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予実管理とは?建設業は工事別と会社全体の2段で回す|Excel表と粗利の差の読み方

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執筆:建設AIシフト編集部(株式会社Digital&)
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監修:建設AIシフト 監修責任者

予実管理とは、予算(計画)と実績を定期的に比べ、差が出た原因をつかんで、次の打ち手を決めることです。建設業では1件の工事が数か月から1年以上続くため、予算と実績に加えて「見込み(着地見込み)」を比べるのが特徴です。そして予実は、工事別と会社全体の2段で回します。工事ごとの着地見込みを完成月に並べて積み上げたものが、会社の「今期の着地」になります。

工事ごとの原価管理はしているのに、会社全体でいくら残るかは決算まで分からない。予算は作ったが、比べるのは期末だけ。こうした状態から抜け出すには、表の作り方よりも、何と何を比べ、誰が数字を出し、誰が何を決めるかを決めることが大切です。

この記事では、架空の建築会社(社員約30名・3月決算)の10月締めの数字を使って、年度予算の立て方、工事別と会社全体の予実の表、粗利の差を3つに分ける読み方、60分の予実会議の進め方までを解説します。工事1件の原価の締め方は建設業の原価管理のやり方、実行予算の作り方は実行予算とは?で解説しています。

この記事でわかること

  • 予実管理の意味と、予算管理・原価管理との違い
  • 建設業の予実を「工事別」と「会社全体」の2段で回す考え方
  • 年度予算を工事の一覧から作る方法と、月別予算を12で割らない理由
  • Excelの予実管理表の列・数式と、判定のルール
  • 粗利の差を「量」「受注時の採算」「施工中の増減」に分けて読む方法
  • 予実管理が形だけになる5つの原因と、60分の予実会議の進め方

この記事の記入例をそのまま入れたExcelシート(記入例入り・空欄の2ファイル)と、19ページの解説資料をセットでお届けします。

年度予実管理ガイドとExcelシートをダウンロード

予実管理とは|予算・実績・見込みの3つを比べる

予実管理の「予実」は、予算と実績を合わせた言葉です。一般的な会社の予実管理は、月ごとの予算と月ごとの実績を比べ、差の原因を調べて次の月の打ち手を決めます。

建設業では、これだけでは足りません。工事の利益は完成するまで確定せず、実績として数字が出たときには、もう手を打てないことが多いからです。そこで、建設業の予実管理では次の3つを比べます。

比べるもの 中身 扱いのルール
予算 期首に決めた年度予算、工事ごとの当初の実行予算 期中に書き換えない。改訂するときは版を残す
実績 締め月までに確定した数字 原価は請求書の到着月ではなく、納品・出来高・人工で発生した月に計上する
見込み これから先の数字(着地見込み) 工事は現場代理人が残工事を見積もり直して出す。会社は受注残と受注見込みから作る

ポイントは、予算は動かさず、見込みを毎月動かすことです。差が出るたびに予算を書き換えると、何と比べているのかが分からなくなり、予実管理が形だけになります。

予算管理・原価管理との違い

似た言葉に予算管理と原価管理があります。予実管理は予算管理の一部で、工事別の予実は原価管理を土台にしています。

言葉 意味 建設会社での例
予算管理 予算を立て、部門や工事に割り当て、期中に比べて見直す一連の管理 年度予算の作成、実行予算の承認
予実管理 予算管理のうち、予算と実績(と見込み)を比べ、差の原因と打ち手を決める部分 毎月の工事別・会社全体の予実会議
原価管理 工事ごとの原価を記録・集計し、予算内に収める管理 原価の締め、工事台帳、発注時の予算照合

建設業の予実は「工事別」と「会社全体」の2段で回す

建設会社の予実管理がうまく回らない原因の1つは、工事別の予実と会社全体の予実が、つながっていないことです。工事部は工事ごとの原価を見ていて、経理は月次の試算表を見ている。両方を見ている人がいないため、「今期、会社にいくら残るのか」に誰も答えられません。

1段目:工事別の予実 2段目:会社全体の予実
比べるもの 当初の実行予算原価 と 着地見込み原価(累計発生原価+残工事の見込み) 年度予算 と 実績+見込み(工事別の着地を計上月に並べたもの)
見る数字 粗利率の変化、出来高率と原価消化率のずれ 受注高・完成工事高・完成工事総利益(粗利)・販管費・営業利益の着地
頻度 毎月の締めのあと 毎月の予実会議
数字を出す人 現場代理人(残工事の見込み・出来高率) 経理(まとめ)、営業(受注見込み)
決める人 工事部長 社長

2つをつなぐのは「工事の一覧」です。1工事1行の表に、請負金額・完成(予定)月・着地見込み粗利を持たせておけば、完成月ごとに合計するだけで、会社の完成工事高と粗利の見込みが出ます。工事完成基準で計上している会社なら、完成した月に完成工事高と完成工事原価が立つため、工事の完成予定月が、そのまま会社の売上の予定表になります。

1件の工事で見る予算・実績・見込み

記入例の会社の、A社 倉庫新築(請負金額180,000千円)の10月締めの数字です。※説明用の架空の例です(単位:千円・税抜)。

項目 金額 中身
実行予算原価(当初) 151,200 予算。当初の粗利率16.0%
累計発生原価 69,500 実績。10月末までに発生した原価
残工事の見込み 86,200 見込み。現場代理人が工種ごとに見積もり直した額
着地見込み原価 155,700 累計発生原価+残工事の見込み。予算より4,500多い(粗利率13.5%)

出来高率は40%、原価消化率(累計発生原価÷実行予算原価)は約46.0%です。工事の進み具合より原価の進みが速く、着地の粗利率も当初から2.5ポイント下がっています。この工事の完成は来期(2027年6月)のため、工事完成基準では今期の完成工事高には入りませんが、打ち手を決めるのは今です。

年度予算は「工事の一覧」から作る

「前年の売上×105%」のように作った年度予算は、どの工事でその数字になるのかが分かりません。期中に見込みと比べても、差の原因を工事までたどれません。完成工事高を、出どころ別に3つに分けて積み上げます。

完成工事高の出どころ 中身 期中の扱い
① 繰越工事 期首の時点で受注済み・未完成の工事のうち、今期に完成するもの 工事別の着地見込みで毎月更新
② 期中の受注済み 今期に受注して、今期に完成する工事 受注した月から①と同じ扱い
③ 受注見込み まだ受注していない案件(営業の計画) 確度を付けて、別の行で持つ

期が進むと③が②に置き換わり、見込みの中身が「受注済み」で固まっていきます。下期に入っても③の割合が大きいなら、営業と工程の打ち手を早めに決めるサインです。

受注見込みに確率を掛けない

受注見込みの案件には、確度(例:A 受注済み、B 内示あり、C 見積提出中)を付けます。このとき、「確度Cは30%」のように金額に確率を掛けるやり方はおすすめしません。中小の建設会社は工事の数が少なく、1件の金額が大きいため、取れても取れなくても数字が合わなくなるからです。確度別に別の行で持ち、「全部取れた場合」と「受注済みだけの場合」の幅で見る方が、判断に使えます。

月別の予算は12で割らない

工事完成基準では、完成工事高は工事が完成した月に計上されます。年度予算を12で割ると、大きな工事が完成する月だけ「予算超過」、ほかの月は「未達」に見え、毎月の比較に意味がなくなります。完成予定月に並べて、月別の予算を作ります。

年度予算(千円) 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 年計
受注高 50,000 50,000 60,000 50,000 50,000 50,000 50,000 50,000 50,000 50,000 50,000 60,000 620,000
完成工事高 30,000 35,000 45,000 45,000 40,000 70,000 45,000 50,000 60,000 40,000 50,000 90,000 600,000
完成工事総利益 5,400 6,300 8,100 8,100 7,200 12,600 8,100 9,000 10,800 7,200 9,000 16,200 108,000
販管費 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 6,000 72,000
営業利益 ▲600 300 2,100 2,100 1,200 6,600 2,100 3,000 4,800 1,200 3,000 10,200 36,000

※説明用の架空の会社の例です(単位:千円・税抜)。完成工事総利益の予算は、各月の完成工事高×18.0%で置いています。完成が少ない月は販管費だけがかかるため、4月のように月の営業利益がマイナスになることもあります。月単位ではなく、累計と年度の着地で判断します。

完成工事高をいつ計上するか(工事完成基準か、進み具合に応じて計上するか)は、会社の会計方針と税務によります。法人税では、着手から引渡しの期日まで1年以上、請負金額10億円以上などの要件をすべて満たす「長期大規模工事」には工事進行基準が適用されます。自社の計上基準は、顧問税理士に確認してください。進み具合に応じて計上する工事は、完成月ではなく月ごとの計上予定額で並べます。

Excelの予実管理表の作り方|工事一覧から会社予実まで

予実管理表は、次の3枚のシートを中心に組むと、入力を増やさずに工事別と会社全体の両方を出せます。毎月入力するのは主に「工事一覧」で、ほかは期首の年度予算と販管費の実績くらいです(付属のExcelは、設定・会議用などを含めた6枚構成です)。

  1. 工事一覧(入力)1工事1行。受注前の見込み案件も同じ表に入れます。毎月の締めのあと、施工中の工事の累計発生原価・残工事の見込み・出来高率を更新します。
  2. 月別展開(数式)工事ごとの完成工事高と粗利を、完成(予定)月の列に割り振ります。
  3. 会社予実(数式)月別に、予算と実績・見込みを並べます。締め月までの列は実績、翌月からは見込みとして表示し、年度の着地を出します。

工事一覧の列と数式

列 項目 入力・数式
A〜F 工事番号・工事名・状態(完成/施工中/受注済/見込み)・確度・受注(予定)月・完成(予定)月 入力
G・H 請負金額・実行予算原価(当初) 入力(当初の実行予算は固定)
I・J 累計発生原価・残工事の見込み 毎月入力(見込み案件は I=0、J=予定原価)
K 着地見込み原価 =I+J
L・M 当初粗利・着地見込み粗利 =G-H/=G-K
N・O 当初粗利率・着地粗利率 =L/G/=M/G
P 粗利率の低下(ポイント) =(N-O)*100
Q・R 出来高率・原価消化率 入力/=I/H
S 原価消化率−出来高率(ポイント) =(R-Q)*100(施工中の工事だけ)
T 判定 下の判定ルール
U 粗利への影響(減少額) =L-M

月別展開では、完成月の列に請負金額を入れる数式を置きます。D4〜O4に期首月から12か月の日付(月初)を入れ、工事一覧の完成(予定)月も月初の日付で入れておきます。

月別展開・会社予実の数式(5行目の例)

完成工事高(D列):=IF($A5="","",IF(工事一覧!$F5=D$4,工事一覧!$G5,0))
粗利(R列):=IF($A5="","",N(D5)*N($C5)) ※C列=着地粗利率

会社予実(完成工事高のうち受注済みの工事):
=SUMIFS(月別展開!D$5:D$104,月別展開!$B$5:$B$104,"<>見込み")

「見込み」の行だけを別に合計すると、着地のうち受注見込みに頼っている金額が分かります。進み具合に応じて計上する工事は、その行の数式を消して月ごとの金額を手入力し、合計が請負金額(期をまたぐ工事は今期の計上予定額)と一致するかを確かめます。

判定のルール(例)

判定は、毎月すべての工事を細かく見なくても、話すべき工事が分かるようにするための目印です。しきい値は自社で決めます。次は一例です。

判定 条件(施工中・受注済みの工事)
要対策 着地粗利率が当初から2.0ポイント以上低下
注意 1.0ポイント以上低下、または原価消化率が出来高率を5.0ポイント以上上回る
順調 上のどれにも当たらない施工中の工事
未着工 状態が「受注済」(受注済みで、まだ着工していない)の工事

記入例|10月締めの工事別予実と会社予実

ここからは、記入例の会社の2026年10月締めの数字です。年度予算は受注高620,000千円、完成工事高600,000千円、粗利108,000千円(18.0%)、営業利益36,000千円です。※すべて説明用の架空の例です(単位:千円・税抜)。

工事別の予実(施工中・受注済み・見込み)

工事 状態 完成(予定) 請負金額 当初粗利率 着地粗利率 出来高率 原価消化率 判定 粗利への影響
A社 倉庫新築 施工中 2027/6 180,000 16.0% 13.5% 40% 46.0% 要対策 4,500
B社 事務所改修 施工中 2026/11 42,000 18.0% 18.5% 90% 88.0% 順調 ▲210
C社 工場耐震補強 施工中 2027/1 65,000 20.0% 18.5% 40% 47.0% 注意 975
D社 集合住宅外壁改修 施工中 2027/2 36,000 22.0% 22.0% 20% 19.0% 順調 0
E社 店舗内装 施工中 2026/11 18,000 15.0% 9.0% 95% 101.7% 要対策 1,080
F社 倉庫改修 受注済 2027/2 40,000 16.0% 16.0% — — 未着工 0
G社 設備更新 受注済 2027/3 29,000 15.0% 15.0% — — 未着工 0
I社 工場屋根改修 見込み(B) 2027/3 25,000 15.0% 15.0% — — — —
K社 倉庫床改修 見込み(C) 2027/3 15,000 14.0% 14.0% — — — —

※完成済みの9工事は省略しています。粗利への影響=当初粗利−着地見込み粗利(プラスが減少、▲は増加)。

率で一番目立つのはE社(6.0ポイント低下)ですが、会社への影響額で一番大きいのはA社(4,500千円)です。率が大きく下がった小さな工事より、少し下がった大きな工事の方が、会社の利益への影響は大きいことがあります。判定は率で付け、会議で話す順番は影響額で決めます。C社は粗利率の低下は1.5ポイントですが、原価消化率が出来高率を7.0ポイント上回っており、残工事の見込みが楽観的になっていないかを確認すべき工事です。

会社全体の予実(年度の着地)

千円 年度予算 4〜10月 実績 11〜3月 見込み 年度の着地 予算との差
受注高 620,000 533,000 40,000 573,000 ▲47,000
完成工事高 600,000 310,000 270,000 580,000 ▲20,000
 うち受注見込み — — 40,000 40,000 —
完成工事総利益 108,000 52,620 45,935 98,555 ▲9,445
粗利率 18.0% 17.0% 17.0% 17.0% ▲1.0ポイント
販管費 72,000 42,500 30,000 72,500 +500
営業利益 36,000 10,120 15,935 26,055 ▲9,945

※受注高の見込みは、受注見込み案件の受注予定月(11月・12月)に計上しています。粗利率は小数第2位を四捨五入しています。

この予実から読み取る4つのこと

  • 完成工事高は予算どおり、粗利は遅れている:4〜10月の完成工事高は予算と同額の310,000千円。一方で粗利は予算(同期間55,800千円)より3,180千円少ない。売上だけを見ていると、この遅れに気づけません。
  • 12月の完成がゼロ:12月に完成予定の工事がなく、この月は販管費だけで営業利益が▲6,000千円。年度で見れば問題なくても、入金と支払の予定を先に組めます。
  • 着地のうち40,000千円が未受注:見込みの完成工事高270,000千円のうち40,000千円は受注見込み(確度B・C)。2件とも取れなかった場合、完成工事高の着地は540,000千円です。
  • 受注は好調でも、今期の完成工事高には効かない:4〜10月の受注高533,000千円は予算(同期間360,000千円)を大きく上回りますが、最大のA社 倉庫新築(180,000千円)の完成は来期。受注残410,000千円のうち、今期に完成するのは230,000千円です。なお、年度の受注高の着地(573,000千円)が予算を下回っているのは、11月以降の受注見込みが2件しか入っていないためです。営業が見込み案件を入れるほど、受注高の着地は実態に近づきます。

粗利の差を3つに分けて読む|量・受注時の採算・施工中の増減

年度の粗利の差▲9,445千円は、原因によって打ち手が違います。「仕事の量が足りない」のか、「安く取った」のか、「施工中に悪くなった」のかを、計算で分けます。

分け方 計算 記入例
① 量の差 (着地の完成工事高−予算の完成工事高)×予算の粗利率
(580,000−600,000)×18.0%
▲3,600
② 受注時の採算 今期に完成する工事の当初粗利の合計−着地の完成工事高×予算の粗利率
101,435−580,000×18.0%
▲2,965
③ 施工中の増減 着地見込み粗利の合計−当初粗利の合計
98,555−101,435
▲2,880
合計 ①+②+③=着地の粗利−予算の粗利(98,555−108,000) ▲9,445

①が大きければ受注の量や完成時期の問題、②が大きければ見積・受注判断(値決め)の問題、③が大きければ施工・発注・変更協議の問題です。一般的な「量の差(数量差異)」と「率の差(価格差異)」の分け方に、建設業ならではの「受注した時点で決まっていた差」と「施工中に生じた差」の区別を加えたものです。

記入例の会社では、②と③がほぼ同じ大きさです。施工中の管理だけでなく、受注の時点で予算の粗利率(18.0%)を下回る工事が多いことが分かります。工事別に見ると、②が大きいのはG社 設備更新(▲870)、F社 倉庫改修(▲800)、③が大きいのはE社 店舗内装(▲1,080)、C社 工場耐震補強(▲975)です(▲は粗利の減少)。見積の段階で実行予算の粗利率を確かめ、予算の粗利率を下回る場合は受注前に社長が判断する、というルールが効きます。

予実管理が「意味ない」状態になる5つの原因と対策

予実管理をやっているのに役に立たないと感じる会社には、共通する原因があります。どれも、表の作り方より数字の入れ方と回し方の問題です。

原因 起きること 対策
実績が請求書ベースで遅れる 請求書が届いた月に原価を計上するため、発生から1〜2か月遅れて数字が出る 納品書・出来高確認・日報の人工で発生月に計上。届いていない分は見込み額で未払計上
見込みが「予算の残り」で埋まる 残工事の見込みを予算残で機械的に埋め、着地がいつも予算どおりになる 現場代理人が工種ごとに数量×単価で見積もり直し、根拠を1行添える
期中に予算を書き換える 差が出るたびに予算を直し、何と比べているのか分からなくなる 年度予算と当初の実行予算は固定。変更契約は工事番号の枝番で分け、予算の改訂は版で残す
数字がそろうのが遅い 締めから3週間かかり、会議の時点で次の月が終わりかけている 締めの日程を固定する(例:第10営業日に会議)。完璧な数字より、決めた日に出すことを優先
会議が数字の読み上げで終わる 全工事を順に説明し、何を決めたかが残らない 粗利への影響額が大きい順に話し、工事ごとに「決めること」を質問の形で用意する

毎月の回し方|締めから60分の予実会議まで

予実管理が続く会社は、日程が固定されています。次は月末締めの会社の例です。※説明用の例です。

時期 やること 担当
第3営業日まで 請求書・納品書を回収し、工事番号と費目を振って原価に計上 経理
第5営業日まで 日報の人工から労務費を配賦。届いていない請求は見込み額で計上 工務・経理
第7営業日まで 工事一覧の累計発生原価・残工事の見込み・出来高率・理由を更新 現場代理人
第8営業日まで 受注見込み案件の確度・時期を更新。販管費の実績を入力 営業・経理
第10営業日まで 予実会議(60分)。決めたことを工事一覧の理由・対策欄に残す 社長・工事部長・経理

60分の予実会議の進め方

時間 議題 中身
0〜5分 会社全体の着地 年度の着地(完成工事高・粗利・営業利益)と前月からの変化、粗利の差の3分解
5〜25分 要対策の工事 影響額の大きい順に。差異の理由(事実)→打ち手→期限と担当
25〜40分 注意の工事 原価消化率と出来高率のずれの理由、残工事の見込みの根拠
40〜50分 受注見込みと受注残 確度B・Cの案件の時期と金額、来期に完成する工事の見通し
50〜60分 決めたことの確認 誰が・いつまでに・何をするかを読み上げ、記録する

工事ごとの「決めること」は、質問の形で用意しておくと会議が進みます。例えば記入例のA社 倉庫新築なら「基礎の追加補強分を、発注者と変更協議するか。する場合、いつ・誰が資料を出すか」、E社 店舗内装なら「仕様変更の追加費用の見積を、今月中に提出できるか」です。「がんばる」「様子を見る」は打ち手ではありません。分からないことは「要確認:誰が・いつまでに」と書きます。

AIとシステムで予実管理を楽にする

予実管理でAIが役立つのは、計算済みの表を読んで、会議の論点を整理する作業です。計算はExcel(またはシステム)で行い、AIに数字を計算させないのが原則です。ChatGPTでもClaudeでも使える書き方にしています。

コピーして使えるプロンプト(予実会議の論点整理)

あなたは建設会社の予実会議の準備を手伝うアシスタントです。
次の2つの表は、今月の締め後にExcelで計算済みのものです。
数字は変更せず、計算もし直さずに、表の値をそのまま使ってください。

# お願いしたいこと
1. 会社全体の着地(完成工事高・粗利・営業利益)と予算との差を3行でまとめる
2. 粗利の差の内訳(①量の差/②受注時の採算/③施工中の増減)のうち、
   一番大きいものを挙げ、どの種類の打ち手が必要かを1行で書く
3. 会議用の一覧の上位3工事について、表の「差異の理由」に書かれた事実と、
   会議で決めるべきことを質問の形で1〜2個書く
4. 着地のうち受注見込みに頼っている金額と、取れなかった場合の完成工事高を書く
5. 表に書かれていない原因は推測で書かず【要確認】とする

# 会社予実(Excelから貼り付け)
【項目/年度予算/実績/見込み/着地/差】

# 粗利の差の内訳
【①/②/③】

# 会議用の一覧(影響額の大きい順)
【工事番号/工事名/判定/当初粗利率/着地粗利率/出来高率/原価消化率/影響額/差異の理由】

出力イメージ(例)

■会社全体の着地
・完成工事高 580,000千円(予算比 ▲20,000)、粗利 98,555千円・17.0%(▲9,445)
・営業利益 26,055千円(▲9,945)
■粗利の差で一番大きいもの
・①量の差 ▲3,600(②▲2,965、③▲2,880と大差なし)→ 受注・完成時期と値決めの両面で確認
■会議で決めること
・A社 倉庫新築:鉄骨の単価上昇と基礎の追加補強(表より)
  → 基礎の追加補強分を発注者と変更協議するか?資料はいつ・誰が出すか?
・E社 店舗内装:施主の仕様変更(追加費用は未合意)と手戻り(表より)
  → 追加費用の見積を今月中に提出できるか?
・C社 工場耐震補強:夜間作業の増加で労務費が先行(表より)
  → 残工事の見込みは何人工で出しているか?【要確認】
■受注見込みへの依存
・着地の完成工事高のうち 40,000千円が受注見込み。取れなかった場合 540,000千円

Excelで続ける場合も、工事一覧への転記が増えてくると締めが遅れます。締めに7営業日以上かかる、工事一覧の版が複数ある、工事の数が30件を超えた、出来高と請求の表が別々で合わない、といった状態になったら、工事番号で原価・日報・出来高・請求をつなぐ仕組み(システム)を検討する目安です。建設AIシフトの業務一元管理は、この記事の考え方を自社の業務の流れに合わせて組み込み、予実と着地見込みをいつでも見られるようにするオーダーメイドのシステムです。

AIやシステムに任せないこと

  • 残工事の見込みと出来高率の判断(現場を見ている現場代理人が決める)
  • 計上基準・原価の区分などの会計・税務の判断(社内基準と税理士の助言に従う)
  • 予実会議での打ち手の決定(変更協議・発注の見直し・受注の判断は経営が決める)

注意

記入例の会社・工事・数値、月次の日程、判定のしきい値、出力イメージは、すべて説明用の架空の例です。長期大規模工事の要件は2026年10月29日時点で国税庁の公表資料を確認したものです。完成工事高の計上基準、原価の区分などの会計・税務の判断は、顧問税理士に確認してください。取引先名や金額をAIに入力する場合は、社内ルールと利用するサービスの規約を確認してください。

毎月の予実チェックリスト

  • 年度予算を、工事の一覧(繰越・受注済み・受注見込み)から作った
  • 月別の予算を、完成予定月に並べて作った(12で割っていない)
  • 期中に年度予算と当初の実行予算を書き換えていない
  • 原価を、請求書の到着月ではなく発生月で計上した
  • 残工事の見込みを、予算の残りではなく数量×単価で見積もり直した
  • 出来高率と原価消化率を比べ、ずれの理由を確認した
  • 受注見込み案件を確度別に分け、確率を掛けずに別の行で持っている
  • 完成予定月がずれる工事を確認し、工事一覧を直した
  • 粗利の差を、量・受注時の採算・施工中の増減に分けて見た
  • 予実会議で決めたこと(誰が・いつまでに・何を)を記録した

予実管理でよくある質問

予実管理とは何ですか?

予算(計画)と実績を定期的に比べ、差が出た原因をつかんで次の打ち手を決める管理です。建設業では工事が完成するまで利益が確定しないため、予算と実績に加えて、完成時の見込み(着地見込み)を毎月更新して比べます。

予算管理と予実管理の違いは何ですか?

予算管理は、予算を立てて割り当て、期中に比べて見直す一連の管理です。予実管理はそのうち、予算と実績(と見込み)を比べて差の原因と打ち手を決める部分を指します。

予実管理は英語で何と言いますか?

一般に「Budget vs Actual(BvA)」と呼ばれ、予算と実績の差は「variance(差異)」、差異の分析は「variance analysis」と言います。見込みは「forecast」です。

建設業の予実管理は、どのくらいの頻度で行えばよいですか?

月1回、締めのあとに行うのが基本です。締めから予実会議までの日程を固定し(例:第10営業日に会議)、工事別の着地見込みを更新してから、会社全体の着地を確認します。

受注前の見込み案件は、予実管理でどう扱えばよいですか?

確度(受注済み・内示あり・見積提出中など)を付けて、受注済みの工事とは別の行で持ちます。金額に確率を掛けず、「全部取れた場合」と「受注済みだけの場合」の幅で着地を見ると判断しやすくなります。

予実管理はExcelでできますか?

工事が十数件で、入力する人が2〜3人ならExcelで十分に回せます。1工事1行の工事一覧から、完成月ごとに合計して会社の予実を出す形にすると、入力を増やさずに工事別と会社全体の両方を管理できます。

予実管理が意味ないと言われるのはなぜですか?

実績が請求書ベースで遅れる、見込みが予算の残りで埋まる、期中に予算を書き換える、数字がそろうのが遅い、会議が読み上げで終わる、といった運用の問題が多くの原因です。予算を固定し、見込みを毎月動かして、決めたことを記録すると機能するようになります。

まとめ

  • 予実管理は、予算と実績を比べて打ち手を決める管理。建設業では「見込み」を加えた3つを比べる
  • 予実は工事別と会社全体の2段で回し、工事の一覧でつなぐ
  • 年度予算は工事の一覧(繰越・受注済み・受注見込み)から作り、月別予算は完成予定月に並べる
  • 粗利の差は、量・受注時の採算・施工中の増減の3つに分けると、打ち手がはっきりする
  • 予算は動かさず見込みを毎月動かし、日程を固定した予実会議で決めたことを記録する

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