スクラッチ開発とは|基幹システムをフルスクラッチで作る条件と費用・期間

製品選定・費用公開日:
監修大手コンサルティングファーム出身/基幹システム刷新・業務改革の実務経験を持つ専門家
スクラッチ開発とは|基幹システムをフルスクラッチで作る条件と費用・期間

スクラッチ開発とは、既製のパッケージを使わず、自社の業務に合わせてシステムを一から設計・開発する作り方です。中小企業の基幹システムでフルスクラッチが合理的になるのは、「他社と違うやり方そのものが利益の源泉」で、かつ「作った後も直し続ける体制がある」場合に限られます。この記事では、パッケージとの違い、フルスクラッチを選んでよい条件の判定表、費用と期間の見積もり方を、大手コンサルティングファーム出身の専門家の知見をもとに整理します。

この記事でわかること
  • スクラッチ開発・パッケージ・SaaS・ローコードの違い(比較表)
  • フルスクラッチを選んでよい5つの条件と、当てはまらないときの代わりの選択肢
  • 費用を「初期・毎年・数年に一度」に分けた費目表と、人月で考える試算の例
  • 工数から工期の目安を出す計算(JUASの調査にもとづく早見表)
  • 契約前に確認する10のチェックポイント

スクラッチ開発とは:パッケージとの違いは「業務とシステムのどちらを合わせるか」

スクラッチ開発は、画面・帳票・計算ロジック・データベースまで、自社専用に設計して作る方法です。既存の部品やフレームワークは使いますが、業務の仕組みそのものは自社の要件から組み立てます。土台となる製品を持たない作り方を、特にフルスクラッチと呼びます。

パッケージ(ERPや販売管理ソフト)との違いは、出発点です。パッケージは「製品が想定する標準の業務」が先にあり、自社の業務をそこに寄せていきます。スクラッチは「自社の業務」が先にあり、システムをそれに合わせて作ります。

  • パッケージ:業務をシステムに合わせる。合わない部分はアドオン(追加開発)か運用で吸収する
  • スクラッチ:システムを業務に合わせる。合わない部分は原則として出ない代わりに、すべてを自分で作り、自分で直し続ける

この「直し続ける」が見落とされがちです。パッケージなら製品側が担う税制改正や法令対応、OS・ミドルウェアの更新への追従も、スクラッチでは自社(と委託先)の仕事になります。パッケージ側の考え方はERPパッケージとはで詳しく解説しています。

経済産業省が2025年5月に公表した「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」は、標準化の方針として「経営資源の制約の大きい中堅・中小企業は、オーダーメイドのスクラッチ開発は避け、パッケージやSaaSを原則とすべき」と書いています。同レポートは、仕様のブラックボックス化や現行踏襲へのこだわりが刷新の足かせになっている状況を、アンケート結果とともに示しています。ただし「原則」であって禁止ではありません。例外にあたるかどうかを、次の節以降の表で判定します。

スクラッチ・パッケージ・SaaS・ローコードの違い

基幹システムの作り方は、実務上は4つに分かれます。「スクラッチかパッケージか」の二択で考えると、中間の選択肢を見落とします。

観点フルスクラッチパッケージ(オンプレ・IaaS)SaaS型ERP・業務ソフトローコード
業務への合わせ方システムを業務に合わせる業務を製品に寄せ、差分をアドオン業務を製品に寄せる。追加開発の幅は狭い画面・データ構造を自社で組む
初期の作業量最も多い(設計から全部)中〜多(設定+アドオン)少〜中(設定中心)少〜中(範囲が広がると急増)
法改正・税制対応自社で改修製品の更新で対応(アドオン部分は自社)提供側が更新自社で改修(部品は提供側)
バージョンアップOS・言語・部品の更新を自社で計画数年ごとに大きな更新作業自動で更新される基盤は自動、作った部分は自社で確認
担い手が抜けたとき設計書とコードがなければ直せない製品知識のある別会社に切り替えやすい提供側が続く限り使える作った人に依存しやすい
向く範囲独自性が利益を生む業務販売・購買・在庫・会計など標準化できる業務会計・給与・販売など定型業務周辺業務・部門内の管理

ローコードで基幹業務をどこまで担えるかはローコード・kintoneで基幹システムは作れるか、パッケージの追加開発の判断はERPのアドオンとはを参照してください。

表を見ると、スクラッチの利点は「業務に合わせられる」一点に集約され、ほかの行はすべて負担側に並ぶことがわかります。だからこそ、その一点が本当に利益につながるのかを、感覚ではなく条件で確かめる必要があります。

なお、「セミスクラッチ」という言葉もよく使われます。開発会社が持つ雛形や自社製の部品を土台に、残りを個別に作る方法です。一から作るより早く安くなる一方、土台の部分はその会社の持ち物であることが多く、委託先を替えにくくなります。見積書に「セミスクラッチ」とあったら、土台部分の権利と、他社が保守を引き継げるかを確認してください。

フルスクラッチを選んでよい5つの条件(判定表)

次の5条件のうち、1と2の両方に当てはまり、さらに3〜5のうち2つ以上を満たすなら、スクラッチを本格的に検討する価値があります。1か2が欠けるなら、パッケージやSaaSを軸にして、独自部分だけを周辺に作る形を先に検討します。

条件確認する問い当てはまる例当てはまらないときの選択肢
1. 独自の業務が利益を生んでいるその業務のやり方を変えると、売上や粗利が落ちるか独自の見積ロジックで短納期の受注を取っているパッケージの標準に寄せる
2. 標準製品で再現できない候補製品3つ以上で、設定とアドオンを検討しても実現できないか製品の在庫・原価の持ち方では表現できない管理単位があるパッケージ+小さなアドオン
3. 直し続ける体制がある稼働後も、改修を判断できる社内の担当者と、継続して頼める委託先がいるか情シス担当が2名以上、設計書を読めるSaaSなど提供側が更新する方式
4. 業務の変化が速い制度や商品の変化に合わせて、年に何度も仕組みを変える必要があるか取引条件や商品構成が四半期ごとに変わる設定で変えられる製品を選ぶ
5. 範囲を絞れるスクラッチで作るのは独自部分だけにし、会計・給与などは既製品を使えるか受注〜生産指示だけを作り、会計は既存ソフト全体をパッケージで組む

※判定の目安です。条件2の確認では、候補製品の標準機能を実際の業務データで試す(デモでなく自社の取引で確認する)ことを前提にしてください。

条件1の判定で多い誤りは、「今のやり方に慣れている」を「独自性」と取り違えることです。たとえば「当社は取引先ごとに請求書の形式が違う」は独自性ではありません。多くの会社が抱える事情で、パッケージの帳票設定や運用ルールの見直しで解決できることがほとんどです。一方、「受注時に過去の加工実績から原価を自動で見積もり、即日回答する仕組みで受注を取っている」なら、利益の源泉に直結しています。

条件2では、検討する製品を1つに絞らないことが肝心です。1製品で合わないことは、スクラッチを選ぶ理由になりません。業務を製品に合わせる考え方はFit to Standardとはで解説しています。

判定表の記入例

判定表は、経営者と業務責任者が同じ紙に書き込むと議論が早く進みます。次は記入の例です。

例:従業員60名の食品卸(自社配送あり)
NG「得意先ごとに掛率と配送ルートが違い、既製品では無理」として、条件1と2に丸をつけ、そのままスクラッチの見積を3社から取る。
OK条件1:掛率の多さは慣習で、利益の源泉は「前日16時までの注文を翌朝配送する」配車の仕組み、と書き分ける。条件2:候補3製品で掛率は標準機能で設定できると確認。配車だけは再現できない。条件3:情シス兼任者1名で、改修判断は難しい。結論は、販売・在庫・請求は卸売業向けの製品、配車は専用サービスか小規模な独自開発で連携、とする。

※説明用の例です。「無理」の理由を一つずつ分けて書くと、本当に作る必要があるのは一部だけ、と見えてくることが多くなります。

コンサルタントの現場メモ

「うちの業務は特殊だからパッケージは合わない」という言葉が、製品を一度も試さないまま出てきたら要注意です。特殊だと言われる業務を分解すると、8割は標準的な受注・出荷・請求で、本当に独自なのは見積や生産指示の一部、ということがよくあります。その2割のために全体をスクラッチにすると、標準的な8割まで自社で作り、直し続けることになります。最初にやるべきは、業務を「標準でよい部分」と「差別化している部分」に色分けすることです。

スクラッチ開発の費用の考え方:初期より「作った後」が重い

スクラッチの費用は、開発会社の見積書に載る初期費用だけを見ると判断を誤ります。費用は、発生のタイミングで3つに分けて並べます。

区分費目中身見落としやすい点
初期要件定義・設計業務整理、画面・帳票・データの設計社内担当者の工数(打合せ・レビュー)も発生する
開発・テストプログラム作成、結合テスト、受入テスト受入テストは発注側の作業。現場の時間を確保する
移行・教育データ移行、マスタ整備、操作研修旧システムからのデータ抽出に旧ベンダーの費用がかかる
毎年保守障害対応、問い合わせ、軽微な修正「保守」に機能追加が含まれるかを契約で決める
インフラサーバー・クラウド利用料、バックアップ、監視本番以外に検証環境の費用も必要
セキュリティ脆弱性への対応、ライブラリの更新使っている部品の更新が止まると、改修が必要になる
数年に一度法改正・制度対応税制・帳票様式・保存要件の変更への改修パッケージなら製品更新で済む部分も自社負担
基盤の更新OS・データベース・開発言語のバージョン更新放置すると次の刷新が「作り直し」になる

法改正対応の負担は、具体例で考えると実感できます。2023年10月1日に始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、請求書に登録番号、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等を記載する必要が生じました(国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」)。また、2024年1月からは電子取引データを電子のまま保存し、検索できる状態にしておくことが求められています(国税庁「令和6年1月からの電子取引データの保存方法」)。パッケージやSaaSなら製品の更新で対応するところを、スクラッチでは請求書発行・会計連携・保存の各機能を自社で改修します。

作り方ごとの費用の全体像はERP・基幹システムの費用で整理しています。見積書を受け取ったら、上の費目のうちどれが含まれ、どれが別見積かを1行ずつ確かめてください。

人月で考える5年総費用の試算例

スクラッチの見積もりは「人月(1人が1か月働く作業量)」で出てきます。金額ではなく人月のまま比べると、作り方の違いが見えやすくなります。

例:従業員80名・1拠点の部品商社が受注〜在庫〜請求を作る場合
NG初期開発60人月だけを比べ、パッケージ案(設定・アドオンで25人月+ライセンス)より「初期は高いが自社に合う」と判断する。
OK5年分を並べる。スクラッチ案は初期60人月+保守・小改修が年6人月×5年=30人月+インボイス級の制度改修1回8人月+基盤更新1回10人月で、合計108人月。パッケージ案は初期25人月+アドオン保守年2人月×5年=10人月+ライセンス・保守料。両案を同じ表に並べてから決める。

※説明用の例です。人月数は試算の手順を示すための仮の値で、相場を示すものではありません。差が出るのは初期ではなく、稼働後に毎年積み上がる改修と、数年に一度の大きな更新です。

スクラッチ開発の期間の目安:工期は工数の立方根の約2.5倍

期間の見積もりには、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「ソフトウェアメトリックス調査」が示している経験則が使えます。同調査(2014年版)は、工期(月)はおおむね投入工数(人月)の立方根の約2.5倍という関係を示し、1,000人月のプロジェクトなら約25か月という例を挙げています。

投入工数工数の立方根工期の目安(×2.5)規模のイメージ
27人月3約7.5か月受注〜出荷など1領域
64人月4約10か月販売・在庫・請求の一式
125人月5約12.5か月販売・購買・在庫・生産の一式
216人月6約15か月複数拠点・会計連携まで含む

※規模のイメージは説明用の例です。計算式はJUAS調査の経験則で、個別の案件の工期を保証するものではありません。なお同調査の2020年版では、係数は2.70倍(n=892)とされています。版によって係数は少し変わるため、目安として使ってください。

この表から読み取れるのは、人を増やしても工期は比例して縮まないことです。64人月の仕事を5か月で終えたいと言っても、目安の半分の期間です。無理に縮めると、設計の確認やテストが削られます。同じ資料のクロス集計では、要求仕様が「非常に明確」だった案件の83.7%が予定より早いか予定どおりに終わったのに対し、「非常にあいまい」だった案件では50.0%にとどまっています。工期を守る手段は、人を足すことより要件を早く固めることです。

注意したいのは、この計算に構想策定や製品比較の期間は入らないことです。スクラッチを選ぶ前の検討と、稼働後に運用が落ち着くまでの安定化期間を前後に足して、経営の計画に載せます。この前後の期間を省いた計画は、遅れたときの吸収余地がありません。

スクラッチ開発で起きやすい4つの失敗

スクラッチの失敗は、開発中よりも稼働して数年たってから表面化するものが多くあります。代表的なものを4つ挙げます。

1. ブラックボックス化:作った人しか直せない

設計書が更新されないまま改修が重なると、仕様を知る人が限られます。経済産業省の2018年の「DXレポート」は、既存システムの複雑化・ブラックボックス化を「2025年の崖」の原因として挙げました。2025年の総括レポートでも、システムの可視化と内製化が提言の柱になっています。スクラッチを選ぶなら、設計書を改修のたびに更新する作業を保守契約の範囲に入れておきます。

2. 現行踏襲:今の画面をそのまま作り直す

「今のシステムと同じように動けばよい」という要件は、スクラッチで特に起きやすい問題です。業務を見直さずに古い仕組みを再現すると、使われていない機能や、例外処理のための回り道まで新しく作ることになります。総括レポートも、現行踏襲にこだわらず業務を見直すことを求めています。

3. 範囲の膨張:「せっかく作るなら」が止まらない

パッケージなら「標準にない」ことが歯止めになりますが、スクラッチでは要望がそのまま開発範囲に入ります。要件ごとに「必須/あれば/後回し」の優先度をつけ、後回しの要望は稼働後の改修計画に回すルールを、要件定義の初回に決めておきます。後回しにした要望は一覧に残し、稼働半年後に改めて要否を判断します。

4. テスト不足:受入テストを開発会社に任せる

スクラッチでは、パッケージのように「多くの会社で使われて確かめられた部分」がありません。すべての機能が初めて動くものです。開発会社のテストは仕様どおりに動くかを確かめるもので、締め日の処理、返品・赤伝、月末の在庫評価といった業務の流れで正しく動くかは、発注側が受入テストで確かめるしかありません。月次の締めを少なくとも1回、本番と同じデータで通す計画を立てておきます。

コンサルタントの現場メモ:この順番を逆にすると危ない

開発会社を先に決めてから「スクラッチかパッケージか」を相談すると、その会社が得意な作り方に話が寄りがちです。スクラッチを専門にする会社はスクラッチを、特定製品の販売代理店はその製品を勧めるのが自然だからです。作り方の方針は、構想策定の段階で発注側が決め、その方針に合う会社を選ぶ順番にします。

契約と体制で決めておくこと:請負・準委任とソースコードの扱い

スクラッチ開発は、パッケージ導入よりも契約の決め方が結果を左右します。IPAが公開している「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年12月)は、経済産業省のモデル契約(2007年)などを見直したもので、セキュリティ、プロジェクトマネジメント義務と協力義務、複数契約の関係、再構築への対応などを見直しの柱にしています。現行システムを作り直す案件では、旧システムの仕様をどちらが調べるかで揉めやすいため、再構築の扱いは特に確認します。

  • 要件定義:決める内容がまだ固まっていないため、作業の遂行に対価を払う準委任で組むことが多い工程です。成果物(要件定義書・業務フロー)と、発注側が担う判断の範囲を確認します。
  • 設計・開発・テスト:完成物を定義できるため、請負で組むことが多い工程です。受入基準、検収の方法、契約不適合の扱いを確認します。
  • 移行・稼働支援:作業の量が読みにくく、準委任で組むことが多い工程です。旧システムのデータ抽出をどちらが担うかを決めておきます。
  • 保守:月額の準委任が一般的です。保守に含む作業と含まない作業(機能追加・法改正対応)を線引きします。

スクラッチ固有の確認事項は、ソースコードと設計書を誰が持つかです。著作権の帰属、ソースコード・設計書・テスト結果の引渡し、第三者への保守の委託を認めるかを、契約書に書いておきます。これが曖昧だと、委託先を替えたくても替えられない状態になります。原因と防ぎ方はベンダーロックインとはで詳しく解説しています。

現実的な選択肢:パッケージ+独自部分だけをスクラッチ

判定表で条件1を満たしても、全体をスクラッチにする必要はありません。会計・給与・購買のような標準化しやすい業務はパッケージやSaaSに任せ、利益の源泉になっている業務だけを独自に作り、データ連携でつなぐ形が、中小企業では現実的です。

例:従業員150名・2工場の精密加工業
NG20年前にスクラッチで作った販売・生産・在庫・原価・会計連携の一式を、そのまま新しい言語でスクラッチで作り直す。見積の自動化ロジックも、月次の請求処理も、同じ優先度で再現する。
OK受注時の加工見積と工程割付(他社にない短納期回答の仕組み)だけをスクラッチで作る。受注・出荷・請求・購買・在庫は中小企業向けのERPで標準に寄せ、会計はクラウド会計を使う。見積システムとERPは受注データ・品目マスタで連携させる。

※説明用の例です。自社で作る範囲が見積と工程割付に絞られ、インボイス制度のような法改正への対応は請求・会計側の製品更新に任せられます。

この形にすると、スクラッチ部分の規模が小さくなり、前節の早見表で見たように工期も短くなります。連携の設計(どのデータを、どの頻度で、どちらが正とするか)は、要件定義で最初に決めておきます。

契約前の10のチェックポイント

  • スクラッチで作る範囲が「利益の源泉になる業務」に絞られている
  • 候補となる製品を3つ以上、自社の取引データで試した記録がある
  • 5年分の費用を「初期・毎年・数年に一度」に分けて比べている
  • 工期が工数に対して短すぎない(立方根の約2.5倍が目安)
  • 要件ごとに「必須/あれば/後回し」の優先度がついている
  • 著作権の帰属と、ソースコード・設計書の引渡しが契約書にある
  • 保守契約に、設計書の更新と法改正対応の扱いが書かれている
  • 使う開発言語・データベースのサポート期間を確認している
  • 稼働後に改修を判断する社内の担当者が決まっている
  • 委託先が替わっても保守を引き継げる資料がそろう計画になっている

よくある質問

スクラッチ開発とフルスクラッチは同じ意味ですか?

ほぼ同じ意味で使われます。厳密には、既存の製品や雛形を土台にせず、一から作ることをフルスクラッチと呼び、既存のフレームワークや雛形をもとに独自開発する方法をセミスクラッチと呼ぶことがあります。会社によって使い方が違うため、見積もりの際は「どこまでを新しく作るのか」を範囲で確認してください。

中小企業がフルスクラッチで基幹システムを作るのはやめたほうがよいですか?

一律にやめるべきとは言えませんが、経済産業省の総括レポート(2025年)は中堅・中小企業にパッケージやSaaSを原則とするよう求めています。独自の業務が利益を生んでいて、標準製品では再現できず、稼働後も直し続ける体制がある場合に限って検討し、範囲は独自部分に絞るのが現実的です。

スクラッチ開発の期間はどのくらいかかりますか?

規模によります。目安として、JUASの調査で示された「工期は工数の立方根の約2.5倍」を使うと、64人月なら約10か月、125人月なら約12.5か月です。これに構想策定・製品比較の期間と、稼働後の安定化期間が加わります。

既存のスクラッチシステムを、パッケージに置き換えることはできますか?

できます。ただし、現在の画面や帳票をそのまま再現しようとすると、アドオンが膨らみます。置き換えの前に、現行の機能を「使っている/使っていない」「差別化に必要/標準でよい」に分けて棚卸しし、標準でよい部分は業務を製品に寄せる判断をしておきます。

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まとめ

スクラッチ開発は、システムを業務に合わせられる代わりに、法改正対応や基盤の更新まで自社で引き受ける作り方です。中小企業の基幹システムでフルスクラッチを選んでよいのは、独自の業務が利益を生み、標準製品では再現できず、稼働後も直し続ける体制がある場合です。多くの会社では、標準化できる業務はパッケージやSaaSに任せ、差別化している部分だけを作る組み合わせが現実的な答えになります。費用は5年分を人月で並べ、工期は工数の立方根の約2.5倍を目安に、無理のない計画を立ててください。

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この記事の執筆・編集:基幹システム構築支援 編集部(株式会社Digital&)

中小企業の基幹システムの構想策定から導入・定着までを支援する「基幹システム構築支援」の編集部です。記事は、大手コンサルティングファーム出身/基幹システム刷新・業務改革の実務経験を持つ専門家の監修のもと、実務で得た知見と公的な資料をもとに作成しています。