採用サイト制作に補助金は使えるか|2026年の結論と、例外になる3つの条件

公開 2026.09.16 更新 2026.09.16 読了 約26分
採用サイト制作に補助金は使えるか|2026年の結論と、例外になる3つの条件

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「採用サイトを作りたい。補助金は使えますか」——この質問には、はっきりした答えがあります。

2026年9月時点で、求人情報と社員紹介だけで構成された純粋な採用サイトの制作費は、国の主要な補助金では原則として対象外です。「場合によります」ではありません。小規模事業者持続化補助金の公募要領は、補助対象とならない経費の例として「求人広告」をはっきりと書いており、その理由を「単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外」と説明しています。制度の側が、あらかじめ線を引いているのです。

ただし、この記事は「だからあきらめてください」で終わりません。原則が対象外であることを出発点に置くと、例外がどこにあるのかが逆にはっきりします。作ろうとしているものが「採用サイト」なのか「採用ページを含む事業サイト」なのか「採用管理システム」なのかで、使える可能性のある制度はまったく変わります。

この記事では、公募要領・支給要領の記載にもとづいて原則と例外を構造で示し、最後に「補助金が使えないなら、何を基準に投資を判断すべきか」までを整理します。

この記事でわかること
  • 採用サイトが国の補助金で原則対象外になる、公募要領上の根拠
  • 「純粋な採用サイト」「採用+事業紹介」「採用管理システム」で扱いがどう変わるか
  • 販路開拓の要素を持たせた場合に、どこまでが対象になりうるのか
  • 雇用関係助成金で採用サイトが対象になる数少ないケース(と、それが個社では使えない理由)
  • 自治体の採用支援補助金の実例と、採用サイト制作費が対象になる制度・ならない制度
  • 採用サイトに投資するかどうかを、補助金ではなく採用単価で判断する方法
本記事の情報について

2026年9月時点で公開されている公募要領・支給要領・公式発表にもとづいて記載しています。補助率・上限・締切・対象経費の扱いは公募回や年度ごとに変わり、特に採用・求人に関する経費の線引きは改定が入りやすい項目です。申請前に必ず該当する公募回の公募要領および管轄の労働局・自治体窓口で最新の要件をご確認ください。主な公式サイトは小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>(商工会議所地区)デジタル化・AI導入補助金2026厚生労働省 人材確保等支援助成金新事業進出・ものづくり商業サービス補助金です。

結論:純粋な採用サイトは、国の補助金では原則対象外

先に結論を表で示します。2026年9月時点の公募要領にもとづく、制度ごとの扱いです。

制度純粋な採用サイトの制作費根拠となる記載
小規模事業者持続化補助金
<一般型 通常枠>第20回
対象外広報費の対象とならない経費例に「商品・サービスの宣伝広告を目的としない広告・看板・会社案内パンフレット作成・求人広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)」と明記
デジタル化・AI導入補助金2026対象外補助対象は事務局に登録された「ITツール」に限られる。個別に制作するウェブサイトは登録ITツールになりえない
新事業進出・ものづくり
商業サービス補助金
対象外広告宣伝・販売促進費は「補助事業で製造又は提供する製品・サービスに必要な広告」が対象。「補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告や会社全体のPR広告に係る経費」は対象外と明記
人材確保等支援助成金
(個社向けコース)
対象外支給対象経費は雇用管理制度の導入や業務負担軽減機器等。募集・採用のための媒体制作費は支給対象経費に含まれない
自治体の採用支援補助金制度により対象求人広告掲載料・人材紹介手数料を対象とする制度が多数。求人専用サイトの新設経費を明示的に対象とする制度も存在する

この表で押さえるべきことは2つです。

1つめ。国の制度は、4つとも「対象外」で揃っています。制度ごとに理由は違いますが、結論は同じ方向を向いています。「どれか探せば見つかるはず」という前提で時間を使うのは、率直に言って効率が悪い判断です。

2つめ。唯一まとまった可能性が残っているのは自治体の制度です。ただし後述するとおり、自治体の採用支援補助金の多くは「求人広告の掲載料」や「人材紹介会社への手数料」を対象にしており、自社の採用サイトを作る費用まで見てくれる制度は限られます。ここも「自治体なら何でも出る」という話ではありません。

なぜ対象外なのか:制度の目的から見ると当然の帰結になる

「なぜ採用サイトだけ冷たいのか」と感じるかもしれません。ここは制度の設計を知ると納得できます。日本の公的支援は、大きく2つの系統に分かれています。

比較軸補助金(経済産業省・中小企業庁系)助成金(厚生労働省系)
財源税金(国の予算)主に雇用保険料(事業主拠出)
目的販路開拓・生産性向上・新分野進出による売上と付加価値の向上雇用の維持・創出、労働者の処遇改善、職場定着
支給の考え方審査があり、採択されなければ受け取れない(競争的)要件を満たせば原則支給(非競争的)
お金の出し先設備・システム・広報などの「経費」制度の導入・賃上げ・定着など「行為と結果」
採用サイトの位置づけ売上に直結しない自社PRとして、対象外に分類される経費補助の設計自体が限定的で、媒体制作費は原則見ない

この表の最終行がすべてです。補助金の側から見ると、採用サイトは「売るためのもの」ではないので対象に入りません。助成金の側から見ると、採用サイトは「制度を導入して人を定着させる行為」ではないので対象に入りません。採用サイトは、補助金と助成金のちょうど谷間に落ちています。

この構造を理解すると、例外がどこに生まれるかも予想がつきます。「売るためのもの」に寄せるか、「制度・仕組みの導入」に寄せるか、あるいは「国ではなく自治体」に行くか。この3方向しかありません。次の図で全体像を確認してください。

作ろうとしているサイトの性格から見た、使える可能性のある制度の判断フロー そのサイトの 中身は 何が主役か 求人情報・社員紹介だけの純粋な採用サイト 国の制度は原則対象外 / 自治体の採用支援補助金を個別に確認する 商品・サービスを売るサイトで、採用ページを内包 持続化補助金 ウェブサイト関連費(上限30万円・採用部分は除く) 採用管理システム(ATS)などのソフトウェア デジタル化・AI導入補助金2026(登録ITツールに限る/共P-05) 業界の魅力発信サイト(組合・事業主団体が主体) 人材確保等支援助成金の団体向けコース / 広報費・委託費で計上 そもそもサイトではなく、職場環境や制度の整備 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
2026年9月時点の公募要領・支給要領にもとづく判断フロー。同じ「採用のためのサイト」でも、何が主役かによって行き先がまったく変わります。

小規模事業者持続化補助金:線はどこに引かれているか

ウェブ制作の補助金として最初に名前が挙がるのがこの制度です。運営は全国商工会連合会と日本商工会議所が地区ごとに分担しています。まず制度の基本を押さえます。

項目<一般型 通常枠>第20回の内容
補助率2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)
補助上限(基本)50万円。インボイス特例で+50万円、賃金引上げ特例で+150万円、両方で+200万円(最大250万円)
対象経費(8区分)機械装置等費/広報費ウェブサイト関連費/展示会等出展費/旅費/新商品開発費/借料/委託・外注費
補助対象事業の要件経営計画に基づいて実施する販路開拓等のための取組であること。あるいは販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること
申請受付2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00
事業支援計画書(様式4)発行受付締切2026年12月4日(金)
採択発表2027年3月頃(予定)
補助事業実施期限2028年3月31日(金)

採用サイトの可否を分けるのは、表の4行目「販路開拓等のための取組であること」という補助対象事業の要件です。採用は販路開拓ではありません。この時点で、採用サイトは補助対象事業の入口に立てていないことになります。

公募要領はどこに何と書いてあるか

第20回の公募要領を、関係する箇所だけ正確に並べます。

経費区分定義(公募要領の記載)採用サイトとの関係
②広報費「パンフレット・ポスター・チラシ・インターネット広告・SNS広告等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費」。対象とならない経費例に「商品・サービスの宣伝広告を目的としない広告・看板・会社案内パンフレット作成・求人広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)」求人広告として明確に対象外
③ウェブサイト関連費販路開拓等を行うためのウェブサイトやECサイト、システム(オフライン含む)等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要する経費」定義が「販路開拓等を行うための」と限定されており、採用目的のサイトは定義に入らない
⑧委託・外注費自社では実施困難な業務を第三者に依頼する経費。ただしウェブサイト・システム開発に関連する経費は③で計上③で計上すべきものを⑧に移して回避することはできない

ここが本記事でいちばん重要な部分です。整理すると、こうなります。

  • 広報費では、「求人広告」が対象とならない経費例に名指しで挙がっている。理由は「単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外」。
  • ウェブサイト関連費は、そもそも定義が「販路開拓等を行うための」ウェブサイトに限定されている。採用目的のサイトは定義の外にある。
  • 紙の会社案内パンフレットが対象外である以上、同じ内容をウェブにしたからといって対象になる理由はない

つまり、「求人広告は対象外」という1行だけが根拠ではありません。経費区分の定義そのものが、採用サイトを受け入れない形になっています。抜け道を探すより、この構造を前提に別の打ち手を考えたほうが早い、というのが実務上の結論です。

ウェブサイト関連費の上限と、単独申請の禁止

仮に販路開拓のサイトとして申請できる場合でも、この制度には2つの強い制約があります。

  • 当経費の補助金交付申請額の上限は30万円(税込)(広報費にも別枠で同じ30万円の上限がある)
  • ウェブサイト関連費のみによる申請はできない。必ずほかの経費と一緒に申請する

上限30万円は「補助金として受け取れる額」であり、「サイトにかけてよい額」ではありません。補助率2/3ですから、30万円を受け取るのに必要な制作費は45万円です。それ以上をかけても、この区分から出る補助金は増えません。

サイト制作費(税込)補助率2/3で計算した額実際に受け取れる補助金自己負担
45万円30万円30万円(ちょうど上限)15万円
100万円約66.7万円30万円(上限で頭打ち)70万円
200万円約133.3万円30万円(上限で頭打ち)170万円
300万円200万円30万円(上限で頭打ち)270万円

採用サイトの制作費は、簡易なものでも50万〜100万円、社員インタビューや撮影を含めて設計すると150万〜300万円という規模になります。この価格帯では、仮に対象になったとしても補助金が投資判断を変えることはありません。300万円のサイトに対して30万円は10%です。10%の差で作るか作らないかが決まるのであれば、そもそもその投資判断には別の問題があります。

ここが、この記事の後半につながる論点です。補助金の可否を調べる時間を、採用単価の試算に使ったほうが、意思決定の質は上がります。

例外①:販路開拓のサイトの一部として作る場合

原則が対象外だとして、例外はどこにあるのか。最初の例外は、採用を主役にしないことです。

持続化補助金のウェブサイト関連費は「販路開拓等を行うためのウェブサイト」を対象としています。したがって、商品・サービスを売るためのサイトを作り、その中の一要素として採用情報を置くという構成であれば、販路開拓の部分について計上できる余地が生まれます。

作り方のパターンサイトの主役持続化補助金での扱い実務上の注意
A:採用サイトを独立して作る
(recruit.〜 の別サイト)
採用対象外ドメインもデザインも独立しているため、販路開拓との関係を説明できない
B:事業紹介と採用を半々で作る不明確きわめて厳しい「販路開拓のためのサイト」と言い切れず、審査でも実績報告でも説明が破綻しやすい
C:商品・サービスを売るサイトを作り、採用ページを1階層置く販路開拓販路開拓の部分について計上の余地あり採用ページに係る制作費は按分して除外する。見積書の内訳を最初から分けておく
D:既存の事業サイトに採用ページだけ追加する採用対象外追加部分そのものが採用目的であり、販路開拓の取組にならない

この表で強調したいのはCとDの違いです。同じ「事業サイト内の採用ページ」でも、販路開拓のサイトを新たに作る中に含まれるのか、採用ページだけを後から足すのかで結論が変わります。Dは、どう書いても「採用のための費用」にしかなりません。

そしてCの場合でも、採用ページの制作費そのものは対象経費から外して計上するのが原則です。公募要領が求人広告を対象外と明記している以上、その部分を混ぜたまま申請することは避けるべきです。実務では、制作会社の見積書を「事業紹介・商品ページ」「採用ページ」「共通基盤(サーバー設定・CMS構築・デザイン共通部分)」に分けてもらい、採用ページ分を除外した金額で計上する形になります。

  • 見積書に「一式」としか書けない制作会社では、この分け方ができない。発注前に内訳の出し方を確認する
  • 共通基盤の費用をどう扱うかは判断が分かれる。商工会・商工会議所の窓口と事前に相談しておく
  • 持続化補助金はウェブサイト関連費のみでの申請ができないため、展示会出展や新商品開発など、ほかの取組とセットで計画を作る必要がある
  • 補助事業期間内に運用に至らなかったホームページ・ランディングページは対象外。制作費を払っただけでは足りず、期間内に公開まで到達する必要がある
  • ウェブサイトおよびシステムに関連するコンサルティング、アドバイス費用は対象外。戦略設計やディレクションを別費目で請求する契約だと、その部分が落ちる

正直に申し上げると、この「例外①」は、採用サイトを作りたい方にとって遠回りです。販路開拓のサイトを本気で作る計画があり、そのついでに採用ページも整備するという順番であれば自然に成立しますが、採用サイトの予算を通すために販路開拓の計画を後付けするのは、計画審査で見抜かれます。持続化補助金の審査は提出資料のみで行われ、ヒアリングはありません。書いたものがそのまま評価されます。

例外②:サイトではなく「採用管理システム」として導入する場合

もう一つの現実的な例外が、デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)です。この制度はサイトの制作費は見ませんが、ソフトウェアの導入費は見ます。そして、採用に関わるソフトウェアは対象カテゴリの中に存在します。

この制度の判断基準は「ホームページかどうか」ではなく、「事務局に登録されたITツールかどうか」です。制作会社にオリジナルで作ってもらうサイトは、事前にツールとして登録しようがないため、この枠組みに乗りません。一方で、パッケージとして提供されている採用管理システム(ATS:応募者の管理・選考進捗の管理・求人票の一元発信などを行うソフトウェア)が登録ITツールになっている場合は、対象になりうるという余地があります。

通常枠の公募要領は、ITツールが保有すべき「業務プロセス」を次のように分類しています。

Pコードプロセス名採用関連ツールとの関係
共P-01顧客対応・販売支援
共P-02決済・債権債務・資金回収
共P-03供給・在庫・物流
共P-04会計・財務・経営
共P-05総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務採用管理システム・労務管理システムが該当しうる区分
各業種P-06業種固有プロセス建設・医療など業種特化の人材管理ツールが該当する場合がある
汎P-07汎用・自動化・分析ツール単独では申請不可。共P-01〜各業種P-06と組み合わせて1プロセスとしてカウントされる

共P-05に「人事」が明示されていることが、この制度を採用の文脈で検討する根拠になります。ただし、ここに該当しうるからといって自動的に対象になるわけではありません。実際に登録されているツールかどうかを、事務局のITツール検索で確認する必要があります。

項目通常枠の内容(2026年9月時点)
補助額5万円〜150万円未満(1プロセス以上)/150万円〜450万円以下(4プロセス以上
補助率1/2以内(一定の低賃金要件を満たす場合は2/3以内)
補助対象経費ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費
交付申請締切2026年9月29日(火)17:00
交付決定日2026年11月9日(月)(予定)
事業実施期限交付決定〜2027年4月30日(金)17:00(予定)
主な対象外経費交付決定前に購入したITツール、リース・レンタル契約のITツール、中古品、対外的に無償で提供されているもの、交通費・宿泊費、補助金申請・報告に係る申請代行費、公租公課

この表で注意していただきたいのが補助額と必要プロセス数の関係です。150万円以上の補助を受けるには4プロセス以上のITツールが必要で、採用管理システム単体では通常これを満たしません。採用管理システムだけを導入するなら、実際には5万〜150万円未満の枠での申請になります。補助率1/2なら、300万円弱までのツール導入費が視野に入る計算です。

もう一つ、申請は登録された「IT導入支援事業者」と共同で行う点も制度の特徴です。ツールを提供するベンダー側が支援事業者として登録していなければ、そもそも申請できません。検討の順序は「ほしい機能を決める→登録ITツールを検索する→該当するツールの中から選ぶ」であり、逆ではありません。

この制度で採用サイトが対象にならない理由

採用管理システムが対象になりうるのに採用サイトが対象にならないのは、制度が「登録された規格品」を前提にしているからです。個社の要件に合わせて設計・制作するサイトは、事前に登録された商品として存在しません。「自社で作ったサイトをITツールとして登録してもらう」という発想も成り立ちません。登録要領上、ITツールは第三者に販売するために登録するものだからです。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金:採用目的は明確に線の外

2026年、従来の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と「中小企業新事業進出補助金」は統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。上限額が大きいため、「ここなら採用サイトも通るのでは」と考える方がいます。結論は明確に対象外です。

この制度でウェブサイトに関係するのは「広告宣伝・販売促進費」です。第1回公募要領の記載は次のとおりです。

項目第1回公募要領の記載
対象「補助事業で製造又は提供する製品・サービスに必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、補助事業のPR等に係るウェブサイトの構築、展示会出展、ブランディング・プロモーションに係る経費」
補助上限事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜き)の5%
(上限額=事業計画期間内の補助事業における売上見込み額合計÷事業計画年数×5%)
対象外「補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告や会社全体のPR広告に係る経費」
実績報告時の追加要件100万円(税抜き)以上のウェブサイト構築費は開発費用算出資料(作業単価、作業工数及び作業時間、固定費用、作業担当者、勤務記録等)の提出が必要。金額にかかわらず複数者からの見積もりと価格の妥当性を確認できる証憑が必要
公開要件補助事業実施期間内にウェブサイトが公開されること。交付決定後の発注・契約が前提

採用サイトは「補助事業で製造又は提供する製品・サービスに必要な広告」ではありません。したがって対象に入りません。さらに、仮に「会社全体を紹介する採用サイト」として位置づけようとすると、今度は対象外に明記されている「会社全体のPR広告」に該当します。どちらの側から寄せても、この制度では採用サイトは線の外に出ます。

加えてこの制度の公募要領は、「計上されている経費の大半が補助対象外である場合、補助事業の円滑な実施が困難であるとして、不採択・採択取消・交付決定取消になります」と明記しています。対象外の経費を混ぜて出すこと自体にリスクがある、という設計です。

雇用関係助成金で採用サイトは対象になるのか

ここからは厚生労働省系の助成金です。「採用に関する支援なのだから、採用サイトくらい見てくれるのでは」という期待に対して、正直に答えます。

採用支援の中心となる人材確保等支援助成金は、2026年9月時点で次の7コースが存続しています。

コース支援の内容対象採用サイト制作費の扱い
雇用管理制度・雇用環境整備助成コース雇用管理制度の導入または業務負担軽減機器等の整備により、離職率の低下目標を達成した場合に助成事業主対象外(支給対象は制度導入と機器等)
中小企業団体助成コース中小企業団体が構成企業の人材確保・職場定着支援事業を実施した場合に助成事業主団体委託費に「資料・ホームページ等の作成」の記載あり(団体が実施する事業に限る)
建設キャリアアップシステム等活用促進コース建設技能者の処遇改善に向けた取組を支援建設事業主対象外
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)建設分野で若年者・女性の入職・定着を図る事業を支援建設事業主/建設事業主団体団体向けの助成では広報費に「ホームページ作成・更新費」の記載あり。個社向けの助成では対象経費に広報費なし
作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)建設分野の施設設置・整備を支援建設事業主対象外
外国人労働者就労環境整備助成コース就業規則の多言語化など、外国人労働者の職場定着に向けた環境整備を支援事業主対象外(職場定着のための環境整備が対象)
テレワークコーステレワーク制度の導入・実施を支援中小企業対象外

7コースのうち、ホームページ作成費が支給対象経費として明記されているのは2つだけです。そして、その2つはいずれも「事業主団体」向けの助成であって、個々の会社が自社の採用サイトを作るために使えるものではありません。

団体向けの2コースを、正確に見る

誤解を避けるために、それぞれの中身を具体的に示します。

比較軸中小企業団体助成コース若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
事業主団体経費助成
申請できる主体事業協同組合等の事業主団体建設事業主団体
ホームページに関する記載委託費:「職業相談業務、調査の実施、資料・ホームページ等の作成を外部(法人、個人を問わない)に委託した場合の経費等」広報費:「事業に係る情報提供のための広告費やホームページ作成・更新費をいうものであること(新聞広告等それ自体が事業活動である場合は助成対象外とする)」
助成率2/33分の2(中小建設事業主団体以外は2分の1)
上限額構成中小企業者数により600万円/800万円/1,000万円全国団体3,000万円/都道府県団体2,000万円/地域団体1,000万円
対象となる事業の例調査・事業計画策定事業、安定的雇用確保事業(募集・採用の改善を含む)、職場定着事業、モデル事業普及活動事業建設事業の役割や魅力を伝え、理解を促進するための啓発活動等(講習会、現場見学会、インターンシップ、広報活動等)
個社が自社の採用サイトに使えるか使えない。いずれも団体が構成企業のために実施する事業に対する助成であり、助成対象も団体が負担した経費に限られる

この表を作った理由は、民間の解説記事で「人材確保等支援助成金で採用サイトが作れる」と書かれていることがあるためです。支給要領に当たると、それが団体向けの記載であることがわかります。自社が事業協同組合や建設事業主団体でない限り、この経路は使えません。

なお建設分野のコースには、個々の建設事業主が申請できる「事業主経費等助成」もあります。こちらは中小建設事業主で助成率5分の3(中小建設事業主以外は20分の9)、1事業所1年度あたり200万円が上限という、決して小さくない制度です。ただし支給対象経費の一覧は講師謝金・コンサルティング料・賃金・旅費・バス等借上料・印刷製本費・施設借上費・機械器具等借上料・教材費・厚生経費・通信運搬費・会議費・受講参加料・傷害保険料などで、広報費は含まれていません。対象となるのは現場見学会・体験学習・インターンシップ・入職者への研修といった「活動」であって、その活動を告知するサイトの制作費ではない、という整理です。

建設業の採用にお困りの場合、この事業主経費等助成は検討に値します。ただし使いどころは採用サイトではなく、インターンシップや現場見学会そのものの運営費です。制度の設計に合わせて取組の側を組み立てるほうが、はるかに通りやすくなります。

人材確保・定着の文脈で使える制度

採用サイトそのものは対象外でも、「人が採れない・辞めてしまう」という課題に対して使える制度はあります。採用サイトの検討と並行して、こちらも確認しておく価値があります。

制度何に対して出るか金額の目安採用活動との関係
人材確保等支援助成金
(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
A区分:賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度(メンター制度・エンゲージメントサーベイ・1on1ミーティング)、健康づくり制度の導入
B区分:業務負担軽減機器等の整備
A区分:1制度あたり20〜40万円(賃金要件加算で25〜50万円)、上限100万円
B区分:対象経費の1/2〜75/100、上限150万〜225万円
離職率の低下目標の達成が支給要件。採れない前に辞めないための制度整備に効く
キャリアアップ助成金
(正社員化コース)
有期雇用労働者等を正社員に転換した場合労働者1人あたり定額(加算あり)採用そのものではなく登用への助成。パート・アルバイトからの内部登用を設計する場合に
東京都
手取り時間創出・魅力ある職場づくり推進奨励金
人材育成方針の策定とキャリア面談制度、子育て支援勤務制度、賃上げ制度、社外副業・兼業制度、リスキリング・資格取得支援制度などの導入最大264万円都内中小企業向け。募集時に打ち出せる制度そのものを作る費用に充てられる

この表の見方を1つ提案します。採用サイトに何を書くかに困っている会社は、たいてい「書くことがない」のではなく「打ち出せる制度がない」のです。1on1ミーティングもキャリア面談制度も資格取得支援もない状態で採用サイトだけを立派にしても、応募者は面接で気づきます。制度を作るところに助成金が出て、その制度を伝えるところは自費、という順番は、実は理にかなっています。

人材確保等支援助成金の雇用管理制度・雇用環境整備助成コースには、計画書を事業開始日の6か月前から1か月前までに提出するという手続き上の制約があります。思い立ってすぐ使える制度ではないため、採用計画と合わせて逆算しておく必要があります。

自治体の採用支援補助金:採用サイトが対象になりうる唯一の領域

国の制度が軒並み対象外である一方、市区町村が独自に実施している採用支援補助金には、採用に関する費用を直接補助するものがあります。2026年9月時点で公開されている代表的な例を、対象経費の中身まで踏み込んで並べます。

制度補助率上限対象経費採用サイト制作費
東京都板橋区
中小企業魅力向上支援包括補助事業助成金
(令和8年度・板橋区産業振興公社)
1/2〜4/5以内
(人材獲得支援の費目が最も高い)
最大50万円
(3つの支援内容の合計)
人材獲得支援:求人用チラシ・パンフレット等の印刷物制作費、求人広告掲載料、求人動画制作費、求人専用Webサイト(Webページ)の新設経費、採用説明会等の出展料・設営装飾費、成功報酬型人材採用の手数料対象(新設経費に限る)
石川県能美市
市内事業者採用PRコンテンツ制作補助金
対象経費(税抜)の1/2年度15万円
(隔年申請・連続年度不可)
採用目的で制作するコンテンツの外部委託費。採用ページ、採用動画、採用パンフレットの制作に係る取材・撮影費、シナリオライター費等対象
東京都港区
中小企業人材確保支援事業補助金
2/3(ワーク・ライフ・バランス推進企業は3/4)人材紹介手数料100万円(同125万円)/求人広告・説明会40万円(同50万円)/両方申請時は100万円(同125万円)人材紹介事業者への成功報酬型手数料、就職・転職サイトへの掲載費、採用説明会のブース出展料等対象外
東京都足立区
区内中小企業人材採用支援助成金
採用活動経費の1/2求人広告費・動画制作費40万円/人材紹介成功報酬60万円(年度2回まで)インターネット上での求人情報の掲載費用(SNS含む)、雑誌上の掲載費用、求人チラシ制作費、求人動画作成費、人材紹介会社の成功報酬対象外(自社ホームページの掲載費は対象外と明記)
石川県金沢市
中小企業新戦力確保サポート補助金
1/2(小規模企業者は2/3)50万円採用動画・電子版採用パンフレット制作費(市内事業主への外注に限る)、工場見学資料作成費、工場見学者送迎バス借上費等対象外
静岡県浜松市
中小企業等採用活動支援事業費補助金
1/2以内(求人掲載料は1/4以内)30万円(奨学金返還支援補助金認定企業は40万円)就職情報サイトの求人情報等掲載料、ダイレクトリクルーティング利用料、合同企業説明会出展料対象外

6件並べてみると、はっきりした傾向が読み取れます。

自治体の採用支援補助金の主戦場は、サイト制作費ではなく「求人広告掲載料」と「人材紹介手数料」です。6件のうち4件は採用サイト制作費を対象外としており、足立区にいたっては「自社ホームページの掲載費は対象外」と明記しています。制度の設計者も、自社サイトへの投資は会社の資産形成であって、公費で持つべきものではないと考えているのでしょう。

一方で、板橋区と能美市は採用ページ・求人専用サイトの制作費を明確に対象に含めています。特に板橋区の人材獲得支援は助成率4/5と非常に高く、50万円の助成を受けるのに必要な自己負担は約12.5万円です。ただし、人材獲得支援の費目を申請する場合は専門家派遣の事前実施が必須という条件があり、申請受付は令和8年4月1日から予算に達し次第終了、事業完了期限は令和9年2月28日です。能美市は年度15万円と小ぶりですが、連続する年度での申請ができない隔年申請制です。

もう1点、見落とされがちな共通ルールがあります。これらの制度はほぼ例外なく「交付決定前に着手した費用は対象外」です。能美市は「コンテンツ制作に着手する前に申請書を提出する」ことを求めており、板橋区も見積・発注・履行・支払のすべてを所定の期間内に完了させることを条件にしています。制作会社と話が進んでから自治体の制度を探し始めると、たいてい間に合いません。

自分の地域の制度を探す

採用支援補助金は、制度の名前が自治体ごとにばらばらです。「補助金」と付かないものもあります。次の順序で探すのが現実的です。

  1. 自治体サイトを「採用 補助金」「人材確保 補助金」で検索する産業振興課・商工課・労働政策課のいずれかが所管です。要綱と様式がそのまま公開されていることが多く、対象経費の記載まで確認できます。
  2. 「採用PRコンテンツ」「魅力発信」「新戦力確保」などの言い換えでも検索する制度名に「採用」が入らないケースがあります。能美市の「採用PRコンテンツ制作補助金」、金沢市の「新戦力確保サポート補助金」が典型です。
  3. 区市町村の産業振興公社・産業振興センターを確認する板橋区や港区のように、区の外郭団体が制度を運営していることがあります。区の本体サイトだけ見ていると見落とします。
  4. 中小企業庁「ミラサポplus」と中小機構「J-Net21 支援情報ヘッドライン」で横断検索する地域と目的を指定して国・自治体の制度を横断的に探せます。J-Net21は公募情報が日次で更新されます。
  5. 都道府県の制度も別枠で確認する市区町村の制度と都道府県の制度は別です。ただし同一経費への重複受給はできないため、どちらを使うかは事前に決めてください。
  6. 年度の早い時期に動く採用支援補助金は予算に達し次第終了の先着順が大半です。浜松市は2026年8月20日時点で当初の予算上限に達しつつあると案内されていました。年度後半に探し始めると、制度はあるのに枠がない状態になります。

対象外になりやすいもの・不採択になりやすいパターン

ここまでの内容をふまえ、採用サイトの見積書に入りがちで、制度をまたいで落ちやすい項目を整理します。

  • 求人広告・採用ページの制作費:持続化補助金では「単なる会社の営業活動に活用されるもの」として広報費の対象外に明記されています。
  • 会社案内・代表挨拶・沿革のページ:会社案内パンフレット作成と同じ扱いで、制度上は「単なる会社のPR」に分類されます。
  • 採用ページだけを既存サイトに追加する費用:販路開拓の取組にならず、どの経費区分にも収まりません。
  • ドメイン・サーバーの継続費用、既存ソフトウェアの更新料:持続化補助金は「既に導入しているソフトウェアの更新料」を対象外と明記しています。
  • サイト戦略のコンサルティング・ディレクション費用:持続化補助金のウェブサイト関連費では「ウェブサイトおよびシステムに関連するコンサルティング、アドバイス費用」が対象外です。
  • 交付決定前に発注・契約・支払いをした費用:制度共通の大原則です。採択通知だけでは着手できません。
  • 補助事業期間内に公開に至らなかったサイト:支払いが済んでいても対象外になります。
  • 撮影の被写体や紹介物そのものの購入費:社員インタビューの撮影費は対象でも、撮影用に購入した備品は対象外になりえます。
  • 申請代行費:デジタル化・AI導入補助金2026は「補助金申請、報告に係る申請代行費」を対象外と明記しています。
  • 消費税および地方消費税:補助対象経費から除かれるのが原則です。

この一覧のうち、最も取り返しがつかないのは交付決定前の発注です。制作会社との打ち合わせが進むと契約を急ぎたくなりますが、交付決定通知書に記載された交付決定日より前に行った発注・契約・支出は、すべて補助の対象外になります。持続化補助金の場合、採択発表から交付決定までおおむね1〜2か月かかるため、この期間の扱いを制作会社と事前に握っておく必要があります。

次に、計画の中身の問題で落ちるパターンです。持続化補助金の採択率は直近3回で約51.1%(第17回)、約48.1%(第18回)、約47.2%(第19回)と推移しており、おおむね2社に1社は通りません。

  • 採用の話を販路開拓の言葉に置き換えただけの計画:「人材が確保できれば生産能力が上がり売上が増える」という論法は、販路開拓の取組としては評価されません。求められているのは市場と顧客の分析です。
  • ウェブサイト関連費だけで申請した:この時点で要件を満たしません。ほかの経費と組み合わせる必要があります。
  • 事業支援計画書(様式4)の発行依頼が締切に間に合わなかった:第20回の発行受付締切は2026年12月4日で、申請締切の12月15日より11日早く設定されています。受付締切以降の発行は、いかなる理由があってもできません。
  • 売上高・売上総利益の増加が数字で示されていない:補助対象事業の要件そのものです。
  • 加点項目を3つ以上選んでしまった:重点政策加点・政策加点から各1種類、合計2種類までです。超えると加点審査の対象から外れます。
  • 過去の採択時と同じ内容で申請した:過去の補助事業と同じ事業と見受けられる場合は不採択になります。

必要書類と、申請から入金までの期間

採用ページを含む事業サイトを持続化補助金で計画する場合を想定して、そろえる書類とスケジュールを整理します。

区分書類取得先・注意点
共通gBizIDプライムのアカウント電子申請に必須。取得に日数がかかるため早めに着手。郵送での申請は一切受け付けない
事業支援計画書(様式4)地域の商工会・商工会議所が発行。受付締切以降の発行依頼は理由を問わず不可。発行にあたり代表者への内容確認が行われる場合がある
法人貸借対照表および損益計算書(直近1期分)損益計算書がない場合は確定申告書の表紙・別表四の写し
現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書法務局。決算期を一度も迎えていない場合のみ提出。提出日から3か月以内の原本
個人事業主直近の確定申告書(第一表・第二表と、収支内訳書または青色申告決算書)決算期未到来の場合は開業届の写しと売上台帳等。マイナンバーは黒塗り
制作関連見積書(内訳の分かるもの)発注総額1件あたり50万円超(税込)の外注は、価格の妥当性を確認できる資料が必要。採用ページ分を分離できる内訳にしておく
実績報告時の公開証跡期限内に公開されたことが確認できる資料。運用に至っていないサイトは対象外

次に、お金が実際に入ってくるまでの期間です。

段階第20回の日程・目安
事業支援計画書(様式4)発行受付締切2026年12月4日(金)
申請締切2026年12月15日(火)17:00
採択発表2027年3月頃(予定)
採択発表から交付決定までおおむね1〜2か月
見積書等の提出期限2028年2月29日(火)※未提出の場合は採択取消
補助事業実施期限2028年3月31日(金)
実績報告書の提出期限2028年4月10日(月)

申請から採択発表までおよそ3か月、交付決定まではさらに1〜2か月。そこから制作し、公開し、支払いを済ませ、実績報告を提出して、内容確認を経て入金されます。申請から入金までは1年前後を見ておくのが現実的です。そして補助金は後払いです。制作費はいったん全額を自社で支払うことになります。

採用の文脈では、この時間感覚が致命的になることがあります。「4月入社に向けて秋から動きたい」という話と、「1年後に30万円が戻るかもしれない」という話は、まったく別の時間軸で動いています。採用計画に締切がある場合、補助金のスケジュールに採用を合わせるという選択肢は現実的ではありません。

補助金が使えないなら、何を基準に判断すべきか

ここからが本題です。採用サイトの投資判断は、補助金の有無ではなく採用単価で行うべきです。理由は単純で、桁が違うからです。

まず、採用にかかる費用の構造を確認します。

手段費用の発生の仕方性質やめたときに残るもの
求人媒体への掲載掲載期間ごとに課金。採用できなくても発生する変動費(フロー)何も残らない
人材紹介採用決定時に成功報酬。一般に理論年収に対する一定割合変動費(フロー)何も残らない
ダイレクトリクルーティング利用料+成功報酬。運用工数が社内に発生する変動費+社内工数スカウト文面や候補者リストのノウハウ
採用サイト初期制作費+更新・運用費。採用できなくても発生する固定費(ストック)コンテンツ、検索経由の流入、応募の受け皿

採用サイトは唯一の「ストック型」です。これが判断の分かれ目になります。1年しか使わないならフロー型のほうが安く、複数年使うならストック型のほうが安くなる——この当たり前の構造を、数字で確認します。

3年間の総コストを試算する

以下はモデル試算です。前提を明示しますので、自社の実績値に置き換えて計算し直してください。

試算の前提

正社員を年間4名採用したい中小企業を想定。想定年収400万円。人材紹介の手数料率は理論年収の30%、求人媒体の掲載料は1回40万円で年6回、採用サイトは初期制作150万円・年間の更新および求人広告運用費120万円とします。いずれも金額は業種・地域・職種によって大きく変動します。

方法1年目2年目3年目3年合計採用単価(12名で割る)
A:人材紹介のみ480万円480万円480万円1,440万円120.0万円
B:求人媒体のみ240万円240万円240万円720万円60.0万円
C:採用サイト+自社運用270万円
(制作150+運用120)
120万円120万円510万円42.5万円
参考:Cで受け取れる補助金の最大額仮に対象になったとして30万円(持続化補助金ウェブサイト関連費の上限)▲30万円

この表から3つのことが読み取れます。

1つめ。AとCの3年間の差は930万円です。補助金の30万円は、この差の3.2%にすぎません。どちらの手段を選ぶかという判断のほうが、補助金が出るかどうかより30倍大きな金額を動かしています。

2つめ。1年目だけを見ると、Cは270万円でBの240万円より高くなります。採用サイトが効いてくるのは2年目からです。裏を返せば、1年で結果を求めるなら採用サイトは合理的な選択ではありません。単発の増員であれば人材紹介のほうが確実で速い場合があります。

3つめ。この試算は「Cでも年4名採用できる」という前提に立っています。ここが最大のリスクです。採用サイトを作っても応募が来なければ、270万円を払って0名という結果もありえます。したがって、判断の順序は「サイトを作るか」ではなく「応募をどこから連れてくるか」が先になります。

採用単価を分解して、どこに効かせるかを決める

採用単価は、次の式で分解できます。この式を持っていると、サイトに投資すべきかどうかが判断できます。

採用単価の分解式

採用単価 = 応募単価 ÷(書類選考通過率 × 面接通過率 × 内定承諾率)
応募単価 = 採用にかけた費用 ÷ 応募数

状態応募単価書類通過率面接通過率内定承諾率採用単価
改善前10,000円40%30%60%約139万円
応募単価だけ半減させた場合5,000円40%30%60%約69万円
内定承諾率だけ80%に改善した場合10,000円40%30%80%約104万円
書類通過率を60%に改善した場合
(ミスマッチ応募が減る)
10,000円60%30%60%約93万円
3つを同時に改善した場合5,000円60%30%80%約35万円

この表が示すのは、採用単価は掛け算で決まるので、どこか1か所だけを直しても効果は限定的だということです。そして採用サイトは、この式の複数の項に同時に効く数少ない打ち手です。

  • 応募単価:自社サイトからの直接応募が増えれば、媒体費・紹介手数料に依存する割合が下がる
  • 書類通過率:仕事内容・働き方・給与レンジを正確に書くと、合わない応募が減り、通過率が上がる
  • 内定承諾率:面接前後に候補者が見る情報が整っていると、迷いが減る。実際、候補者は面接前に必ず会社名で検索します

逆に言えば、採用サイトを作っても応募単価が下がらず、書類通過率も内定承諾率も変わらないなら、その投資は失敗です。作る前にこの3つのどれをどれだけ動かすつもりなのかを決めておく。これが、補助金が出るかどうかを調べるより先にやるべきことです。

採用サイトに投資すべき会社・すべきでない会社

判断の目安を示します。

条件投資すべき投資を急がなくてよい
採用の頻度毎年継続的に採用する(年3名以上など)数年に1度、1名の欠員補充
現在のコスト構造人材紹介手数料が年数百万円規模で発生しているハローワークと縁故でまかなえている
内定辞退の状況内定を出しても辞退される、面接での志望度が低い内定承諾率がすでに高い
打ち出せる中身働き方・制度・仕事内容に具体的に書けることがある労働条件の整備がこれから。まず制度の側を作る
運用体制公開後に更新できる担当者または委託先がある作りっぱなしになることが目に見えている

右列に多く当てはまるなら、採用サイトより先にやることがあります。労働条件や制度の整備には、前述の人材確保等支援助成金やキャリアアップ助成金が使えます。採用サイトには補助金が出ず、その前段階の制度整備には助成金が出る。この順番は、制度の側からの「先に中身を作れ」というメッセージと読むこともできます。

よくある質問

採用サイトの制作費に使える国の補助金は、本当に1つもないのですか?

2026年9月時点で、採用サイトの制作費をそのまま補助する国の制度はありません。小規模事業者持続化補助金は広報費の対象とならない経費例に「求人広告」を明記し、ウェブサイト関連費の定義を「販路開拓等を行うためのウェブサイト」に限定しています。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は広告宣伝・販売促進費の対象を「補助事業で製造又は提供する製品・サービスに必要な広告」とし、「会社全体のPR広告に係る経費」を対象外としています。デジタル化・AI導入補助金2026は登録されたITツールのみが対象で、個別制作のサイトは対象になりません。残る可能性は、自治体が独自に実施している採用支援補助金です。

事業サイトの中に採用ページを作れば、持続化補助金の対象になりますか?

サイト全体が販路開拓のためのものであれば、販路開拓に該当する部分について計上できる余地があります。ただし採用ページに係る制作費は、公募要領が求人広告を対象外と明記している以上、按分して除外するのが原則です。制作会社の見積書を「事業紹介・商品ページ」「採用ページ」「共通基盤」に分けて出してもらい、採用ページ分を外して計上する形になります。また、既存の事業サイトに採用ページだけを追加する場合は、追加部分そのものが採用目的であるため対象になりません。実際の計上方法は、地域の商工会・商工会議所に事前にご相談ください。

採用管理システム(ATS)なら補助金が使えると聞きました。本当ですか?

条件付きで本当です。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は、業務プロセスとして「共P-05 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務」を定めており、採用管理システムはこの区分に該当しうるツールです。ただし対象になるのは事務局に登録されたITツールに限られ、申請は登録された「IT導入支援事業者」と共同で行います。補助額は5万円〜150万円未満(1プロセス以上)、150万円〜450万円以下(4プロセス以上)で、補助率は1/2以内です。採用管理システム単体では通常4プロセスに届かないため、実際には150万円未満の枠での申請になります。2026年9月29日17:00が直近の交付申請締切です。

人材確保等支援助成金で採用サイトを作れるという記事を見ましたが、正しいですか?

個々の会社については正しくありません。人材確保等支援助成金でホームページ作成費が支給対象経費として明記されているのは、中小企業団体助成コース(委託費に「資料・ホームページ等の作成」)と、若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)の事業主団体経費助成(広報費に「事業に係る情報提供のための広告費やホームページ作成・更新費」)の2つです。いずれも事業協同組合等の事業主団体または建設事業主団体が実施する事業に対する助成であり、1社が自社の採用サイトを作るために使えるものではありません。なお建設分野の個社向け助成(事業主経費等助成)の支給対象経費一覧に広報費は含まれていません。

自治体の採用支援補助金なら、採用サイトの費用が出ますか?

制度によります。自治体の採用支援補助金の多くは、求人広告の掲載料や人材紹介会社への成功報酬を対象としており、自社サイトの制作費は対象外としています。足立区の助成金は「自社ホームページの掲載費」を対象外と明記しています。一方で、板橋区産業振興公社の中小企業魅力向上支援包括補助事業助成金は「求人専用Webサイト(Webページ)の新設経費」を人材獲得支援の対象経費に含め、助成率は最大4/5です。能美市の採用PRコンテンツ制作補助金も採用ページの制作費を対象としています。必ずご自身の自治体の要綱で対象経費の記載を確認してください。

補助金の申請が通ってから制作を始めればよいですか?

順序としてはそのとおりですが、時間がかかる点に注意が必要です。どの制度も、交付決定通知書に記載された交付決定日より前に行った発注・契約・支出は対象外になります。採択通知を受け取っただけでは着手できません。持続化補助金では採択発表から交付決定までおおむね1〜2か月かかり、第20回の場合は2026年12月申請、2027年3月頃採択発表という日程です。制作開始は早くても2027年春以降になります。採用計画に具体的な締切がある場合、このスケジュールに採用を合わせるのは現実的ではありません。

補助金が使えないなら、採用サイトは作らないほうがよいのでしょうか?

それは別の判断です。判断基準は補助金の有無ではなく、採用単価が下がるかどうかです。人材紹介中心の採用を3年続けた場合と、採用サイトを作って自社経由の応募を増やした場合では、モデル試算で数百万円規模の差が出ます。持続化補助金のウェブサイト関連費の上限30万円は、その差に比べれば小さな金額です。ただし、年に1名の欠員補充しか発生しない、公開後に更新できる体制がない、打ち出せる労働条件がまだ整っていない、といった状況であれば、採用サイトより先に手を付けるべきことがあります。制度の整備には助成金が使える場合があります。

まとめ

この記事の要点

2026年9月時点で、求人情報と社員紹介だけで構成された純粋な採用サイトの制作費は、国の主要な補助金では原則として対象外です。小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回の公募要領は、広報費の対象とならない経費例に「商品・サービスの宣伝広告を目的としない広告・看板・会社案内パンフレット作成・求人広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)」と明記しています。加えてウェブサイト関連費の定義自体が「販路開拓等を行うためのウェブサイト」に限定されています。

例外は3方向にあります。①販路開拓のサイトを作り、その中に採用ページを置く(採用ページ分は按分して除外。ウェブサイト関連費は上限30万円・単独申請不可)、②サイトではなく採用管理システムとして導入する(デジタル化・AI導入補助金2026、共P-05に該当する登録ITツールに限る。直近の交付申請締切は2026年9月29日17:00)、③自治体の採用支援補助金を使うの3つです。

雇用関係助成金については正直に書きます。人材確保等支援助成金でホームページ作成費が支給対象経費として明記されているのは中小企業団体助成コースと建設分野の事業主団体経費助成の2つだけで、いずれも事業主団体向けであり、1社が自社の採用サイトを作るためには使えません。個社で使えるのは、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースのように職場環境や制度の整備に対する助成です。

自治体制度は制度によって大きく分かれます。港区・足立区・浜松市・金沢市は求人広告掲載料や人材紹介手数料が中心で採用サイト制作費は対象外、一方で板橋区産業振興公社は「求人専用Webサイトの新設経費」を助成率最大4/5で対象とし、能美市は採用ページの制作費を1/2・年度15万円で対象としています。いずれも交付決定前の着手は対象外で、予算に達し次第終了です。

最後に、判断の順序です。補助金が出るかどうかより、採用単価が下がるかどうかで決めてください。人材紹介中心の採用を3年続けた場合と採用サイトを軸に切り替えた場合では、モデル試算で3年間900万円を超える差が出ます。持続化補助金の上限30万円は、その差の3%程度にすぎません。調べる時間の配分そのものを見直したほうが、得られるものは大きくなります。

補助金が出るかどうかより、採用単価が下がるかどうかで

採用サイトが補助金の対象になりにくいのは、制度が意地悪だからではなく、それが会社の資産になる投資だと整理されているからです。だとすれば、判断するべきは「いくら補助が出るか」ではなく「何人採れて、1人あたりいくらになるか」です。
株式会社Digital&では、採用支援サービス「ヨビコム」「ヨビコム建設」と、採用LP・採用サイトの制作を通じて、応募単価と内定承諾率の改善に取り組んでいます。現在の採用単価を分解するところからご相談いただけます。
なお、補助金・助成金の申請書類の作成や提出の代行は行っておりません。手続きそのものについては、社会保険労務士・行政書士など各分野の専門家にご相談ください。

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