資料DL無料診断
見積・積算・原価

工事台帳とは?書き方とExcelテンプレート|原価管理と経審への活かし方

公開日
公開日
更新日
更新日
執筆者
執筆:建設AIシフト編集部(株式会社Digital&)
工事台帳とは?

工事台帳とは、工事ごとに請負金額(売上)と、かかった原価(材料費・労務費・外注費・経費)を記録・集計する台帳です。工事別の利益を把握する原価管理の基本資料で、決算や経営事項審査(経審)の資料づくりにも使います。

「工事台帳」は法令で様式が決まった書類ではありません。そのため会社ごとに作り方が違います。Excelで作る場合も、原価の分け方と、経審で必要になる情報を最初から入れておくと、後で集計し直す手間が減ります。

この記事では、2026年9月30日時点でe-Gov法令検索と国土交通省の資料を確認し、工事台帳の書き方とExcelでの作り方を解説します。AIで入力と集計を楽にする方法も紹介します。

この記事でわかること

  • 工事台帳の役割と、建設業法の「帳簿」との違い
  • 工事台帳に書く項目と、原価の4つの区分
  • 経審・工事経歴書と工事台帳の関係
  • Excelで工事台帳を作る手順と関数の例
  • 請求書の明細をAIで工事台帳に振り分ける方法

工事台帳や日報の集計に使えるプロンプトとチェックリストをまとめました。

建設書類 AIテンプレート集を無料でダウンロード

工事台帳とは|3つの役割

工事台帳は、1つの工事を1つの単位として、お金の出入りを記録します。主な役割は次の3つです。

役割 内容 使う人
原価管理 工事ごとの利益と、予算に対する原価の進み具合を把握する 経営者、工事部、現場代理人
決算 完成工事の原価と、未完成工事の支出(未成工事支出金)を分ける 経理、税理士
経審・許可の手続き 業種別の完成工事高や、工事経歴書に書く工事を集計する 総務、行政書士

国土交通省の告示では、未成工事支出金を「引渡しを完了していない工事に要した工事費」などと定めています。工事ごとに原価を分けて記録していないと、この区分ができません。

建設業法の「帳簿」との違い

建設業法第40条の3は、建設業者に営業所ごとの帳簿の備付けと保存を義務づけています。工事台帳と名前が似ていますが、目的と中身が違います。

比較 建設業法の帳簿(第40条の3) 工事台帳(一般的な呼び方)
作成の義務 あり(営業所ごと) 法令上の様式や義務はない
主な記載事項 営業所の代表者、請負契約(工事名・現場の所在地・契約日・注文者・完成検査日・引渡日)、下請契約の内容など 請負金額、材料費・労務費・外注費・経費、利益
添付書類 契約書またはその写し、施工体制台帳の一部など 請求書・納品書などの証憑(会社のルールによる)
保存期間 引渡しから5年(発注者と結んだ住宅新築工事は10年) 会社・税務のルールによる
電子での保存 必要に応じて画面や紙に表示できれば可 自由

工事台帳の「工事一覧」に帳簿の記載事項の列を加えれば、両方を1つのファイルで管理しやすくなります。帳簿の記載事項は建設業法施行規則第26条で定められています。

工事台帳に書く項目

工事ごとの基本情報

項目 書き方のポイント 主な使いみち
工事番号 重複しない番号を振る(例:2026-015) 原価の振り分け
工事名・注文者 契約書と同じ表記にする 帳簿、工事経歴書
元請・下請の別、JVの別 発注者から直接請けたかどうか 工事経歴書、経審
建設工事の種類(許可業種) 建設業法の29業種のどれに当たるか 業種別の完成工事高
工事現場の都道府県・市区町村 工事経歴書の記載事項 工事経歴書
配置技術者 氏名と主任技術者・監理技術者の別。途中交代も記録 工事経歴書
請負金額 税抜・税込をそろえる。変更契約は履歴を残す 売上、利益計算
着工・完成・引渡しの年月日 予定と実績を分ける 帳簿、決算の区分
実行予算 原価の4区分ごとに予算額を入れる 予算と実績の比較

原価の4つの区分

建設業の決算書(完成工事原価報告書)では、工事原価を4つに分けます。工事台帳も同じ区分にしておくと、決算の集計がそのまま使えます。

区分 国交省告示の定義(要約) 例
材料費 工事のために直接購入した素材・半製品・製品など(仮設材料の損耗額などを含む) 生コン、鉄筋、塗料、配管材
労務費 工事に従事した直接雇用の作業員への賃金・給料・手当など 自社の作業員の賃金
外注費 工種・工程別の工事について、材料などを作業とともに提供し完成を約する契約の支払額 専門工事業者への支払い
経費 上の3つ以外の費用 機械等経費、地代家賃、保険料、現場従業員の給料手当、法定福利費、通信交通費

告示では、大部分が労務費である下請契約の支払額は、労務費に含めて記載できるとされています(労務外注費)。どちらに入れるかは社内で基準を決め、毎期そろえることが大切です。判断に迷う場合は税理士に確認してください。

工事台帳と経審の関係

経審は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない審査です(建設業法第27条の23)。国土交通省の資料では、2026年7月1日以降の申請に適用される審査項目とウェイトは次のとおりです。

区分 主な審査項目 ウェイト 工事台帳との関係
X1 完成工事高(許可業種別) 0.25 業種ごとの完成工事高の集計元になる
X2 自己資本額、利払前税引前償却前利益 0.15 決算書から算出
Y 経営状況(負債抵抗力、収益性・効率性など) 0.20 工事原価の正確さが利益に反映される
Z 技術職員数、元請完成工事高(許可業種別) 0.25 元請・下請の別と業種の記録が必要
W 社会性等(担い手の育成・確保、建設業の経理の状況など) 0.15 −

経審で使う工事経歴書(建設業法施行規則 様式第二号)は、建設工事の種類ごとに作ります。経営規模等評価を申請する場合、元請の完成工事を請負代金の大きい順に、合計のおおむね7割を超えるところまで記載します。続けて、その他の元請工事と下請工事を、全完成工事の合計のおおむね7割を超えるところまで記載します。

工事台帳に業種・元請下請・配置技術者の列がないと、この作業を毎年手で集め直すことになります。経審の手続きや記載要領は、許可行政庁(国土交通省の地方整備局や都道府県)の手引きで最新版を確認してください。

Excelで工事台帳を作る方法

中小の建設会社なら、Excelでも十分に運用できます。ポイントは「1工事1シート」にせず、入力用のシートを分けることです。工事ごとにシートを作ると、横断した集計が難しくなります。

シート構成の例

シート 1行に入れるもの 主な列
工事一覧 1工事 工事番号、工事名、注文者、元請・下請、業種、現場、配置技術者、請負金額、着工日、引渡日、状態
原価明細 1取引 日付、工事番号、原価区分、内容、取引先、金額(税抜)、証憑番号
実行予算 1工事×1原価区分 工事番号、原価区分、予算額
集計 1工事 原価区分ごとの実績、原価合計、粗利、粗利率、予算との差

作り方の手順

  1. 工事一覧を作る工事番号を先頭の列にし、受注したら1行追加します。業種や元請・下請はプルダウン(データの入力規則)で選べるようにします。
  2. 原価明細を作る請求書・納品書・日報の人工などを1取引1行で入力します。原価区分は「材料費・労務費・外注費・経費」の4つから選ぶようにします。
  3. 集計シートに関数を入れる工事番号と原価区分を条件に、SUMIFS関数で金額を合計します。
  4. 粗利と粗利率を計算する請負金額から原価合計を引き、請負金額で割ります。
  5. 月に1回、予算と比べる実行予算との差が大きい工事を確認し、原因を書き残します。

集計シートの関数の例です(A列に工事番号がある場合)。

  • 材料費の実績:=SUMIFS(原価明細!$F:$F,原価明細!$B:$B,$A2,原価明細!$C:$C,”材料費”)
  • 原価合計:材料費・労務費・外注費・経費の4列をSUM関数で合計
  • 粗利率:=(請負金額−原価合計)/請負金額

※列の位置は説明用の例です。自社のシートに合わせて変えてください。

記入例と予算との比較

項目 実行予算 実績(引渡し時) 差額
請負金額(税抜) 8,000,000円 8,000,000円 0円
材料費 1,800,000円 1,900,000円 +100,000円
労務費 1,200,000円 1,200,000円 0円
外注費 2,700,000円 2,800,000円 +100,000円
経費 700,000円 700,000円 0円
原価合計 6,400,000円 6,600,000円 +200,000円
粗利(粗利率) 1,600,000円(20.0%) 1,400,000円(17.5%) −200,000円

※説明用の例です。金額はすべて架空です。

労務費の実績は、作業日報の人工から集計すると正確になります。日報の集計は日報を自動化する方法、Excelの集計や転記の自動化は建設業のExcel作業をAIで自動化する方法で解説しています。実行予算のもとになる積算は積算のやり方、受注前の見積は見積書の書き方をご覧ください。見積書の内訳と工事台帳の原価区分をそろえると、見積と実績を比べやすくなります。

AIで工事台帳を楽にする方法

工事台帳で手間がかかるのは、請求書や納品書を見ながら、工事番号と原価区分を判断して入力する作業です。生成AI(ChatGPTやClaudeなど)に明細の振り分け案を作らせ、人が確認して登録する流れにすると楽になります。

コピーして使えるプロンプト

あなたは建設会社の経理担当を補佐するアシスタントです。
以下の【請求書・納品書の明細】を、工事台帳の原価明細に入力する形に整えてください。

# 出力する列
日付/工事番号/原価区分/内容/取引先/金額(税抜)/判断理由

# ルール
・工事番号は【工事一覧】の工事名・現場名と照合して選ぶ
・どの工事か判断できない明細は、工事番号を空欄にして「要確認」とする
・原価区分は「材料費」「労務費」「外注費」「経費」のいずれか
・材料と施工をまとめて請け負う専門工事業者への支払いは外注費、
  材料だけの購入は材料費とする
・労務費か外注費か判断に迷うものは「要確認」とし、理由を書く
・金額は明細の数字だけを使い、計算した場合は計算式を書く
・最後に、工事番号ごと・原価区分ごとの合計を出す

# 工事一覧
【例:2026-015 ○○倉庫 土間改修/2026-018 ○○邸 外壁塗装】

# 請求書・納品書の明細
【例:
9/3 ○○建材 生コン18-8-20 14.5㎥ ○○倉庫
9/10 ○○塗装 外壁塗装工事一式(材工) ○○邸
9/12 ○○リース 発電機レンタル 1か月
9/15 ○○工業 応援作業 3人工】

出力イメージ(例)

| 日付 | 工事番号 | 原価区分 | 内容 | 取引先 | 金額 | 判断理由 |
| 9/3 | 2026-015 | 材料費 | 生コン 14.5㎥ | ○○建材 | 明細の金額 | 現場名が一致 |
| 9/10 | 2026-018 | 外注費 | 外壁塗装工事(材工) | ○○塗装 | 明細の金額 | 材料と施工を含む |
| 9/12 | 要確認 | 経費 | 発電機レンタル | ○○リース | 明細の金額 | 現場名の記載なし |
| 9/15 | 要確認 | 要確認 | 応援作業 3人工 | ○○工業 | 明細の金額 | 現場名なし。労務費か外注費かは社内基準で判断 |

※説明用の例です。

月末に「予算との差が10%以上ある工事と原因の候補を挙げて」と頼み、原価会議の資料のたたき台を作らせる使い方もできます。業務別のプロンプトは建設業のプロンプト集にまとめています。

注意

本記事の法令・経審の内容は2026年9月30日時点の確認です。会計処理や税務の判断は税理士に、経審・許可の手続きは許可行政庁の最新の手引きや行政書士に確認してください。AIの振り分け結果は必ず人が請求書と照合してから登録してください。取引先名や金額をAIに入力する場合は、社内ルールと利用するサービスの規約を確認してください。

工事台帳の運用チェックリスト

  • 工事番号を振るルールを決め、全員が同じ番号を使っている
  • 原価区分を材料費・労務費・外注費・経費の4つにそろえた
  • 労務費と外注費の判断基準を文書にした
  • 工事一覧に業種・元請下請・配置技術者の列がある
  • 請負金額の税抜・税込をそろえ、変更契約の履歴を残している
  • 引渡日を記録し、完成工事と未成工事を分けられる
  • 月に1回、実行予算と実績を比べている
  • AIで振り分けた明細は、人が確認してから登録している

工事台帳のよくある質問

工事台帳の作成は義務ですか?

「工事台帳」という名前の書類を作る法令上の義務や決まった様式はありません。一方、建設業法第40条の3では、営業所ごとに請負契約の内容などを記載した帳簿を備え、保存することが義務づけられています。工事台帳に帳簿の記載事項を含めて管理する会社もあります。

工事台帳と実行予算書の違いは何ですか?

実行予算書は、受注後に「この工事をいくらの原価で施工するか」を決めた計画です。工事台帳は、実際にかかった原価を記録する実績の台帳です。両方を同じ原価区分で作ると、予算と実績を比べて利益の見込みを管理できます。

工事台帳はExcelで作っても問題ありませんか?

問題ありません。工事一覧・原価明細・集計のようにシートを分け、SUMIFS関数などで集計すれば十分に運用できます。工事件数や入力者が増えてきたら、原価管理ソフトへの移行を検討するとよいでしょう。

工事台帳は経審で提出しますか?

経審で提出する主な書類は、工事経歴書や財務諸表などです。提出書類や確認資料は許可行政庁によって異なります。工事台帳は、業種別の完成工事高や工事経歴書を作るための集計元として役立ちます。

外注費と労務費はどう分ければよいですか?

国土交通省の告示では、材料などを作業とともに提供して完成を約する契約の支払額を外注費としています。大部分が労務費である下請契約の支払額は、労務費に含めて記載できるとされています。社内で基準を決めて毎期そろえ、迷う場合は税理士に確認してください。

まとめ

  • 工事台帳は工事ごとの売上と原価を記録する台帳で、原価管理・決算・経審に使う
  • 建設業法の帳簿とは別物だが、記載事項を加えれば1つのファイルで管理しやすい
  • 原価は材料費・労務費・外注費・経費の4区分にそろえ、業種・元請下請も記録する
  • Excelは入力シートと集計シートを分け、AIは明細の振り分け案づくりに使う

工事台帳や日報の集計を楽にしませんか

「建設書類 AIテンプレート集」では、日報・週報のプロンプトや業務別のプロンプト集を無料で配布しています。原価の集計や明細の振り分けにも応用できます。

テンプレート集を無料でダウンロード