工事の打合せ議事録は、録音→文字起こし→AIで要約・整形の3段階に分けると、ほぼ自動で下書きを作れます。ChatGPTやClaudeなどの生成AIに、文字起こしのテキストを渡します。そして「決定事項」「保留事項」「ToDo(誰が・いつまでに)」の形に整えてもらいます。
ただし、AIが作るのはあくまで下書きです。数量・寸法・日付・金額は、人が録音やメモと照らして確認します。また、発注者との正式な記録は、発注者が指定する書式(公共工事なら工事打合せ簿など)が優先です。
この記事では、録音の段取りから、発注者向けと社内向けの書き分け、そのまま使えるプロンプトまでを順番に解説します。
この記事でわかること
- 工事の打合せ議事録をAIで作る3段階の流れ
- 録音する前に決めておくこと(同意・守秘・保存期間)
- 発注者向けと社内向けの議事録の書き分け方
- コピーして使える議事録・ToDo作成プロンプトと出力イメージ
- AIの議事録で人が必ず確認すべきポイント
「うちの打合せ記録はどこまで自動化できる?」を30分〜1時間で整理します。
工事の打合せ議事録づくりが負担になる理由
工事の打合せは、定例会議、施主打合せ、協力会社との工程調整、発注者の監督職員との協議など、回数が多いのが特徴です。1件ごとの議事録は短くても、積み重なると現場監督の夜の事務時間を圧迫します。
負担が大きくなる3つの原因
- メモと記憶の突き合わせ:現場を歩きながらの打合せでは、手元のメモが断片的になりがちです。
- 清書と書式合わせ:社内の書式、発注者の書式、元請の書式がそれぞれ違います。
- ToDoの抜け:「あとで図面を送ります」のような小さな約束が、議事録から漏れやすくなります。
AIが得意なのは、このうち話し言葉を整理して書式に流し込む作業です。一方、「何が正式に決まったか」の判断は人の仕事として残ります。
議事録に残すべき情報
| 項目 | 書く内容 | 抜けやすい例 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 工事名、日時、場所、出席者(会社名・役職) | 途中参加・途中退席の人 |
| 決定事項 | 決まった内容と根拠(図面番号、協議書番号など) | 変更前の数値と変更後の数値の両方 |
| 保留事項 | 結論が出なかった点と、次に誰が回答するか | 回答期限 |
| ToDo | 担当者・期限・成果物 | 「図面を送る」「業者に確認する」などの口約束 |
| 次回予定 | 次回の日時・議題 | 準備物 |
AIで議事録を自動作成する全体の流れ
議事録の自動作成は、次の3段階に分けて考えると迷いません。1つのツールで全部をやろうとせず、段階ごとに役割を分けるのがコツです。
| 段階 | やること | 使うもの(例) | 人の確認 |
|---|---|---|---|
| 1. 録音 | 打合せの音声を残す | スマートフォンの録音アプリ、ICレコーダー、Web会議の録画機能 | 録音の了承、音質 |
| 2. 文字起こし | 音声をテキストにする | 文字起こし機能のあるツールやWeb会議の文字起こし機能 | 専門用語・固有名詞の誤変換 |
| 3. 要約・整形 | 議事録の書式とToDo一覧にまとめる | ChatGPT、Claudeなどの生成AI | 数値・日付・決定事項の正誤 |
文字起こしの精度は、マイクの位置と周囲の騒音で大きく変わります。現場の屋外打合せは、騒音で聞き取れない部分が出やすい点を前提にしてください。聞き取れなかった部分は、AIに推測で埋めさせないことが大切です。
手順
- 録音の了承を取る打合せの冒頭で、議事録作成のために録音することを伝えます。
- 冒頭で基本情報を読み上げる「○月○日、○○工事の定例会議です。出席は…」と声に出すと、文字起こしに基本情報が残ります。
- 決定の瞬間に復唱する「では、○○は△△で決定とします」と口に出すと、AIが決定事項を拾いやすくなります。
- 文字起こしを取り出すテキストをコピーし、固有名詞の誤変換を軽く直します。
- AIに整形を依頼する後述のプロンプトに文字起こしを貼り付けます。
- 人が確認して配布する数値・日付・担当者を録音と照合し、関係者に送ります。
録音の前に決めること|同意と守秘のルール
録音は便利ですが、相手の発言をそのまま残す行為です。トラブルを防ぐため、社内ルールを先に決めておきます。
録音の同意の取り方
- 打合せの冒頭で「議事録作成のため録音します。確認後は○日で削除します」と、目的と保存期間を伝えます。
- 発注者・施主・元請が録音を望まない場合は、録音せずにメモで対応します。
- 定例会議なら、初回に「毎回録音して議事録に使う」ことを合意しておくと、毎回の説明が短く済みます。
守秘と個人情報の扱い
打合せには、施主の氏名・住所、協力会社の単価、近隣住民の情報などが含まれることがあります。個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを生成AIに入力する場合、利用目的の範囲内かを確認することや、サービス事業者が入力データを機械学習に利用しないこと等を確認することを注意喚起しています(2023年6月2日公表)。
- AIに渡す前に、個人名は「施主A」「近隣B」のように置き換えます。
- 単価や見積金額は、議事録に必要な場合だけ残します。
- 使うAIサービスが、入力内容を学習に使うかどうかを規約と設定画面で確認します。
たとえばAnthropic社は、Claudeの個人向けプラン(Free・Pro・Max)で、会話を学習に使うかを利用者が選べる形にしました。一方で、この変更はClaude for WorkやAPIなど商用規約のサービスには適用しないと公表しています(2025年8月28日公表)。サービスごとに扱いが違うため、会社で使うサービスと設定を決めておきましょう。
社内ルールの作り方は生成AI社内ガイドラインの作り方、データを渡す際の注意点は図面や見積をAIに渡して大丈夫?で詳しく解説しています。
発注者向けと社内向けの議事録の書き分け
同じ打合せでも、読む人によって必要な情報が違います。1つの文字起こしから、2種類の議事録を作り分けるのが効率的です。
| 比較項目 | 発注者・施主向け | 社内・協力会社向け |
|---|---|---|
| 目的 | 合意内容の確認と記録 | 段取りと作業指示の共有 |
| 書式 | 発注者・元請の指定書式が優先 | 社内書式(箇条書き中心で可) |
| 文体 | です・ます調、事実のみ | 短文・体言止め可 |
| 書く内容 | 協議・決定事項、保留事項と回答者、次回予定 | ToDo、段取り、資材手配、注意点 |
| 書かない内容 | 社内の検討過程、原価、協力会社の単価 | 施主の個人的な事情など不要な個人情報 |
| 確認者 | 現場代理人・工事責任者 | 現場監督本人 |
公共工事での注意点
国土交通省の土木工事共通仕様書(案)(令和7年3月)では、監督職員の指示は書面で行うのが原則です。緊急時に口頭で指示した場合は、後日書面で両者が内容を確認するとしています。ここでいう書面は、工事打合せ簿などの工事帳票です。
つまり、公共工事ではAIで作った議事録は、工事打合せ簿を作るための下書きと位置づけるのが安全です。書式や情報共有システムの使い方は、発注者の指定・最新の仕様書が優先します。
民間工事・施主打合せでの注意点
施主打合せでは、専門用語を言い換えた議事録が喜ばれます。「巾木」「見切り」などは、括弧で説明を添えると伝わりやすくなります。仕様や金額に関わる決定は、議事録とは別に変更合意書や見積書で確認します。
AIで楽にする方法|議事録とToDoを作るプロンプト
文字起こしを貼り付けるだけで、議事録とToDo一覧を作るプロンプトです。【】の部分を差し替えて使ってください。ChatGPTでもClaudeでも使えます。
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設会社の工事事務に詳しいアシスタントです。 以下の打合せの文字起こしから、議事録を作成してください。 # 前提 ・工事名:【○○邸新築工事】 ・打合せの種類:【施主打合せ/定例会議/協力会社との工程調整】 ・読む人:【発注者・施主向け/社内向け】 # 出力形式 1. 基本情報(日時・場所・出席者) 2. 決定事項(箇条書き。数値・日付は原文どおり) 3. 保留事項(回答者と回答期限) 4. ToDo一覧(表:担当者/内容/期限/成果物) 5. 次回予定 # ルール ・文字起こしにない内容は推測で書かない ・聞き取れない部分や曖昧な部分は【要確認】と書く ・数量・寸法・金額・日付は、発言どおりに転記し、計算や補完をしない ・読む人が「発注者・施主向け」の場合は、社内の原価や単価の話を書かない ・です・ます調で、一文を短くする # 文字起こし 【ここに文字起こしを貼り付け】
入力例
以下は説明用の架空の例です。
出力イメージ(例)
【入力した文字起こしの一部(※説明用の例です)】 監督:じゃあ外壁の色は、前回のサンプルのB案で決定でいいですか。 施主:はい、B案で。 監督:あと、キッチンの位置を30センチ右にずらす件、設計に確認して来週火曜までに回答します。 設備:配管の貫通位置が変わるので、図面をもらえたら見積出し直します。 【出力イメージ(例)】 ■決定事項 ・外壁の色は、前回提示サンプルのB案とする。 ■保留事項 ・キッチン位置を30cm右へ移動する件 回答者:監督 回答期限:来週火曜日(日付は【要確認】) ■ToDo一覧 担当者|内容|期限|成果物 監督|キッチン移動の可否を設計に確認|来週火曜|回答メール 監督|変更図面を設備業者へ送付|【要確認】|変更図面 設備業者|配管変更に伴う見積の再提出|【要確認】|見積書
「来週火曜」のような相対的な日付は、AIが勝手に日付に変換すると誤りのもとになります。プロンプトで「補完しない」と指示し、人が日付を入れるのが確実です。
発注者向けに書き直すプロンプト
コピーして使えるプロンプト
次の社内向け議事録を、【発注者の監督職員/施主】向けの打合せ記録に書き直してください。 ・社内の段取り、協力会社の単価、原価の話は削除する ・決定事項と保留事項を分け、保留事項には回答者と回答期限を書く ・専門用語には( )で短い言い換えを付ける(施主向けの場合のみ) ・内容を追加しない。曖昧な点は【要確認】と書く 【ここに社内向け議事録を貼り付け】
日報のまとめ方にも同じ考え方が使えます。建設業の作業日報テンプレートと書き方や、業務別のプロンプトを集めた建設業のプロンプト集もあわせてご覧ください。
AIの議事録で人が確認すべきポイント
AIは話し言葉の整理が得意ですが、次の点は間違えることがあります。配布前に必ず人が確認してください。
- 数量・寸法・金額:「さんじゅう」と「さんびゃく」の聞き違いなど、文字起こしの段階で誤ることがあります。
- 決定と検討の区別:「〜でいいと思います」が決定なのか意見なのかは、文脈で人が判断します。
- 担当者:「こちらでやります」の「こちら」が誰かを、AIは取り違えることがあります。
- 固有名詞:会社名・製品名・地名の誤変換は、よく起きます。
- 言っていないことの追加:AIが一般論で文章を補うことがあります。原文にない文は削除します。
注意
AIで作った議事録は下書きです。最終確認と配布の判断は人が行ってください。発注者・元請の指定書式や情報共有システムがある場合は、そちらが優先します。録音データと文字起こしは、社内ルールで保存期間と保存場所を決め、不要になったら削除してください。
議事録の自動作成を仕組みにする方法
毎回プロンプトを貼るのが手間になってきたら、仕組みにする段階です。たとえば次のような流れが考えられます。
- 保存場所を決める録音ファイルと文字起こしを、工事ごとのフォルダに入れるルールにします。
- 書式を固定する社内向け・発注者向けの議事録書式を1つずつ決め、プロンプトに組み込みます。
- ToDoを一覧に集約する議事録から抜き出したToDoを、工事ごとのスプレッドシートに追記します。
- 期限前に確認する期限が近いToDoを、朝礼や週次会議で確認します。
どこまで自動化できるかは、使っているツール(Excel、Googleスプレッドシート、LINE、Gmailなど)によって変わります。日報の仕組み化は日報を自動化する方法で解説しています。
- 録音の目的と保存期間を、打合せの冒頭で伝える文言を決めた
- AIに渡す前に、個人名を記号に置き換えるルールを決めた
- 会社で使うAIサービスと、学習利用の設定を確認した
- 社内向けと発注者向けの議事録書式を1つずつ用意した
- 数量・寸法・日付・担当者を録音と照合してから配布している
- ToDoを一覧にまとめ、期限を確認する場を決めた
よくある質問
ChatGPTで議事録を作ることはできますか?
はい、文字起こしのテキストを渡せば、議事録の形に整えられます。録音から文字起こしまでは、文字起こし機能のあるツールで行うのが一般的です。数値や決定事項は人が確認してください。
打合せを録音するとき、相手の同意は必要ですか?
トラブル防止のため、目的と保存期間を伝えて了承を得てから録音することをおすすめします。相手が録音を望まない場合は、メモで対応します。社内ルールとして文言を決めておくと運用が楽になります。
現場の騒音で文字起こしがうまくいきません。
マイクを話す人の近くに置く、決定事項をはっきり復唱する、といった工夫が有効です。屋外なら、重機が止まっている時間に要点を話します。聞き取れない部分はAIに推測させず【要確認】として残します。
公共工事の工事打合せ簿もAIで作れますか?
下書きの作成には使えます。ただし、書式や提出方法は発注者の指定・最新の仕様書が優先します。AIの下書きを、指定の書式や情報共有システムに人が転記・確認して提出してください。
議事録に施主の個人情報を入れても大丈夫ですか?
AIに渡す段階では、氏名などを記号に置き換えるのが安全です。使うサービスが入力データを学習に使わないかも確認してください。最終版の議事録に必要な情報は、人が書き戻します。
まとめ
- 議事録の自動作成は「録音→文字起こし→AIで整形」の3段階で考える
- 録音は目的と保存期間を伝えて了承を得る。個人名は記号に置き換えてからAIへ
- 発注者向けは合意内容の記録、社内向けは段取りとToDoの共有と、書き分ける
- 公共工事ではAIの議事録を工事打合せ簿の下書きとして使い、指定書式を優先する
- 数量・日付・担当者・決定事項は、配布前に必ず人が確認する
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