作業員名簿は、現場に入る作業員一人ひとりの氏名・職種・社会保険・教育・資格などを記入し、元請会社に提出する書類です。施工体制台帳を作る工事では、建設業法施行規則にもとづき台帳の一部として作成することになっています。
書き方の基本は「作業員ごとに1行、会社ごとに1枚」です。記入する項目は法令で決まっており、国土交通省が作成例(Excel)を公開しています。全建統一様式では「様式第5号 作業員名簿」がこれにあたります。
この記事では、項目ごとの書き方と記入例、よくあるミス、個人情報の扱いを解説します。後半では、作業員マスタ(台帳)とExcel関数、生成AIを組み合わせて転記ミスを減らす方法を紹介します。
この記事でわかること
- 作業員名簿の役割と、法令で決まっている記載事項
- 項目ごとの書き方と記入例(保険・退職金共済・教育・資格)
- CCUSの技能者IDとの関係と、健康診断・個人情報の扱い
- Excelの作業員マスタで転記ミスを減らす方法
- 生成AIで関数づくりやチェックを楽にするプロンプト例
作業員名簿のチェック表とExcel用のAIプロンプトをまとめました。
作業員名簿とは:役割と作成のルール
作業員名簿は、誰がその現場で働くのかを元請が把握するための書類です。安全衛生の管理や、労働災害が起きたときの緊急連絡・対応にも使われます。
法令で決まっている記載事項
施工体制台帳には「建設工事に従事する者に関する事項」を記載することになっています(建設業法施行規則第14条の2第1項)。これがいわゆる作業員名簿です。令和2年の省令改正で、台帳の一部として作成することになりました。
| 法令で決まっている事項 | 作業員名簿での主な記入欄 |
|---|---|
| 氏名、生年月日及び年齢 | 氏名・ふりがな、生年月日、年齢 |
| 職種 | 職種 |
| 社会保険の加入等の状況 | 健康保険、年金保険、雇用保険 |
| 中小企業退職金共済法の被共済者であるか否か | 建設業退職金共済制度、中小企業退職金共済制度 |
| 安全衛生に関する教育の内容 | 雇入・職長・特別教育、技能講習 |
| 建設工事に関する資格 | 免許(本人が希望しない場合は記載しない) |
最後の「資格」は、作業員本人が希望しない場合は記載しなくてよいとされています(同号チ)。ただし、元請が安全管理のために資格証の写しを求めることはあります。
誰が作り、誰に出すか
作業員名簿は、各社が自社の作業員分を作ります。一次下請は二次以下の会社の名簿も集め、元請に提出するのが一般的です。国交省の作成例の注記でも「各社別に作成するのが原則」とされています。書類全体の流れはグリーンファイル(安全書類)とは、台帳の作成義務は施工体制台帳の書き方と作成義務で解説しています。再下請先がある場合は再下請負通知書もあわせて提出します。
作業員名簿の書き方:項目ごとの記入例
国土交通省の作成例をもとに、項目ごとの書き方を整理します。元請が独自の様式を指定している場合は、そちらが優先です。
ヘッダー部分
- 作成日・提出日:名簿を作った日と、元請に出す日を書きます
- 事業所の名称・現場ID:現場名を書きます。CCUSの現場IDは登録している場合に記入します
- 所長名:元請の現場所長名を書きます
- 一次会社名・(次)会社名・事業者ID:自社が何次の会社かを明記します。事業者IDはCCUSに登録している場合に記入します
作業員ごとの欄と記入例
記入例は架空の人物・会社です。※説明用の例です。
| 欄 | 書き方 | 記入例 |
|---|---|---|
| 氏名・ふりがな | 本人確認書類と同じ表記で書く | やまだ たろう/山田 太郎 |
| 技能者ID | CCUSに登録している場合のみ | (登録番号を記入) |
| 職種 | 現場で実際に行う作業を書く | 型枠大工 |
| ※欄(記号) | 現場代理人、主任技術者、職長、安全衛生責任者、作業主任者などに該当すれば記号を付ける | 職長 |
| 生年月日・年齢 | 作成日時点の満年齢を書く | 1985年4月1日/41歳 |
| 健康保険 | 保険の名称を書く(健康保険組合、協会けんぽ、建設国保、国民健康保険) | 協会けんぽ |
| 年金保険 | 厚生年金または国民年金。受給者の場合は「受給者」 | 厚生年金 |
| 雇用保険 | 被保険者番号の下4けたを書く。適用除外なら「適用除外」 | (下4けた) |
| 建退共・中退共 | それぞれ「有」「無」で書く | 建退共:有/中退共:無 |
| 雇入・職長・特別教育 | 受けた教育の内容を書く | 雇入時教育、職長教育 |
| 技能講習 | 修了した技能講習を書く | 玉掛け技能講習 |
| 免許 | 免許や、登録基幹技能者・施工管理技士などの資格を書く | 2級建築施工管理技士 |
| 入場年月日・受入教育実施年月日 | 現場に入る日と、新規入場者教育を受けた日を書く | 2026年10月5日 |
健康保険が適用除外(後期高齢者で国民健康保険の対象外など)の場合は「適用除外」と書きます。雇用保険が日雇労働被保険者の場合は「日雇保険」と書きます。いずれも国交省の作成例の注記にもとづく書き方です。
記号欄で押さえたいこと
作成例では、現場代理人・主任技術者・職長・安全衛生責任者・作業主任者などを記号で示します。18歳未満の作業員、女性作業員、外国人技能実習生、1号特定技能外国人にも記号を付けます。国交省の作成例の注記では、作業主任者は他の現場や他の作業箇所と兼務できないため、複数の選任が必要とされています。
よくある記入ミスと防ぎ方
作業員名簿で差し戻しになりやすいミスを整理しました。多くは「別の書類からの転記」で起きます。
| よくあるミス | 原因 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 年齢が古いまま | 前の現場の名簿を使い回した | 作成日を基準に関数で自動計算する |
| 資格・講習の漏れ | 資格者証を見ずに記憶で書いた | 資格者証の写しと1人ずつ突き合わせる |
| 保険の名称の誤り | 転職・加入先変更を反映していない | 年に1回、作業員に変更の有無を確認する |
| 氏名の漢字の誤り | 手入力の変換ミス | 作業員マスタから関数で呼び出す |
| 入場日と受入教育日の不一致 | 予定変更を反映していない | 入場日が変わったら名簿も更新する |
| 職長・安全衛生責任者の記号漏れ | 記号欄の見落とし | 提出前チェック表に項目を入れる |
CCUSの技能者IDとの関係
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の資格や就業履歴を登録・蓄積する仕組みです。作業員名簿の「現場ID」「事業者ID」「技能者ID」は、CCUSに登録している場合に記入する欄です。
国交省の作成例のページでは、「登録していなければ記載不要」と明記されています。同じページで、CCUSから出力される様式例も参考として案内されています。CCUSに登録済みの会社は、登録情報を名簿づくりに生かせるか確認するとよいでしょう。
| 状況 | 名簿での扱い |
|---|---|
| 事業者・技能者ともCCUS未登録 | ID欄は空欄でよい |
| 事業者は登録済み、一部の技能者が未登録 | 登録済みの人だけ技能者IDを記入 |
| 元請が現場をCCUSに登録している | 現場IDを記入し、就業履歴の蓄積方法も元請に確認 |
CCUSの登録方法や運用の手間を減らすコツは、建設キャリアアップシステム(CCUS)とはで解説しています。
健康診断・個人情報の扱い
作業員名簿は、生年月日や保険の情報など、多くの個人情報を含みます。取り扱いのルールを社内で決めておくことが大切です。
本人の同意と利用目的
国交省の作成例には、次の趣旨の文言が入っています。「記載した内容は、安全衛生管理や労働災害発生時の緊急連絡・対応のために元請に提示することについて、本人が同意している」。名簿を作る前に、作業員本人にこの目的を説明し、同意を得ておきましょう。
健康診断の情報は特に慎重に
事業者は、雇入れ時と、定期(1年以内ごとに1回)に健康診断を行うことが義務付けられています(労働安全衛生規則第43条・第44条)。国交省の作業員名簿の作成例には、健康診断の欄はありません。一方で、元請によっては健診の受診日などを独自様式や別の書類で求めることがあります。
健康診断の結果は、個人情報保護法の「要配慮個人情報」にあたります(個人情報の保護に関する法律施行令第2条)。結果の数値まで求められた場合は、提出の範囲と方法を元請に確認し、必要以上に写しを配らないようにしましょう。
保管・送付のルール例
- 名簿のファイルは、担当者だけが開ける場所に保存する
- メールで送るときは、元請が指定する方法(専用サービス、パスワード付きファイルなど)に従う
- 工事が終わった現場の名簿は、社内で決めた期間が過ぎたら処分する
- 生成AIに入力するときは、氏名・生年月日・保険番号を伏せ字にする
転記ミスを減らすExcelの仕組み:作業員マスタを作る
現場ごとに名簿を一から書くと、同じ情報を何度も転記することになります。そこで、作業員の情報を1枚の「作業員マスタ」にまとめ、名簿はそこから呼び出す形にします。
- 作業員マスタのシートを作る1行に1人。社員番号、氏名、ふりがな、生年月日、職種、健康保険、年金、雇用保険、建退共・中退共、教育、技能講習、免許、技能者IDを列にします。
- 資格の有効期限の列を足す更新が必要な資格や講習がある場合は、期限を入れておきます。期限切れの確認に使えます。
- 名簿シートは社員番号だけ入力する名簿側では社員番号を入れると、XLOOKUP関数(古い版のExcelではVLOOKUP関数)で氏名や保険が表示されるようにします。
- 年齢は関数で計算するDATEDIF関数で、生年月日と作成日から満年齢を出します。使い回しによる年齢の誤りを防げます。
- 変更はマスタだけ直す保険や資格が変わったら、マスタだけを直します。次に作る名簿には自動で反映されます。
元請の様式が決まっている場合も、マスタから様式へ値を貼り付ける運用にすると転記が減ります。Excelの自動化の考え方は建設業のExcel作業をAIで自動化でも紹介しています。
AIで楽にする方法:関数づくりと記入チェック
ChatGPTやClaudeなどの生成AIは、Excelの関数を考えるのが得意です。関数に詳しくない担当者でも、やりたいことを日本語で伝えれば式の案を出してくれます。ここで入力するのは列の構成だけで、作業員の個人情報は不要です。
コピーして使えるプロンプト
Excelで作業員名簿を作っています。関数を教えてください。 【シートの構成】 ・「マスタ」シート:A列=社員番号、B列=氏名、C列=ふりがな、D列=生年月日、E列=職種、F列=健康保険、G列=年金保険、H列=建退共(有/無) ・「名簿」シート:B列に社員番号を入力する。C列以降に氏名・ふりがな・生年月日・年齢・職種・健康保険などを表示したい ・名簿の作成日は「名簿」シートの【H2】セルに入っている 【やりたいこと】 1. 社員番号から氏名などを表示する式 2. 生年月日と作成日から満年齢を出す式 3. 社員番号が空欄のときは何も表示しない 4. マスタに社員番号がないときは「未登録」と表示する 【条件】 ・使っているExcelは【Microsoft 365】 ・式ごとに、どのセルに入れるかと意味を短く説明する
出力イメージ(例)
■ C5セル(氏名) =IF(B5="","",XLOOKUP(B5,マスタ!A:A,マスタ!B:B,"未登録")) → B5の社員番号をマスタのA列から探し、B列の氏名を表示します。 ■ F5セル(年齢) =IF(B5="","",DATEDIF(E5,$H$2,"Y")) → E5の生年月日から、H2の作成日時点の満年齢を出します。 ■ 下の行へのコピー C5~F5を選んで、必要な行数だけ下へコピーしてください。 ※AIの出力は例です。実際の列の位置に合わせて確認してください。
記入済みの名簿をAIにチェックさせる
記入後の確認にも使えます。氏名や生年月日を「作業員A」「1980年代」などに置き換えてから、次のように頼みます。
コピーして使えるプロンプト
次の作業員名簿(個人情報は伏せ字済み)を確認し、記入漏れや矛盾を指摘してください。 【確認してほしい点】 ・空欄になっている必須項目 ・入場年月日より受入教育実施年月日が後になっている行 ・職長の記号があるのに、教育欄に職長教育の記載がない行 ・健康保険・年金保険・雇用保険の書き方が統一されていない行 【名簿の内容】 【ここに表を貼り付け】 指摘は「行番号/項目/内容」の形で一覧にしてください。判断できない点は推測せず「要確認」としてください。
AIは表の中の矛盾や空欄を見つけるのに向いています。一方で、資格が本当に取得されているか、保険に実際に加入しているかは判断できません。資格者証や保険証の写しとの照合は、人が行う必要があります。情報の渡し方のルールは生成AIのセキュリティ対策を参考にしてください。
注意
作業員名簿の様式や求められる項目は、元請や発注者によって異なります。元請の指定様式と、最新の一次情報が優先です。この記事の記入例は説明用の例です。保険の加入状況や資格の有無は、必ず本人の書類で確認してください。AIで作った関数やチェック結果は、人が最終確認してから使ってください。
提出前チェックリスト
- 元請が指定する様式・提出方法を確認した
- 作成日・提出日を記入し、年齢を作成日時点で計算した
- 自社が何次の会社か、会社名・事業者IDを正しく書いた
- 健康保険・年金保険・雇用保険の書き方が注記どおりになっている
- 建退共・中退共の「有」「無」を全員分記入した
- 職長・安全衛生責任者・作業主任者などの記号を付けた
- 教育・技能講習・免許を資格者証の写しと照合した
- 名簿に載せる内容について、作業員本人の同意を得た
- 二次以下の会社の名簿も回収した
よくある質問
作業員名簿は法律で作成が義務付けられていますか?
施工体制台帳を作る工事では、建設業法施行規則にもとづき、台帳の記載事項として作業員に関する事項を記載します。台帳の作成義務がない工事でも、元請の安全管理のために提出を求められることが多くあります。
全建統一様式の作業員名簿は何号ですか?
全建統一様式では「様式第5号 作業員名簿」です。2026年9月時点で、全国建設業協会のサイトでは改訂6版が頒布されています。
CCUSに登録していないと作業員名簿は作れませんか?
作れます。国交省の作成例では、現場ID・事業者ID・技能者IDはCCUSに登録している場合に記入するもので、登録していなければ記載不要とされています。
雇用保険の欄には何を書きますか?
国交省の作成例では、被保険者番号の下4けたを書くとされています。日雇労働被保険者は「日雇保険」、事業主などで適用除外の場合は「適用除外」と書きます。
一人親方も作業員名簿に載せますか?
現場に入る人は、元請の安全管理のため名簿での把握を求められるのが一般的です。一人親方の保険の書き方や扱いは元請によって異なるため、提出前に確認してください。
作業員名簿をAIで作っても大丈夫ですか?
関数づくりや記入漏れのチェックに使えます。個人情報は伏せ字にするか、列の構成だけを伝えるようにしましょう。最終的な内容は人が確認してください。
まとめ
- 作業員名簿は施工体制台帳の一部で、記載事項は施行規則で決まっている
- 国交省の作成例と注記に沿って、保険・退職金共済・教育・資格を書く
- CCUSのID欄は登録している場合に記入する
- 個人情報、特に健康診断の結果は慎重に扱う
- 作業員マスタとExcel関数で転記を減らし、AIで関数づくりと点検を楽にする
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