施工体系図とは、工事に関わる下請負人の施工の分担関係を、樹状図(ツリー図)などで一目でわかるように表した図です。施工体制台帳の要約版にあたり、工事現場に掲示する義務があります。根拠は建設業法第24条の8第4項と、建設業法施行規則第14条の6です。
掲示場所は、民間工事なら「工事関係者が見やすい場所」です。公共工事では、これに加えて「公衆が見やすい場所」にも掲げます。作成する会社や金額の条件は、施工体制台帳と同じです。
この記事では、施工体系図の記載事項と書き方、記入例、掲示のルールを順に解説します。後半では、施工体制台帳のデータから施工体系図を自動で作る方法も紹介します。
この記事でわかること
- 施工体系図の意味と、施工体制台帳との違い
- 作成・掲示の義務がある工事と、掲示場所のルール
- 施行規則で決まっている記載事項と、記入例
- デジタルサイネージで掲示する場合の条件
- 台帳の一覧データから施工体系図をAIとExcelで作る手順
台帳の一覧から施工体系図のたたき台を作るプロンプトを「建設書類 AIテンプレート集」にまとめています。
施工体系図とは?施工体制台帳との違い
施工体系図は、施工体制台帳をもとに作る「要約版」です。国土交通省の通知では、樹状図等により作成し、工事現場の見やすいところに掲示するものとされています。台帳が「中身をすべて記録する書類」なら、体系図は「全体を一目で見せる図」です。
掲示の目的は、元請が下請を含む施工体制を把握することにあります。あわせて、各下請が工事の全容と自社の役割分担を確認できるようにします。公共工事では、第三者の視点でも現場の施工体制を確認できるようにする狙いもあります。
| 比較項目 | 施工体制台帳 | 施工体系図 |
|---|---|---|
| 役割 | 施工体制の詳細な記録 | 分担関係を一目で示す要約 |
| 主な根拠 | 建設業法第24条の8第1項、施行規則第14条の2 | 建設業法第24条の8第4項、施行規則第14条の6 |
| 置き方 | 工事現場ごとに備え置く | 工事現場の見やすい場所に掲示する |
| 記載する下請 | 建設工事を請け負う全ての下請 | 現にその工事を施工している下請 |
| 主な記載内容 | 契約・技術者・保険・作業員など詳細 | 会社名・代表者・許可・工事内容・工期・技術者名 |
| 完成後 | 一部を帳簿に添付し原則5年保存 | 営業に関する図書として10年保存 |
施工体制台帳そのものの書き方は、施工体制台帳とは?書き方・記載例と作成義務で解説しています。安全書類全体の一覧はグリーンファイル(安全書類)とは?書類一覧と書き方をご覧ください。
施工体系図の作成・掲示義務があるのは?
施工体系図の作成義務は、施工体制台帳と同じ条件で生じます。つまり台帳を作る工事では、体系図も必ず作ると考えてください。
| 区分 | 作成する会社 | 作成が必要になる条件 | 掲示場所 |
|---|---|---|---|
| 公共工事 | 発注者から直接請け負った建設業者 | 下請契約を締結したとき(金額要件なし) | 工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所 |
| 民間工事 | 発注者から直接請け負った特定建設業者 | 下請代金の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上) | 工事関係者が見やすい場所 |
公共工事の読み替えは、入札契約適正化法第15条第1項で定められています。「公衆が見やすい場所」の例として、国土交通省のチェックリストでは「工事現場の道路に面した場所など」が挙げられています。
いつからいつまで掲示するか
掲示は、遅くとも下請負人を表示する必要が生じたときまでに行います。掲示期間は、目的物を発注者に引き渡すまでです。工期の進行で表示すべき下請が変わったら、速やかに体系図を直して掲示し直します。
金額要件の数値は、政令改正で見直されてきました。「4,000万円」など古い数値の資料も残っているため、最新の条文をe-Gov法令検索で確認してください。
施工体系図の記載事項
記載事項は、建設業法施行規則第14条の6で決まっています。元請と工事全体の情報に加え、下請負人ごとの情報を系統的に表示します。
| 区分 | 記載事項 | 補足 |
|---|---|---|
| 元請(作成建設業者) | 商号または名称 | CCUSの事業者IDを併記する作成例もある |
| 元請が請け負った工事 | 工事名称と工期、発注者名 | 契約書どおりに記入 |
| 元請の技術者 | 監理技術者または主任技術者の氏名、監理技術者補佐の氏名、専門技術者の氏名と担当工事内容 | 補佐・専門技術者は置いた場合のみ |
| 下請負人 | 商号または名称、代表者の氏名、一般建設業・特定建設業の別、許可番号 | 建設業者でない場合は商号と代表者名のみ |
| 下請負人が請け負った工事 | 工事内容と工期、特定専門工事の該当の有無、主任技術者の氏名、専門技術者の氏名と担当工事内容 | 建設業者でない場合は工事内容と工期のみ |
「工事内容」は、記載から具体的な内容がわかる工種の名称などで書きます。「土木工事」だけでなく「掘削・土留工事」「鉄筋工事」のように書くとわかりやすくなります。
表示する下請は「現にその請け負った建設工事を施工している」会社に限って差し支えありません。施工中かどうかは、請負契約で定めた工期を基準に判断します。
施工体系図の書き方と記入例
国土交通省のページでは、施工体系図の作成例として「樹状図形式」と「表形式」の2種類が公開されています。法令上の記載事項が網羅されていれば、作成例以外の様式も使えます。発注者や元請が様式を指定している場合は、その様式に従ってください。
作成の手順
- 最新の施工体制台帳をそろえる体系図は台帳の要約です。再下請負通知書の反映が済んだ台帳を元にします。
- いま施工中の下請を抜き出す各社の契約工期と今日の日付を比べ、表示する下請を決めます。
- 元請欄を記入する工事名称、工期、発注者名、元請の会社名、監理技術者等の氏名を書きます。
- 一次下請から順に並べる一次下請ごとに、その下の二次・三次下請をぶら下げて配置します。分担関係が見てわかるように線でつなぎます。
- 各社の欄を埋める会社名、代表者名、許可の区分と番号、工事内容、工期、主任技術者名などを記入します。
- 台帳と突き合わせる会社名や技術者名、工期が台帳と一致しているか確認します。
- 掲示し、変更のたびに直す現場の見やすい場所に掲げ、下請の入れ替わりがあれば速やかに更新します。
表形式の記入例
国土交通省の表形式の作成例は、1社を1行で表す形です。列には、請負次数・企業名・代表者氏名・工事内容・工期・許可番号・主任技術者・特定専門工事の該当の有無などが並びます。次は、この構成を参考にした記入例です(※説明用の例です。会社名・番号は架空です)。
| 請負次数 | 企業名 | 工事内容 | 工期 | 許可番号 | 主任技術者 | 特定専門工事 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1次 | A土工(株) | 掘削・土留工事 | 4/1〜7/31 | とび・土工工事業 知事(般-○)第○○号 | 山田 一郎 | 無 |
| 2次 | B重機(有) | 掘削工事(重機) | 4/1〜6/30 | とび・土工工事業 知事(般-○)第○○号 | 佐藤 二郎 | 無 |
| 1次 | C鉄筋工業(株) | 鉄筋工事 | 6/1〜9/30 | 鉄筋工事業 知事(般-○)第○○号 | 鈴木 三郎 | 無 |
| 2次 | D鉄筋(株) | 鉄筋加工・組立 | 6/15〜9/15 | 鉄筋工事業 知事(般-○)第○○号 | 高橋 四郎 | 無 |
樹状図形式で書く場合は、最上段に元請を置きます。その下にA土工とC鉄筋工業を横に並べ、それぞれの下にB重機、D鉄筋をつなぎます。国交省の表形式の作成例には、災害防止協議会の会長・副会長・書記などを記入する欄もあります。労働安全など他の目的の図と兼ねることは、見にくくならない限り差し支えないとされています。
掲示のポイントとデジタルサイネージの条件
施工体系図は、掲げるだけでなく「見て分担がわかる」状態であることが大切です。文字が小さすぎる、雨で読めない、更新されていない、といった状態は避けましょう。
国土交通省は令和4年1月27日の通知で、デジタルサイネージ等のICT機器による掲示の考え方を示しました。次の条件を満たせば、書面の掲示と同等に扱ってよいとされています。
| 条件 | 工事関係者向け(民間・公共) | 公衆向け(公共工事) |
|---|---|---|
| 必要なときに施工体系図を確認できる | 必要 | 必要(公衆が確認できること) |
| 施工体系図を確認できる旨を常時わかりやすく表示 | 必要 | 必要 |
| 分担関係を簡明に確認できる画面サイズ・輝度・文字サイズ | 必要(分割表示も可) | 必要 |
| スライドショー方式は全体確認に長時間かからない | 必要 | 必要 |
| 施工時間外も人感センサーやタッチ等で表示できる | 記載なし | 必要(住宅地等で消灯する場合はネット閲覧の案内で代替可) |
サイネージを使うかどうかは、発注者の運用も確認して決めてください。安全書類のクラウドサービスの中には、施工体系図の作成や画面表示に対応したものもあります。
台帳から施工体系図を自動で作る方法
施工体系図づくりの手間は、台帳の情報を図に「書き写す」作業にあります。下請が増えるほど、転記ミスや更新漏れが起きやすくなります。そこで、台帳の情報を1つの一覧表にまとめ、そこから体系図を作る流れに変えるのがおすすめです。
Excelで「下請一覧」を元データにする
まず、Excelやスプレッドシートに次の列を持つ下請一覧を作ります。この一覧を唯一の元データとし、台帳・体系図・名簿の確認に使い回します。
- 番号、請負次数、注文者(どの会社から請けたか)
- 企業名、代表者氏名、一般・特定の別、許可番号
- 工事内容、工期(開始日・終了日)
- 主任技術者、専門技術者と担当工事内容、特定専門工事の該当
「注文者」の列があれば、親子関係(どの会社の下に誰がいるか)が決まります。工期の列にフィルターをかければ、今日施工中の会社だけを抜き出せます。表形式の体系図であれば、この一覧をほぼそのまま印刷用のレイアウトに流し込めます。
AIで樹状図のたたき台と変更点を作る
樹状図の配置や、前回からの変更点の洗い出しは、生成AIに任せると早く進みます。一覧をコピーして貼り付けるだけで使えます。
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設会社の工務担当です。 次の【下請一覧】から、施工体系図のたたき台を作ってください。 # 条件 ・基準日は【2026年○月○日】とし、工期に基準日を含む会社だけを表示する ・元請を最上段に置き、「注文者」の列をもとに一次・二次・三次の親子関係で階層表示する ・各社について「企業名/工事内容/工期/許可番号/主任技術者」を1行で示す ・一覧にない情報は推測で補わず【要確認】と書く ・最後に、前回の【前回表示した会社】と比べて、追加・削除された会社を列挙する 【元請の情報】 工事名称:【】 工期:【】 発注者:【】 元請:【】 監理技術者(または主任技術者):【】 【下請一覧】 (Excelの表を貼り付け) 【前回表示した会社】 (前回の会社名を貼り付け)
出力イメージ(例)
■元請:○○建設(株) 工事名称:○○線道路改良工事 監理技術者:○○ ○○ 工期:4/1〜12/20 発注者:○○市 ├─ 1次:A土工(株)|掘削・土留工事|4/1〜7/31|知事(般-○)第○○号|主任技術者 山田 一郎 │ └─ 2次:B重機(有)|掘削工事(重機)|4/1〜6/30|…|主任技術者 佐藤 二郎 └─ 1次:C鉄筋工業(株)|鉄筋工事|6/1〜9/30|…|主任技術者 鈴木 三郎 └─ 2次:D鉄筋(株)|鉄筋加工・組立|6/15〜9/15|…|主任技術者【要確認】 【前回からの変更】 ・追加:C鉄筋工業(株)、D鉄筋(株) ・削除:なし ※AIの出力イメージです。図の内容は必ず施工体制台帳と照合してください。
二次以下の下請の情報は、各社から届く再下請負通知書が元になります。書き方と提出の流れは再下請負通知書とは?書き方・記入例と提出の流れで解説しています。CCUSの事業者IDを併記する場合は、建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?も参考にしてください。
このたたき台をもとに、Excelの図形やSmartArtで清書すれば、ゼロから描くより手戻りが減ります。一覧表の整え方やExcel関数の作成もAIに頼めます。詳しくは建設業のExcel作業をAIで自動化をご覧ください。
注意
施工体系図の様式や掲示方法は、発注者・元請によって指定が異なります。発注者の指定と最新の仕様書が優先です。金額要件などの数値は法令改正で変わるため、e-Gov法令検索と国土交通省の最新資料で確認してください。AIが作る図はたたき台です。会社名・許可番号・技術者名・工期は、必ず担当者が施工体制台帳と原本で確認してから掲示してください。
掲示前チェックリスト
- 最新の施工体制台帳(再下請負通知書の反映済み)を元にしている
- 元請の工事名称・工期・発注者名・監理技術者等の氏名が契約どおり
- いま施工中の下請が漏れなく表示されている
- 各社の一般・特定の別、許可番号、代表者名が台帳と一致している
- 工事内容が具体的な工種名で書かれている
- 特定専門工事の該当の有無を記入している
- 一次・二次・三次の親子関係が、契約の流れと合っている
- 公共工事では、公衆が見やすい場所(道路に面した場所など)にも掲示している
- 下請の入れ替わりに合わせて更新する担当と頻度を決めている
よくある質問
施工体系図に決まった様式はありますか?
法令で決まった様式はありません。施行規則第14条の6の記載事項が網羅されていれば、国土交通省の作成例以外の様式も使えます。発注者や元請が様式を指定している場合は、その指定に従います。
工事が終わった下請も施工体系図に載せ続けるべきですか?
施工体系図には、現にその工事を施工している下請負人を表示すれば足りるとされています。施工中かどうかは契約上の工期で判断します。ただし施工体制台帳には記録を残してください。
民間工事でも道路側に掲示する必要がありますか?
建設業法上、民間工事は「工事関係者が見やすい場所」への掲示です。「公衆が見やすい場所」への掲示が求められるのは公共工事です。発注者との契約で別の定めがあれば、それに従います。
施工体系図をタブレットやモニターで表示してもよいですか?
国土交通省の通知で、一定の条件を満たすデジタルサイネージ等による掲示は、書面の掲示義務を果たすものとされています。常時確認できる旨の表示や、見やすい画面サイズなどが条件です。
施工体系図はいつまで保存しますか?
現場では目的物の引渡しまで掲示します。その後、作成建設業者は施工体系図またはその写しを営業に関する図書として、引渡しから10年間保存します。電子データでの保存も認められています。
まとめ
施工体系図は、施工体制台帳の要約として、下請の分担関係を現場に示すための図です。
- 作成義務は施工体制台帳と同じ条件。公共工事は公衆が見やすい場所にも掲示
- 記載事項は施行規則第14条の6。表示する下請は現に施工中の会社でよい
- 樹状図・表形式どちらでもよく、変更のたびに速やかに更新する
- 下請一覧を元データにすれば、AIとExcelで体系図のたたき台を作れる
台帳と体系図の二重入力をなくしませんか
「建設書類 AIテンプレート集」では、下請一覧から施工体系図のたたき台や変更点の一覧を作るプロンプトを紹介しています。自社の一覧表に合わせて、すぐに試せます。
参考・出典(2026年9月30日確認)
- 建設業法(e-Gov法令検索)第24条の8
- 建設業法施行令(e-Gov法令検索)第7条の4
- 建設業法施行規則(e-Gov法令検索)第14条の6、第14条の7、第26条、第28条
- 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(e-Gov法令検索)第15条
- 国土交通省「施工体制台帳、施工体系図等」(樹状図形式・表形式の作成例、チェックリスト)
- 国土交通省「施工体制台帳の作成等について(通知)」最終改正 令和4年12月28日
- 国土交通省通知「施工体系図及び標識の掲示におけるデジタルサイネージ等の活用について」(令和4年1月27日 国不建第446号、日本建設業連合会掲載)
- 広島県「施工体系図及び標識の掲示におけるデジタルサイネージ等の活用について」
- 国土交通省北陸地方整備局「建設業者のための建設業法 令和7年2月改訂版」
