・経済産業省・2026年3月31日)
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まとめ
採用業務の生成AIルールは、全社向けのガイドラインに、応募者の個人情報、公正な採用選考、求人情報の正確な表示という3つの観点を足して作ります。AI事業者ガイドライン、個人情報保護委員会の注意喚起、職業安定法と厚生労働省の資料を根拠にすれば、骨格は迷わず作れます。
中身の中心は、「下書きはAI、送る・決めるのは人」という原則です。本記事の雛形をもとに、まずは業務別の可否表と入力禁止情報の区分表から作ってみてください。
※本記事は2026年10月時点で確認できた法令・公的資料をもとにした一般的な情報提供です。法律相談ではありません。個別の事案の最終判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

中小企業・地方企業の採用代行(RPO)を行うヨビコムの編集部です。飲食・建設・不動産・製造業・介護などの採用支援で得た知見をもとに、採用担当者の実務に役立つ情報をお届けしています。
