工程表とは、工事の作業の順番と期間を、日付の軸に並べて見える形にした書類です。「いつ・どの作業を・どれくらいの期間で行うか」を、発注者・元請・協力会社で共有するために使います。
建設工事で使う工程表は、主にバーチャート(横線式)、ガントチャート、ネットワーク式、曲線式(出来高曲線)、斜線式の5種類です。中小規模の工事ではバーチャートが基本です。工種が多く、作業同士の関係が複雑な工事ではネットワーク式を使います。
この記事では、各種類の違いを比較表で整理します。そのうえで、バーチャート工程表の書き方の手順と、生成AIで工程のたたき台を作る方法を紹介します。Excelでの具体的な作り方は工程表テンプレート(Excel)の作り方で詳しく解説しています。
この記事でわかること
- 工程表の役割と、公共工事で求められる提出の根拠
- バーチャート・ガントチャート・ネットワーク・曲線式・斜線式の違い
- 工事に合った工程表の選び方
- バーチャート工程表の書き方(6ステップ)
- 生成AIで工程表のたたき台を作るプロンプトと注意点
工程表・日報・施工計画書など、建設書類の下書きに使えるAIテンプレートをまとめました。
工程表とは?建設工事での役割
工程表は、工事全体の段取りを1枚で示す「計画書」です。同時に、進み具合を確かめる「管理表」でもあります。
工程表の3つの役割
- 段取りの共有:協力会社の入場日、資材の搬入日、重機の手配日を決める土台になります。
- 進捗の確認:予定と実績を並べることで、遅れに早く気づけます。
- 説明の資料:発注者や近隣への説明、工程会議での調整に使います。
公共工事では工程表の提出が求められる
国の公共工事で使われる「公共工事標準請負契約約款」の第3条では、受注者が請負代金内訳書と工程表を作成し、発注者に提出することが定められています。同じ条文で、内訳書と工程表は発注者と受注者を拘束するものではない、とされています。
国土交通省の「土木工事共通仕様書(案)」も同様です。受注者は契約書第3条の工程表を作成し、監督職員を経由して発注者に提出すると定めています。また、施工計画書の記載事項として「計画工程表」が挙げられています。
建築工事では「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)」の1.2.1で、工事の着手に先立ち実施工程表を作成し、監督職員の承諾を受けることとされています。監督職員の指示があれば、週間工程表・月間工程表・工種別工程表も作ります。
民間工事では、提出の要否や様式は契約ごとに異なります。ただし、協力会社との段取りに工程表が欠かせない点は同じです。
工程表の主な種類(期間別)
| 種類 | 対象期間 | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 全体工程表(実施工程表・計画工程表) | 着工から竣工まで | 契約時の提出、全体の段取り、協力会社への周知 |
| 月間工程表 | 1か月 | 翌月の予定と出来高の確認、月例の打合せ |
| 週間工程表 | 1週間 | 作業員・重機・搬入の手配、週次の工程打合せ |
| 工種別工程表(部分工程表) | 特定工種の期間 | 重点管理が必要な工種の細かい管理 |
呼び方は発注者や会社で異なります。発注者の指定や特記仕様書がある場合は、そちらに従ってください。
工程表の種類と違い|バーチャート・ガントチャート・ネットワーク・曲線式
工程表は「書き方の形式」でも分かれます。九州地方整備局の「土木工事施工管理の手引き」に、使い分けの考え方があります。組合せ工種が多い工事はネットワーク(PERT-CPM)で作成します。単純な工事は横棒式工程表(バーチャート)や斜線式工程表で作成するとしています。曲線式工程表は、これらと併用することが多いとされています。
| 種類 | 見た目 | わかること | 苦手なこと | 向く工事 |
|---|---|---|---|---|
| バーチャート(横線式) | 縦に作業、横に日付。期間を横棒で塗る | 各作業の開始日・終了日・期間 | 作業同士の関係、遅れの波及 | 中小規模の建築・土木、改修工事 |
| ガントチャート | 縦に作業、横に達成率(%) | 各作業の進み具合 | 日数、作業の順番、工期 | 進捗の報告用(単独では使いにくい) |
| ネットワーク式(PERT・CPM) | 丸と矢印で作業のつながりを描く | 作業の前後関係、クリティカルパス、余裕日数 | 作成に手間がかかる。見慣れない人には読みにくい | 工種が多い工事、工期が長い工事 |
| 曲線式(出来高曲線) | 横に日付、縦に累計出来高(%) | 全体の進捗が予定より早いか遅いか | どの作業が遅れているか | 他の工程表と併用して全体を管理 |
| 斜線式 | 横に距離、縦に日付。作業を斜線で描く | どの区間をいつ施工するか | 建物のような面的な工事 | 道路・トンネル・管路などの線状の工事 |
バーチャートとガントチャートの違い
建設業の施工管理の教材では、横軸が「日付」のものをバーチャート、横軸が「達成率」のものをガントチャートと区別することが多いとされています。一方、IT業界や一般のソフトでは、日付軸の横棒グラフを「ガントチャート」と呼ぶのが普通です。
社内や協力会社と話すときは、どちらの意味かを確認すると誤解を防げます。現場で「ガントで出して」と言われた場合、多くは日付軸の横棒工程表を指しています。
ネットワーク式とクリティカルパス
ネットワーク式は、作業を矢印でつなぎ、前後関係を示す工程表です。最も日数がかかる作業の連なりをクリティカルパスと呼びます。クリティカルパス上の作業が1日遅れると、工期全体が1日遅れます。
島根県の「施工計画書作成ガイド(案)」でも、施工期間が長く複数工種の工事では、クリティカルパスの記載に努めるとしています。
曲線式(出来高曲線)の使い方
曲線式は、工事全体の出来高(進み具合)を累計で描いたグラフです。予定の曲線と実績の曲線を重ねて、全体の遅れを確認します。九州地方整備局の営繕工事の様式説明では、実施工程表を「バーチャート」または「ネットワーク」で作り、出来高曲線も合わせて記入するとしています。
予定の曲線に上下の許容範囲を付けたものは、形から「バナナ曲線」と呼ばれます。実績がこの範囲から外れたら、工程を見直す目安にします。
工事に合った工程表の選び方
迷ったら、まずバーチャートで全体をつかみます。そのうえで、工事の特徴に応じて他の形式を足していきます。
| 工事の特徴 | おすすめの組み合わせ | 理由 |
|---|---|---|
| 工期1〜3か月・工種が少ない(例:外壁改修、小規模な外構) | バーチャートのみ | 作業の関係が単純で、誰でも読める |
| 工期が長い・工種が多い(例:RC造の新築) | バーチャート+ネットワーク | クリティカルパスを押さえ、遅れの影響を読む |
| 出来高の報告を求められる公共工事 | バーチャート+出来高曲線 | 発注者の様式で求められることが多い |
| 道路・管路・河川など延長の長い工事 | 斜線式+バーチャート | 区間ごとの施工時期がひと目でわかる |
| 協力会社への週次の指示 | 週間工程表(バーチャート) | 人・重機・搬入の手配に直結する |
※説明用の例です。発注者が様式や作成方法を指定している場合は、その指定が優先です。
バーチャート工程表の書き方(6ステップ)
ここでは、最もよく使うバーチャート工程表の書き方を、手順に沿って説明します。
- 工事の条件をそろえる契約工期、着工日、作業しない日(休日・年末年始・夏季休暇など)、夜間や騒音の制限、近隣の条件を書き出します。
- 作業を洗い出す設計図書と内訳書から、工種・作業を上から施工順に並べます。準備工と後片付けも忘れずに入れます。
- 作業ごとの日数を見積もる数量と1日あたりの施工量(歩掛り)から日数を出します。協力会社に日数を確認すると精度が上がります。
- 順番とつながりを決める「この作業が終わらないと次に進めない」関係を整理します。養生期間や検査・立会いの日も入れます。
- 横棒を引いて工期に収める日付の軸に横棒を引きます。工期を超える場合は、並行作業や班の増員で調整します。
- 予備日と実績欄を加える雨天や検査待ちの予備を見込みます。予定の下段に実績を記入できる欄を作ります。
日数を見込むときに考えること
中央建設業審議会の「工期に関する基準」(令和6年3月27日最終改定)では、工期の設定で考慮すべき事項が示されています。例えば、次のような項目です。
- 休日(週休2日に加え、祝日、年末年始、夏季休暇)
- 労務・資機材の調達や現場事務所の設置などの準備期間
- 自主検査や清掃などを含む後片付け期間
- 降雨日・降雪日、猛暑日、出水期などの作業不能日
同基準では、国土交通省発注の土木工事の考え方も紹介されています。降雨日は「雨休率」で設定します。暑さ指数(WBGT)が31以上の時間は、作業不能日に算入します。
建設業法第19条の5では、通常必要な期間に比べて著しく短い工期で請負契約を結ぶことを、注文者にも建設業者にも禁じています。工程表は、工期が適正かを確かめる材料にもなります。週休2日を前提にした工程の組み方は4週8休の進め方も参考にしてください。
書き方の例(外壁改修工事)
| 作業 | 日数 | 前の作業 | メモ |
|---|---|---|---|
| 準備工・近隣挨拶 | 3日 | - | 着工前に掲示物を設置 |
| 足場組立 | 4日 | 準備工 | 搬入車両の時間制限に注意 |
| 下地調査・補修 | 6日 | 足場組立 | 数量確定後に監督職員と協議 |
| シーリング打替え | 5日 | 下地補修 | 雨天は不可 |
| 外壁塗装 | 8日 | シーリング | 乾燥時間を含む |
| 検査・手直し | 2日 | 外壁塗装 | 足場解体前に確認 |
| 足場解体・清掃 | 4日 | 検査 | 後片付け期間を確保 |
※説明用の例です。実際の日数は数量・歩掛り・現場条件で変わります。
この表ができれば、あとはExcelで横棒を塗るだけです。開始日と日数を入れると横棒が自動で塗られる作り方は、Excelのバーチャート工程表の作り方で手順を紹介しています。
AIで工程表のたたき台を作る方法
生成AI(ChatGPTやClaudeなど)を使うと、作業の洗い出しと日数の見込みを短時間で下書きできます。ゼロから考えるより、たたき台を直すほうが早く進みます。
AIに任せやすいこと
- 工事概要から、作業の一覧を施工順に並べる
- 作業ごとの前後関係(先行作業)を整理する
- 工程変更時に、影響を受ける作業を書き出す
- 工程表を、協力会社向けの週間予定や説明文に書き換える
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設工事の施工管理の経験が長い工務担当者です。 次の工事条件から、バーチャート工程表のたたき台を作ってください。 【工事名】:【例:○○ビル外壁改修工事】 【構造・規模】:【例:RC造4階建て、外壁面積 約1,200㎡】 【工事内容】:【例:足場、下地補修、シーリング打替え、外壁塗装】 【着工日】:【例:2026年11月2日】 【契約工期の終わり】:【例:2027年1月29日】 【作業しない日】:【例:土日祝、12月29日〜1月4日】 【現場の制約】:【例:作業は8時〜17時。搬入は9時以降】 出力ルール: 1. 表形式で「No/作業名/日数(作業日)/先行作業/開始日/終了日/注意点」を出す 2. 日数は目安とし、根拠が弱いものには【要確認】を付ける 3. 準備工・検査・後片付けも作業に含める 4. 雨天などの予備日を何日見込んだかを最後に書く 5. 工期に収まらない場合は、収めるための案を2つ示す 6. 事実が不明な点は推測で埋めず、「確認が必要な事項」として列挙する
出力イメージ(例)
No|作業名 |日数|先行|開始 |終了 |注意点 1 |準備工・近隣挨拶 |3 |- |11/2 |11/4 |掲示物の設置 2 |足場組立 |4 |1 |11/5 |11/10 |搬入は9時以降 3 |下地調査・補修 |6【要確認】|2|11/11|11/18|数量確定後に協議 4 |シーリング打替え |5 |3 |11/19 |11/25 |雨天不可 … 予備日:雨天予備として5日【要確認】を見込みました。 確認が必要な事項:足場の種類、塗装の工程数、検査日の指定の有無
※出力はイメージです。日付や日数はAIが仮に置いたもので、そのまま使えません。
工程変更のときにAIを使う
雨で3日遅れた、材料の納期が延びた、といった変更時にも使えます。元の工程表(表の文字をそのまま貼り付け)と変更内容を渡し、「影響を受ける作業」と「引き直した日程案」を出させます。工程を直したら、協力会社への連絡文も一緒に作らせると手間が減ります。
AIにできないこと・人が決めること
- 現場ごとの歩掛りや協力会社の実際の人員は、AIは知りません。
- 休日や祝日の日付を誤ることがあります。カレンダーで必ず確かめます。
- 発注者との協議内容や、近隣との約束事は、人が入力しない限り反映されません。
- 工程の最終判断と、発注者・協力会社との合意は人が行います。
現場で使えるプロンプトの例は建設業のプロンプト集にまとめています。Excel作業全体をAIで楽にする方法は建設業のExcel作業をAIで自動化をご覧ください。
注意
工程表の様式・作成方法・提出時期は、発注者や元請によって異なります。発注者の指定、契約図書、最新の仕様書が優先です。この記事の日数や工程はすべて説明用の例です。AIが出した工程は下書きとして扱い、日付・日数・作業の抜けは必ず人が確認してください。社外秘の図面や個人情報をAIに入力する際は、社内ルールに従ってください。
工程表を作る・見直すときのチェックリスト
- 契約工期、着工日、作業しない日(休日・年末年始など)を入れた
- 準備期間と後片付け期間を作業に含めた
- 雨天などの作業不能日を見込んだ
- 検査・立会い・養生期間を工程に入れた
- 作業の前後関係(どれが終われば次に進めるか)を確認した
- 協力会社に日数と人員を確認した
- 発注者指定の様式・作成方法(バーチャート、ネットワーク、出来高曲線など)に合わせた
- 予定の下に実績を記入できる欄を作った
- 変更時に誰へ連絡するか(発注者・協力会社)を決めた
工程表とあわせて提出することが多い施工計画書については、施工計画書の書き方で解説しています。
工程表に関するよくある質問
工程表とスケジュール表は何が違いますか?
大きな違いはありません。建設業では、作業の順番と期間を示し、進捗管理に使う表を工程表と呼びます。予定だけでなく、実績と比べて遅れを管理する点が特徴です。
バーチャートとガントチャートはどちらを使えばよいですか?
日程を示すならバーチャート(日付軸の横棒)が基本です。建設業の教材では、達成率を横軸にしたものをガントチャートと呼ぶことが多いとされます。ただし一般には日付軸の横棒もガントチャートと呼ぶため、相手にどちらの意味かを確認すると確実です。
工程表は誰が作りますか?
全体工程表は元請の現場代理人や工事担当者が作るのが一般的です。専門工事の細かい工程は、協力会社から日数や段取りを聞いて反映します。
工程表は必ず提出しなければいけませんか?
国の公共工事では、公共工事標準請負契約約款第3条で工程表の提出が定められています。民間工事では契約や発注者の求めによって異なります。契約書と発注者の指定を確認してください。
工程が遅れたら工程表はどうしますか?
残りの工事について工程を引き直し、変更工程表を作ります。公共建築工事標準仕様書では、条件変更などで実施工程表を変更する場合、該当部分の施工に先立って監督職員の承諾を受けることとされています。
工程表はAIで作れますか?
作業の洗い出しや日数の見込みなど、たたき台はAIで作れます。ただし歩掛りや現場条件、休日の日付は誤ることがあるため、最終確認と判断は人が行います。
まとめ
- 工程表は、作業の順番と期間を示し、進捗を管理するための書類です。
- 中小規模の工事はバーチャートが基本。工種が多ければネットワーク式、全体の進捗は出来高曲線を併用します。
- 書き方は「条件整理→作業の洗い出し→日数→順番→横棒→予備日と実績欄」の順です。
- 休日・準備期間・後片付け期間・作業不能日を見込み、著しく短い工期にならないようにします。
- AIでたたき台を作り、人が確認して仕上げると、作成と変更の手間を減らせます。
工程表・施工計画書の下書きをAIで
建設書類の下書きに使えるAIテンプレートとプロンプトをまとめた資料を無料で配布しています。工程表のたたき台づくりや、工程変更時の連絡文の作成にお使いください。
