採用に関するお役立ち情報

採用カスタマージャーニーとは?作り方6ステップと活用のコツを解説

採用カスタマージャーニーの作り方6ステップと活用のコツを解説する記事のサムネイル画像

採用市場で候補者に選ばれる企業になるには、求職者の視点で採用プロセスを設計することが欠かせません。採用カスタマージャーニーは、候補者が企業と出会い入社するまでの体験を可視化し、途中離脱や辞退を防ぐための手法です。本記事では、基本の考え方から作り方の6ステップ、テンプレートや注意点までをわかりやすく解説します。

採用の体験設計でお困りのご担当者様は、ヨビコムにご相談ください。

目次 隠す

採用カスタマージャーニーとは?基本の考え方

基本の考え方

採用カスタマージャーニーとは、求職者が自社を認知してから応募・選考を経て入社し、定着するまでの一連の体験を「旅(ジャーニー)」に見立てて可視化する手法です。マーケティングで使われるカスタマージャーニーの考え方を、採用領域に応用したものと捉えられます。

候補者を「顧客」、自社を「選ばれる商品・サービス」と見立てることで、各段階で候補者が何を感じ、何を求めているのかを整理できます。この整理を通じて、感覚に頼りがちだった採用活動を、再現性のある仕組みへと近づけられます。

カスタマージャーニーを採用に応用する意味

従来の採用活動は、求人を出して応募を待ち、選考して内定を出すという「企業側の都合」で設計されがちでした。しかし候補者は、求人サイトやSNS、口コミサイト、社員の発信など、複数の接点を行き来しながら応募先を選んでいます。

採用カスタマージャーニーは、こうした候補者の複雑な行動を候補者目線で捉え直すための地図の役割を果たします。どの段階で興味が高まり、どの段階で不安を感じて離脱するのかが見えるようになるため、打ち手の優先順位を判断しやすくなります。

特に、複数の担当者が関わる採用では、候補者体験の全体像を共有できる点が大きな価値になると考えられます。

なぜいま採用で注目されているのか

背景にあるのは、人材獲得競争の継続です。厚生労働省の発表によると、令和7年度平均の有効求人倍率は1.20倍で、求人数が求職者数を上回る状態が続いています。

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について」

求職者が複数の企業を比較して選べる環境では、待遇や知名度だけでなく「応募から入社までの体験の質」が意思決定を左右する傾向があります。そのため、候補者体験を設計する採用カスタマージャーニーへの関心が高まっていると考えられます。

採用ファネルとの違い

採用カスタマージャーニーと混同されやすいのが「採用ファネル」です。両者は近い概念ですが、着目する視点が異なります。

採用ファネルは、母集団から内定に至るまでの人数の絞り込みを企業側の視点で捉えるものです。一方、採用カスタマージャーニーは、各段階での候補者の心理や感情の動きを候補者側の視点で捉える点に特徴があります。

両者は対立するものではなく、補完関係にあります。ファネルで「どこで人数が減っているか」を把握し、ジャーニーで「なぜ減っているのか」を読み解くと、より精度の高い改善につながります。

観点採用ファネル採用カスタマージャーニー
主な視点企業側(人数の変化)候補者側(心理・行動)
可視化するもの各段階の通過人数・歩留まり各段階の感情・接点・課題
得意なことボトルネックの発見離脱の原因把握と体験改善

採用カスタマージャーニーの5つのフェーズ

5つのフェーズ

採用カスタマージャーニーは、候補者の状態に応じて複数のフェーズに分けて考えます。ここでは代表的な5フェーズを紹介します。自社の採用手法に合わせて、フェーズの数や名称は柔軟に調整して問題ありません。

フェーズ候補者の心理主な接点(例)企業の打ち手(例)
①認知この会社を知る・気になる求人サイト・SNS・広告・口コミ露出強化・発信の一貫性
②興味・情報収集自分に合うか調べたい採用サイト・社員インタビュー仕事内容やカルチャーの具体化
③応募・比較検討他社と比べて決めたい説明会・カジュアル面談強みの言語化・応募のしやすさ
④選考・内定選ばれるか不安・迷い面接・内定通知・フォロー面談迅速な対応・丁寧な情報提供
⑤入社・定着活躍できるか不安内定者フォロー・オンボーディング期待値調整・受け入れ体制の整備

①認知フェーズ

候補者が自社の存在を初めて知る段階です。求人サイトの掲載や広告、SNS投稿、知人からの口コミなど、幅広い接点が入り口になります。

この段階では「知ってもらう」だけでなく、どの接点でも一貫した印象を届けることが重要です。媒体ごとにメッセージがばらついていると、候補者の記憶に残りにくくなる傾向があります。まずは自社を知るきっかけとなる接点を洗い出すところから始めるとよいでしょう。

②興味・情報収集フェーズ

「気になる会社」から「応募を検討する会社」へと候補者の関心が深まる段階です。候補者は採用サイトや社員インタビュー、SNSなどを通じて、仕事内容や働く環境を具体的に調べます。

ここで抽象的な魅力しか伝えられないと、候補者は判断材料を得られずに離脱しやすくなります。一日の仕事の流れやキャリアパス、社員の生の声など、応募後の姿をイメージできる情報を用意することが効果的だと考えられます。

③応募・比較検討フェーズ

候補者が複数社を比較し、応募するかどうかを決める段階です。この段階では、自社ならではの強みが他社と比べて明確に伝わっているかが問われます。

また、応募フォームが煩雑だったり、問い合わせへの反応が遅かったりすると、意欲が高い候補者ほど他社に流れてしまうことがあります。カジュアル面談など、応募のハードルを下げる接点を用意すると、比較検討の土俵に乗りやすくなります。

④選考・内定フェーズ

面接や内定通知を通じて、候補者との相互理解を深める段階です。候補者は「選ばれるか」という不安と、「本当にこの会社でよいか」という迷いの両方を抱えています。

選考のスピードや連絡の丁寧さは、候補者の志望度に影響を与える要素です。面接での対話や内定後のフォロー面談を通じて不安を解消することが、辞退の抑制につながると考えられます。

⑤入社・定着フェーズ

採用カスタマージャーニーは、内定や入社で終わりではありません。入社後に候補者が活躍し、定着するまでを含めて設計することが重要です。

入社前に伝えた情報と実際の職場環境にギャップがあると、早期離職につながりやすくなります。選考段階でリアルな業務内容を伝え、入社後はオンボーディングで受け入れ体制を整えることで、定着率の向上が期待できます。

候補者の実際の行動を拾うには、既存社員へのヒアリングから始めると精度が上がります。

採用カスタマージャーニーマップの作り方【6ステップ】

【6ステップ】

ここからは、実際に採用カスタマージャーニーマップを作成する手順を6つのステップで解説します。最初から完璧を目指す必要はなく、大枠を作って運用しながら精度を高めていく進め方が現実的です。

STEP1|ゴールとKPIを決める

最初に、採用活動で達成したいゴールと、その進捗を測るKPIを設定します。「エンジニアを3名採用する」といった人数目標だけでなく、「事業拡大を担える人材を確保する」といった事業目標と紐づけると、施策の方向性が定まりやすくなります。

あわせて、応募数・選考通過率・内定承諾率・入社後定着率など、フェーズごとに測定できる指標を決めておくことが重要です。KPIが曖昧なままだと、後の効果検証で改善点を特定しにくくなります。

STEP2|採用ペルソナを設計する

次に、採用したい理想の人材像=ペルソナを具体的に設定します。年齢や職歴、スキルだけでなく、価値観や仕事で重視すること、情報収集に使う媒体まで描くと、後のマップ設計がぶれにくくなります。

ペルソナが抽象的だと、施策全体が的外れになりやすい点に注意が必要です。実際に自社で活躍している社員へのヒアリングを行うと、現場感のあるリアルなペルソナを描きやすくなります。

STEP3|タッチポイントを洗い出す

ペルソナが自社と接触しうる接点(タッチポイント)を、フェーズごとに洗い出します。求人サイト、SNS、採用サイト、口コミサイト、説明会、面接など、オンライン・オフラインを問わず書き出しましょう。

接点を並べることで、候補者がどの経路で自社にたどり着き、どこで詳しい情報を得ているのかが見えてきます。接点の抜け漏れは、そのまま候補者を取りこぼす原因になりやすいため、ペルソナ目線で丁寧に確認することが大切です。

STEP4|各フェーズの感情・課題を書き出す

洗い出した接点をもとに、各フェーズで候補者がどのような感情を抱き、どこにつまずくのかを書き出します。「魅力的な情報が見つからない」「面接の連絡が遅くて不安」など、具体的な言葉で記述するのがポイントです。

感情の起伏を可視化すると、候補者がどの段階で離脱しやすいのかという仮説を立てやすくなります。この段階では、企業の理想ではなく、候補者のリアルな状態を想像することを優先しましょう。

STEP5|課題ごとの打ち手を検討する

書き出した課題に対して、具体的な打ち手を検討します。たとえば応募数が伸びない場合は求人票の訴求内容を見直す、内定辞退が多い場合は内定後フォローを手厚くするなど、課題とセットで施策を考えます。

すべての課題に一度に対応するのは現実的ではありません。影響の大きさと実現のしやすさで優先順位をつけ、効果が見込める施策から着手することをおすすめします。

STEP6|運用してブラッシュアップする

マップは一度作って終わりではなく、運用しながら育てていくものです。施策を実行したらKPIと照らし合わせ、うまくいった点と課題が残る点を振り返ります。

採用市場や候補者の行動は変化するため、定期的な見直しが欠かせません。候補者アンケートや面接後のフィードバックを取り入れると、仮説だったマップが実態に即した精度の高いものへと更新されていきます。

【テンプレート】採用カスタマージャーニーマップの記入例

例

作り方のイメージをつかみやすいよう、記入例を紹介します。ここでは「若手のWebマーケティング人材を採用したい中小企業」を想定したペルソナで作成しています。自社の状況に合わせて、項目や表現を調整してご活用ください。

項目認知興味・情報収集応募・比較検討選考・内定入社・定着
候補者の行動SNSで投稿を見る採用サイトを読む他社と条件を比べる面接を受ける業務を覚える
候補者の感情面白そうな会社だ自分に合うか知りたいどこが一番よいか迷う受かるか不安馴染めるか不安
接点SNS・求人サイト採用サイト・社員の声カジュアル面談面接・内定連絡研修・メンター
課題認知が広がらない仕事像が伝わらない強みが埋もれる連絡が遅い入社後のギャップ
打ち手発信頻度を上げる1日の流れを記事化面談で魅力を伝える選考スピード改善受け入れ体制を整備

このように「行動・感情・接点・課題・打ち手」を段階ごとに並べると、候補者体験の全体像と改善点が一目で把握できます。まずは埋められる範囲で書き出し、運用しながら細部を詰めていくのがおすすめです。

採用カスタマージャーニーを活用するメリット

メリット

採用カスタマージャーニーを取り入れることで、採用活動にどのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは主なメリットを3つ紹介します。

候補者体験の向上で辞退を防げる

各フェーズの感情や不安を把握できるため、候補者がつまずきやすいポイントに先回りして対応できます。連絡のスピードや情報提供の丁寧さといった体験の質を高めることで、選考途中の離脱や内定辞退を抑えやすくなります。

候補者にとって納得感のある体験を提供できれば、入社後のエンゲージメントの高まりも期待できます。

採用チーム内の目線を揃えられる

複数の担当者が関わる採用では、人によって判断基準や優先順位が異なり、対応にばらつきが生じることがあります。マップを共通の土台として使うと、「誰に・どの目的で・どう接するか」をチーム全体で共有できます。

共通言語ができることで、面接官による評価のぶれや、候補者への案内の食い違いを減らしやすくなります。

施策の費用対効果を見極めやすくなる

フェーズごとに接点と施策を整理すると、どの施策がどの段階に効いているのかを把握しやすくなります。効果の薄い施策を見直し、成果につながる接点にリソースを集中させる判断がしやすくなります。

結果として、限られた採用予算のなかで無駄を減らし、費用対効果を高めていくことにつながります。

作って終わりにせず施策へ落とし込む進め方についてもご相談いただけます。

採用カスタマージャーニーでよくある失敗と注意点

失敗と注意点

採用カスタマージャーニーは有効な手法ですが、進め方を誤ると効果が出にくくなります。採用支援の現場でよく見られる失敗パターンを3つ紹介します。

企業目線でマップを作ってしまう

もっとも起こりやすいのが、候補者ではなく企業の理想を書き込んでしまうケースです。「こう感じてほしい」という願望を並べると、実際の候補者行動とかけ離れたマップになりがちです。

マップは、あくまで候補者が実際に何を感じ、何に困るのかという事実ベースで組み立てることが大切です。社員へのヒアリングや候補者アンケートで、思い込みを検証するとよいでしょう。

作って満足し、運用されない

時間をかけてマップを完成させたものの、そのまま更新されずに形骸化してしまうパターンも少なくありません。マップは運用してこそ価値が生まれます。

定例で振り返る場を設けるなど、マップを日々の採用活動に組み込む仕組みをつくることが重要です。作成をゴールにせず、改善のサイクルを回す前提で取り組みましょう。

フェーズを細分化しすぎる

精緻に作ろうとするあまり、フェーズや項目を細かく分けすぎると、かえって全体像が見えにくくなります。運用の手間も増え、続かなくなる原因になります。

はじめは大枠のフェーズで作り、必要に応じて分解していくほうが、無理なく運用しやすい傾向があります。

【チェックリスト】作成前に確認したいポイント

checklist

マップ作成に着手する前に、以下の項目を確認しておくと、手戻りを減らしやすくなります。自社の準備状況のセルフチェックにご活用ください。

  • 採用のゴールと、測定できるKPIが決まっているか
  • ペルソナが具体的で、現場の実態に沿っているか
  • 候補者との接点を、フェーズごとに洗い出せているか
  • 各フェーズの感情や課題を、候補者目線で書き出せているか
  • 課題に対する打ち手に、優先順位をつけられているか
  • 作成後に定期的に見直す運用体制が想定できているか

すべてが完璧に整っていなくても問題ありません。埋められない項目は、運用しながら補っていく前提で進めましょう。

採用カスタマージャーニーに関するよくある質問(FAQ)

FAQ

Q1. 採用カスタマージャーニーと採用ファネルの違いは何ですか?

採用ファネルは母集団から内定までの人数の絞り込みを企業視点で捉えるもので、採用カスタマージャーニーは各段階の候補者の心理や行動を候補者視点で捉えるものです。ファネルで課題箇所を発見し、ジャーニーでその原因を読み解くと、両者を補完的に活用できます。

Q2. 中小企業でも取り入れられますか?

企業規模を問わず取り入れられます。むしろ知名度で大手に劣りやすい中小企業ほど、候補者体験の質で差をつける余地が大きいと考えられます。まずは主要な接点だけの簡易なマップから始めても効果は期待できます。

Q3. 新卒採用と中途採用でマップは変えるべきですか?

変えることをおすすめします。新卒と中途では情報収集の方法や意思決定の基準が異なる傾向があるためです。ペルソナごとに接点や感情が変わるため、採用区分や職種ごとにマップを用意すると精度が高まります。

Q4. マップはどのくらいの頻度で見直すべきですか?

明確な決まりはありませんが、採用シーズンの区切りや、応募数・辞退率などのKPIに変化が出たタイミングでの見直しが目安になります。市場や候補者の動きに合わせて、柔軟に更新していくことが大切です。

Q5. 作成にはどんなツールを使えばよいですか?

特別なツールは必須ではありません。表計算ソフトやホワイトボード、オンラインの共同編集ツールなど、チームで共有・更新しやすいものであれば十分です。まずは使い慣れたツールで着手することをおすすめします。

まとめ

サマリー

採用カスタマージャーニーは、候補者が自社と出会い入社・定着するまでの体験を可視化し、候補者目線で採用活動を設計するための手法です。認知から定着までのフェーズごとに感情や課題を整理することで、離脱や辞退の防止、チーム内の目線合わせ、施策の費用対効果の向上といった効果が期待できます。

作成の際は、企業目線に偏らず、運用しながら育てる姿勢が重要です。本記事で紹介した6ステップやテンプレート、チェックリストを参考に、まずは大枠のマップづくりから始めてみてはいかがでしょうか。

採用の体験設計から施策の実行まで、ヨビコムが伴走してご支援します。

ヨビコム
この記事の執筆・編集:ヨビコム編集部(株式会社Digital&)

中小企業・地方企業の採用代行(RPO)を行うヨビコムの編集部です。飲食・建設・不動産・製造業・介護などの採用支援で得た知見をもとに、採用担当者の実務に役立つ情報をお届けしています。

新着記事