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経理の人手不足はなぜ起こる?4つの原因と5つの解決策をわかりやすく解説
「経理担当者が足りず、決算のたびに残業が続いている」と悩む経理責任者や経営者は少なくありません。経理の人手不足は、業務の自動化・フロー改善・外部委託を組み合わせることで解消をめざせます。本記事では、人手不足が起こる原因から具体的な解決策、放置した場合のリスクまでをわかりやすく解説します。
「募集しても経理経験者が集まらない」「特定の担当者に業務が集中している」といった状態は、採用と業務設計の両面から手を打つ必要があります。
経理の人手不足が深刻化している現状

経理部門の人手不足は、いまや業種や企業規模を問わず広がる経営課題となっています。単に人数が足りないだけでなく、専門知識を持つ人材が採用できず、既存の担当者に負荷が集中しやすい構造的な問題として表れています。
デロイト トーマツ グループが2025年3月末に実施した調査では、経理・財務・税務部門の重要な経営課題として「人材育成・人材確保」を挙げた企業は35.7%にのぼりました。同調査では「DX・AI活用」を課題とする企業が38.8%と最多で、業務が増える一方で人材とテクノロジーの両面が追いついていない実態がうかがえます。
出典:デロイト トーマツ グループ「経理・財務・税務部門の35.7%が『人材育成・人材確保』に課題感(2025年度版調査)」
人手不足は経理部門だけの問題ではありません。帝国データバンクの調査によると、2025年1月時点で正社員が「不足」と感じている企業は53.4%に達し、コロナ禍以降で最も高い水準となりました。日本全体で働き手が減るなか、専門性の高い経理人材の確保はとりわけ難しくなっていると考えられます。
出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」
経理が人手不足になる4つの原因

経理の人手不足は、複数の要因が重なって生じています。ここでは代表的な4つの原因を整理します。
専門知識が必要で人材の確保が難しい
経理業務には、簿記や会計の知識に加えて、税法や関連法令への理解が求められます。会社の規模によってはグループ会社や連結決算まで考慮した高度なスキルが必要になるケースもあり、即戦力となる経理人材はそもそも母数が限られています。
前述のデロイト調査でも、人材不足の理由として「スキル人材の採用ができない」が45.5%、「専門人材が少ない」が37.4%と上位に挙がっています。単純な人手の問題ではなく、必要なスキルを持つ人材が採用市場に少ないことが背景にあると考えられます。
仮に未経験者を採用して社内で育成する場合も、一人前になるまでには時間とコストがかかります。教育に手が回らないまま、慢性的な人員不足が続いてしまう企業も少なくありません。
間接部門のため採用が後回しになりやすい
経理は売上に直接つながらない「間接部門」であるため、採用の優先度が下がりやすい傾向があります。企業全体で人手が足りない状況では、営業やマーケティングといった売上に貢献する部門の採用が優先されがちです。
欠員が出てから慌てて募集をかけるケースも多く、結果として経理の人手不足がなかなか解消されない状態に陥ります。安定していて離職が少ない職種と見られがちなことも、増員が後回しにされる一因と考えられます。
法改正への対応で業務量が増えている
経理担当者は、会計基準や税法の改正があるたびに知識を更新し続けなければなりません。近年では2022年の電子帳簿保存法の改正、2023年のインボイス制度の開始など、実務ルールの変更が相次いでいます。
こうした制度対応は、既存の業務に上乗せされる形で発生します。担当者は「新しい制度への対応」と「従来業務の維持」の両方を抱え込み、常に時間に追われやすくなります。業務量が増える一方で人員が変わらなければ、負荷はさらに高まっていきます。
負担の増加が退職を招く悪循環
人手不足の職場では、限られた担当者に業務が集中します。月次・四半期・年次の決算が重なる繁忙期には残業が常態化し、疲労やストレスが蓄積しやすくなります。
その結果、モチベーションの低下や退職につながり、残ったメンバーの負担がさらに重くなる悪循環に陥る恐れがあります。「辞める→残業が増える→さらに辞める」という連鎖は、人手不足が深刻化する典型的なパターンです。
経理の人手不足が引き起こすリスク

経理の人手不足を放置すると、担当者の負担だけでなく、企業経営そのものにも影響が及びます。ここでは主な3つのリスクを解説します。
ミスや不正が発生しやすくなる
業務負荷が高まると、仕訳の誤りや残高の不一致に気づくのが遅れやすくなります。チェックや承認のプロセスが省略されがちになると、ミスの見落としや不正が起こりやすい環境になってしまいます。
経理上のミスが大きなトラブルに発展すると、税務調査での指摘や追徴課税につながる可能性もあります。会社の社会的信頼にも関わるため、業務品質を維持できる体制づくりが重要です。
業務が属人化し引き継ぎが難しくなる
人手が不足すると、特定の担当者しか分からない業務が生まれやすくなります。マニュアルが整備されないまま業務がブラックボックス化すると、急な休職や退職の際に引き継ぎが困難になります。
引き継ぎがうまくいかなければ、これまで蓄積してきたノウハウが失われてしまう恐れもあります。属人化は業務品質の低下だけでなく、組織としての継続性にもリスクをもたらします。
決算の遅れが経営判断に影響する
経理部門の重要な役割の一つは、正確な数字をタイムリーに経営へ提供することです。人手不足によって月次決算が遅れると、経営会議に提出できる数字が古くなり、意思決定のスピードにも影響します。
最新の数字がないまま投資やコスト削減を検討せざるを得ない状況は、企業にとって大きな機会損失につながりかねません。「今はなんとか回っている」状態でも、将来的なリスクが潜んでいる点に注意が必要です。
採用とアウトソーシングのどちらを選ぶべきかは、業務量の波と属人化の度合いによって変わります。
経理の人手不足を解消する5つの方法

経理の人手不足は、新たな採用だけに頼らず、業務の見直しや外部リソースの活用を組み合わせることで解消をめざせます。ここでは代表的な5つの方法を紹介します。
会計システム・ITツールを導入する
会計システムやITツールを導入すると、仕訳入力や書類作成、経費精算などの定型業務を自動化できます。手作業による入力や計算の手間が減り、経理担当者は付加価値の高い業務に時間を割きやすくなります。
近年は、領収書や請求書をカメラで読み取って自動で仕訳するAI-OCR機能を備えたクラウド会計システムも普及しています。銀行口座やクレジットカードと連携すれば、記帳作業の多くを自動化でき、入力ミスの防止にもつながります。
すぐにシステムを導入するのが難しい場合は、まずエクセルを活用して紙ベースの手作業から脱却することから始めるのも一つの方法です。
業務フローを見直して効率化する
人手不足を解消するには、既存の業務フローを洗い出し、無駄な工程がないか確認することが効果的です。すべての業務を書き出してみると、削減や効率化できる作業が見つかることがあります。
たとえば、毎日残高を確認する必要がある「小口現金」は、立替払いを月1回にまとめて廃止できる可能性があります。また、預金通帳の金額を会計システムに入力していれば十分な場合に、預金出納帳にも二重で記入しているケースなどは、見直しの余地があります。
業務フローを一度すべて棚卸しし、廃止・統合できる作業を探すことで、担当者の負担軽減が期待できます。
マニュアルを整備して属人化を防ぐ
経理業務をマニュアル化しておくと、担当者が急に不在になっても引き継ぎがしやすくなります。ベテラン従業員が一人で抱え込みがちなノウハウを共有し、業務を標準化することが目的です。
マニュアルは一度作って終わりではなく、法改正や業務変更のたびに更新し続けることが大切です。誰が見ても理解できる状態に保つことで、人材が入れ替わっても業務品質を維持しやすくなります。
採用の考え方を見直す
即戦力の経験者だけを狙う採用では、限られた候補者を多くの企業で奪い合うことになり、採用が長期化しやすくなります。会計や数字への素地はありつつも実務経験が浅い人材を「ポテンシャル層」として採用し、社内で育成する考え方も有効です。
実際にデロイトの調査では、人材不足への解決策として「ポテンシャル層を採用し育成する」が41.6%、「経験者採用を強化する」が40.1%と、いずれも多く選ばれています。また、リモート勤務やフレックスタイム制など、働き方の柔軟性を高めることで応募者の母数を広げられる可能性もあります。
出典:デロイト トーマツ グループ「経理・財務・税務部門の35.7%が『人材育成・人材確保』に課題感(2025年度版調査)」
アウトソーシング・人材派遣を活用する
社内のリソースだけで対応が難しい場合は、経理業務の一部を外部に委託する方法があります。アウトソーシングを活用すると、人手不足の解消だけでなく、専門知識を持つプロに任せることによる業務品質の向上も期待できます。
証憑処理やデータ入力、請求・消込といった定型業務を外部委託すれば、社内の担当者は資金計画や予算管理などのコア業務に集中しやすくなります。繁忙期のみのスポット利用や、必要なスキルを持つ人材を一定期間受け入れられる人材派遣も、業務量の変動に柔軟に対応する手段です。
ただし、外部への委託は「丸投げ」にせず、業務フローやルールは社内で設計し、品質を定期的に確認する体制を整えることが重要です。
何から着手すべきか整理がつかない場合は、現状の業務棚卸しからお手伝いできます。
自社に合った解決策を選ぶポイント

ここまで紹介した解決策は、どれか一つに絞る必要はありません。自社の状況に合わせて複数を組み合わせることで、より効果的に人手不足の解消をめざせます。
まず現状を「見える化」する
解決策を検討する前に、まずは自社の状況を整理することが第一歩です。「どの業務にどれくらい時間がかかっているか」「特定の人に依存している業務はどれか」を見える化することで、優先的に手を打つべき領域が明確になります。
人員構成や業務量、担当者ごとのスキルを簡単な表にまとめるだけでも、属人化の度合いや、自動化・外部委託に向いた業務が見えてきます。現状把握の結果が、その後の方針を決める土台になります。
「社内で担う業務」と「任せる業務」を切り分ける
業務を整理したら、社内に残すべき業務と、自動化・外部委託できる業務を切り分けます。判断の目安として、業務の性質とリスクの大きさの2軸で考えると整理しやすくなります。
下記は、業務ごとの担い手を整理した一例です。自社の状況に合わせて、担当の割り振りを検討する際の参考にしてください。
| 業務 | 社内で担う | 自動化・外部委託 |
|---|---|---|
| 会計方針の判断・経営への説明 | ◎(コア業務) | — |
| 仕訳入力・データ照合 | 最終チェック | ◎ |
| 経費精算のチェック | 規程判断 | ◎ |
| 請求書のスキャン・入力 | ルール設計 | ◎ |
| 月次・年次決算の統括 | ◎(方針判断) | 資料作成を補助 |
繰り返し発生する定型業務はシステムや外部リソースに任せ、判断や経営とのコミュニケーションが必要な業務は社内で担うという切り分けが、無理のない体制づくりにつながります。
小さく試して効果を確認する
自動化や外部委託を進める際は、いきなりすべての業務を対象にするのではなく、件数が多くルールが明確な業務から着手するのが現実的です。範囲を絞ることで、導入の効果や課題を検証しやすくなります。
導入前後で、処理にかかる時間や差し戻し件数などを比較し、効果が確認できたら対象範囲を広げていく進め方が有効です。小さく始めて成果を確かめながら広げることで、現場の納得感を得ながら改善を進められます。
経理の人手不足に関するよくある質問

最後に、経理の人手不足について現場でよく挙がる疑問をQ&A形式で補足します。
Q1. 経理はなぜ人手不足になりやすいのですか?
経理業務には簿記や会計、税法などの専門知識が必要で、即戦力となる人材の母数がそもそも限られていることが大きな理由です。加えて、売上に直結しない間接部門であるため採用が後回しになりやすく、法改正対応などで業務量が増えている点も要因として挙げられます。
Q2. 会計システムを導入すれば人手不足は解消できますか?
会計システムの導入により、仕訳入力や経費精算などの定型業務を自動化でき、担当者の負担を大きく軽減できます。ただし、システムだけですべてが解決するわけではなく、業務フローの見直しや外部委託などと組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
Q3. 採用・自動化・外部委託のどれから始めるべきですか?
多くの場合、まず「現状の見える化」と「業務の切り分け」から始めるのがおすすめです。採用は成果が出るまで時間がかかるため、今いるメンバーの負担を減らせる自動化や業務フローの見直しと並行して進めると、効果を実感しやすくなります。
まとめ

経理の人手不足は、専門人材の確保の難しさや間接部門としての採用優先度の低さ、法改正による業務量の増加などが重なって生じています。放置するとミスや不正、属人化、決算の遅れといったリスクにつながるため、早めの対策が重要です。
解決策としては、会計システムの導入、業務フローの見直し、マニュアル整備、採用方針の見直し、アウトソーシングや人材派遣の活用などが挙げられます。まずは自社の現状を見える化し、社内で担う業務と外部に任せる業務を切り分けたうえで、小さく試しながら進めることが解消への近道です。本記事を参考に、自社に合った人手不足の解消方法を検討してみてください。
経理の採用・業務代行のどちらもご相談いただけます。自社に合う組み合わせを一緒に設計します。
