積算とは、設計図書(図面・仕様書)から工事に必要な数量を拾い出し、単価を掛けて工事費を計算する作業です。国の公共建築工事積算基準は、予定価格のもとになる工事費内訳書の工事費を積算するための基準と位置づけられています。
積算は「いくらかかるか」を出す作業です。見積は、積算の結果に利益や条件を加えて「いくらで請け負うか」を相手に示す作業です。積算の精度が低いと、赤字受注や失注の原因になります。
この記事では、2026年9月30日時点で国土交通省の積算基準を確認し、積算のやり方と工事費の構成を整理します。あわせて、AIで拾い出しを楽にする方法と、AIに任せてはいけない部分を説明します。
この記事でわかること
- 積算の意味と、見積・予定価格との違い
- 公共工事の工事費の構成(直接工事費・共通費など)と国の積算基準の入手先
- 数量拾い・単価設定・集計までの積算の手順
- 積算でよくあるミスと防ぎ方
- AIで拾い出しを楽にする方法と、図面読み取りの限界
拾い出し表の整理や見積内訳のチェックに使えるプロンプトをまとめました。
積算とは?見積・予定価格との違い
積算は、工事を完成させるのに必要な費用を積み上げて計算する作業です。数量を図面から拾う「拾い出し」と、数量に単価を掛ける「値入れ」の2段階に分けて考えるとわかりやすくなります。
似た言葉に「見積」と「予定価格」があります。使う人と目的が違うため、混同しないように整理しておきます。
| 用語 | 主に行う人 | 目的 | 結果として出るもの |
|---|---|---|---|
| 積算 | 発注者・受注者の両方 | 工事に必要な費用を数量×単価で計算する | 工事費内訳書、拾い出し表 |
| 見積 | 受注者(元請・下請) | 積算結果に利益や条件を加え、請負金額を提示する | 見積書 |
| 予定価格 | 公共工事の発注者 | 入札で契約金額の上限の基準となる価格を決める | 予定価格(発注者側の設計書で算出) |
中小の建設会社では、1人の担当者が積算と見積を続けて行うことが多いです。ただし社内では、積算(原価)と見積(売価)を分けて記録することをおすすめします。原価と利益の関係が見えるため、値引き交渉のときに判断しやすくなります。見積書の作り方は建設業の見積書の書き方で詳しく解説しています。
工事費の構成|国の積算基準の考え方
公共工事では、国土交通省の積算基準で工事費の構成が決められています。民間工事でも、この構成を下敷きにすると抜けが減ります。
土木工事と建築工事の工事費の構成
| 区分 | 土木工事(土木工事工事費積算要領及び基準) | 建築工事(公共建築工事積算基準) |
|---|---|---|
| 直接かかる費用 | 直接工事費(材料費・労務費・直接経費) | 直接工事費(直接仮設を含む) |
| 現場全体の費用 | 間接工事費=共通仮設費+現場管理費 | 共通費のうち共通仮設費・現場管理費 |
| 会社の運営費など | 一般管理費等 | 共通費のうち一般管理費等(一般管理費と付加利益等) |
| 税 | 消費税等相当額 | 消費税等相当額 |
両方の基準とも、段階的に積み上げる構成です。直接工事費に共通仮設費を足したものが「純工事費」です。純工事費に現場管理費を足すと「工事原価」、さらに一般管理費等を足すと「工事価格」になります。工事価格に消費税等相当額を加えたものが工事費(土木では請負工事費)です。
主な費目の中身
- 材料費:土木の要領では、標準使用量に運搬・貯蔵・施工中の損失量を加えた数量に、設計単価を掛けて求めます。
- 労務費:所要人員は一般に標準的な歩掛(ぶがかり。単位量の作業に必要な人数や日数)を使い、労務賃金には「公共工事設計労務単価」などを使います。
- 共通仮設費:運搬費、準備費、安全費、技術管理費、営繕費(現場事務所など)などです。
- 現場管理費:労務管理費、保険料、現場従業員の給料手当、法定福利費、建退共の掛金、事務用品費、通信交通費などです。
公共工事の積算基準と入手先
国の積算基準は、国土交通省のサイトで公開されています。自治体の工事では、都道府県などが独自の積算基準や単価を定めている場合があります。実際の工事では発注者が指定する基準・最新の版が優先です。
| 基準・資料 | 対象 | 確認した版・時期 | 主な中身 |
|---|---|---|---|
| 土木工事工事費積算要領及び基準 | 国交省直轄の土木工事 | 2026年2月27日通知、同年4月1日から適用 | 請負工事費の構成と費目 |
| 令和8年度 土木工事・業務の積算基準等の改定 | 同上 | 2026年2月27日公表 | 一般管理費等率の改定、歩掛の改定など |
| 公共建築工事積算基準 | 官庁営繕(建築) | 2016年12月20日改定 | 工事費の区分と構成 |
| 公共建築数量積算基準 | 建築工事の数量 | 2023年3月29日改定 | 数量の計測・計算方法 |
| 公共建築工事共通費積算基準 | 共通費の算定 | 2026年3月11日改定 | 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等 |
| 公共建築工事内訳書標準書式 | 内訳書の書式 | 建築工事編2025年12月10日、設備工事編2026年3月11日改定 | 内訳書の科目・細目の並べ方 |
| 公共工事設計労務単価 | 労務費の単価 | 2026年3月から適用 | 職種別・都道府県別の単価 |
2026年3月から適用の公共工事設計労務単価は、全国全職種の単純平均で前年度比4.5%の引き上げです。加重平均値は25,834円でした。国土交通省は、この単価に事業主が負担すべき人件費(必要経費分)は含まれないと明記しています。
設計労務単価は、2025年12月に勧告された「労務費に関する基準」の計算の基礎にもなっています。詳しくは標準労務費(労務費に関する基準)の解説をご覧ください。
積算のやり方|7つの手順
中小の建設会社が民間工事や小規模な公共工事を積算する場合の、基本的な流れです。
- 設計図書と条件を確認する図面、仕様書、現場説明書、質疑回答をそろえます。搬入経路や作業時間の制約など、現場条件もメモします。
- 内訳の項目を立てる工種→種別→細別の順に、拾う項目の一覧を作ります。建築なら公共建築工事内訳書標準書式の並びが参考になります。
- 数量を拾う図面から長さ・面積・体積・個数を拾います。どの図面のどこから拾ったかを必ず記録します。
- 単価を決める物価資料、メーカーや専門工事業者からの見積、自社の実績単価を使います。労務は歩掛と労務単価から出します。
- 直接工事費を集計する数量×単価を項目ごとに計算し、工種ごとに小計を出します。
- 共通費・諸経費を加える共通仮設費、現場管理費、一般管理費等を、積み上げまたは率で計上します。
- 検算して見積に引き継ぐ別の人が数量と単価をチェックします。過去の類似工事と比べ、単位面積当たりの金額が大きくずれていないか確認します。
数量には3つの種類がある
公共建築数量積算基準では、数量は原則として「設計数量」とし、必要に応じて計画数量・所要数量を求めるとしています。
| 数量の種類 | 意味(公共建築数量積算基準より要約) | 使う場面の例 |
|---|---|---|
| 設計数量 | 設計図書の個数や設計寸法から求めた数量。材料のロスは単価の中で考える | コンクリートの体積、仕上げ面積など |
| 計画数量 | 設計図書にもとづく施工計画から求めた数量 | 根切り(掘削)、埋戻し、山留めなど |
| 所要数量 | 定尺寸法による切り無駄や、施工上やむを得ない損耗を含んだ数量 | 一部の鉄筋など(所要数量であることを明示する) |
同じ基準では、端数は原則として四捨五入し、長さ・面積・体積・質量は小数点以下第2位とします。工事費内訳書の数量は、原則として小数点以下第1位(100以上は整数)です。社内でも端数のルールを決めておくと、担当者ごとの差が減ります。
単価の出し方と計算例
公共建築工事積算基準では、直接工事費の算定方法を3つ示しています。材料価格に数量を掛ける方法、材料費・労務費・機械器具費などからなる単価(複合単価)に数量を掛ける方法、それらによりがたい場合の「一式」計上です。
土間コンクリートの例で、計算の流れを示します。
- 面積:12.0m×8.0m=96.0㎡
- 体積:96.0㎡×厚さ0.15m=14.40㎥
- 材料費:14.40㎥×20,000円/㎥=288,000円
- 労務費:96.0㎡×0.05人/㎡(歩掛)=4.8人、4.8人×25,000円=120,000円
※説明用の例です。単価・歩掛は架空の数値です。実際の値は物価資料、発注者の基準、自社の実績で確認してください。
自社の歩掛を持つには、作業日報から工種ごとの人工(にんく)と施工数量を集計する必要があります。日報の集計は日報を自動化する方法で解説しています。
積算でよくあるミスと防ぎ方
| よくあるミス | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 拾い漏れ | 図面の枚数が多く、追加図や特記仕様書を見落とす | 図面リストを作り、拾った図面にチェックを付ける |
| 二重計上 | 平面図と断面図の両方から同じ部分を拾う | 拾い出し表に「図面番号・通り芯・部位」を必ず書く |
| 単位の取り違え | ㎡と㎥、mとmmが混在する | 単位列を独立させ、集計前に単位ごとに並べ替える |
| 単価の古さ | 前回の工事の単価を使い回す | 単価表に「出典・確認日」の列を設ける |
| 諸経費の計上漏れ | 直接工事費だけで見積金額を決める | 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等を必ず項目として立てる |
| 条件の読み落とし | 夜間作業や搬入制限が質疑回答にだけ書かれている | 質疑回答と現場説明書を積算前に一覧にする |
AIで拾い出しを楽にする方法
生成AI(ChatGPTやClaudeなど)は、積算の「数字を整える作業」に向いています。一方で、図面から正確な数量を自動で拾う用途には、現時点では限界があります。
AIに向く作業・向かない作業
| 作業 | AIとの相性 | 理由・使い方 |
|---|---|---|
| 手書きメモや音声メモの拾い出しを表に整える | 向く | 文字情報の整理は得意。計算式も併記させる |
| 拾い出し表の単位・桁のチェック | 向く | 異常値の候補を挙げさせ、人が判断する |
| 工種ごとの拾う項目リスト(漏れ防止)の作成 | 向く | たたき台として使い、自社の工種に合わせて直す |
| 図面画像からの数量の読み取り | 条件付き | 寸法の読み違いが起きやすい。必ず人が検算する |
| 多数の部材の個数を数える | 向かない | 数は概数になりやすい。拾い出しの正本にしない |
| 単価・歩掛の決定 | 向かない | AIは最新の物価や自社の実績を知らない。人が根拠を持って入れる |
Anthropic社のClaudeの技術文書でも、画質が低い・回転した・小さい画像では誤りが起きうること、数は概数になりうることが制限事項として挙げられています。AIが出した数量は「下書き」として扱い、正本は人が確定させてください。
コピーして使えるプロンプト
現場や図面を見ながら書いた拾い出しメモを、集計表に整える使い方です。
コピーして使えるプロンプト
あなたは建設会社の積算担当を補佐するアシスタントです。 以下の【拾い出しメモ】を、積算用の集計表に整えてください。 # 条件 ・列は「工種」「部位・場所」「図面番号」「計算式」「数量」「単位」「備考」 ・計算式はメモの寸法から作り、数量は小数点以下第2位で四捨五入 ・単位が書かれていない行、寸法が足りない行は数量を空欄にし、 備考に「要確認」と理由を書く ・同じ部位を二重に拾っている可能性がある行は、備考で指摘する ・単価や金額は計算しない(数量の整理だけを行う) ・最後に、工種ごとの数量の小計を単位別に出す # 工事の概要 【例:倉庫の土間改修 RC造 既存土間撤去のうえ新設】 # 拾い出しメモ 【例: 土間コン A通り〜C通り 12.0×8.0 厚150 図S-02 ワイヤーメッシュ 同上 土間撤去 12×8 厚150 目地 8mごと】
出力イメージ(例)
| 工種 | 部位・場所 | 図面番号 | 計算式 | 数量 | 単位 | 備考 | | コンクリート | 土間 A〜C通り | S-02 | 12.0×8.0×0.15 | 14.40 | ㎥ | | | 鉄筋 | ワイヤーメッシュ | S-02 | 12.0×8.0 | 96.00 | ㎡ | 重ね代の扱いを要確認 | | 撤去 | 既存土間 | 記載なし | 12.0×8.0×0.15 | 14.40 | ㎥ | 図面番号・撤去範囲を要確認 | | 目地 | 土間 | 記載なし | − | | m | 目地の方向と本数が不明のため要確認 | 小計:㎥ 28.80(コンクリート14.40+撤去14.40)/㎡ 96.00 ※説明用の例です。数値は架空です。
このほか、「この工種で一般に拾う項目を一覧にして」と頼み、拾い漏れのチェックリストを作らせる使い方もあります。業務別のプロンプトは建設業のプロンプト集にまとめています。拾い出し表を見積書の内訳に変える手順は見積書の書き方、Excelでの集計は建設業のExcel作業をAIで自動化する方法で紹介しています。
AIに向く業務・向かない業務の見分け方は建設会社のAI導入の進め方もご覧ください。
注意
積算基準・歩掛・労務単価は毎年のように改定されます。本記事の内容は2026年9月30日時点の確認です。公共工事では発注者が指定する積算基準・単価・仕様書が優先します。AIの出力した数量や計算式は必ず人が検算し、図面や見積書などの社外秘情報をAIに入力する場合は、社内ルールと利用するサービスの規約を確認してください。
積算の精度を上げるチェックリスト
- 最新の図面・仕様書・質疑回答がそろっているか確認した
- 拾い出し表に図面番号と部位を記録している
- 設計数量・計画数量・所要数量のどれで拾ったかが分かる
- 端数処理のルールを社内で統一している
- 単価表に出典と確認日を書いている
- 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等を計上した
- 別の担当者が数量と単価を検算した
- AIで整えた数量は、元のメモや図面と照合した
積算のよくある質問
積算と見積の違いは何ですか?
積算は、数量に単価を掛けて工事に必要な費用(原価)を計算する作業です。見積は、積算の結果に利益や工期・支払などの条件を加え、請負金額として相手に示す作業です。積算が見積の土台になります。
民間工事でも国の積算基準を使う必要がありますか?
国の積算基準は、主に国の公共工事の予定価格を算出するためのものです。民間工事で使う義務はありません。ただし工事費の構成や数量の数え方は、民間工事でも抜け漏れを防ぐ下敷きとして役立ちます。
歩掛とは何ですか?
歩掛(ぶがかり)は、単位量の作業に必要な労力(人数や日数)や機械の量のことです。例えば「1㎡当たり0.05人」のように表します。国の土木工事では標準的な歩掛が公表されており、自社の歩掛は作業日報の実績から求めます。
AIで図面から数量を自動で拾えますか?
図面の画像から寸法を読んで計算させることはできますが、読み違いや数え間違いが起きる可能性があります。現時点では、AIの出した数量は下書きとして扱い、必ず人が図面と照合して確定させてください。メモの整理や計算式のチェックにはAIが役立ちます。
公共工事設計労務単価には法定福利費が含まれていますか?
国土交通省は、公共工事設計労務単価には事業主が負担すべき人件費(必要経費分)が含まれていないと説明しています。事業主負担分の法定福利費などは、別に計上する必要があります。
まとめ
- 積算は「数量×単価」で工事の原価を計算する作業で、見積の土台になる
- 工事費は直接工事費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費等・消費税等相当額で構成される
- 数量には設計数量・計画数量・所要数量があり、端数処理のルールを統一すると精度が上がる
- AIは拾い出しメモの整理や検算に向くが、図面からの数量読み取りと単価決定は人が確定させる
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