注文請書(ちゅうもんうけしょ)とは、注文書を受け取った請負人(協力会社など)が、その注文を引き受けたことを示して注文者に渡す書類です。建設工事では、注文書と注文請書をやり取りすることで請負契約を結ぶ方法が広く使われています。注文請書は、請負人が作成して署名・押印するため、印紙税の「請負に関する契約書」として収入印紙が必要になります。
ただし、建設業法は、建設工事の請負契約を書面で結び、決められた事項を記載することを求めています。注文書と注文請書だけをやり取りしていて、法定の記載事項が書かれた基本契約書も約款もない場合は、建設業法違反になります。また、電子契約に切り替えると、収入印紙が不要になるなど、手続きの選び方で負担も変わります。
この記事では、注文請書と注文書の違い、建設業法で必要な記載事項と2つの契約の形、注文請書の記入例、印紙税の金額と軽減措置、電子契約の扱いを解説します。
この記事でわかること
- 注文請書と注文書の違いと、それぞれの役割
- 建設業法で必要な契約書面の16の記載事項と、注文書・請書で契約する2つの形
- 注文請書の記入例
- 注文請書の印紙税の金額(本則と建設工事の軽減措置)と、注文書が課税になる場合
- 電子契約(PDF・電子契約サービス)にした場合の印紙と、建設業法の要件
協力会社との注文・締め・支払・控除のルールを、社内ルールとして文書にするための雛形(Word)と解説資料をお届けします。
注文請書とは|注文書との違い
| 注文書 | 注文請書 | |
|---|---|---|
| 作る人 | 注文者(元請・発注者) | 請負人(協力会社・受注者) |
| 渡す先 | 請負人 | 注文者 |
| 意味 | 工事を依頼する(契約の申込み) | 依頼を引き受ける(申込みの承諾) |
| 署名・押印 | 注文者 | 請負人 |
| 印紙税 | 原則として課税されない(例外あり) | 請負に関する契約書(第2号文書)として課税。印紙は作成した請負人が負担する |
一般には、元請が注文書を2部(または注文書と請書の様式をセットで)作って協力会社に送り、協力会社が請書に記入・押印して返送します。請書は元請が保管し、注文書は協力会社が保管します。
建設業法で必要なこと|着工前の書面と16の記載事項
建設業法第19条は、建設工事の請負契約の当事者が、契約の締結にあたって決められた事項を書面に記載し、署名または記名押印をして、相互に交付しなければならないとしています。国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」は、契約書面の交付は、災害時などやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わなければならないとしています。
| No | 契約書面の記載事項(建設業法第19条第1項・要旨) |
|---|---|
| 1 | 工事内容 |
| 2 | 請負代金の額 |
| 3 | 工事着手の時期と工事完成の時期 |
| 4 | 工事を施工しない日・時間帯の定めをするときは、その内容 |
| 5 | 前金払・出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期と方法 |
| 6 | 設計変更・工事着手の延期・工事の中止の申出があった場合の工期の変更、請負代金の額の変更、損害の負担とその額の算定方法 |
| 7 | 天災その他不可抗力による工期の変更・損害の負担とその額の算定方法 |
| 8 | 価格等の変動・変更にもとづく工事内容の変更・請負代金の額の変更と、その額の算定方法 |
| 9 | 工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担 |
| 10 | 注文者が資材を提供し、または機械を貸与するときは、その内容と方法 |
| 11 | 工事の完成を確認するための検査の時期と方法、引渡しの時期 |
| 12 | 工事完成後の請負代金の支払の時期と方法 |
| 13 | 契約不適合責任、またはその責任の履行に関して保証保険契約の締結などの措置の定めをするときは、その内容 |
| 14 | 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合の遅延利息・違約金その他の損害金 |
| 15 | 契約に関する紛争の解決方法 |
| 16 | その他国土交通省令で定める事項 |
8の「価格等の変動」については、2024年12月13日施行の改正で、請負代金の額の変更の方法まで書くことが必要になりました。建設業法改正の全体は建設業法改正のポイントで解説しています。
注文書・請書で契約する2つの形
16の事項を毎回すべて注文書・請書に書くのは大変です。ガイドラインでは、注文書・請書で契約する場合に、次のどちらかの形をとることが示されています。
| 形 | やり方 |
|---|---|
| ア.基本契約書+注文書・請書 | 法定の記載事項のうち、注文書・請書に個別に書かない事項を基本契約書に書き、双方が署名または記名押印して交付する。個別の工事は、工事内容などを書いた注文書・請書で行い、「それ以外の事項は基本契約書の定めによる」旨を明記する |
| イ.注文書・請書+約款 | 基本契約書がない場合は、注文書と請書のそれぞれに、法定の記載事項を盛り込んだ同じ内容の約款を添付または印刷する。複数枚にわたるときは割印を押し、「個別に書いた事項以外は約款の定めによる」旨を明記する |
基本契約書を交わさず、約款も添付しないで、注文書と請書だけで契約することは、建設業法第19条第1項に違反するとされています。協力会社と継続して取引する場合は、年度の初めなどに基本契約書を交わし、個別の工事は注文書・請書でやり取りするアの形が実務では扱いやすい方法です。追加・変更の工事も、変更の内容を書面にして交わす必要があります(建設業法第19条第2項)。安全協力会費などを支払から差し引く場合は、その内容と算定根拠も見積条件と契約書面に示しておきます(安全協力会費とは?)。常用(人工)で発注する場合の単価や時間外の扱いも、注文書で決めておきます(常用(人工)請求書の書き方)。
注文請書の記入例
アの形(基本契約書を交わしたうえで、個別の工事を注文書・請書で行う)の注文請書の例です。※会社名・工事・金額はすべて架空です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 表題・宛先 | 注文請書/株式会社サンプル建設 御中 |
| 注文書の番号・日付 | 注文書 No.2026-0215(2026年10月20日付) |
| 工事名・工事番号 | F社 倉庫改修工事のうち事務所部分の内装工事(工事番号2026-030) |
| 工事場所 | (現場の住所) |
| 工事内容 | 軽量鉄骨下地・石膏ボード張り・クロス張り(別紙の内訳書・図面のとおり) |
| 請負代金の額 | 4,620,000円(うち取引に係る消費税及び地方消費税の額 420,000円) |
| 工期 | 着手 2026年12月7日/完成 2026年12月25日 |
| 支払の条件 | 月末締め・翌月末現金払い(出来高による部分払あり) |
| その他 | 上記以外の事項は、2026年4月1日付 工事下請基本契約書の定めによる |
| 請負人 | 西山内装(架空)(住所・代表者名・記名押印) |
| 請書の作成日 | 2026年10月22日 |
請書には、注文書の番号と日付を書き、どの注文を引き受けたのかを特定できるようにします。請負代金の額は、消費税額等を区分して記載しておくと、次に説明する印紙税の記載金額が税抜の金額になります。
注文請書の印紙税|金額と建設工事の軽減措置
工事の注文請書は、請負人だけが記名押印したものでも、印紙税の第2号文書(請負に関する契約書)にあたります。印紙税は、契約書に書かれた金額(記載金額)に応じて決まります。建設工事の請負に関する契約書のうち、2014年4月1日から2027年3月31日までに作成され、記載金額が100万円を超えるものは、税率が軽減されています。
| 記載金額 | 本則の税額 | 建設工事の軽減後の税額 |
|---|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 | 200円(軽減の対象外) |
| 100万円を超え200万円以下 | 400円 | 200円 |
| 200万円を超え300万円以下 | 1千円 | 500円 |
| 300万円を超え500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
| 500万円を超え1千万円以下 | 1万円 | 5千円 |
| 1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5千万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
| 5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
| 10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
| 50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 | 200円 |
※出典:国税庁 タックスアンサー No.7140・No.7108。軽減措置の期限(2027年3月31日)の後の扱いは、今後の税制改正で確認してください。
上の記入例では、消費税額等(420,000円)が区分して記載されているため、記載金額は税抜の4,200,000円です。300万円を超え500万円以下にあたり、軽減後の税額は1,000円です。消費税額等を区分せずに4,620,000円とだけ書いた場合も、同じ区分(300万円超500万円以下)のため税額は変わりませんが、金額が区分の境目に近いときは差が出ます。
注文書が課税文書になる場合
注文書は、契約の申込みの書類なので、原則として課税されません。ただし、次のような場合は、注文書も請負に関する契約書として印紙税の対象になります。
- 基本契約書などにもとづく申込みで、注文書を交付すれば自動的に個別の契約が成立することになっているもの
- 見積書など、相手方が作成した文書にもとづく申込みであることが記載されているもの
- 注文者と請負人の双方が署名または押印しているもの
はじめの2つは、注文書に「別に請書を作成する」旨が書かれていれば対象外です。3つ目は、請書を作成する旨が書かれていても課税されます。注文書の様式を変えるときは、この点を確認しておきます。
電子契約にした場合|印紙は不要、建設業法の要件は満たす
国税庁は、契約内容を電磁的記録(PDFファイルや電子契約サービスのデータ)で送った場合について、電磁的記録は印紙税の課税文書に含まれないため、印紙税は課税されないとしています。紙の注文請書を電子契約に切り替えると、収入印紙の負担がなくなります。
建設業法では、書面による契約に代えて、相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使う方法などで契約を結ぶことが認められています(第19条第3項)。その場合は、相手方が書面に出力できること、改変がされていないかを確認できること、本人であることを確認できることなど、省令で定める技術的な基準を満たす必要があります。電子契約サービスを選ぶときは、これらの基準への対応を確認します。
| 紙の注文書・請書 | 電子契約 | |
|---|---|---|
| 印紙税 | 注文請書に必要(請負人が負担) | 不要 |
| 建設業法の要件 | 法定の記載事項、署名または記名押印、相互に交付 | 相手方の承諾、省令の技術的基準(出力・改変の確認・本人確認など) |
| 手間 | 印刷・押印・郵送・保管 | 電子契約サービスの操作、データの保存 |
電子データで受け取った契約書類の保存は、電子帳簿保存法の電子取引のルールに沿って行います。
AIで注文書と請書を照らし合わせる
AIは、注文書と請書(または契約書と約款)の文面を読んで、記載事項の抜けや、注文書と請書で食い違っている項目を挙げる作業に使えます。AIの指摘は確認の候補として使い、契約の内容の判断は担当者と専門家が行うのが原則です。
コピーして使えるプロンプト(注文書・請書の点検)
あなたは建設会社の工務担当の補佐です。 次の「注文書」「注文請書」「基本契約書(または約款)」の文面を照らし合わせてください。 # お願いしたいこと 1. 注文書と注文請書で、工事名・工事内容・請負代金の額・工期・支払の条件が一致しているかを表にする 2. 建設業法第19条第1項の記載事項(工事内容、請負代金の額、着手と完成の時期、 前金払・部分払、設計変更等の場合の扱い、不可抗力、価格等の変動の場合の変更方法、 第三者への損害、資材の提供、検査と引渡し、完成後の支払、契約不適合責任、 遅延利息・違約金、紛争の解決方法)が、3つの書類のどこに書かれているかを一覧にする 3. どの書類にも見当たらない事項は【記載なし】と書く 4. 判断できないものは推測で書かず【要確認】とする # 注文書 【ここに貼り付け】 # 注文請書 【ここに貼り付け】 # 基本契約書(または約款) 【ここに貼り付け】
建設AIシフトの業務一元管理は、実行予算・発注・注文書・支払を工事番号でつなぐオーダーメイドのシステムです。注文書の発行と、発注額と実行予算の照合、支払までを1つの流れで管理できます。
AIやシステムに任せないこと
- 契約の内容と条件の決定(協力会社と協議して決める)
- 建設業法・印紙税の適用の最終判断(専門家の確認に従う)
- 電子契約の導入時の相手方の承諾の取得
注意
記入例の会社・工事・金額は、すべて説明用の架空の例です。建設業法の記載事項と注文書・請書の要件は e-Gov法令検索と国土交通省のガイドライン、印紙税は国税庁の公表資料を、2026年10月29日に確認したものです。軽減措置の期限など税制は改正されることがあるため、最新の情報を確認してください。契約や税務の判断は専門家に確認してください。契約書類をAIに入力する場合は、社内ルールと利用するサービスの規約を確認してください。
注文請書のチェックリスト
- 協力会社と基本契約書を交わしている(または注文書・請書の両方に約款を付けている)
- 基本契約書・約款に、建設業法第19条第1項の記載事項がそろっている
- 注文書・請書を、下請工事の着工前に交わしている
- 請書に、注文書の番号・日付と、それ以外は基本契約書による旨を書いている
- 請負代金の額は、消費税額等を区分して記載している
- 記載金額に応じた収入印紙を貼り、消印している(紙の場合)
- 注文書の様式が、課税文書にあたる形になっていないか確認している
- 追加・変更の工事も、変更の内容を書面で交わしている
- 電子契約にする場合は、相手方の承諾を得ている
注文請書でよくある質問
注文請書とは何ですか?
注文書を受け取った請負人が、その注文を引き受けたことを示して注文者に渡す書類です。注文書と注文請書をやり取りすることで、請負契約を結ぶ方法が建設工事で広く使われています。
注文書と注文請書の違いは?
注文書は注文者が作る契約の申込みの書類、注文請書は請負人が作る承諾の書類です。印紙税は、注文請書には原則としてかかり、注文書には原則としてかかりません(一定の場合を除く)。
注文請書の印紙はいくらですか?
記載金額に応じて決まります。建設工事の請負に関する契約書は、2027年3月31日までに作成されたもので記載金額が100万円を超えるものに軽減措置があり、例えば300万円超500万円以下は1,000円、500万円超1千万円以下は5,000円です。
注文書と注文請書だけで、建設業法上の契約になりますか?
法定の記載事項を満たす必要があります。基本契約書を交わしたうえで個別の工事を注文書・請書で行うか、注文書と請書の両方に法定の記載事項を盛り込んだ約款を添付する必要があります。どちらもない場合は建設業法第19条第1項に違反するとされています。
電子契約なら印紙は不要ですか?
国税庁は、電磁的記録は印紙税の課税文書に含まれないため、印紙税は課税されないとしています。建設業法上は、相手方の承諾を得て、省令の技術的な基準を満たす方法で行う必要があります。
まとめ
- 注文請書は、請負人が注文を引き受けたことを示す書類。印紙税の第2号文書にあたる
- 建設業法では、着工前に、16の記載事項をそろえた書面を交わす必要がある
- 注文書・請書で契約するなら、基本契約書を交わすか、両方に約款を付ける
- 印紙税は記載金額で決まり、建設工事は2027年3月31日まで軽減措置がある。消費税額等は区分して書く
- 電子契約なら印紙は不要。相手方の承諾と省令の基準を満たして行う
協力会社との契約から支払までのルールを、1つの文書にまとめませんか
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参考・出典(2026年10月29日確認)
- e-Gov法令検索「建設業法」第19条(建設工事の請負契約の内容)
- 国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン(第12版)」(2026年1月)2.書面による契約締結
- 国税庁 質疑応答事例「工事注文請書」
- 国税庁 タックスアンサー No.7140「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」
- 国税庁 タックスアンサー No.7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
- 国税庁 タックスアンサー No.7118「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」
- 国税庁 タックスアンサー No.7124「消費税額等が区分記載された契約書等の記載金額」
- 国税庁 質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
