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裁量労働制でも残業代は出る?発生するケースと計算方法を詳しく解説

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「裁量労働制だから残業代は出ない」と会社に言われたけれど、本当にそうなのか不安に感じていませんか。結論からお伝えすると、裁量労働制でも一定の条件下では残業代が発生します。

この記事では、残業代が発生するケースと具体的な計算方法、そして労働者が知っておくべき請求の手順まで、実務に即して解説します。

裁量労働制の運用や残業代の取り扱いにお悩みの人事ご担当者さまは、ヨビコムにご相談ください。

目次 隠す

裁量労働制と残業代の基本的な関係

裁量労働制と残業代の基本的な関係

裁量労働制とは何か

裁量労働制とは、業務の遂行手段や時間配分を労働者の裁量に委ね、実際の労働時間にかかわらず「あらかじめ定めた時間(みなし労働時間)を働いたものとみなす」制度です。

労働基準法第38条の3・第38条の4に根拠を持ち、厚生労働省が定めた特定の業務にのみ適用が認められています。

裁量労働制には、以下の2種類があります。

種類対象業務導入手続き
専門業務型裁量労働制厚労省が定める19業種(研究開発、SE、弁護士、税理士、記者、建築士など)労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届出
企画業務型裁量労働制本社等における経営企画・商品企画・マーケティング等の企画・立案・調査・分析業務労使委員会を設置し5分の4以上の多数決による決議後、労基署へ届出

どちらの類型も、対象業務・手続き・対象労働者の範囲が厳格に定められており、「残業代を払いたくないから」という理由で任意に適用できる制度ではありません。

「残業代ゼロ」は誤解——原則と例外を整理する

裁量労働制の原則は「みなし労働時間の範囲内であれば、実際の労働時間が何時間であっても追加の残業代は発生しない」というものです。

たとえばみなし労働時間が8時間に設定されている場合、実際に10時間働いても、6時間しか働かなくても、給与は8時間分として計算されます。

ただし、この「残業代ゼロ」はあくまで原則であり、以下の条件に該当する場合は残業代(割増賃金)の支払い義務が生じます。

  • みなし労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて設定されている場合
  • 深夜時間帯(22時〜翌5時)に労働した場合
  • 法定休日または法定外休日に労働した場合

裁量労働制=残業代ゼロ」という誤解は、企業側・労働者側の双方に根強く残っています。

厚生労働省の「裁量労働制実態調査(2023年)」によれば、裁量労働制適用事業場の約3割で何らかの割増賃金の支払いが生じていることが確認されています。制度の正確な理解が、トラブル防止の第一歩です。

みなし残業制(固定残業代)との違いを混同しない

裁量労働制と混同されやすいのが「みなし残業制(固定残業代制)」です。両者はまったく異なる制度であるため、求人票や雇用契約書を確認する際には注意が必要です。

比較項目裁量労働制みなし残業制(固定残業代)
適用対象厚労省指定の特定業務のみ業種・職種を問わず導入可能
みなしの範囲労働時間全体残業時間のみ
超過分の扱い深夜・休日は別途支払い固定時間を超えた分は別途支払い
時間管理の主体労働者の裁量会社が残業時間を設定

みなし残業制は「月30時間分の残業代を給与に含む」といった形で運用される制度であり、固定時間を超えた残業については追加支払いが義務づけられています。

一方、裁量労働制は残業時間の概念そのものが異なるため、両者を混同すると未払い残業代のリスクが生じます。

裁量労働制で残業代が発生する3つのケース

裁量労働制で残業代が発生する3つのケース

ケース①:みなし労働時間が法定労働時間(8時間)を超える場合

労働基準法が定める法定労働時間は、1日8時間・週40時間です。裁量労働制においてみなし労働時間を9時間に設定した場合、法定労働時間を1時間超過しているため、その1時間分に対して時間外割増賃金(25%以上)の支払いが必要となります。

具体例:

みなし労働時間を9時間に設定し、月の所定労働日数が20日の場合、毎月20時間分(1時間×20日)の時間外割増賃金が発生します。これを「最初から残業代込みの給与設計」として処理するためには、給与規程への明記と適切な計算が不可欠です。

なお、みなし労働時間を8時間以内に設定していても、実態として常態的に長時間労働が発生している場合は、後述する「違法な裁量労働制」として問題になるケースがあります。

ケース②:深夜労働(22時〜翌5時)が発生した場合

裁量労働制を導入していても、深夜時間帯(22時〜翌5時)の労働に対しては、25%以上の深夜割増賃金を支払う義務があります。これは労働基準法第37条第4項に基づく強行規定であり、裁量労働制の有無にかかわらず適用されます。

深夜労働と時間外労働が重なった場合(たとえばみなし労働時間9時間で深夜まで作業した場合)は、時間外割増(25%)と深夜割増(25%)が合算され、50%以上の割増賃金が必要となります。

ケース③:法定休日・法定外休日に労働した場合

法定休日(週1日以上の休日)に労働した場合は、35%以上の休日割増賃金が発生します。法定外休日(会社が任意に設定した休日)に労働した場合は、その日の労働時間が週40時間を超えるかどうかによって時間外割増賃金の対象となります。

裁量労働制では「いつ働いても自由」というイメージがありますが、休日の定義と割増賃金の適用ルールは通常の労働者と同様です。就業規則や労使協定で「法定休日はいつか」を明確にしておくことが、企業側・労働者側の双方にとって重要です。

裁量労働制の残業代 計算方法と具体例

裁量労働制の残業代 計算方法と具体例

割増賃金の基本計算式

割増賃金の計算には、まず「1時間あたりの基礎賃金」を算出する必要があります。

1時間あたりの基礎賃金 = 月給 ÷ 月の所定労働時間数割増賃金 = 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率 × 該当時間数

割増率は以下のとおりです。

労働の種類割増率
時間外労働(月60時間以内)25%以上
時間外労働(月60時間超)50%以上
深夜労働(22時〜翌5時)25%以上
法定休日労働35%以上
時間外+深夜が重なる場合50%以上
法定休日+深夜が重なる場合60%以上

計算例:月給30万円・みなし労働時間9時間の場合

月給30万円、月の所定労働時間160時間(8時間×20日)の場合を例に計算します。

1時間あたりの基礎賃金:

300,000円 ÷ 160時間 = 1,875円

みなし労働時間9時間(法定8時間超の1時間分)の時間外割増賃金:

1,875円 × 1.25 × 1時間 × 20日 = 46,875円/月

深夜労働が月10時間発生した場合の深夜割増賃金:

1,875円 × 0.25 × 10時間 = 4,688円/月

このように、みなし労働時間の設定と深夜・休日労働の実態によって、月々の割増賃金は大きく変わります。給与計算担当者は、みなし労働時間の設定内容と実際の勤務記録を照合する習慣を持つことが重要です。

月60時間超の時間外労働は割増率が上がる

2023年4月から、中小企業にも「月60時間超の時間外労働に対する割増率50%以上」のルールが適用されています。裁量労働制においても、みなし労働時間が法定労働時間を超える設定で月60時間を超えた場合は、50%以上の割増賃金が必要です。この点は見落とされやすいため、給与計算の際に必ず確認してください。

残業代を請求できるケース——労働者が知っておくべきこと

残業代を請求できるケース——労働者が知っておくべきこと

裁量労働制が違法になる場合

裁量労働制は、以下のような状況では違法または無効と判断される可能性があります。

  • 厚労省が定める対象業務以外の職種に適用している
  • 労使協定の締結・届出がなされていない、または内容が不備
  • 実態として業務の手段・時間配分を会社が指示・管理している
  • みなし労働時間と実際の労働時間の乖離が著しく大きい
  • 労働者の個別同意(企画業務型の場合)が取得されていない

裁量労働制が無効と判断された場合、実際の労働時間に基づいた残業代の遡及請求が認められるケースがあります。過去2年分(2020年4月以降は3年分)の未払い残業代を請求できる可能性があるため、心当たりのある方は専門家への相談を検討してください。

未払い残業代を請求する方法

未払い残業代を請求する場合、以下のステップで進めるのが一般的です。

  1. 証拠を収集する
    タイムカード、PCのログイン・ログオフ記録、メールの送受信時刻、業務日報などを保存する
  2. 金額を計算する
    実際の労働時間と支払われた賃金を照合し、未払い額を算出する
  3. 会社に請求する
    内容証明郵便で会社に支払いを求める
  4. 労働基準監督署に申告する
    会社が応じない場合、所轄の労働基準監督署に申告する
  5. 労働審判・訴訟を検討する
    解決しない場合は裁判所での手続きを検討する

なお、残業代請求の時効は3年(2020年4月以降の分)です。心当たりがある場合は早めに行動することが重要です。

【チェックリスト】あなたの職場の裁量労働制は適法か?

以下の項目を確認してください。1つでも「いいえ」に該当する場合、裁量労働制の適用が違法または不適切な可能性があります。

チェック項目はいいいえ
自分の業務が厚労省指定の対象業務に該当している要確認
労使協定(または労使委員会決議)が締結・届出されている要確認
みなし労働時間が就業規則・雇用契約書に明記されている要確認
業務の進め方・時間配分を自分の裁量で決められている要確認
深夜・休日労働には別途割増賃金が支払われている要確認
健康・福祉確保措置(面談等)が実施されている要確認

みなし労働時間の設定や勤怠管理の運用整備をお手伝いしています。

人事・経営者が知っておくべき運用上の注意点

人事・経営者が知っておくべき運用上の注意点

労使協定・届出の義務を守る

裁量労働制を導入・継続するには、専門業務型・企画業務型ともに所定の手続きが法令で義務づけられています。協定や決議には有効期限があり、更新を怠ると制度が「不適用」と判断されるリスクがあります。

特に2024年4月の法改正以降、専門業務型裁量労働制においても「対象労働者の同意」と「同意の撤回手続き」が新たに義務化されました。既存の協定を見直し、対象労働者ごとに個別同意を取得・管理する体制を整えることが急務です。

労働時間管理と健康確保措置

裁量労働制は「労働時間の管理が不要」という誤解がありますが、実態は逆です。使用者は裁量労働制適用者の労働時間の状況を把握し、健康・福祉確保措置(定期的な面談、医師による面接指導など)を実施する義務を負います。

長時間労働が常態化している場合、裁量労働制の適法性そのものが問われるだけでなく、労働者の健康被害・過労死リスクにもつながります。勤怠管理システムを活用して実態を可視化し、月次で労働時間を確認する運用フローを構築することを推奨します。

36協定・時間外労働上限規制との関係

裁量労働制は「時間外労働の上限規制の適用外」と誤解されることがありますが、これは誤りです。2019年の働き方改革関連法施行以降、裁量労働制にも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されています。

みなし労働時間が法定労働時間を超える設定をしている場合、その超過分が時間外労働としてカウントされるため、36協定の締結・届出が必要です。みなし労働時間の設定と36協定の内容が整合しているか、定期的に確認することが重要です。

自社の労務体制の整備でお悩みの人事・経営者の方へ

裁量労働制の適正な導入・運用には、労使協定の作成から届出管理、健康確保措置の設計まで、専門的な知識が必要です。リソース・ノウハウが不足している中小企業・ベンチャー企業には、労務のプロフェッショナルによるサポートが有効です。まずはお気軽にご相談ください。

求人票での労働条件の示し方は、応募数とミスマッチの両方に影響します。

求職者・転職者向け:裁量労働制の求人を見るときのポイント

求職者・転職者向け:裁量労働制の求人を見るときのポイント

採用市場では「裁量労働制」を前面に出した求人が多く見られますが、制度の実態は企業によって大きく異なります。求職者・転職者が求人票や面接で確認すべきポイントを以下に整理します。

確認ポイント確認方法
みなし労働時間は何時間か求人票・雇用契約書で確認
深夜・休日労働の割増賃金は支払われるか面接で直接確認
実際の平均労働時間はどのくらいか面接・口コミサイトで確認
健康確保措置(面談等)は実施されているか面接で確認
労使協定・届出は適切に行われているか入社前に確認を求めることも可能

「裁量労働制=自由に働ける」というイメージは必ずしも正確ではありません。実態として長時間労働が常態化している職場では、裁量労働制が「残業代を払わないための手段」として悪用されているケースもあります。入社前に制度の実態を確認することが、ミスマッチ防止と自身の権利保護につながります。

よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

Q1. 裁量労働制でも有給休暇は取れますか?

はい、取れます。裁量労働制は労働時間の算定方法に関する制度であり、有給休暇の付与・取得ルールとは別の話です。年次有給休暇は労働基準法第39条に基づいて付与されるものであり、裁量労働制の適用有無にかかわらず、要件を満たした労働者は取得できます。

Q2. みなし労働時間は何時間に設定するのが一般的ですか?

多くの企業では、法定労働時間と同じ「1日8時間」に設定しています。8時間以内に設定すれば時間外割増賃金は発生しませんが、実態の労働時間と大きく乖離している場合は問題になります。実務上は「実際の業務量に見合った時間」を設定することが重要です。

Q3. 裁量労働制を適用できる職種はどれですか?

専門業務型では、研究開発、情報処理システムの分析・設計(SE)、取材・編集記者、弁護士・税理士・公認会計士などの士業、建築士、インテリアコーディネーター、プロデューサー・ディレクターなど19業種が対象です。企画業務型では、本社等における経営企画・商品企画・マーケティング等の企画・立案・調査・分析業務が対象となります。詳細は厚生労働省の公式ページをご確認ください。

Q4. 残業代が未払いの場合、どこに相談すればいいですか?

まずは所轄の労働基準監督署に相談することをおすすめします。無料で相談でき、必要に応じて会社への調査・是正勧告を行います。また、弁護士や社会保険労務士への相談も有効です。未払い残業代の請求には時効(3年)があるため、早めの行動が重要です。

Q5. 裁量労働制とフレックスタイム制の違いは何ですか?

フレックスタイム制は、一定期間の総労働時間を定めたうえで、始業・終業時刻を労働者が自由に決められる制度です。実際の労働時間が総労働時間を超えれば残業代が発生します。一方、裁量労働制は実際の労働時間にかかわらずみなし時間で賃金を計算する点が根本的に異なります。また、フレックスタイム制はすべての業種・職種に適用できますが、裁量労働制は対象業務が限定されています。

まとめ

まとめ

裁量労働制は「残業代ゼロ」ではありません。みなし労働時間が法定労働時間を超える設定・深夜労働・休日労働が発生した場合には、通常の労働者と同様に割増賃金の支払いが義務づけられています。

企業側にとっては、労使協定の適正な締結・届出管理、労働時間の実態把握、健康確保措置の実施が不可欠です。特に2024年の法改正以降は対象労働者の個別同意取得も義務化されており、既存の運用を見直す機会として捉えることが重要です。

労働者側にとっては、自分の職場の裁量労働制が適法かどうかをチェックリストで確認し、不当な適用が疑われる場合は証拠を保全したうえで労働基準監督署や専門家に相談することをおすすめします。

裁量労働制の適正な運用は、企業の信頼性向上と優秀な人材の定着につながります。制度の正確な理解と適切な運用体制の整備が、健全な職場環境の基盤となります。

ヨビコムでは、採用から入退社手続き・労務まわりの実務までご支援しています。

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