人材開発支援助成金とは|研修費用に使えるコースの選び方【令和8年度】

公開 2026.09.16 更新 2026.09.16 読了 約13分
人材開発支援助成金とは|研修費用に使えるコースの選び方【令和8年度】

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社員の研修費用を国が補助する制度が人材開発支援助成金です。生成AIやDXの研修も対象になります。

ただし、この制度には7つのコースがあり、どのコースで申請するかによって経費の助成率が45%から75%まで変わります。同じ研修を実施しても、コース選びを間違えると受け取れる額が3割以上減ることになります。

この記事では、研修の目的からどのコースを選ぶべきかを整理し、令和8年度の改正で何が変わったのかまで解説します。

そしてもうひとつ、先にお伝えしておくべきことがあります。助成率が最も高い「事業展開等リスキリング支援コース」は、令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です。厚生労働省のパンフレットに「令和4年度~8年度の期間限定の助成金として創設」「令和8年度末までの時限措置」と明記されています。今年度が最後になる前提で、逆算して動く必要があります。

この記事でわかること
  • 研修の目的別に、どのコースを選ぶべきか
  • コースごとの経費助成率と賃金助成額
  • 令和8年度の改正で助成の対象から外れたもの
  • 申請で最も多い失敗と、その避け方
  • 令和8年度末で終了するコースと、そこから逆算した動き方
本記事の情報について

2026年9月時点で公開されている情報にもとづいて記載しています。この制度は令和8年4月・5月・8月と改正が続いているため、申請前に必ず厚生労働省の人材開発支援助成金のページで最新のパンフレットをご確認ください。

人材開発支援助成金とは

雇用保険の適用事業所が、雇用する労働者に職務に関連した訓練を実施した場合に、訓練にかかった経費の一部と、訓練中に支払った賃金の一部が助成される制度です。厚生労働省が所管しています。

コースは7つありますが、建設業・障害者向けの3コースを除くと、一般的な企業が検討するのは次の4つです。

コースどんな訓練が対象か
人材育成支援コース職務に関連した知識・技能を習得させる訓練。最も汎用的
事業展開等リスキリング支援コース新分野への進出やDX化・GX化に必要な訓練
人への投資促進コースデジタル人材・高度人材の育成、定額制のeラーニングなど
教育訓練休暇等付与コース有給の教育訓練休暇制度を導入した場合

研修の目的からコースを選ぶ

最初に決めるべきは「その研修が何のためのものか」です。ここでコースが決まります。

研修の目的別に見た人材開発支援助成金のコース選び その研修は 何のためか 新分野への進出、DX化・GX化のため 事業展開等リスキリング支援コース / 経費75%+賃金1,000円/時 いまの職務に関連する知識・技能のため 人材育成支援コース(人材育成訓練) / 経費45%+賃金800円/時 有期契約の社員を育てて正社員化したい 人材育成支援コース(有期実習型訓練) / 経費75% 定額制eラーニング、有給の訓練休暇制度 人への投資促進コース / 教育訓練休暇等付与コース
助成率が最も高くなるのは、新分野進出やDX化に紐づく訓練です。同じ内容の研修でも、位置づけ次第で助成額が変わります。

人材育成支援コース

最も汎用性が高いコースです。3つのメニューに分かれています。

メニュー経費助成率賃金助成訓練時間の要件
人材育成訓練45%(大企業30%)※有期契約労働者等は70%1人1時間800円(大企業400円)10時間以上のOFF-JT
認定実習併用職業訓練45%(大企業30%)1人1時間800円(大企業400円)+OJT実施助成20万円(大企業11万円)1年あたり850時間以上
有期実習型訓練75%1人1時間800円(大企業400円)+OJT実施助成10万円(大企業9万円)6か月あたり425時間以上

実務で使いやすいのは人材育成訓練です。10時間以上のOFF-JT(座学等の研修)を実施するだけで申請できます。1日の研修が6時間だとすれば、2日間の研修で要件を満たします。

一方、認定実習併用職業訓練と有期実習型訓練はOJTを組み合わせた長期の訓練が前提で、年850時間・半年425時間という水準が必要です。実質的には、計画的に人を育てる体制が整っている企業向けのメニューです。

受け取れる金額には上限がある

助成率だけを見て金額を見込むと、実際の支給額とずれます。受講者1人あたりの経費助成には、訓練時間に応じた限度額が設けられているためです。以下は人材育成支援コースの限度額です(コースごとに金額が異なります)。

訓練時間中小企業大企業
10時間以上100時間未満15万円10万円
100時間以上200時間未満30万円20万円
200時間以上50万円30万円

たとえば20時間の研修に1人あたり40万円かけた場合、助成率45%なら18万円ですが、10時間以上100時間未満の区分の上限15万円が適用され、15万円までとなります。高額な研修ほど、助成率よりこの上限が効いてきます。

さらに、人材育成支援コースでは1事業所が1年度に受けられる支給額が1,000万円、支給申請の回数は1労働者につき年度3回までとされています。あとで触れる事業展開等リスキリング支援コースは、この枠とは別に設定されています。

事業展開等リスキリング支援コース

助成率が最も高いコースです。DX化に関する研修はここに該当する可能性があります。

項目内容
経費助成率中小企業75%/大企業60%
賃金助成1人1時間あたり 中小企業1,000円/大企業500円
対象訓練①新分野進出に必要な訓練 ②社内のDX化・GX化に必要な訓練 ③今後従事する職務に必要な訓練
対象事業主雇用保険適用事業所の事業主

人材育成訓練の45%と比べると、同じ研修でもこのコースなら助成率が30ポイント高くなります。生成AIの業務活用研修やデータ活用研修は、社内のDX化に必要な訓練として位置づけられる可能性があります。

限度額は人材育成支援コースより高く設定されている

助成率だけでなく、1人あたりの経費助成の限度額もこのコースのほうが高く設定されています。

訓練時間中小企業大企業(参考)人材育成支援コース・中小
10時間以上100時間未満30万円20万円15万円
100時間以上200時間未満40万円25万円30万円
200時間以上50万円30万円50万円

20時間の研修なら、人材育成支援コースの上限15万円に対し、このコースは30万円。助成率の差(45%と75%)と限度額の差が重なるため、実際の受給額では2倍前後の開きになることがあります。

なおeラーニング・通信制の訓練は、訓練時間にかかわらず最も低い区分が適用されるうえ、令和8年の改正で限度額そのものが引き下げられています。集合研修とeラーニングでは金額が大きく変わるため、研修形態を決める前に最新のパンフレットで確認してください。また1事業所が1年度に受けられる支給額は1億円が上限です。

令和8年8月の改正で「設備投資加算」が新設された

令和8年8月3日の改正で、このコースに設備投資加算が加わりました。実技の訓練で実際に使う機器・設備と同種で、かつ事業展開等に資する機器・設備(事業展開促進機器等)を導入した場合、その導入費用の50%が加算されます。

訓練の助成金でありながら、設備の導入費用にも届く枠です。新しい設備を入れて、その設備を扱える人を育てる——という進め方であれば、研修費と設備費の両方が対象になりえます。要件が細かいため、設備の選定段階で労働局に確認しておくのが安全です。

3つの類型と、具体的にどんな研修が当たるか

このコースの対象訓練は3つに分かれています。自社の研修がどれに当たるかで、説明の仕方が変わります。

類型該当する研修の例
① 新分野進出に伴う訓練これまで卸売だけだった会社が自社ECを始めるため、EC運営・受注管理・カスタマー対応の訓練を行う
② DX化・GX化に伴う訓練紙で処理していた見積・請求業務をシステム化するため、担当者に新システムの操作と運用設計の訓練を行う
③ 今後従事する職務に必要な訓練人事異動の予定がある社員に対し、異動先の職務に必要な専門知識の訓練を事前に行う

③は見落とされがちですが、使い勝手のよい類型です。すでに新分野に進出していなくても、「今後その職務に就く予定」であれば対象になりえます

いずれの類型でも、計画届には「どの事業展開のために」「誰に」「どの知識を」習得させるのかを、業務と紐づけて書く必要があります。ここが抽象的だと、DX化・GX化の類型では令和8年8月の改正後は通りにくくなります。

令和8年8月の改正で対象が絞られました

DX化・GX化の訓練について、職務に間接的に必要な知識・技能や、職業人として共通して必要なものは助成の対象外とされました。あわせて、1人の労働者につき1年度で3回まで(eラーニングは1回まで)という回数制限も設けられています。

この改正は、研修の設計に直接影響します。「AIとは何か」といった一般的なリテラシー研修は対象外と判断される可能性が高く、「自社の見積作成業務をAIで短縮する」のように職務に直接結びついた内容に設計する必要があります

裏を返すと、研修のカリキュラムを自社の業務に合わせて作り込めるかどうかが、助成を受けられるかの分かれ目になります。汎用の研修パッケージをそのまま導入すると、この要件を満たせないことがあります。

このコースは令和8年度末で終了します

ここまで見てきたとおり、事業展開等リスキリング支援コースは助成率・限度額ともに最も条件のよいコースです。ただし恒久的な制度ではありません。

令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です

厚生労働省のパンフレット(令和8年8月3日版)に、このコースは「令和4年度~8年度の期間限定の助成金として創設」され「令和8年度末までの時限措置」である旨が明記されています。令和9年度以降の取り扱いは、本記事の執筆時点(2026年9月)では公表されていません。延長・再編される可能性も、そのまま終了する可能性もあります。

実務上の意味はひとつです。75%の助成率を使いたいなら、今年度中に訓練を実施できるかどうかがすべてになります。そして、この制度は思い立ってすぐ申請できる仕組みではありません。

今から動く場合の逆算

計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に提出する必要があります。「1か月前まで」がリミットです。本記事の公開時点である2026年9月から逆算すると、こうなります。

時期やること間に合うか
2026年9月〜10月訓練の目的整理、研修会社の選定、カリキュラムと見積の確定、職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の作成余裕あり
2026年11月〜12月計画届を提出し、年明けに訓練を実施標準的な進め方
2027年1月計画届を提出し、2月中に訓練を実施ぎりぎり
2027年2月以降計画届の提出から1か月以上あける必要があるため、年度内の訓練実施は困難実質的に難しい

つまり実質的な社内の意思決定リミットは、2026年内と考えたほうが安全です。年明けから準備を始めると、研修会社の選定とカリキュラム確定だけで1か月以上かかることが多く、計画届の期限に間に合いません。

支給申請は年度をまたいでも構いません

支給申請の期限は「訓練終了日の翌日から起算して2か月以内」です。2027年3月に訓練が終わる場合、支給申請は2027年5月までに行うことになり、これは年度をまたいでも問題ありません。年度内に収める必要があるのは訓練の実施であって、支給申請そのものではありません。ただし個別の取り扱いは労働局の判断によるため、計画届の段階で必ず確認してください。

もし年度内に間に合わない場合でも、研修そのものを諦める必要はありません。人材育成支援コースの人材育成訓練(経費助成45%)は時限措置ではなく、令和9年度以降も継続する見込みです。助成率は下がりますが、10時間以上のOFF-JTという条件は同じです。リスキリング支援コースの終了を前提に、こちらへの切り替えを想定しておくとよいでしょう。

人への投資促進コース

デジタル人材の育成や、サブスクリプション型のeラーニングを対象にしたコースです。6つのメニューに分かれています。

メニュー経費助成(中小)賃金助成(中小)
高度デジタル人材訓練75%1,000円/時
成長分野等人材訓練(大学院等)75%1,000円/時
情報技術分野認定実習併用職業訓練60%(最大75%)800〜1,000円/時
定額制訓練60%(最大75%)なし
自発的職業能力開発訓練45〜60%なし
長期教育訓練休暇制度制度導入 20万円(24万円)1,000円/時

実務で使いやすいのが定額制訓練です。研修ごとに申請するのではなく、サブスクリプション型のeラーニングの年間利用料をまとめて対象にできます。社員が好きなタイミングで学ぶ形の研修基盤を整えたい場合に向いています。ただし賃金助成はありません。

年間の上限額は2,500万円(自発的職業能力開発訓練は300万円)と、他のコースより大きく設定されています。

このコースは令和8年度が最終年度とされています

令和9年度に再編が予定されています。定額制訓練などの利用を検討している場合は、年度内に計画届の提出まで進めておく必要があります。

教育訓練休暇等付与コース

他のコースと性格が異なり、個別の研修ではなく「制度」を対象にした助成です。有給の教育訓練休暇制度を就業規則に定め、実際に社員が取得した場合に定額が支給されます。

助成額は定額30万円(賃金要件等を満たす場合は36万円)。訓練の中身を細かく設計する必要がないため、カリキュラムの作り込みが難しい企業でも使えます。

社員が自発的に学ぶ環境を整えたい、資格取得を後押ししたい、という段階の企業であれば、まずこのコースから入るという選択もあります。

4つのコースの使い分け早見表

コース経費助成率(中小)賃金助成(中小)向いている場面
人材育成支援コース(人材育成訓練)45%(有期契約労働者等は70%)800円/時職務に関連する一般的な研修。10時間以上で申請可
人材育成支援コース(有期実習型訓練)75%800円/時+OJT助成10万円有期契約の社員を正社員化する前提で育てる
事業展開等リスキリング支援コース75%1,000円/時新分野への進出、社内のDX化・GX化
人への投資促進コースコースにより異なるコースにより異なるデジタル人材育成、定額制eラーニング、自発的な訓練

迷ったときの判断軸はシンプルです。その研修が「いま担当している仕事を良くするため」なら人材育成支援コース、「これまでやっていなかったことを始めるため」ならリスキリング支援コースと考えると、おおむね外しません。

コースが違うと、いくら変わるのか

助成率の差を具体的な金額で見てみます。中小企業が、5人に20時間の研修を、外部費用60万円で実施した場合の試算です。

項目人材育成支援コース
(人材育成訓練)
事業展開等リスキリング
支援コース
経費助成60万円 × 45% = 27万円60万円 × 75% = 45万円
賃金助成800円 × 20時間 × 5人 = 8万円1,000円 × 20時間 × 5人 = 10万円
合計35万円55万円

同じ研修でも20万円の差が出ます。研修費用60万円に対して、前者は実質25万円、後者は実質5万円の負担という計算です。

なお、これは上限額や個別の要件を考慮しない単純な試算です。実際には訓練の内容が各コースの要件を満たすかどうかが前提になります。「リスキリング支援コースのほうが得だから」と後から位置づけを変えることはできません。研修の目的と内容が、そのコースの定義に合致している必要があります。

対象になる経費・ならない経費

「研修にかかった費用」といっても、すべてが助成の対象になるわけではありません。

区分内容
対象になる外部の教育機関に支払う受講料・入学料・教材費/社内で実施する場合の外部講師への謝金・旅費/訓練に使う施設や設備の借上費
対象にならない社内講師の人件費/受講者の交通費・宿泊費・食費/訓練に直接関係しないコンサルティング費用/訓練中に使う備品の購入費

見落とされやすいのが社内講師の人件費です。ベテラン社員が講師を務める形の研修は、経費助成の対象がほとんど発生しません。この場合は賃金助成が中心になります。

逆に、外部の研修会社に委託する形であれば受講料の全額が経費の計算対象になるため、同じ内容の研修でも、誰が教えるかによって助成額が変わります

そもそも対象にならない訓練

次のような訓練は、コースを問わず助成の対象外です。研修を企画する前に確認しておいてください。

  • 普通自動車運転免許の取得など、職務に直接関係しない資格の取得
  • 接遇・マナー講習など、職業人として共通して必要とされる内容
  • 法令で実施が義務づけられている講習(安全衛生教育など)
  • 海外や洋上で実施する訓練
  • 訓練時間が10時間に満たないもの

とくに接遇・マナー研修は対象外です。新入社員研修を企画する際、ビジネスマナーの時間が大半を占めていると、要件を満たす訓練時間が足りなくなることがあります。この場合は、職務に関連する専門的な内容の時間を切り分けて計算します。

申請の流れと、最大の落とし穴

  1. 訓練内容を決め、職業訓練計画を作成する誰に、どの訓練を、何時間実施するかを具体的に決めます。
  2. 計画届を提出する訓練開始日の6か月前から1か月前までが提出期間です。
  3. 計画にそって訓練を実施する出勤簿や訓練日誌など、実施を証明する書類を残します。
  4. 支給申請する訓練終了日の翌日から2か月以内が原則です。
  5. 審査を経て支給される要件を満たしていれば、経費助成と賃金助成が支払われます。
  • 計画届の提出が間に合わないのが最も多い失敗です。訓練開始の1か月前を過ぎると、その訓練は対象になりません
  • 訓練を先に決めてから助成金を調べ始めると、ほぼ間に合いません。研修の検討と同時に計画届の準備を始めます
  • 訓練中の賃金を適正に支払っていること、出勤簿等で実施を証明できることが必要です
  • 令和8年5月から、支給申請時に価格設定疎明書の提出が必須になっています

研修の実施日を決める前に、逆算して1か月以上の準備期間を確保できるかを確認してください。ここだけは後から取り返せません。

その前に、自社が対象事業主か

コースを検討する前に、事業主側の要件を確認しておきます。ここを満たしていないと、どのコースも申請できません。

  • 雇用保険の適用事業所であること。これが大前提です
  • 職業能力開発推進者を選任していること。社内で人材育成の責任者を決め、届け出ます
  • 事業内職業能力開発計画を作成していること。自社としてどう人を育てるかの方針を文書にします
  • 労働保険料を滞納していないこと
  • 過去に不正受給をしていないこと
  • 訓練期間中も、対象労働者に適正に賃金を支払うこと

実務で引っかかりやすいのは職業能力開発推進者の選任事業内職業能力開発計画の作成です。どちらも書類を整えれば済む話ですが、存在自体を知らないまま研修の日程を決めてしまい、計画届の直前で慌てるケースがよくあります。

初めて申請する場合は、研修の中身を考えるのと並行して、この2つの整備を進めてください。一度作ってしまえば、次回以降の申請でも使えます。

スケジュールを逆算する

この制度は、研修の実施日から逆算して動かないと間に合いません。12月に研修を実施する場合の例です。

時期やること
9月研修の目的を整理し、どのコースに当たるかを判断する
10月研修会社を選び、カリキュラムと見積を確定させる。職業能力開発推進者を選任する
10月末まで計画届を提出(訓練開始日の1か月前まで)
12月研修を実施。出勤簿・訓練日誌を残す
翌年2月まで支給申請(訓練終了日の翌日から2か月以内)

ポイントは研修会社の選定とカリキュラムの確定を、計画届の提出より前に終わらせる必要があることです。「とりあえず計画届を出しておいて、内容は後で詰める」ということはできません。逆算すると、研修実施の3か月前には動き始める必要があります。

必要になる書類

タイミング主な書類
計画届の提出時職業訓練実施計画届(様式第1-1号)/対象労働者一覧(様式第3-1号)/事前確認書(様式第11号)/訓練カリキュラム
訓練の実施中出勤簿、訓練日誌など、受講の事実を証明できるもの
支給申請時支給申請書(様式第4-1号)/賃金台帳/訓練費用の領収書・契約書/価格設定疎明書

様式は改正のたびに更新されるため、必ず申請時点の最新様式を厚生労働省のサイトから取得してください。古い様式で提出すると受理されません。

不支給になりやすいパターン

要件は満たしていたのに支給されない、という事例には共通点があります。

  • 計画届の提出が訓練開始の1か月前を過ぎた。最も多い理由です。1日でも過ぎると、その訓練は対象外になります
  • 実施した訓練が計画届の内容と違う。日程変更や講師変更は、事前に変更届が必要です
  • 受講の事実を証明できない。出勤簿や訓練日誌がない、署名がないなど
  • 訓練時間が10時間に届かなかった。休憩時間は訓練時間に含められません
  • 対象外の内容が含まれていた。接遇・マナーや法定義務講習の時間を含めて計算していた
  • 賃金が適正に支払われていない。訓練中も通常どおりの賃金を支払う必要があります

いずれも、研修を実施したあとでは取り返せません。計画の段階でどこまで詰められているかが、そのまま結果になります。

よくある質問

生成AIの研修も対象になりますか?

社内のDX化に必要な訓練として、事業展開等リスキリング支援コースの対象になる可能性があります。ただし令和8年8月の改正で、職務に間接的に必要な知識や、職業人として共通して必要なものは対象外とされました。自社の具体的な業務に直結する内容に設計する必要があります。

eラーニングでも助成を受けられますか?

受けられますが、制限があります。事業展開等リスキリング支援コースでは、1人の労働者が受けられるのは1年度で3回まで、そのうちeラーニングは1回までです。また経費助成の限度額は、eラーニング・通信制の場合は訓練時間にかかわらず最も低い区分が適用され、令和8年の改正でさらに引き下げられています。金額の面では、集合研修のほうが有利になるケースが多くなっています。

研修費用の何割が戻ってくると考えればよいですか?

コースによって45%から75%まで開きがあります。加えて、訓練中に支払った賃金についても1時間あたり800円から1,000円が助成されます。ただし受講者1人あたりの経費助成には訓練時間に応じた上限(中小企業で15万円〜50万円)があるため、高額な研修では助成率より上限が効いてきます。

新入社員研修は対象になりますか?

職務に関連する専門的な内容であれば対象になりますが、接遇・マナー講習の部分は対象外です。カリキュラム全体のうち、対象となる時間だけを切り分けて10時間以上あるかを確認してください。

社内の先輩社員が講師をする研修でも申請できますか?

申請自体は可能ですが、経費助成の対象になる費用がほとんど発生しません。社内講師の人件費は対象外のためです。この場合は、訓練中の受講者の賃金に対する助成が中心になります。

事業展開等リスキリング支援コースは、いつまで使えますか?

厚生労働省のパンフレットでは令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置とされています。令和9年度以降の取り扱いは2026年9月時点で公表されていません。計画届は訓練開始日の1か月前までに提出する必要があるため、年度内に訓練を実施するには2026年内に社内の意思決定を終えておくのが安全です。

リスキリング支援コースが終わったら、研修に使える助成金はなくなりますか?

なくなりません。人材育成支援コースの人材育成訓練(経費助成45%・賃金助成800円/時)は時限措置ではないため、令和9年度以降も継続する見込みです。助成率と限度額は下がりますが、10時間以上のOFF-JTという基本的な条件は変わりません。

1年間に何度でも使えますか?

回数と金額の両方に上限があります。人材育成支援コースは1事業所1年度あたり1,000万円、事業展開等リスキリング支援コースは1億円が支給限度額です。受講回数は、いずれのコースも1人の労働者につき1年度で3回まで(リスキリング支援コースのeラーニングは1回まで)とされています。

まとめ

この記事の要点

人材開発支援助成金は、コース選びで助成率が45%から75%まで変わります。新分野への進出やDX化に紐づく訓練であれば事業展開等リスキリング支援コース(中小企業75%)、そうでなければ人材育成支援コースの人材育成訓練(45%)が基本です。後者は10時間以上のOFF-JTで申請できます。

最大の注意点は2つ。計画届は訓練開始日の1か月前までに出す必要があること。そして令和8年8月の改正により、DX化の訓練は職務に直接必要な内容でなければ対象外になったことです。どちらも、研修の中身を決める段階から意識しておく必要があります。

そしてもうひとつ。事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度末(2027年3月31日)までの時限措置です。75%の助成率を使うなら今年度が最後になる可能性が高く、計画届の期限から逆算すると2026年内には社内の意思決定を終えておきたいところです。間に合わない場合は、時限措置ではない人材育成支援コース(45%)への切り替えを想定しておいてください。

助成の要件を満たす研修を、自社の業務に合わせて設計します

株式会社Digital&では、生成AI・DXの研修を提供しています。「職務に直接必要な内容」という要件を満たすには、汎用の研修をそのまま導入するのではなく、自社の業務を題材にカリキュラムを組む必要があります。どの業務を題材にするかの整理からご相談いただけます。
なお、助成金の申請書類の作成や提出の代行は行っておりません。手続きそのものについては、社会保険労務士にご相談ください。

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