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労務費とは?建設業の労務費の範囲と計算方法|社員の日額原価と見積・原価への入れ方

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執筆:建設AIシフト編集部(株式会社Digital&)
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監修:建設AIシフト 監修責任者

労務費とは、製品やサービスを作るために働いた人に支払う費用のうち、原価に入るものです。建設業では、工事の原価(完成工事原価)を材料費・労務費・外注費・経費の4つに分け、労務費には「工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金、給料及び手当等」を入れます。現場監督の社員の給料は、労務費ではなく「経費」の中の人件費に入るのが、建設業の決算書のルールです。

見積で労務費をいくらと置くか、社員の作業員の給料を工事ごとの原価にどう入れるかは、粗利の見え方を大きく左右します。社員の作業員の給料を原価に入れずに販管費で処理している会社では、工事ごとの粗利が実際より大きく見えてしまいます。

この記事では、建設業の労務費の範囲(労務費・労務外注費・経費の人件費・外注費の違い)と、社員1人の1日あたりの原価(日額原価)の計算方法、見積と工事の原価への入れ方を、架空の会社の計算例で解説します。

この記事でわかること

  • 労務費の意味と、建設業の完成工事原価の4つの区分
  • 自社の作業員・現場監督・常用の協力会社・請負の協力会社の費用が、どの区分に入るか
  • 社員1人の日額原価を、給与・賞与・法定福利費・稼働日数から出す計算例
  • 労務費を見積に入れる方法と、日報の人工で工事ごとの原価に配る方法
  • 公共工事設計労務単価・労務費に関する基準との関係

出面の入力から、人工の集計、協力会社の支払明細、工事別の労務費までがつながるExcelテンプレート(記入例入り・空欄)と、解説資料をセットでお届けします。

出面・人工・支払明細テンプレートをダウンロード

労務費とは|建設業の工事原価の4つの区分

建設業の決算書(建設業法にもとづく財務諸表)では、完成工事原価を次の4つに分けて報告します。区分の内容は、国土交通省の告示(勘定科目の分類)で決められています。

区分 告示での内容(要約) 例
材料費 工事のために直接購入した素材・半製品・製品、材料貯蔵品から振り替えた材料費(仮設材料の損耗額を含む) 鉄骨・生コン・ボード
労務費 工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金・給料・手当など。工種・工程別の工事の完成を約する契約で、大部分が労務費であるものは、労務費に含めて記載できる(うち労務外注費) 自社の職人の給料、人工出しの協力会社への支払(労務外注費として含める場合)
外注費 工種・工程別の工事について、材料などを作業とともに提供して完成することを約する契約にもとづく支払額(労務費に含めたものを除く) 材料と施工をまとめて頼んだ協力会社への支払
経費 材料費・労務費・外注費以外の費用。うち人件費は、従業員給料手当・退職金・法定福利費・福利厚生費 現場監督の社員の給料、機械の損料、現場事務所の家賃

つまり、同じ「人の費用」でも、作業員の賃金は労務費、現場監督など作業員以外の社員の給料は経費(人件費)、協力会社への支払は外注費(大部分が労務費のものは労務外注費として労務費に含めることもできる)と分かれます。

誰の費用がどこに入るか

人 工事の原価での区分 工事ごとの原価への入れ方
自社で雇用している作業員(職人) 労務費 日報の人工×日額原価で工事ごとに配る
現場監督・現場代理人(社員) 経費(うち人件費) 担当した工事・日数で配る(決め方は社内の基準による)
常用(人工出し)の協力会社 労務費(労務外注費)または外注費 出面の人工×常用単価で、作業した月に計上
請負(材料と施工を一括)の協力会社 外注費 出来高や検収にもとづいて計上
本社の事務・営業・役員 工事原価ではなく販管費 工事には配らない

どの区分に入れるかは、会社の会計方針として一度決めたら、毎年同じ基準で処理します。区分を変えると、粗利率が前年と比べられなくなります(粗利率とは?で解説)。会計・税務の判断は、顧問税理士と決めてください。

社員の日額原価の出し方|計算例

自社の作業員や現場監督の費用を工事ごとの原価に入れるには、まず1人1日あたりの原価(日額原価)を決めます。給料の額面だけで計算すると、会社が負担している法定福利費や、現場で作業していない日の分が抜けて、原価が小さく見えます。

日額原価の計算式

年間の人件費 = 給料・手当 + 賞与 + 法定福利費(事業主負担分) + 福利厚生費など
日額原価   = 年間の人件費 ÷ 工事に配れる日数
工事に配れる日数 = 年間の出勤日数 × 現場で作業する割合

架空の建築会社の作業員1人の例です。※説明用の架空の例です。法定福利費の率は、実際には加入している保険と保険料率から計算します。

項目 金額・日数 メモ
給料・手当(年間) 4,200,000円 月350,000円×12か月
賞与(年間) 600,000円
法定福利費(事業主負担分) 768,000円 (給料+賞与)×16%(例)
福利厚生費・安全装備など 120,000円 作業着・保護具・健康診断など
年間の人件費 5,688,000円
年間の出勤日数 240日
現場で作業する割合 85% 移動・資材の準備・社内の作業を除く
工事に配れる日数 204日 240×0.85
日額原価 27,882円 5,688,000÷204(1時間あたり約3,485円)

出勤日数240日で割ると23,700円ですが、現場で作業していない日の分まで考えると27,882円になります。日額原価を出勤日数で割って低く置くと、工事ごとの原価が小さく見え、配りきれない人件費が期末に残ります。まずは前年度の実績の数字で日額原価を出し、年に1回見直すのが現実的です。法定福利費の率の出し方は法定福利費の計算方法で解説しています。

労務費を見積に入れる方法

見積の労務費は、必要な人工に単価を掛けて出します。自社の作業員と、常用の協力会社では、使う単価が違います。

だれが作業するか 見積の労務費 単価の出どころ
自社の作業員 必要な人工×日額原価 上の計算で出した日額原価(27,882円など)
常用の協力会社 必要な人工×常用単価 協力会社と契約した単価
請負の協力会社 外注費として協力会社の見積額 協力会社の見積

必要な人工は「作業の数量÷1人工あたりの作業量」で見積もります(人工とは?で解説)。見積の労務費が、自社の実際の人件費や協力会社に払う額を下回っていると、受注した時点で粗利が削られています。

また、2025年12月12日に完全施行された改正建設業法により、中央建設業審議会が作成・勧告した「労務費に関する基準」に照らして著しく低い労務費等での見積りや値下げの依頼は禁止されています。この基準では、公共工事設計労務単価が適正な労務費の計算の基礎として位置づけられています。公共工事設計労務単価(2026年3月から適用)は全国全職種の加重平均で25,834円ですが、これは賃金部分だけの単価で、法定福利費などの必要経費は含まれていません。基準の詳しい内容は標準労務費とは?で解説しています。

労務費を工事ごとの原価に配る方法

社員の作業員の給料は、月にまとめて払うため、そのままでは工事ごとの原価になりません。日報の人工に日額原価を掛けて、工事ごとに配ります(配賦)。

工事ごとの労務費(社員の作業員)

工事の労務費 = その月の日報の人工(その工事の分) × 日額原価

例:10月にA社 倉庫新築で社員の作業員が延べ22人工
  22 × 27,882円 = 613,404円 をA社 倉庫新築の労務費に計上

月の終わりには、工事に配った労務費の合計と、実際に払った人件費を比べます。配りきれなかった差(現場の仕事が少なかった月など)は、工事の原価に無理に押し込まず、差として記録しておきます。差が毎月大きいなら、日額原価の置き方か、作業員の配置に問題があります。

常用の協力会社の分は、出面の人工×常用単価で、作業した月の工事の原価に入れます。協力会社の締め日が20日でも、21日〜月末に作業した分はその月の原価です。請求書が届く翌月に計上すると、原価の実績が1か月遅れます。出面の集計の方法は出面表とは?で解説しています。

記入例|10月の工事別の労務費

架空の会社の10月の、常用の協力会社分の集計です。※説明用の架空の例です(税抜)。

工事 人工(10月1日〜31日) 常用代 うち翌月の支払になる分
A社 倉庫新築 115.0 5,691,200円 320,000円
B社 事務所改修 61.0 2,581,800円 0円
C社 工場耐震補強 54.0 2,273,400円 757,800円
合計 230.0 10,546,400円 1,077,800円

「翌月の支払になる分」は、20日締めの協力会社が10月21日〜31日に作業した分です。10月の原価には入れ、支払は11月の締めで行うため、未払として管理します。C社 工場耐震補強は夜間作業の時間外が多く、労務費が先に増えていることが予実管理の記事の記入例でも課題になっています。

労務費の管理で気をつけたい5つのこと

よくあること 起きること 対策
社員の作業員の給料を販管費で処理している 工事ごとの粗利が大きく見え、赤字の工事に気づかない 作業員の給料は労務費として、日報の人工で工事に配る
日額原価を給料の額面だけで出している 法定福利費・賞与・非稼働の分が抜け、原価が小さく見える 年間の人件費÷工事に配れる日数で出す
協力会社の請求書が届いた月に原価を計上している 原価の実績が1か月遅れ、予実の判断が遅れる 出面の人工で、作業した月に計上する
見積の労務費を前回の工事の金額で置いている 単価の上昇(設計労務単価は14年連続の上昇)が反映されない 人工×最新の単価で積み上げる
区分(労務費・外注費・経費)が年によって違う 粗利率や労務費の割合が前年と比べられない 区分のルールを文書にし、毎年同じ基準で処理する

AIとシステムで労務費の管理を楽にする

労務費の管理で手間がかかるのは、日報の人工の集計と、工事ごとの配賦です。AIは、集計済みの表を読んで、日額原価の見直しが必要か、配りきれない差が大きい月はいつかを整理する作業に向いています。計算はExcel(またはシステム)で行い、AIに金額を計算させないのが原則です。

コピーして使えるプロンプト(労務費の配賦の確認)

あなたは建設会社の経理担当の補佐です。
次の表は、社員の作業員の月別の人件費と、日報の人工にもとづいて
工事に配った労務費の集計で、Excelで計算済みです。
数字は変更せず、計算もし直さないでください。

# お願いしたいこと
1. 「配った労務費−実際の人件費」の差が大きい月を上から3つ挙げる
2. その月に、工事に配った人工が少なかった理由として、表の「メモ」欄に
   書かれていることを1行でまとめる
3. 日額原価の見直しを検討すべきかどうかを、表の数字だけを根拠に2〜3行で書く
4. 表に書かれていない原因は推測で書かず【要確認】とする

# 月別の集計(Excelから貼り付け)
【月/実際の人件費/工事に配った人工/日額原価/配った労務費/差/メモ】

日報・出面の人工から、社員と協力会社の労務費が工事番号ごとに自動で集計されれば、締めの作業は大きく減ります。建設AIシフトの業務一元管理は、日報・出面・支払・原価を工事番号でつなぎ、工事ごとの労務費と粗利をいつでも見られるようにするオーダーメイドのシステムです。

AIやシステムに任せないこと

  • 労務費・外注費・経費の区分と、日額原価の決め方(会社の会計方針として顧問税理士と決める)
  • 日報の人工が正しいかの確認(現場代理人・職長が確認する)
  • 見積の単価と、協力会社との常用単価の交渉

注意

記入例の会社・人件費・率・人工・金額は、すべて説明用の架空の例です。勘定科目の区分は国土交通省の告示、公共工事設計労務単価は国土交通省の公表資料を2026年10月29日に確認したものです。原価の区分や配賦の方法など会計・税務の判断は、顧問税理士に確認してください。取引先名や金額をAIに入力する場合は、社内ルールと利用するサービスの規約を確認してください。

労務費のチェックリスト

  • 作業員・現場監督・協力会社の費用を、労務費・経費・外注費のどれに入れるかを文書で決めている
  • 社員の日額原価を、年間の人件費÷工事に配れる日数で出している
  • 日額原価に、賞与と法定福利費(事業主負担分)を含めている
  • 社員の作業員の労務費を、日報の人工で工事ごとに配っている
  • 配りきれなかった差を、毎月記録している
  • 常用の協力会社の分を、作業した月の原価に入れている
  • 見積の労務費を、人工×最新の単価で積み上げている
  • 公共工事設計労務単価と労務費に関する基準の改定を、毎年確認している

労務費でよくある質問

労務費とは何ですか?

製品やサービスを作るために働いた人に支払う費用のうち、原価に入るものです。建設業では、工事に従事した直接雇用の作業員に対する賃金・給料・手当などを労務費とし、材料費・外注費・経費と並ぶ工事原価の区分の1つです。

現場監督の給料は労務費ですか?

建設業の決算書のルールでは、労務費は直接雇用の作業員の賃金です。現場監督など作業員以外の社員の給料・法定福利費などは、完成工事原価の「経費」のうちの人件費に入れます。

労務費と外注費の違いは何ですか?

労務費は自社で雇用する作業員の賃金などです。外注費は、材料などを作業とともに提供して工事を完成させる契約の協力会社への支払です。ただし、大部分が労務費である契約(人工出しなど)は、労務外注費として労務費に含めて記載できます。

労務費の計算方法は?

見積では「必要な人工×単価」で計算します。自社の作業員の単価は、年間の人件費(給料・賞与・法定福利費など)を工事に配れる日数で割った日額原価を使い、協力会社は契約した常用単価を使います。

労務費に法定福利費は含まれますか?

自社の作業員の法定福利費(事業主負担分)は、作業員の人件費として労務費の日額原価に含めて考えます。なお、公共工事設計労務単価は賃金部分だけの単価で、法定福利費(事業主負担分)などの必要経費は含まれていません。

まとめ

  • 建設業の労務費は、直接雇用の作業員の賃金など。現場監督の社員の給料は経費(人件費)、協力会社への支払は外注費(労務外注費として労務費に含めることもある)
  • 社員の日額原価は、年間の人件費÷工事に配れる日数で出す。額面の給料÷出勤日数では低くなる
  • 見積の労務費は、人工×日額原価(自社)または人工×常用単価(協力会社)で積み上げる
  • 工事ごとの原価には、日報・出面の人工で、作業した月に入れる
  • 区分のルールを文書にし、毎年同じ基準で処理する

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