建設業の人手不足とは、働く人が減り、残った人の高齢化も進んでいる状態のことです。総務省「労働力調査」をもとにした国土交通省の資料では、建設業の就業者は2025年平均で478万人でした。ピークだった1997年平均の685万人から約3割減っています。
年齢構成も偏っています。建設業の就業者のうち55歳以上は36.6%、29歳以下は11.9%です。今後はベテランの引退が続く一方、若手の入職は大きくは増えていません。求人を出しても人が集まりにくい状態が、しばらく続くと考えるのが現実的です。
そこでこの記事では、採用・定着・省力化の3つの対策を判断表で比べます。そのうえで、採用だけに頼らず「1人あたりの事務」を減らす進め方と、AIの使いどころを紹介します。経営者・役員の方と、現場や事務の担当者の方に向けた内容です。
この記事でわかること
- 公的データで見る、建設業の就業者数・年齢構成・求人倍率の現状
- 建設業で人手不足が起きる4つの原因
- 採用・定着・外国人材・省力化の対策を比べた判断表
- 「1人あたりの事務」を減らす5ステップと、AIで業務を棚卸しする方法
社内の事務のうち、AIに任せられる業務を一覧で確認できます。
建設業の人手不足の現状|データで見る就業者数と年齢構成
まず、公的な統計で現状を確認します。ここで使うのは、総務省「労働力調査」と、それをもとに国土交通省がまとめた資料です。
就業者数はピークから約3割減
国土交通省の資料では、建設業の就業者数を「技術者」と「技能者」に分けて示しています。技術者は施工管理などを担う人、技能者は現場で作業する職人のことです。
| 区分 | 1997年(ピーク) | 2010年(建設投資の底) | 2025年(最新) |
|---|---|---|---|
| 建設業就業者 | 685万人 | 504万人 | 478万人 |
| うち技術者 | 41万人 | 31万人 | 41万人 |
| うち技能者 | 455万人 | 331万人 | 296万人 |
※国土交通省「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」参考資料集(令和8年4月3日)より。元データは総務省「労働力調査」の年平均です。
技術者の数は、ピーク時と同じ水準まで戻っています。一方で技能者は、2010年からさらに減り続けています。現場で手を動かす人の減少が、とくに大きいといえます。
総務省の「労働力調査(基本集計)2025年平均結果」では、全産業の就業者数は6,828万人です。建設業の478万人は、その約7.0%にあたります(編集部で算出)。国土交通省の資料では、1997年には建設業が全産業の10.4%を占めていました。
55歳以上が約4割、29歳以下は約1割
同じ資料によると、2025年の建設業就業者は、55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%です。国土交通省は、高齢化が進み、次世代への技術承継が大きな課題だとしています。
55歳以上の人は、10年後には多くが65歳以上になります。いま現場を支えている人が段階的に引退していくため、若手の採用が同じ数だけ進まなければ、人手はさらに足りなくなります。
求人倍率で見る「採りにくさ」
人手不足は、求人倍率にもはっきり表れています。有効求人倍率とは、仕事を探している人1人に対して何件の求人があるかを示す数字です。1.00倍を超えるほど、企業にとって採りにくい状態です。
| 職業(令和8年3月・常用) | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 職業計(全職業) | 1.10倍 |
| 建築・土木・測量技術者 | 5.65倍 |
| 建設・採掘従事者 | 4.81倍 |
| うち建設躯体工事従事者 | 7.35倍 |
| うち土木作業従事者 | 5.96倍 |
| うち電気工事従事者 | 3.32倍 |
※厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」参考統計表より。常用(パートタイムを含む)の値です。ハローワークを通じた求人・求職だけを集計しており、民間の求人媒体は含みません。月によって数値は変わります。
全職業の1.10倍に対し、建設関係の職業は3〜7倍台です。施工管理などの技術者も、現場の職人も、1人の求職者を多くの会社で取り合っている状況です。
建設業で人手不足が起きる4つの原因
人手不足の原因は1つではありません。会社で手を打てる部分を見つけるために、原因を4つに分けて整理します。
| 原因 | 起きていること | 会社で動かせる度合い |
|---|---|---|
| 1. 高齢化と引退 | 55歳以上が約4割。熟練者が段階的に現場を離れる | 小さい(引退時期は変えにくい) |
| 2. 若手の入職が少ない | 29歳以下は約1割。求人を出しても応募が来ない | 中程度(採用の工夫で改善の余地あり) |
| 3. 入った人が辞める | 長時間労働・休日の少なさ・教える余裕のなさ | 大きい(働き方と教え方で変えられる) |
| 4. 1人あたりの仕事が増える | 人が減っても書類や調整の量は減らない | 大きい(業務の見直しで変えられる) |
1と2は、業界全体の人口構造によるものです。1社の努力だけでは変えにくい部分です。一方で3と4は、会社の中の仕事の進め方で変えられます。
国土交通省の勉強会の参考資料集には、民間調査の結果も載っています。社員5〜100名の工事会社が対象の調査です(クラフトバンク総研、2025年8月)。それによると、人手不足なのに22%は採用活動をしておらず、33%は「応募が無い」と答えています。採用以外の人手不足対策について「何の対策もしていない/わからない」も43%でした。採用以外にも手を打つ余地が大きいことがわかります。
新卒の3年以内離職率など、定着の課題は別記事で解説しています。施工管理がきつい理由と、事務作業を減らして定着させる方法もあわせてご覧ください。
人手不足対策の比較|採用・定着・外国人材・省力化の判断表
人手不足の対策は、大きく4つに分けられます。どれか1つではなく、自社の状況に合わせて組み合わせるのが基本です。
| 対策 | 主な打ち手 | 効果が出るまで | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 採用を強める | 求人内容の見直し、学校・ハローワークとの関係づくり、自社サイトやSNSでの発信 | 数か月〜1年以上 | 事業を広げたい、若手を増やしたい | 倍率が高く、採れても育つまで時間がかかる |
| 定着を高める | 休日の確保、処遇改善、教え方の型づくり、キャリアの見える化 | 半年〜数年 | 若手が早期に辞めている | 制度だけでなく現場の運用が変わらないと効かない |
| 外国人材の受け入れ | 特定技能・育成就労などの制度の活用 | 準備に数か月〜 | 技能者が足りず、受け入れ体制を作れる | 制度ごとの要件・受け入れ後の支援が必要 |
| 省力化(1人あたりの仕事を減らす) | 書類の削減・様式統一、事務の分担、ICT・AIの活用 | 1業務なら数週間〜 | 残業が多い、事務に追われている | ツールを入れるだけでは定着しない |
※効果が出るまでの期間は、編集部による一般的な目安です。会社の規模や状況によって変わります。
採用を強める
求人票では、仕事内容・休日・給与の決め方・資格取得の支援を具体的に書きます。「週休2日」と書くなら、実際に取れているかも合わせて伝えると信頼されます。高校や専門学校との関係づくりは、すぐには成果が出ませんが、続けるほど効いてきます。
なお、株式会社Digital&では建設業向けの採用支援サービス「ヨビコム建設」も提供しています。
定着を高める
定着には、休日と処遇、そして教え方の3つが効きます。休日の考え方は4週8休とは?建設業の週休2日の進め方で解説しています。技能者の経験や資格を記録して処遇につなげる仕組みとしては、建設キャリアアップシステム(CCUS)があります。
外国人材の受け入れ
建設分野では、特定技能・育成就労・技能実習といった制度があります。制度ごとに対象の業務や要件、受け入れ後の支援の内容が決まっています。検討するときは、国土交通省「建設分野での外国人受入れ関係」のページで最新情報を確認してください。
省力化(1人あたりの仕事を減らす)
採用・定着・外国人材は、いずれも「人を増やす・減らさない」対策です。これに対して省力化は、いまいる人の仕事量を減らす対策です。採用がうまくいかない時期でも、会社の判断ですぐに始められます。次の章で詳しく説明します。
採用だけに頼らない|「1人あたりの事務」を減らす考え方
人が減っても、工事の数や書類の量は同じようには減りません。その差を残業で埋めてきたのが、これまでの多くの現場です。しかし2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制がかかっています(詳しくは建設業の2024年問題とは)。
中央建設業審議会の「工期に関する基準」には、労働時間の範囲が書かれています。現場の作業や監督の時間だけでなく、書類の作成に係る時間も含まれるとしています。つまり、書類を減らせばそのまま労働時間が減り、同じ人数で回せる仕事が増えます。
減らしやすい事務の例
現場監督や事務担当の仕事を、よくある事務で分けてみます。下の表は説明用の例です。時間は会社によって大きく違うため、自社で測った数字に置き換えてください。
| 事務 | 主に担う人 | 週あたりの時間(例) | 減らし方の候補 |
|---|---|---|---|
| 作業日報・週報 | 現場監督 | 3時間【要確認】 | 音声メモ+AIで清書、様式の統一 |
| 工事写真の整理・台帳 | 現場監督 | 3時間【要確認】 | 撮影時の命名ルール、台帳の自動作成 |
| 打合せの議事録 | 現場監督 | 2時間【要確認】 | 録音からAIで下書き |
| 安全書類の作成・確認 | 現場監督・事務 | 2時間【要確認】 | 作業員情報のマスタ化、記入漏れチェック |
| 見積・請求の転記 | 事務 | 4時間【要確認】 | Excelの関数化、転記の自動化 |
※時間は説明用の例です。実際の時間は、自社で1〜2週間記録して確認してください。
減らし方は「やめる」「まとめる」「分担する」「AI・ツールに任せる」の順に考えます。まず不要な書類をやめ、同じ内容を何度も書いている箇所をまとめます。そのうえで、現場にいなくてもできる作業を事務担当に移し、残った作業の下書きをAIに任せます。
「1人あたりの事務」を減らす進め方(5ステップ)
いきなり全社で始めると、現場の負担が増えて止まりがちです。1つの業務・1つの現場から始めます。
- 事務の時間を1〜2週間記録する現場監督と事務担当に、書類ごとの作業時間をメモしてもらいます。細かい記録でなくても構いません。「日報30分」「写真整理1時間」程度で十分です。
- 時間がかかる業務を1つ選ぶ時間が長く、毎日・毎週くり返す業務を選びます。日報や写真整理、議事録が候補になりやすい業務です。
- やめる・まとめる・分担するを先に決める発注者・元請に不要な書類がないか確認します。同じ内容の転記は1か所にまとめます。現場にいなくてもできる作業は、事務担当に移せないか検討します。
- 残った作業にAIやツールを使う下書き・清書・集計・チェックなど、手順が決まっている作業から任せます。最終確認は必ず人が行います。
- 時間を測り直し、手順書にして広げる導入前と比べて時間がどう変わったかを確認します。効果があれば手順を1枚にまとめ、他の現場や業務に広げます。
日報の仕組み化を例にした具体的な流れは、日報を自動化する方法で紹介しています。AIに向く業務の全体像は建設業のAI活用ガイドをご覧ください。
AIで楽にする方法|事務の棚卸しをAIで整理する
ステップ1で集めた業務メモは、書き方がばらばらになりがちです。AIに渡すと、業務ごとの一覧表と「減らし方の候補」まで整理できます。ChatGPTやClaudeなど、会社で利用を認めているAIで試してください。
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設会社の業務改善担当です。 以下は【現場監督/事務担当】が1週間に行った事務作業のメモです。 # 依頼 1. 業務ごとに「業務名/頻度/1回あたりの時間/週あたりの合計時間」の表にしてください。 2. 各業務に「やめる/まとめる/分担する/AI・ツールに任せる/人が行う」のどれが候補かを付け、理由を1行で書いてください。 3. 週あたりの時間が長い順に並べ、最初に取り組む業務を1つ提案してください。 # 条件 - メモに書かれていない時間は推測せず「不明」と書く - 安全・品質の判断、金額の確定は「人が行う」にする - 専門用語は使わず、短い文で書く # 業務メモ 【ここに1週間分のメモを貼り付け。氏名・現場名・取引先名は伏せる】
入力例(説明用の例です):「月:日報30分、写真整理60分、安全書類の確認40分。火:日報30分、打合せ議事録50分。水:日報30分、写真整理60分、請求書の転記45分……」
出力イメージ(例)
| 業務名 | 頻度 | 1回の時間 | 週の合計 | 減らし方の候補 | 理由 | |---|---|---|---|---|---| | 写真整理 | 週2回 | 60分 | 120分 | AI・ツールに任せる | 命名と分類の手順が決まっている | | 日報 | 毎日 | 30分 | 150分【要確認】 | AI・ツールに任せる | 音声メモから清書できる | | 議事録 | 週1回 | 50分 | 50分 | AI・ツールに任せる | 録音から下書きできる | | 請求書の転記 | 週1回 | 45分 | 45分 | まとめる | 同じ数字を2回入力している | | 安全書類の確認 | 週1回 | 40分 | 40分 | 人が行う(チェックはAI補助) | 最終判断は人が必要 | 最初に取り組む業務:日報 理由:毎日発生し、週の合計時間が最も長いため。
AIの表は、あくまで検討のたたき台です。合計時間の計算や「減らし方」の判断は、必ず人が見直してください。
注意
この記事の統計は、2026年9月30日時点で確認した公表値です。求人倍率は毎月更新されるため、最新の値は厚生労働省の公表資料で確認してください。外国人材の制度は改正が続いているため、国土交通省・出入国在留管理庁の最新情報が優先です。AIに業務メモを入力するときは、氏名や取引先名などの個人情報・機密情報を伏せ、会社のルールに従ってください。AIの出力の最終確認は人が行います。
今日からできることチェックリスト
- 自社の年齢構成(55歳以上・29歳以下の人数)を書き出した
- 5年以内に引退しそうな人と、その人しかできない仕事を洗い出した
- 求人票の仕事内容・休日・給与の決め方を、具体的に書き直した
- 入社3年以内に辞めた人の理由を振り返った
- 現場監督と事務担当の事務時間を、1〜2週間記録し始めた
- 発注者・元請に、省略できる書類がないか確認した
- 最初に減らす事務を1つだけ決めた
よくある質問
建設業の人手不足はどのくらい深刻ですか?
国土交通省の資料では、建設業の就業者は2025年平均で478万人です。ピークの1997年(685万人)から約3割減りました。令和8年3月の有効求人倍率は、建設・採掘従事者で4.81倍、建築・土木・測量技術者で5.65倍です。全職業の1.10倍を大きく上回っています。
建設業の高齢化はどのくらい進んでいますか?
2025年の建設業就業者は、55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%です。国土交通省は、次世代への技術承継が大きな課題だとしています。
建設業の人手不足の原因は何ですか?
主な原因は、高齢化による引退、若手の入職の少なさ、入社後の離職、1人あたりの仕事量の増加の4つです。このうち離職と仕事量は、働き方や業務の見直しで会社が変えやすい部分です。
中小の建設会社が最初に取り組むべき人手不足対策は何ですか?
採用の工夫と並行して、いまいる人の事務を減らすことをおすすめします。まず事務の時間を1〜2週間記録し、時間のかかる業務を1つ選んで改善します。採用がうまくいかない時期でも、会社の判断ですぐに始められます。
AIを使えば人手不足は解消しますか?
AIだけで人手不足が解消するわけではありません。AIが得意なのは、日報・議事録の清書や集計、書類のチェックなど事務の下書きと整理です。現場作業や安全・品質の判断は人が行います。事務の負担を減らし、人が現場の仕事に集中できるようにする手段と考えてください。
まとめ
- 建設業の就業者は2025年平均で478万人。ピークから約3割減り、とくに技能者の減少が大きい状況です。
- 55歳以上が36.6%、29歳以下が11.9%と高齢化が進み、建設関係の有効求人倍率は3〜7倍台です。
- 対策は採用・定着・外国人材・省力化の組み合わせです。すぐに始められるのは、1人あたりの事務を減らす省力化です。
- 事務の時間を記録し、1業務を選び、やめる・まとめる・分担する・AIに任せるの順で減らします。
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参考・出典(2026年9月30日確認)
