採用に関するお役立ち情報
AIで書類選考はしてよい?公正な採用選考とAIに任せない線引き
「応募が増えて、書類を読み切れない」「AIに点数をつけてもらえば早いのでは」。採用を兼務する担当者から、こうした声をよく聞きます。一方で「AIで落としたら差別にならないか」「履歴書をAIに貼ってよいのか」と不安を感じて、手を止めている会社も少なくありません。
結論から言うと、書類選考にAIを使うこと自体を一律に禁じる日本の法律は、2026年10月時点で確認できません。ただし、厚生労働省が示す「公正な採用選考」の考え方や、職業安定法・個人情報保護法のルールは、AIを使っても変わりません。
この記事では、書類選考でAIに任せてよい作業と任せない作業の線引きを、条文と公的資料にもとづいて整理します。そのまま試せる指示文と出力例、導入前のチェックリストも載せています。
※本記事は2026年10月時点で確認できた法令・公的資料をもとにした一般的な情報提供です。法律相談ではありません。個別の事案の最終判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
結論:AIは「書類を読む補助」まで。合否と点数は人が決める
まず、公的機関がAIと選考の関係をどう示しているかを確認します。厚生労働省の公正採用選考特設サイトは、よくある質問の中で次のように明記しています。
「AIの活用を含むいかなる方法による選考であっても、『応募者に広く門戸を開く』『応募者の適性・能力に基づいた採用基準とする』という公正な採用選考の基本的な考え方を遵守する必要があります。」
つまり、AIを使うかどうかではなく、選考の中身が公正かどうかが問われます。AIを使えば免除されるルールも、AIだから新たに禁止されるルールも、ここでは示されていません。
2025年に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(いわゆるAI推進法)も、研究開発と活用を進めるための基本理念や国の施策を定める法律です。e-Gov法令検索で条文を確認すると、採用や雇用を名指しした規定はありません。事業者には、国の施策への協力などが求められています(第7条)。
出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号・e-Gov法令検索)
では、どこまでAIに任せればよいのでしょうか。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを業務で使う事業者(AI利用者)に向けて、出力結果を特定の個人の評価の参考にする場合は、AIを利用している旨を評価対象者に通知し、自動化バイアス(AIの答えを信じすぎる傾向)も踏まえて人間による合理的な判断のもと、求めに応じて説明責任を果たすよう求めています。
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(総務省・経済産業省・2026年3月31日)
このガイドラインは法的拘束力のない「ソフトロー」と位置づけられています。それでも、採用のように人の人生に影響する場面では、実務の目安として重く見てよい内容です。これらを踏まえ、本記事では次の3段階で線を引くことをおすすめします。
| 段階 | AIの使い方 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 1 | 書類の要約、評価基準との照合メモ、面接で確認したい点の洗い出し | 進めてよい | 判断材料を整理するだけで、評価は人が行う |
| 2 | AIが点数や順位をつけ、人がそれを参考に判断する | 慎重に(中小企業は当面おすすめしない) | 点数の根拠を説明しにくく、AIの順位に判断が引きずられやすい |
| 3 | AIが合否を決め、人は確認しない | 行わない | 適性・能力に基づく判断かを人が確かめられず、説明もできない |
ヨビコムのAI採用支援も「下書きはAI、送る・決めるのは人」を基本にしています。応募者の氏名や連絡先をAIに渡さず応募者IDで扱うこと、合否や点数づけをAIにさせないことを原則としています。
書類選考のAI利用に関わる法律・ガイドライン一覧
書類選考でAIを使うときに確認したいルールを、一覧にまとめます。どれも「AI専用の規制」ではありません。既存の採用ルールが、AIを使う場面にもそのまま及ぶと考えてください。
| ルール | 求めていること(要旨) | 書類選考での意味 |
|---|---|---|
| 公正な採用選考の基本(厚生労働省) | 応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づいた基準で選考する | AIに使わせる評価基準も、職務に必要な適性・能力に限る |
| 職業安定法 第5条の5 | 求職者等の個人情報は、業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして収集・保管・使用する | AIに渡す情報も、選考に必要な範囲に絞る |
| 職業安定法の指針(第5) | 人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地、思想・信条、労働組合の加入状況は原則として収集しない | こうした情報をAIの入力にも出力にも含めない |
| 個人情報保護法 第17条・第21条 | 利用目的をできる限り特定し、通知または公表する(書面で直接取得するときは明示) | AIで分析・要約するなら、その旨が利用目的から予測できるようにする |
| 個人情報保護法 第27条・第28条・第25条 | 第三者提供の制限、外国にある第三者への提供の制限、委託先の監督 | AIサービスの選定時に、データの扱いと保存場所を確認する |
| AI事業者ガイドライン(第1.2版) | バイアスへの配慮、個人情報の不適切な入力防止、評価に使うときの通知と人による判断 | 社内ルールの土台にする |
出典:公正な採用選考の基本(厚生労働省)/職業安定法(e-Gov法令検索)/募集・求人業務取扱要領(厚生労働省職業安定局・令和7年6月)/個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)/AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(総務省・経済産業省・2026年3月31日)
「把握しないこと」は書類選考の入口から
厚生労働省は、応募者の適性・能力と関係のない事項を応募用紙に書かせたり、面接で尋ねたりして把握すること自体が、就職差別につながるおそれがあると説明しています。採用基準にしないつもりでも、把握すれば結果として採否に影響してしまうからです。
配慮すべき事項としては、本籍・出生地、家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・学歴・収入など)、住宅状況、生活環境・家庭環境、宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や学生運動などの社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書が挙げられています。
AIに書類を読ませると、こうした情報も含めて要約したり、評価の材料にしたりするおそれがあります。AIに渡す前に、配慮すべき事項が書かれた欄を外すことが、書類選考でAIを使う第一歩です。
利用目的は「分析するなら、分析すると分かるように」
個人情報保護委員会の通則編ガイドラインは、本人から得た情報から本人に関する行動・関心等を分析する場合、どのような取扱いが行われているかを本人が予測・想定できる程度に利用目的を特定しなければならない、としています。
出典:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(個人情報保護委員会)
また厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」は、職業安定法第5条の5の目的の明示について、漠然と「採用のために使用します。」と示すだけでは足りないと説明しています。業務上、通常想定されない第三者に個人情報を提供する場合や、第三者に保管を依頼する場合は、その旨を明示する必要があるとも書かれています。
出典:募集・求人業務取扱要領(厚生労働省職業安定局・令和7年6月)
EUで採用する会社は「高リスクAI」の扱いに注意
参考として、EUのAI法(規則(EU)2024/1689)は、附属書IIIの4(a)で、求人広告の配信、応募書類の分析・選別、候補者の評価に使うAIを高リスクAIとして挙げています。利用者(deployer)には、人による監督や、対象となる人への通知などが求められます(第26条)。
この高リスクAIの義務の適用日は、2026年7月24日に官報掲載された改正規則(EU)2026/1744により、附属書IIIの分類について2027年12月2日へ変更されました。日本国内だけで採用する中小企業がすぐ対象になる場面は限られますが、EU域内の拠点で採用する場合などは専門家に確認してください。
出典:Regulation (EU) 2024/1689(EU AI法・EUR-Lex)/Regulation (EU) 2026/1744(Digital Omnibus on AI・EU官報2026年7月24日)
書類選考でAIに任せてよい作業・任せない作業

次に、書類選考の作業を分解して、AIと人の役割を表にします。ポイントは、AIを「判断する人」ではなく「読み取りを手伝う人」として扱うことです。
| 作業 | AIに任せてよいこと | 人がやること・確認すること |
|---|---|---|
| 評価基準表づくり | 職務内容から、必須条件・歓迎条件・確認方法の案を出す | 各項目が職務に必要か、配慮すべき事項が入っていないかを確認し、確定する |
| 応募書類の要約 | 応募者IDに置き換えた職務経歴を、評価基準の順に要約する | 原文を読み、要約の抜けや誤りがないか照合する |
| 評価基準との照合 | 項目ごとに「記載あり/記載なし/読み取れない」を整理する | 記載内容を評価し、通過・保留・見送りを判断する |
| 面接で確認したい点 | 書類だけでは分からない点を質問案にする | 質問が適性・能力と関係あるかを確認する |
| 応募者への連絡文 | 氏名を入れない形で、通過・見送りの連絡文を下書きする | 内容を確認し、人が送信する |
| 合否・点数・順位 | 任せない | 評価基準に沿って人が決め、理由を記録する |
AIに任せないこと(社内ルールに明記しておく)
- 合否の決定、点数づけ、応募者の順位づけ
- 書類に書かれていない情報の推測(年齢・性別・出身地・家族構成・健康状態などを推し量らせること)
- 応募者の氏名・住所・電話番号・メールアドレス・顔写真の入力
- 求人媒体や採用管理システムの画面をAIに操作させること
- 見送りの理由を、AIの出力のまま応募者に伝えること
とくに2つ目は見落としがちです。「この経歴から年齢層を推定して」「通勤できそうか住所から判断して」といった指示は、適性・能力と関係のない情報を把握することにつながります。指示文の段階で禁止しておきましょう。
AIを使った選考全般の考え方は、AI面接とは?仕組み・メリット・主要サービスの比較でも解説しています。面接にAIを使う場合も、判断を人に残す点は同じです。
公正な選考を崩しやすい4つの落とし穴
AIを書類選考に入れたときに起こりやすい失敗を、4つに整理します。どれも「AIが悪い」のではなく、使い方の設計で防げるものです。
落とし穴1:配慮すべき情報がAIの要約に混ざる
履歴書の趣味・特技欄に愛読書や尊敬する人物が書かれていたり、職務経歴書に家族の事情が書かれていたりすることがあります。そのままAIに渡すと、要約に残ったり「人柄」の判断材料に使われたりします。
対策は、AIに渡す範囲を「職務経歴・資格・スキル・志望動機のうち職務に関係する部分」に限ることです。指示文にも「職務に関係しない情報は要約に含めない」と書いておきます。
落とし穴2:過去の採用者に似た人を高く評価してしまう
「これまで活躍した社員の経歴に近い人を選んで」という指示は、一見合理的です。しかし過去の採用者が特定の学校や年齢層に偏っていれば、その偏りをAIが再現するおそれがあります。
AI事業者ガイドラインは「公平性」の原則として、AIの出力結果が公平性を欠くことがないよう、AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討し、潜在的なバイアス等に留意するよう求めています。
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)概要(総務省・経済産業省・2026年3月31日)
落とし穴3:AIの要約だけを読んで原文を読まない
要約は便利ですが、書かれていないことを補ったり、逆に大事な一文を落としたりすることがあります。忙しいほど要約だけで判断したくなりますが、これが先に触れた自動化バイアスです。
判定する前に、毎回原文を読む。この一文を手順に入れておくだけで、見落としはかなり減らせます。
落とし穴4:見送りの理由を説明できない
応募者から「なぜ不採用なのか」と問い合わせを受けたとき、「AIがそう判定したから」では説明になりません。評価基準表に沿って人が判断し、項目ごとの理由を短く記録しておけば、社内でも説明できる状態を保てます。
なお、応募者が生成AIで書類を整えて応募してくることも増えています。文章のうまさで評価せず、職務に関係する事実(経験年数、担当した業務、資格など)で評価し、面接で確かめる運用が現実的です。
AIで書類選考を補助する5ステップ
ここからは、中小企業が今日から試せる進め方を手順表にします。最初は1つの求人、数名分の書類で試し、問題がないかを確かめてから広げてください。
| ステップ | やること | 担当 | できあがるもの |
|---|---|---|---|
| 1. 評価基準を決める | 必須条件・歓迎条件・確認方法を職務内容から決める。配慮すべき事項が入っていないか確認する | 採用担当+配属先の責任者 | 評価基準表(1枚) |
| 2. 書類をID化する | 氏名・住所・連絡先・写真・生年月日を外し、応募者ID(例:A-0012)に置き換える。対照表は社内だけで保管する | 採用担当 | ID化した職務経歴テキスト |
| 3. AIで要約・照合する | 社内で承認したAIサービスに、評価基準とID化した経歴を渡し、照合メモを作らせる | 採用担当 | 照合メモ(判定なし) |
| 4. 人が判定する | 原文を読み、照合メモの誤りを直したうえで、評価基準に沿って判断する | 採用担当+責任者 | 通過・保留・見送りの判断 |
| 5. 記録を残す | 判断理由、AIを使った範囲、確認者を記録する | 採用担当 | 選考記録 |
ステップ1の評価基準表は、面接の評価シートと共通にすると手間が減ります。項目の作り方は面接シートの作り方|テンプレートと評価項目の設計が参考になります。募集要項に書いた応募資格と食い違わないように、募集要項とは?必須項目と書き方もあわせて確認してください。
ステップ2の対照表(応募者IDと氏名の対応表)は、AIに渡さない社内ファイルで管理します。IDに置き換えても、社内で照合すれば本人が分かる情報であることは変わりません。個人情報保護委員会のQ&A(Q1-19)も、共通のIDで社内の他の情報と参照できる場合は「容易に照合することができる」と解され得ると説明しています。
出典:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(個人情報保護委員会)
書類選考でAIを使うときの社内ルール、記録様式、応募者向けの説明文の例は、無料資料『採用×生成AI リスクとルールの手引き』にまとめています。
そのまま試せる指示文と出力例
ここでは、ChatGPT、Claude、Gemini、Microsoft Copilotなどの対話型AIで使える指示文を3つ紹介します。いずれも、社内で利用を認めたサービス・プランで、応募者の氏名や連絡先を入れずに使うことが前提です。
指示文1:職務内容から評価基準表のたたき台を作る
指示文の例
あなたは中小企業の採用担当者を支援するアシスタントです。
次の職務内容をもとに、書類選考の評価基準表のたたき台を作ってください。
【条件】
・項目は「必須条件」「歓迎条件」に分け、合計6項目以内
・各項目に「書類で確認できる記載の例」と「面接で確認する方法」を付ける
・年齢、性別、出身地、家族、住居、思想・信条など、職務に関係しない項目は入れない
・点数や合否の基準は作らない
【職務内容】
職種:営業事務(正社員)
主な業務:受発注データの入力、見積書・請求書の作成、電話とメールでの顧客対応
使うツール:表計算ソフト、社内の販売管理システム
出力例(※説明用の例です)
■必須条件
1. 受発注・請求などの事務経験
書類で確認:職務経歴に「受注入力」「請求書作成」などの記載
面接で確認:担当した件数や、ミスを防ぐ工夫を具体的に聞く
2. 表計算ソフトの基本操作
書類で確認:使用ツールや作成した資料の記載
面接で確認:よく使う関数や集計の方法を聞く
3. 電話・メールでの社外対応の経験
書類で確認:顧客対応、問い合わせ対応の記載
面接で確認:対応に困った場面と、そのときの対応を聞く
■歓迎条件
4. 販売管理システムなど業務システムの利用経験
5. 複数の作業の優先順位をつけて進めた経験
6. 簿記などの関連資格
※点数や合否の基準は含めていません。項目が職務に必要か、担当者が確認してください。
指示文2:ID化した職務経歴を評価基準と照合する(判定しない)
指示文の例
次の「評価基準」と「応募者A-0012の職務経歴」を照合し、項目ごとに整理してください。
【ルール】
・各項目を「記載あり」「記載なし」「読み取れない」のいずれかで示し、根拠となる記載をそのまま引用する
・書かれていないことを推測しない(年齢、性別、家族、住所などを推し量らない)
・合否、点数、順位、総合評価は出さない
・最後に、面接で確認したい点を3つまで挙げる
【評価基準】
(指示文1で確定させた評価基準表を貼る)
【応募者A-0012の職務経歴】
2019年〜現在:〇〇株式会社 業務部。受注データの入力(1日約40件)、月末の請求書作成を担当。
表計算ソフトで売上集計表を作成。電話での納期問い合わせ対応。
出力例(※説明用の例です)
応募者A-0012 照合メモ
1. 受発注・請求などの事務経験:記載あり
根拠:「受注データの入力(1日約40件)、月末の請求書作成を担当」
2. 表計算ソフトの基本操作:記載あり
根拠:「表計算ソフトで売上集計表を作成」
3. 電話・メールでの社外対応:一部記載あり
根拠:「電話での納期問い合わせ対応」(メール対応の記載はなし)
4. 業務システムの利用経験:記載なし
5. 優先順位をつけて進めた経験:読み取れない
6. 関連資格:記載なし
面接で確認したい点
・請求書作成で、誤りを防ぐためにしていた確認手順
・メールでの顧客対応の経験の有無と内容
・業務が重なったときの進め方
※合否・点数は判定していません。原文と照合のうえ、担当者が判断してください。
指示文3:評価基準や質問に配慮すべき事項が混ざっていないか点検する
指示文の例
次の「評価基準」と「面接質問案」を点検してください。
厚生労働省「公正な採用選考の基本」で配慮すべき事項とされる内容
(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境、宗教、支持政党、人生観・生活信条、
尊敬する人物、思想、労働組合・社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書)に
当たる、または当たるおそれがある項目があれば、理由と言い換え案を示してください。
判断に迷うものは「要確認」としてください。
(評価基準と質問案を貼る)
出力例(※説明用の例です)
点検結果
・質問案4「ご両親はどんなお仕事をされていますか」
→ 家族に関すること(家族の職業)に当たります。削除をおすすめします。
・質問案7「休日はどんな本を読みますか」
→ 愛読書に関すること(思想・信条にかかわる事項)に当たるおそれがあります。
言い換え案:「仕事に関する知識を、どのような方法で身につけていますか」
・評価基準「地元出身で長く働ける人」
→ 出生地に関することに当たるおそれがあります。要確認。
言い換え案:「勤務地(〇〇市)での勤務が可能であること」
※最終的な判断は担当者が行ってください。
指示文3のように、AIを「チェック役」に使うと、面接官ごとの質問のばらつきも見つけやすくなります。ただし、AIの点検で漏れがないとは限りません。最終確認は人が行ってください。
応募者への説明と、導入前のチェックリスト
AIを書類選考に使うなら、応募者への説明も準備しておきます。法律上の利用目的の通知・明示に加え、AI事業者ガイドラインが求める「評価の参考にする場合の通知」も意識した文例です。
応募者向けの説明文の例(応募フォームや受付メールに記載)
【応募書類の取り扱いについて】
ご提出いただいた応募書類は、当社の採用選考と、選考に関するご連絡のために利用します。
選考の過程で、氏名・連絡先を除いた職務経歴の内容を、当社が利用を認めた生成AIサービスで
要約・整理し、担当者が評価の参考にすることがあります。
合否はすべて当社の採用担当者が判断し、AIが合否を決めることはありません。
お問い合わせ:〇〇株式会社 総務部 採用担当(メールアドレス)
海外の事業者が提供するAIサービスを使う場合は、個人情報保護法第28条(外国にある第三者への提供)との関係も確認が必要です。個人情報保護委員会のQ&A(Q12-3、Q12-4)は、サーバーを運営する事業者が個人データを取り扱わないこととなっている場合には外国にある第三者への提供に当たらない一方、外国でデータを扱うことになるため、その国の制度を把握したうえで安全管理措置を講じる必要があると説明しています。
出典:「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&A(個人情報保護委員会)
どの条件に当てはまるかは、サービスの利用規約や契約内容によって変わります。判断に迷う場合は、専門家に確認してください。
導入前チェックリスト
- □ 評価基準表があり、各項目が職務に必要な適性・能力に限られている
- □ 評価基準・質問案に、配慮すべき事項(本籍・家族・思想など)が含まれていない
- □ AIに渡す情報から、氏名・住所・連絡先・写真・生年月日を外し、応募者IDに置き換える手順がある
- □ ID対照表はAIに渡さず、社内の限られた担当者だけが見られる場所に保管している
- □ 使うAIサービスとプランを決め、入力データの学習利用・保存期間・保存場所を利用規約で確認した
- □ 合否・点数・順位をAIに出させない旨を、指示文と社内ルールに書いた
- □ 判定の前に原文を読む手順が入っている
- □ 応募者向けに、利用目的とAIの使い方を説明する文面を用意した
- □ 判断理由・AIを使った範囲・確認者を記録する様式がある
- □ 迷ったときの相談先(社内の責任者、外部の専門家)を決めた
応募者への通過・見送りの連絡文の書き方は、応募者対応メールの書き方|選考フェーズ別のテンプレートも参考にしてください。
ヨビコムの運用:履歴書をそのままAIに入れない
Digital&が運営するヨビコムでは、書類選考の場面でもAIを補助的に使うことはありますが、次のルールを決めています。

| ルール | 具体的な運用 |
|---|---|
| 入力は最小限にする | 氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどは原則入力しない。必要に応じて応募者IDに置き換え、履歴書・職務経歴書を無条件にAIへ入れない |
| 利用環境を確かめる | 使うAIサービスの学習利用、保存期間、アクセス権限を確認し、支援先との契約や個人情報の利用目的に合っているかを確かめる |
| 判断にAIを直接使わない | AIに合否や点数を決めさせない。用途は面接で確認したい点の整理などに限り、AIが出した要約や評価は人が確認する |
書類の文章は、生成AIで誰でも整えやすくなっています。書類の表現の良し悪しで判断するのではなく、書類で気になった点を面接で本人に確かめるという役割分担にすると、AIを使っても公正な選考を保ちやすくなります。なお、IDに置き換えた情報でも、社内で元の応募者と照らし合わせられる場合は個人情報として管理しています。
よくある質問
Q1. AIに点数をつけさせて、一定点以下を足切りするのは違法ですか?
そのやり方を一律に違法と定めた日本の規定は、2026年10月時点で確認できません。ただし、評価基準が適性・能力に基づいているか、配慮すべき事項が入り込んでいないかを人が確かめられない運用は、公正な採用選考の考え方から外れるおそれがあります。説明もしにくくなるため、中小企業では当面おすすめしません。具体的な運用の適否は専門家にご確認ください。
Q2. 無料版の対話型AIに、履歴書をそのまま貼ってもよいですか?
避けてください。個人情報保護委員会は2023年6月2日の注意喚起で、個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合は法違反となる可能性があるとして、サービス提供事業者が機械学習に利用しないこと等を十分に確認するよう求めています。まずは氏名・連絡先を外し、社内で認めたサービスだけを使う運用にしましょう。
出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(個人情報保護委員会・2023年6月2日)
Q3. AIを使っていることを応募者に伝える義務はありますか?
個人情報保護法や職業安定法は、利用目的の特定や通知・明示を求めています。AIを使うこと自体の告知を明文で義務づけた規定は確認できませんが、AIで分析・要約する取扱いが利用目的から予測できるようにしておく必要があります。AI事業者ガイドラインは、評価の参考にする場合はAIを利用している旨を通知するよう求めているため、説明文に一言入れておくのが安全です。
Q4. 採用管理システムのAI書類選考機能を導入するときは、何を確認すべきですか?
最低限、①何の情報をもとに評価や並べ替えをしているか、②根拠が画面で確認できるか、③入力データが学習に使われるか、④データの保存場所と削除方法、⑤人が最終判断する設定にできるか、の5点を確認してください。仕様はサービスごとに異なるため、提供事業者に書面で確認しておくと安心です。
Q5. 応募者が生成AIで書いた書類は、不利に扱ってよいですか?
書類の文章が生成AIで整えられていても、それだけで評価を下げる理由にはなりません。文章表現ではなく、経験・資格・担当業務などの事実で評価し、面接で本人の言葉で確かめるのが基本です。
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まとめ
書類選考にAIを使うこと自体を一律に禁じる法律は、2026年10月時点で確認できません。一方で、厚生労働省はAIを含むどんな方法でも、公正な採用選考の基本的な考え方を守る必要があると明記しています。
実務では、AIを「書類を読む補助」に限り、合否・点数・順位は人が決める線引きが現実的です。評価基準表を先に作り、応募者IDに置き換えた情報だけをAIに渡し、判定の前に原文を読む。この3つを守るだけでも、AIの便利さと公正さを両立しやすくなります。
まずは1つの求人で、指示文1の評価基準表づくりから試してみてください。
※本記事は2026年10月時点で確認できた法令・公的資料をもとにした一般的な情報提供です。法律相談ではありません。個別の事案の最終判断は、弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

中小企業・地方企業の採用代行(RPO)を行うヨビコムの編集部です。飲食・建設・不動産・製造業・介護などの採用支援で得た知見をもとに、採用担当者の実務に役立つ情報をお届けしています。
