ECサイトのデータ活用の重要性と実践方法
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ECサイトには、実店舗では取得できない量のデータが自動的に蓄積されます。誰がどこから来て、何を見て、どこで離脱したか。顧客の行動が、ほぼすべて記録されている状態です。
にもかかわらず、多くの事業者が「データはあるが、見ていない」「見ているが、判断が変わらない」という状態にとどまっています。原因は分析能力ではなく、データが散らばっていること、そして何を見るべきかが決まっていないことにあります。
本記事では、EC事業者が直面するデータ活用の3つの壁と、それを越えるための具体的な手順を整理します。
この記事でわかること
- EC事業者がデータを活用できない3つの原因
- まず見るべき指標と、見なくてよい指標の区別
- 部門ごとに分散したデータを統合する方法
- データの品質を保つための最低限のルール
- 規模に応じたツールの選び方
データを活用できない3つの原因
「データ分析ができていない」という課題は、実際には次の3つに分解できます。それぞれ対処法が異なります。
① 人手と知識の不足
中小規模の事業者では、データ分析の専任者を置けないのが普通です。この状態で「まず分析しよう」と始めても続きません。
対処は「見る指標を絞り、自動で表示される状態をつくる」ことです。毎回集計し直す必要のある数字は、必ず見られなくなります。
② データの分散(サイロ化)
広告の成果は広告管理画面に、購買履歴はカートシステムに、問い合わせは別のツールに、というように分散していると、顧客一人の全体像が見えません。
結果として、広告経由で来た顧客がその後リピートしているのかどうかが分からないまま、広告の良し悪しを初回の売上だけで判断することになります。
③ データの品質・定義の不一致
「リピーター」を、ある部門は2回目以降の購入者、別の部門は年間3回以上の購入者と定義していると、同じ言葉で違う話をすることになります。
数字が食い違うと、数字そのものが信用されなくなります。これがデータ活用が定着しない最大の原因です。
| 原因 | 症状 | 対処の方向 |
|---|---|---|
| 人手と知識の不足 | データはあるが誰も見ていない | 見る指標を絞り、可視化を自動化する |
| データの分散(サイロ化) | 部門ごとに数字が違う | 統合の仕組みを入れる |
| データの品質・定義の不一致 | 同じ言葉が違う意味で使われている | 定義と入力ルールを統一する |
まず見るべき指標
すべてを分析する必要はありません。ECで判断に直結する指標は限られています。
- 訪問数(流入経路別):どこから何人来ているか
- 購入率:訪問者のうち何%が購入したか
- 客単価:1回の購入金額
- カゴ落ち率:カートに入れたが購入しなかった割合
- リピート率:再購入した顧客の割合
- 顧客生涯価値:1人の顧客が生涯で支払う総額
- 商品別の売上と粗利:売れているものと、利益が出ているもの
細かく分解された指標を大量に並べても、判断は増えません。「この数字が動いたら、何をするか」が決まっていない指標は、見る必要がないと考えてください。
とくに重要なのは、訪問数と購入率を分けて見ることです。売上が落ちたとき、原因が「来ていない」のか「来たが買われていない」のかで、打つべき手はまったく異なります。
分散したデータをどう統合するか
データ統合には段階があります。いきなり高度な基盤を導入する必要はありません。
- まず何がどこにあるかを書き出す広告、カート、在庫、問い合わせ、会計。それぞれのデータがどのシステムにあり、どの単位で記録されているかを一覧にします。ここで重複や欠落が見つかります。
- 顧客を一意に識別できるようにする統合の前提は、同じ顧客を同じ人だと認識できることです。メールアドレスや会員IDなど、すべてのシステムで共通して使える識別子を決めてください。
- まず2つだけつなぐ全部を一度に統合しようとすると止まります。広告データと購買データなど、最も判断に効く2つから接続してください。
- 可視化する統合したデータを、毎回集計しなくても見られる形にします。表計算ソフトでも構いませんが、更新の手間が続かない形にしてください。
- 必要になってから基盤を検討する顧客データを本格的に統合する仕組みは、規模が大きくなってから検討すれば十分です。先に導入しても、入れるデータが整っていなければ機能しません。
データの品質を保つルール
分析の精度は、集めた後の分析手法ではなく、集める段階のルールで決まります。
- 用語の定義を文書化する:リピーター、新規、休眠などの基準を数値で定める
- 入力形式を統一する:全角半角、日付の書式、商品名の表記を揃える
- 重複を定期的に整理する:同一人物が複数登録されている状態を放置しない
- 管理の責任者を決める:誰も責任を持たないデータは、必ず劣化します
- 取得する項目を絞る:使わないデータを集めると、管理コストだけが増えます
とくに用語の定義は、最初に決めておくべき事項です。後から統一しようとすると、過去のデータをすべて見直すことになります。
ツールの選び方
ツールは規模と目的に応じて選びます。多機能なものほど、使いこなす負荷が高くなります。
| 段階 | 必要なもの | 目的 |
|---|---|---|
| 立ち上げ期 | アクセス解析+カートの標準レポート | 基本の指標を把握する |
| 成長期 | BIツール(可視化) | 複数のデータを並べて見る |
| 拡大期 | マーケティング自動化ツール | 顧客の状態に応じた接触 |
| 多店舗・多チャネル期 | 顧客データ基盤 | チャネル横断で顧客を把握 |
データ基盤の種類についてはデータレイクとデータウェアハウスの違い、経営全体でのデータ活用はデータドリブン経営とはをご参照ください。
選定時に最も重要なのは、既存のシステムからデータを取り出せるかです。連携できないツールを入れると、手入力で転記する運用になり、必ず止まります。
分析を行動につなげる
データ活用の目的は、分析ではなく判断を変えることです。
- 月次で見る場をつくる既存の会議に、数値を確認する時間を組み込んでください。新しく会議を増やす必要はありません。
- 変化があった指標だけを掘るすべてを毎回分析する必要はありません。前月と大きく変わった指標に絞って原因を探ります。
- 仮説を立てて施策を打つ「購入率が下がったのは、送料改定の影響ではないか」という仮説を立て、検証できる施策を実施します。
- 施策の前後を比較する実施前の数値を記録しておかないと、効果が判断できません。
- うまくいった施策を記録する成功と失敗の記録が蓄積されると、次の判断が速くなります。
「データを見る」ことと「データで判断する」ことは別です。数字を見るだけの会議になっていないか、定期的に確認してください。
まとめ
データを活用できない原因は人手不足・データの分散・定義の不一致の3つです。それぞれ対処法が異なるため、自社がどれに当てはまるかを特定してください。
まず見るべきは訪問数と購入率を分けて見ること。売上が落ちた原因が「来ていない」のか「買われていない」のかで、打つ手が変わります。
統合は2つのデータからで十分です。高度な基盤を先に入れても、データが整っていなければ機能しません。
よくある質問
専門人材がいなくてもデータ活用はできますか
可能です。見る指標を絞り、毎回集計しなくても表示される状態をつくることが先決です。高度な分析手法より、基本的な指標を継続して見る習慣のほうが成果につながります。
どの指標から見ればよいですか
訪問数、購入率、客単価の3つから始めてください。この3つの掛け算が売上になるため、どこに問題があるかを切り分けられます。慣れてきたらカゴ落ち率とリピート率を追加してください。
データが部門ごとにバラバラです
まず何がどこにあるかを書き出し、顧客を一意に識別できる項目(メールアドレスや会員IDなど)を決めてください。そのうえで、最も判断に効く2つのデータから接続します。全部を一度に統合しようとすると止まります。
顧客データ基盤は導入すべきですか
規模によります。複数のチャネルで販売しており、顧客を横断的に把握する必要が出てきた段階で検討してください。導入しても、入れるデータの品質が整っていなければ機能しません。
分析はしているが売上が変わりません
分析で止まっている可能性があります。データ活用の目的は判断を変えることです。「この数字が動いたら何をするか」を事前に決めておき、分析から施策への変換を業務手順に組み込んでください。
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