建設会社のExcel作業は、生成AIを使うと「関数を考える時間」と「表を整える時間」を大きく減らせます。コツは、AIに数字を直接計算させるのではなく、AIに関数や手順を作らせ、計算はExcelにやらせることです。こうすると結果を検算でき、翌月以降も同じ表を使い回せます。
この記事では、出面(でづら)や材料の集計、工事台帳への転記、表記ゆれの整形、複数ファイルの集計を例に、AIへの頼み方と出てくる関数を具体的に紹介します。マクロ(VBA)を書かずにできる方法に絞りました。
ChatGPTやClaudeなどのチャット型AIのほか、Excelに組み込まれたCopilot、アドイン型のClaude for Excel、Googleスプレッドシートの Gemini など、道具ごとの違いも中立に整理します。
この記事でわかること
- 建設会社のExcel作業で、AIに任せやすい作業と任せにくい作業
- チャット型AI・Excel内蔵AI・アドインの違いと使い分け
- 集計・転記・整形の関数をAIに作らせる頼み方と実例
- マクロを使わずに複数ファイルを集計する方法(Power Query)
- AIが作った関数を検算する手順と、渡してはいけないデータ
Excel作業に使える業務別のプロンプトを、テンプレート集にまとめました。
建設会社のExcel作業で、AIに任せやすいもの・任せにくいもの
建設会社のExcelは、出面表、工事台帳、発注・請求の一覧、工程表、作業員名簿など、用途が多岐にわたります。まずは「どの作業ならAIに頼めるか」を仕分けましょう。
| 作業 | 建設会社での例 | AIの使い方 | 向き・不向き |
|---|---|---|---|
| 関数の作成 | 工事別・会社別の出面集計、月別の材料費集計 | やりたいことを文章で伝え、関数を書いてもらう | 向く |
| 転記 | 工事番号から工事名・発注者を自動で引く | 参照用の表(マスタ)と引く関数を作ってもらう | 向く |
| 表の整形 | 会社名の表記ゆれ、全角・半角の混在、結合セル | 整形ルールと関数、作業手順を作ってもらう | 向く(結果の目視確認は必要) |
| 複数ファイルの集計 | 現場ごとの日報ファイルを月末に1つにまとめる | Power Queryの手順や列の揃え方を教えてもらう | 条件付きで向く(列の形がそろっていること) |
| 数量・金額の判断 | 図面からの数量拾い、見積単価の決定 | 確認観点の洗い出しまで | 向かない(人が判断する) |
| 大量データの直接計算 | 1年分の出面をAIに貼って合計させる | 関数を作らせてExcelで計算する | 向かない(検算できないため) |
ポイントは、AIの役割を「関数・手順の設計係」にとどめることです。答えの数字ではなく、答えを出す仕組みを作ってもらいます。
ExcelでAIを使う3つの方法と使い分け
AIをExcel作業に使う方法は、大きく3つあります。どれが優れているかではなく、社内の環境と作業の中身で選びます。
| 方法 | 代表例 | できること | 利用の前提・注意 |
|---|---|---|---|
| チャット型AIに聞く | ChatGPT、Claude | 関数や手順を作る。ファイルを添付して分析や表の作成もできる | Excelの外で使う。会社の情報をどこまで入力するかのルールが必要 |
| Excelに組み込まれたAI | Copilot in Excel | 数式の生成、グラフ・ピボットテーブルの作成、書式設定、並べ替えなど | 対象のMicrosoft 365のプランが必要。ファイルはOneDriveまたはSharePointに保存 |
| アドインで使うAI | Claude for Excel | ブックの内容についての質問、エラー原因の特定、並べ替え・条件付き書式など | ClaudeのPro・Max・Team・Enterpriseプランが対象。マクロ・VBAの操作には非対応 |
Googleスプレッドシートを使っている会社では、Gemini in Google スプレッドシートで表や数式の作成、データの分析ができます。こちらも対応するプランへの契約が必要です。
Copilot関数(COPILOT関数)は提供終了に注意
Excelのセルに「=COPILOT(…)」と書いてAIを呼び出す関数は、プレビュー機能として提供されていました。Microsoftのサポートページによると、2026年9月14日以降は使えなくなり、再計算すると「#NAME?」エラーになります。ネット上の古い解説を参考にするときは注意しましょう。Copilotのウィンドウ(チャット画面)からの利用は引き続き案内されています。
迷ったら「チャット型AIで関数を作る」から
最初の一歩は、追加の設定がいらないチャット型AIで関数を作ってもらう方法がおすすめです。関数はExcelのどの版でも同じように動くので、社内に展開しやすいからです。ただし、XLOOKUP関数はExcel 2016・2019では使えません。古い版が残っている会社は、AIに「Excel 2019でも動く式で」と伝えます。
実例1:関数を作ってもらう(出面集計と工事台帳への転記)
よくあるのが、日々の出面(作業員の人数)を工事別・協力会社別に集計する作業です。ここでは、次のような「出面」シートがある前提で説明します。※説明用の例です。
| A列:日付 | B列:工事番号 | C列:会社名 | D列:職種 | E列:人数 |
|---|---|---|---|---|
| 2026/10/1 | K-2601 | 株式会社山田建設 | 型枠大工 | 4 |
| 2026/10/1 | K-2601 | 佐藤鉄筋株式会社 | 鉄筋工 | 3 |
| 2026/10/2 | K-2602 | 株式会社山田建設 | 型枠大工 | 2 |
AIには、シート名・列の並び・やりたいことを具体的に伝えます。「いい感じに集計して」では、列の位置を推測した式が返ってきます。
コピーして使えるプロンプト
Excelの関数を作ってください。 【シート名】出面 【列の構成】A列=日付、B列=工事番号、C列=会社名、D列=職種、E列=人数(1行目は見出し、データは2行目から) 【やりたいこと】「集計」シートのA列に工事番号、1行目に会社名を並べ、【2026年10月】分の人数の合計を表にしたい 【条件】 ・Excelのバージョンは【Microsoft 365】 ・下と右にコピーしても崩れないように「$」を付ける ・式の意味を1行ずつ説明する ・想定どおり動いているか確かめる方法も教える
出力イメージ(例)
集計!B2 に次の式を入れ、右と下にコピーしてください。
=SUMIFS(出面!$E:$E, 出面!$B:$B, $A2, 出面!$C:$C, B$1,
出面!$A:$A, ">="&DATE(2026,10,1), 出面!$A:$A, "<"&DATE(2026,11,1))
・出面!$E:$E … 合計する列(人数)
・$A2 … 行の工事番号(列だけ固定)
・B$1 … 列の会社名(行だけ固定)
・日付は「10月1日以上、11月1日未満」で10月分に絞る
確かめ方:出面シートでフィルターをかけ、工事番号と会社名を
1つ選んだときの人数の合計と、集計表の値が一致するか見てください。
転記も同じ考え方です。工事番号・工事名・発注者を並べた「工事マスタ」シートを作り、「=XLOOKUP(B2,工事マスタ!A:A,工事マスタ!B:B,”未登録”)」のような式で工事名を引きます。登録漏れがあると「未登録」と表示されるので、転記ミスに気づけます。作業員名簿での使い方は作業員名簿の書き方と転記ミスを減らす方法、工事ごとの原価の表は工事台帳の書き方とExcelテンプレートで解説しています。
実例2:バラバラの表を整える(表記ゆれ・全角半角)
協力会社から届く一覧や、担当者ごとに入力した表は、同じ会社でも「(株)山田建設」「株式会社山田建設」「株式会社 山田建設」のように表記が揺れます。このままでは、実例1の集計が正しく出ません。
整形の考え方:元データは残し、隣の列で直す
元の列を上書きせず、隣に「整形後」の列を作って関数で直します。こうすると、直し方が間違っていても元に戻せます。AIには、実際の表記ゆれの例を5〜10個ほど見せて、ルールを作ってもらいます。会社名に個人名が含まれる場合は、架空の名前に置き換えて渡しましょう。
出力イメージ(例)
B2 =TRIM(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(SUBSTITUTE(A2,"(株)","株式会社"),"(株)","株式会社")," "," ")) ・(株)と(株)を「株式会社」に置き換える ・全角スペースを半角スペースにし、TRIMで余分な空白を消す ・「株式会社 山田建設」のように間に空白が残る場合は、 最後の置き換えを " " → "" にして空白ごと消す方法もあります【要確認:自社の表記ルールに合わせる】
AIの提案をそのまま使わない例
全角・半角をそろえたいとき、AIがASC関数を提案することがあります。ASC関数は英数字だけでなく、カタカナも半角にします。「ヤマダ」が「ヤマダ」になり、別の会社として数えられてしまうおそれがあります。提案された関数は、必ず数行で試してから全体に広げてください。
整形の手順そのものを頼むのも有効です。「結合セルを解除して空欄に上の値を入れる」「1行に1件の形に直す」など、Excelの操作手順を番号付きで出してもらうと、関数が苦手な人でも進められます。
実例3:マクロを使わずに複数ファイルを集計する(Power Query)
現場ごとの日報や出面が別々のファイルになっていて、月末に手作業でコピーしている会社は多いはずです。この作業は、Excelに標準で入っている「Power Query(パワークエリ)」でまとめられます。マクロを書く必要はありません。
- ファイルの形をそろえる集計したいファイルを1つのフォルダーに入れます。Microsoftのサポートページでは、各ファイルの列見出し・データ型・列数が同じであることが前提とされています。
- フォルダーを読み込むExcelで[データ]→[データの取得]→[ファイルから]→[フォルダーから]を選び、フォルダーを指定します。
- ファイルを結合する[結合]を選ぶと、最初のファイルを見本にして、全ファイルに同じ手順が適用されます。
- 必要な列だけ残すPower Queryエディターで不要な列を削除し、日付や数値の型を設定します。
- 毎月は「更新」だけ翌月は、新しいファイルをフォルダーに入れて[すべて更新]を押します。
つまずきやすいのは、ファイルによって列名や列の順番が違うケースです。ここでAIが役立ちます。各ファイルの列名だけを並べて渡し、「どの列を同じものとして扱えばよいか」「どう直せば結合できるか」を整理してもらいます。Power Queryの画面で詰まったら、表示されたエラー文をそのまま貼って原因を聞きましょう。
日報の入力そのものをフォームにして、最初から1つの表にたまる形にする方法もあります。仕組み全体は日報を自動化する方法をご覧ください。
AIで楽にする方法:関数づくりを社内の「型」にする
毎回ゼロから頼むのではなく、プロンプトの型を決めておくと、誰が頼んでも同じ品質の関数が返ってきます。型は「役割」「材料(表の構成)」「やりたいこと」「条件」「出力の形」の5つです。プロンプト全般の書き方は建設業のプロンプト集で詳しく紹介しています。
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設会社の事務に詳しいExcel講師です。 次の表について、関数と使い方を教えてください。 【表の構成】 ・シート名:【シート名】 ・列:【A列=○○、B列=○○、C列=○○ …】(見出しは1行目) ・行数の目安:【約500行、毎月増える】 【やりたいこと】【例:協力会社ごと・月ごとの請求額を合計したい】 【条件】 ・Excelのバージョンは【Microsoft 365/Excel 2019】 ・マクロ(VBA)は使わない ・コピーしても崩れないように「$」を付ける 【出力の形】 1. 入力するセルと関数 2. 関数の意味(1行ずつ) 3. 正しく動いているかの確かめ方 4. よくある間違い(空白、全角・半角、日付が文字列になっている等)
もう1つ便利なのが、AIに「関数を説明させる」使い方です。前任者が作った長い式や、エラーが出ている式を貼り、「何をしているか」「どこが原因か」を聞きます。引き継ぎのときにも役立ちます。
出力イメージ(例)
この式は、工事番号(A2)と月(B1)が一致する行の 請求額を合計しています。 「#VALUE!」の原因は、日付の列に文字列の日付(例:2026.10.1)が 混ざっていることが考えられます【要確認】。 確かめ方:日付の列を選び、表示形式を「標準」にしたとき 数字(例:46296)に変わらないセルが文字列です。
AIにExcelを任せるときの注意点
渡してよいデータ・伏せるデータ
関数を作るだけなら、実データは必要ありません。列の構成と、架空の数行があれば十分です。
| 情報 | 扱いの目安 |
|---|---|
| 列名・シート名・表の構成 | そのまま渡してよい |
| 作業員の氏名・生年月日・保険番号 | 架空の値に置き換える |
| 発注者名・工事名・金額 | 社内ルールに従う。迷ったら伏せる |
| 取引先から預かったファイル | 先方との取り決めを確認してから |
入力した内容が学習に使われるかどうかは、サービスやプランで扱いが異なります。たとえばAnthropic社は、商用製品(API等)の入出力を初期設定ではモデルの学習に使わない方針を公表しています。会社としてのルールづくりは建設会社の生成AIセキュリティ対策で解説しています。
AIにできないこと・人が確認すべきこと
- AIが作った関数が「正しいか」の最終判断。フィルターや電卓で必ず検算する
- 単価・数量・金額の妥当性の判断。見積や原価の判断は人が行う
- 画像やスキャンした表の数字の読み取り。読み違いが起きやすい
- 社外から届いたファイルをそのままAIに読ませる操作。ファイル内に隠れた指示が含まれる危険があり、Claude for Excelの公式説明でも「信頼できるファイルでのみ使う」よう注意喚起されています
注意
AIの回答は間違えることがあります。関数は少ない行で試してから全体に広げ、結果は人が検算してください。発注者や元請に提出する表は、指定の様式・計算方法が優先です。各AIサービスの機能・対象プランは変わることがあるため、導入前に各社の公式情報で最新の内容を確認してください。
今日からできることチェックリスト
- 毎月手作業でコピー・集計しているExcel作業を3つ書き出した
- そのうち1つについて、列の構成を文章で説明できる
- 架空のデータ5〜10行で、AIに関数を作ってもらった
- フィルターや電卓で、関数の結果を検算した
- 元データを上書きせず、隣の列で整形する運用にした
- 複数ファイルの集計はPower Queryで試した
- AIに入力してよい情報・伏せる情報を社内で決めた
Excel×AIのよくある質問
ExcelでAIを使うには、有料のプランが必要ですか?
チャット型AIに関数を作ってもらうだけなら、無料プランでも試せます。Excelの中で直接AIを使うCopilot in Excelや、アドインのClaude for Excelは、対象の有料プランが必要です。最新の条件は各社の公式情報で確認してください。
ChatGPTやClaudeにExcelファイルをそのまま渡してもいいですか?
ファイルを添付して分析させる機能はありますが、個人情報や取引先の情報が含まれる場合は注意が必要です。関数を作るだけなら、列の構成と架空の数行で十分です。社内のルールに沿って判断してください。
マクロ(VBA)をAIに書いてもらうのはだめですか?
書いてもらうこと自体はできます。ただし、中身を読める人が社内にいないと、不具合が出たときに直せません。まずは関数とPower Queryで済ませ、どうしても必要な作業だけマクロを検討するのがおすすめです。
COPILOT関数が使えなくなったのはなぜですか?
Microsoftのサポートページで、2026年9月14日以降は使えなくなると案内されています。プレビュー機能として提供されていたものです。Copilotのウィンドウからの利用は引き続き案内されています。
AIが作った関数が動かないときは、どうすればいいですか?
表示されたエラー(#VALUE!、#N/Aなど)と式をそのままAIに貼り、原因を聞きます。多いのは、日付や数字が文字列になっている、全角・半角が混ざっている、参照範囲がずれている、の3つです。
まとめ
- AIには数字を計算させず、関数や手順を作らせてExcelで計算する
- チャット型AI・Excel内蔵AI・アドインは、環境と作業で使い分ける
- 集計はSUMIFS、転記はXLOOKUPとマスタ表、整形は隣の列で関数を使う
- 複数ファイルの集計はPower Queryで、マクロなしで自動化できる
- AIの提案は数行で試し、必ず人が検算する
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参考・出典(2026年9月30日確認)
- Microsoft サポート「Excel の Copilot に関してよく寄せられる質問」
- Microsoft サポート「COPILOT 関数」
- Microsoft サポート「複数のファイルを含むフォルダーからデータをインポートする (Power Query)」
- Microsoft Learn「ファイルの結合の概要 – Power Query」
- Microsoft サポート「XLOOKUP 関数」
- Anthropic「Use Claude for Excel」
- Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(商用製品)
- Google ドキュメント エディタ ヘルプ「Gemini in Google スプレッドシートを活用する」
- OpenAI Help Center「Data analysis with ChatGPT」
