採用に使える助成金一覧|求人広告費・紹介手数料は対象になるか【令和8年度】

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求人サイトへの掲載料、人材紹介会社への成功報酬、採用サイトの制作費。採用にはまとまった費用がかかります。「この費用に使える助成金はないか」と検索してこの記事にたどり着いた方が多いはずです。
最初に、いちばん大事なことをお伝えします。日本の雇用関係助成金は、採用にかかった費用を補助する制度ではありません。厚生労働省が所管する雇用関係助成金は、原則として「特定の状況にある人を雇い入れ、一定期間定着させたこと」に対して、決まった定額が支給されるという設計になっています。いくら求人広告にお金をかけても、その金額は助成額に影響しません。
そして2026年度(令和8年度)は、この点でさらに厳しくなりました。採用活動の経費そのものを補助していた数少ない制度である「早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)」が、令和8年3月31日で廃止されています。
とはいえ、がっかりして終わる話ではありません。雇い入れに対して出る助成金は中小企業なら1人60万円から240万円と金額が大きく、採用予算全体で見れば十分に回収可能な規模です。また、求人広告費や人材紹介手数料を直接補助する制度は、国ではなく自治体側に存在します。この記事では、その両方を公式情報にもとづいて整理します。
- 採用にかかる費用のうち、何が助成金の対象になり、何がならないか
- 令和8年度に使える「雇い入れに対する助成金」の金額と対象者
- 令和8年3月31日で廃止されたコースと、その影響
- 求人広告費・人材紹介手数料を直接補助する自治体制度の実例と探し方
- 雇用関係助成金に共通する受給の前提条件
- 不支給になりやすいパターンと、動き出すタイミング
2026年9月時点で公開されている厚生労働省および各自治体の資料にもとづいて記載しています。雇用関係助成金はコースの新設・改廃が年度ごとに行われ、年度途中でも要件が変わります。申請前に必ず厚生労働省の雇用関係助成金一覧と廃止済みで経過措置中の助成金一覧で最新の状況をご確認ください。
「採用費用に使える助成金」を探すと行き止まりになる理由
検索する側の頭の中にあるのは、たいてい次のような費用です。求人媒体への掲載料が1回20万円から50万円。人材紹介会社を使えば理論年収の30%前後、年収400万円の人材なら120万円。採用サイトを作れば100万円から300万円。合同説明会への出展で20万円。これらを合計すると、1人採用するのに100万円を超えることは珍しくありません。
この感覚で「採用 助成金」と検索すると、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金といった名前が出てきます。ところが読み進めると、どこにも「求人広告費の◯分の1」「紹介手数料の上限◯万円」という記述がありません。代わりに書いてあるのは「対象労働者1人につき60万円」といった定額です。
これは書き方の問題ではなく、制度の設計思想の違いです。雇用関係助成金の財源は雇用保険二事業で、事業主が負担する雇用保険料が原資になっています。目的は「事業主の採用コストを軽くすること」ではなく、「就職が困難な人の雇用機会を作り、定着させること」です。
そのため助成金の判定は「いくら使ったか」ではなく、「誰を雇ったか」「ハローワーク等の紹介を経ているか」「何か月定着したか」で行われます。求人広告に100万円かけても1円も増えず、ハローワークの無料求人で採用しても満額が出ます。この構造を理解しないまま探し続けると、いつまでも見つかりません。
採用にかかる費用は、どこまで助成の対象になるか
費用の項目ごとに、国の雇用関係助成金と自治体の補助金のどちらで見てもらえるのかを1枚に整理します。
図の上半分、つまり採用活動そのものにかかる費用は、国の雇用関係助成金ではほぼ対象になりません。一方で図の下半分、雇い入れと定着、そして入社後の教育は、国の助成金がまさに狙っている領域です。
この役割分担を前提にすると、実務の順番が決まります。まず自社の所在地の自治体に採用費の補助金があるかを確認し、そのうえで「どういう人を採れば国の助成金の対象になるか」を採用要件に織り込む。この2段階が、採用予算を最も軽くする組み立て方です。
求人広告費・人材紹介手数料が対象になる制度はどこまであるか
「採用にかかった費用の実額に対して助成が出る制度」が国にどれだけ存在するのか、正直に整理します。
| 費用の種類 | 国の雇用関係助成金での扱い | 備考 |
|---|---|---|
| 求人サイト・求人誌への掲載料 | 対象となる制度なし | UIJターンコース廃止後、経費として見る制度は残っていない |
| 人材紹介会社への成功報酬 | 対象となる制度なし | 紹介事業者の紹介であること自体は要件になるが、手数料は助成対象外 |
| 採用パンフレット・採用サイト・採用動画 | 対象となる制度なし(令和8年3月31日まではUIJターンコースが対象としていた) | 中小企業庁系の補助金で別途検討する余地がある |
| 合同説明会・面接会の実施費用 | 対象となる制度なし(事業協同組合等が実施する場合のみ人材確保等支援助成金・中小企業団体助成コースで対象になり得る) | 単独企業の出展料は国の制度では見られない |
| 外部専門家によるコンサルティング | 対象となる制度なし(同上、UIJターンコースで対象としていた) | — |
| 雇用管理制度・職場環境の整備 | 人材確保等支援助成金で定額または経費の一部が対象 | 採用ではなく「定着」を目的とした制度 |
| 事業所の設置・整備と併せた雇入れ | 地域雇用開発助成金で設置整備費用の規模に応じた定額 | 対象地域が限定される |
| 入社後の訓練経費・訓練中の賃金 | 人材開発支援助成金で経費の一部+賃金助成 | 採用後の制度 |
この表がこの記事の結論です。令和8年度において、求人広告費と人材紹介手数料を直接助成する国の制度は存在しません。民間の情報サイトで「採用費用に使える助成金」として紹介されているものの多くは、実際には雇い入れに対する定額給付か、採用とは別の目的の制度です。
ただし、表の下3行が示すとおり、「採用に関連して発生する費用」まで広げれば対象はあります。そして自治体レベルでは、表の1行目と2行目をそのまま補助する制度が実在します。順に見ていきます。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
雇い入れに対する助成金の中心が特定求職者雇用開発助成金です。高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に支給されます。
最も利用されるのが特定就職困難者コースです。支給額は対象者の類型と企業規模で決まります。
| 対象労働者 | 支給額(中小企業) | 助成対象期間 | 支給対象期ごとの額 |
|---|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等 | 60万円(大企業50万円) | 1年 | 30万円×2期(大企業25万円×2期) |
| 重度障害者等を除く身体・知的障害者 | 120万円(大企業50万円) | 2年(大企業1年) | 30万円×4期(大企業25万円×2期) |
| 重度障害者等 | 240万円(大企業100万円) | 3年(大企業1年6か月) | 40万円×6期(大企業33万円×3期、第3期は34万円) |
| 短時間労働者のうち高年齢者、母子家庭の母等 | 40万円(大企業30万円) | 1年 | 20万円×2期(大企業15万円×2期) |
| 短時間労働者のうち重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者 | 80万円(大企業30万円) | 2年(大企業1年) | 20万円×4期(大企業15万円×2期) |
ここで「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。フルタイムで採用するか短時間で採用するかで、金額がおよそ3分の1変わるということです。
実務で見落としやすいのが、支給対象期ごとの支給額は、その期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額が上限になるという条件です。半年間の支払賃金が30万円に満たなければ、その期の支給額は賃金額までしか出ません。週20時間台の短時間勤務で最低賃金水準の場合、上限に引っかかる可能性があります。
そしてこのコースには、令和8年度に2つの重要な変更が入っています。
①令和8年5月1日以降、高年齢者(60歳以上)の要件が見直されました。ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けている高年齢者が対象労働者となり、原則として「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」を明示した職業紹介を行った場合のみ支給申請が可能になります。
②令和8年4月以降の申請分からは、添付書類として賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給となります。従来は不足があれば追完を求められていた書類が、提出必須になりました。
①の影響は小さくありません。60歳以上の方を採用する場合、求人票を出して応募してきた人をそのまま採用しても対象にならない可能性があります。ハローワークの窓口で「この求人は特定求職者雇用開発助成金の対象です」という形での紹介を受ける必要があるため、求人を出す段階でハローワークに相談しておくことが前提になります。採用が決まってから助成金を調べ始めると、まず間に合いません。
特定求職者雇用開発助成金のその他のコースと、廃止されたコース
特定求職者雇用開発助成金には、令和8年度時点で次のコースがあります。
| コース | 対象者 | 支給額(中小企業) |
|---|---|---|
| 特定就職困難者コース | 高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母等 | 60万円〜240万円 |
| 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | 発達障害者、難病患者 | 120万円(大企業50万円) |
| 中高年層安定雇用支援コース | 雇入れ日に35歳以上60歳未満で、正規雇用に就くことが困難な方 | 60万円(30万円×2期、大企業50万円) |
| 生活保護受給者等雇用開発コース | 自治体からハローワークに就労支援の要請があった生活保護受給者等 | 60万円(大企業50万円) |
| 成長分野等人材確保・育成コース | — | 令和8年3月31日をもって廃止(経過措置中) |
このうち、一般の中小企業がいちばん使いやすいのは中高年層安定雇用支援コースです。いわゆる就職氷河期世代を含む中高年層を正社員として採用する場合に使えます。令和7年4月に、従来の「就職氷河期世代安定雇用実現コース」の要件を拡充して新設されたコースです。
対象者の要件は、雇入れ日において次のすべてに当てはまる方です。
- 雇入れの日において35歳以上60歳未満
- 雇入れの日の前日から起算して過去5年間に正規雇用労働者として雇用された期間が通算1年以下
- 雇入れの日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用された期間がない(事業主都合の解雇等で離職した場合は対象になり得る)
- 紹介の時点で安定した職業に就いておらず、かつハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けている
- 正規雇用労働者として雇用されることを希望している
雇い入れる側は、正規雇用労働者として採用する必要があります。ここでいう正規雇用労働者とは、期間の定めのない労働契約、通常の労働者と同じ所定労働時間(週30時間以上)、そして賃金の算定方法・賞与・退職金・休日・昇給などについて長期雇用を前提とした待遇が就業規則等に規定されていること、の3つをすべて満たす人です。週20時間以上30時間未満の短時間労働者は除かれます。
なお「生涯現役コース」を探してこの記事にたどり着いた方もいるかもしれません。2026年9月時点で、厚生労働省の雇用関係助成金一覧に生涯現役コースの掲載はなく、専用ページも公開されていません。65歳以上を含む高年齢者の雇入れは、現在は特定就職困難者コースの「高年齢者(60歳以上)」の区分で扱われています。古い記事を参照して制度名で検索すると混乱するので注意してください。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
「採用したいが、経験がない人を正社員でいきなり採るのは不安」という場合に使えるのがトライアル雇用助成金です。職業経験の不足などから就職が困難な求職者を、無期雇用契約へ移行することを前提に、原則3か月間試行雇用する制度です。
| コース | 対象者 | 支給額 | 支給期間 |
|---|---|---|---|
| 一般トライアルコース | 離転職を繰り返している方、長期離職者など | 月額4万円(母子家庭の母等・父子家庭の父は5万円) | 最長3か月 |
| 障害者トライアルコース | 障害者 | 月額4万円〜8万円(障害種別・期間により異なる) | 原則3か月(精神障害者は最大12か月) |
| 障害者短時間トライアルコース | 精神障害者・発達障害者 | 月額4万円 | 最長12か月 |
| 若年・女性建設労働者トライアルコース | 35歳未満または女性の建設労働者 | 月額4万円 | 最長3か月 |
一般トライアルコースの対象労働者は、次のすべてを満たす人です。1週間の所定労働時間30時間以上の無期雇用を希望し、トライアル雇用制度を理解したうえでトライアル雇用も希望していること。ハローワーク等に求職申込をしていること。紹介日に安定した職業に就いていないこと。そのうえで、次のいずれかに該当することが必要です。
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている(パート・アルバイトを含め一切就労していないこと)
- 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
- 生年月日が1968(昭和43)年4月2日以降で、かつ安定した職業に就いておらず、ハローワーク等で担当者制による個別支援を受けている
- 生活保護受給者、母子家庭の母等、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、ホームレス、生活困窮者など、就職の援助にあたって特別な配慮を要する
金額としては3か月で最大12万円と、特定求職者雇用開発助成金に比べると小さく見えます。しかしこの制度の価値は金額ではありません。本採用の前に3か月間、助成を受けながら適性を見られること自体が、採用リスクの軽減になります。人材紹介会社を使えば、ミスマッチで早期離職しても手数料の一部しか戻らないことを考えれば、性質の違う選択肢です。
手続き上、最大の注意点は計画書の期限です。トライアル雇用実施計画書は、トライアル雇用開始日から2週間以内に、対象者を紹介したハローワークへ提出する必要があります。支給申請は、トライアル雇用終了日の翌日から起算して2か月以内です。
もうひとつ、支給額は実際の就労日数で調整されます。1か月間に就労を予定していた日数に対する実際の就労日数の割合が75%以上なら月額4万円ですが、50%以上75%未満なら3万円、25%以上50%未満なら2万円と下がり、0%なら支給されません。年次有給休暇など就業規則等に定められている有給の休暇は就労した日数とみなされます。
早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)
就職困難者ではなく、一般的な中途採用を拡大する場合に使えるのがこのコースです。旧称は「中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)」で、令和6年4月1日に名称が変わりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通常助成 | 支給対象者1人につき20万円(1事業所1年度あたり20人まで) |
| 加算助成 | 生産指標等により一定の成長性が認められる事業所の場合、1人につき10万円を追加(1事業所1年度あたり20人まで) |
| 対象労働者 | 中途採用(新規学卒者等以外)で、雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、期間の定めのない労働者(パートタイムを除く)として雇い入れられた者。雇入れ日の前日から1年間に、雇用・出向・派遣・請負・委任により自社の事業所で就労したことがないこと |
| 事業主の要件① | 中途採用計画を作成し、管轄の労働局に届け出ること。計画には中途採用者の雇用管理制度(募集・採用を除く、労働時間・休日、雇用契約期間、評価・処遇制度、福利厚生など)の整備と、中途採用の拡大に取り組む期間(6か月または1年)を記載 |
| 事業主の要件② | 計画期間中の中途採用率を前年同期と比較して5ポイント以上上昇させる、または計画期間中の中途採用率が50%以上(計画期間が1年の場合に限る) |
| 事業主の要件③ | 対象労働者の雇入れ前事業所で支払われていた賃金と、雇入れ後6か月間の賃金支払日ごとの賃金を比較して、いずれも5%以上上昇させたこと |
ここで見ていただきたいのが、事業主の要件①に書かれた「募集・採用を除く」という括弧書きです。整備が求められる雇用管理制度から、募集・採用は明示的に外されています。採用活動そのものへの支出は、このコースでも評価の対象ではないということです。
金額面でも注意が必要です。令和8年4月8日から支給要領と支給額の見直しが行われ、通常助成は1人あたり20万円になりました。過去の記事では50万円や70万円という数字が紹介されていることがありますが、それは改正前の金額です。中途採用計画を提出する時点の支給要領を確認してください。
また要件③の「雇入れ前の賃金より5%以上上昇」は、実務上かなり効きます。前職の賃金水準が分からないまま採用を決めると、後から要件を満たしていないことが判明します。採用面接の段階で前職の賃金を確認し、オファー金額を設計する必要があります。
UIJターンコースは令和8年3月31日で廃止された
この記事のテーマにとって、いちばん影響が大きい変更です。
早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)は、令和8年3月31日をもって廃止されました。厚生労働省の「廃止済みで経過措置中の助成金一覧」に明記されています。
このコースは、東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対し、その採用活動に要した経費の一部を助成する制度でした。助成対象となっていた採用活動は次の4つです。
- 募集・採用パンフレット等の作成・印刷
- 自社ホームページ・自社PR動画の作成・改修
- 就職説明会・面接会・出張面接等(オンラインを含む)
- 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士、民間有料職業紹介事業者等)によるコンサルティング
助成率は中小企業で2分の1、上限100万円でした。採用サイトの制作費が国の雇用関係助成金の対象になる、ほぼ唯一の入口がここでした。それが令和8年度から使えなくなっています。
この廃止によって、国の雇用関係助成金で「採用活動の経費」を見てもらう道は、実質的に閉じました。採用サイトや採用動画の制作費については、雇用関係助成金ではなく中小企業庁系の補助金の枠組みで検討する必要があります。採用サイトの制作が補助金の対象になるかについては、別の記事で詳しく整理しています。
なお、令和8年3月31日で廃止されたコースはUIJターンコースだけではありません。
| 廃止されたコース | 廃止日 | 採用実務への影響 |
|---|---|---|
| 早期再就職支援等助成金(UIJターンコース) | 令和8年3月31日 | 採用活動経費(パンフレット・自社HP・PR動画・説明会・コンサル)への助成が消滅 |
| 特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース) | 令和8年3月31日 | 成長分野の業務に従事させる場合の上乗せがなくなった |
| キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース) | 令和8年3月31日 | いわゆる「年収の壁」対策は短時間労働者労働時間延長支援コースへ移行 |
| 特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース) | 令和7年3月31日 | 中高年層安定雇用支援コースへ拡充・移行 |
| 人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース) | 令和7年3月31日 | 人事評価制度の整備は雇用管理制度・雇用環境整備助成コースへ |
| 高年齢労働者処遇改善促進助成金 | 令和7年3月31日 | — |
いずれも「廃止済みで経過措置中」であり、廃止前に計画届を提出済みの事業主については従前の取扱いが続きます。過去に取り組みを始めている場合は、廃止されたからといって申請を諦める必要はありません。逆に、これから新規に取り組む場合は対象外です。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
雇用機会が特に不足している地域で、事業所の設置・整備と雇い入れをセットで行う場合の制度です。金額は雇用関係助成金の中でも最大級です。
| 設置・整備費用 | 対象労働者3〜4人 | 5〜9人 | 10〜19人 | 20人以上 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円以上1,000万円未満 | 50万円 | 80万円 | 150万円 | 300万円 |
| 1,000万円以上3,000万円未満 | 60万円 | 100万円 | 200万円 | 400万円 |
| 3,000万円以上5,000万円未満 | 90万円 | 150万円 | 300万円 | 600万円 |
| 5,000万円以上 | 120万円 | 200万円 | 400万円 | 800万円 |
この額が1年ごとに最大3回支給されます。さらに中小企業事業主の場合は1回目の支給額が1.5倍、中小企業かつ創業と認められる場合は1回目が2倍になります。
受給の要件は次のとおりです。
- 計画書の提出同意雇用開発促進地域、過疎等雇用改善地域、特定有人国境離島地域等にある事業所について、施設・設備の設置・整備と、地域に居住する求職者等の雇い入れに関する計画書を労働局長に提出します。
- 設置・整備計画日から完了日までの間(最長18か月間)に施設・設備を設置・整備します。助成対象となる費用は1点あたり20万円以上で、合計額が300万円以上である場合に限られます。
- 雇い入れ地域に居住する求職者等を計画期間内に、常時雇用する雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として、ハローワーク等の紹介により3人以上(創業の場合は2人以上)雇い入れます。
- 被保険者数の増加完了日における被保険者数が、計画日の前日における数に比べ3人以上(創業の場合は2人以上)増加している必要があります。
2回目・3回目の支給を受けるには、被保険者数と対象労働者数を完了日の水準から減らさないこと、そして事業主都合以外の理由による離職者が発生した場合でも、支給基準日までの離職者数が完了日時点の対象労働者の2分の1以下または3人以下であることが必要です。採るだけでなく、3年間定着させて初めて満額になる制度だと理解してください。
注意点として、この制度は対象地域が限定されます。地域活性化雇用創造プロジェクトに関する特例では、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・愛知県および大阪府は対象地域外と明記されています。自社の事業所が対象地域にあるかどうかは、厚生労働省が公開している地域一覧で確認してください。
人材確保等支援助成金は「採用」ではなく「定着」に効く
名前に「人材確保」とあるため採用費用の助成金だと誤解されがちですが、このシリーズは離職率を下げることに対して出る制度です。令和8年度は7つのコースで構成されています。
| コース | 取り組み内容 | 支給額 |
|---|---|---|
| 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース | 賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度(メンター制度・従業員調査・1on1ミーティング)、健康づくり制度の導入、または業務負担軽減機器等の導入 | 賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度は各40万円(賃金要件を満たす場合50万円)、職場活性化制度・健康づくり制度は各20万円(同25万円)、合計上限80万円(同100万円)。雇用環境整備は対象経費の2分の1、上限150万円 |
| 中小企業団体助成コース | 事業協同組合等が構成中小企業者に対して労働環境向上事業(計画策定・調査事業、安定的雇用確保事業、職場定着事業、モデル事業普及活動事業)を実施 | 経費の3分の2。上限は構成中小企業者数500以上で1,000万円、100以上500未満で800万円、100未満で600万円 |
| 建設キャリアアップシステム等活用促進コース | 中小建設事業主がCCUSを活用して雇用管理改善に取り組む | 技能者1名につき16万円(上限160万円) |
| 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) | 現場見学会・体験実習等の実施 | 経費の5分の3〜3分の2 |
| 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) | 女性専用作業員施設や作業員宿舎の賃借等 | 経費の3分の2〜5分の3 |
| 外国人労働者就労環境整備助成コース | 就業規則等の多言語化など外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備 | 措置ごと20万円(上限80万円) |
| テレワークコース | 良質なテレワークの導入・実施により離職率の低下を図る | 制度導入助成 1企業あたり20万円、目標達成助成 1企業あたり10万円(賃金要件を満たす場合15万円) |
採用の文脈で意味があるのは、次の3つです。
ひとつ目は雇用管理制度・雇用環境整備助成コース。求人票に書ける条件を増やす制度だと考えると使い道が見えます。諸手当の新設や人事評価制度の整備は、そのまま募集要項の中身になります。ただし雇用管理制度等整備計画を、計画開始日からさかのぼって6か月前から1か月前の日までに労働局へ提出する必要があり、計画期間終了後12か月の離職率を、計画提出前1年間より1ポイント以上低下させることが支給の条件です(雇用保険一般被保険者数が9人以下の事業所は、提出前1年間の離職率を上回らないこと)。支給申請は評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内です。
ふたつ目は中小企業団体助成コース。これは個社ではなく事業協同組合等が申請する制度ですが、事業内容に「安定的雇用確保事業」が含まれており、組合が構成企業のために行う合同説明会や共同求人といった取り組みが、経費の3分の2で対象になり得ます。単独では採用費の助成を受けられなくても、所属している組合に制度活用を相談する余地があります。なお、この制度は都道府県知事による「改善計画」の認定が前提です。
みっつ目はテレワークコース。金額は制度導入20万円+目標達成10万円(賃金要件で15万円)と大きくありませんが、令和7年4月1日から、事前にテレワーク実施計画を提出して認定を受けることが不要になりました。着手のハードルが下がっています。募集条件にテレワーク可を加えられることは、応募数の面では無視できない効果があります。
キャリアアップ助成金は「採用した後」の制度
採用の文脈でよく名前が挙がるのがキャリアアップ助成金(正社員化コース)です。中小企業が有期雇用労働者を正社員に転換した場合、重点支援対象者なら1人80万円(40万円×2期)、それ以外なら40万円が支給されます。
ただし、この制度は採用時には使えません。対象労働者は「正社員として雇用することを約して雇い入れられた者でないこと」が要件であり、正社員求人に応募して入社した人は対象外です。また、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上受けている必要があります。
つまり、まずパート・契約社員として採用し、6か月以上働いてもらい、そのうえで正社員化したときに初めて対象になる制度です。採用費用の助成として期待するものではなく、「非正規で採用した人を正社員に引き上げる」という人事設計とセットで考えるべきものです。金額・要件・キャリアアップ計画書の提出期限などの詳細は、キャリアアップ助成金を単独で扱った記事にまとめています。
同じく、入社後の教育にかかる費用については人材開発支援助成金が使えます。こちらは訓練経費の一部と訓練期間中の賃金の両方が助成対象になる、数少ない「実額ベース」の制度です。コースの選び方は別記事で解説しています。
自治体の採用支援補助金は、求人広告費そのものを見てくれる
国の制度で見つからなかった「求人広告費」「人材紹介手数料」は、自治体の制度であれば直接の補助対象になっていることがあります。実在する2つの例を挙げます。
| 制度 | 対象経費 | 補助率・上限 | 申請のタイミング |
|---|---|---|---|
| 東京都足立区 区内中小企業人材採用支援助成金 | ①求人サイト・有料求人情報誌等への掲載費用、求人チラシの制作関連費用(原稿作成費・デザイン費・印刷費・配布費) ②求人動画作成費用 ③人材紹介会社を仲介し雇用に至った際の成功報酬 | ①②は2分の1・上限40万円 ③は2分の1・上限60万円 ①〜③合わせて上限金額の範囲内で年度2回まで | ①は求人掲載日の14日前まで、②は動画作成着手の14日前まで、③は内定後かつ入社前。申請期間は令和8年4月1日〜令和9年1月29日で、予算に達し次第終了 |
| 三重県四日市市 中小企業人材確保支援事業費補助金 | 就職・転職フェア等の出展ブース費および出展に伴うWeb掲載費(求人情報のWebサイト掲載のみは除く) | 対象経費の3分の2(千円未満切り捨て)、1回につき上限30万円、1社につき1年度2回まで | 出展前まで。予算の上限に達した時点で受付終了 |
足立区の制度は、この記事を読んでいる方が探していたものにいちばん近い形をしています。求人サイトの掲載料が半額、人材紹介の成功報酬も半額で最大60万円。国の制度にはない設計です。
ただし、細部にはいくつも罠があります。足立区の要項では、自社のホームページ上での求人票の掲載や更新等にかかる経費は対象外、求人動画も自社ホームページ内に掲載するための費用は対象外と明記されています。「採用サイトを作る」という使い方はできません。外部の求人媒体に出す費用であることが前提です。
さらに、年度を越える採用活動(3月から4月をまたぐ期間の採用活動)は対象外で、支払いまで含めて同一年度内に完結している必要があります。実績報告書の提出から6か月後には定着状況等の報告が必須で、報告しなかった場合は翌年度以降の申請ができなくなることがあります。助成金を使って採用した社員が退職し、人材紹介会社からキャッシュバックがあった場合は、助成金の全部または一部の返還が発生する場合があるとも書かれています。
四日市市の制度は、対象が合同説明会等の出展費に絞られている代わりに補助率が3分の2と高く設定されています。ただし「求人情報のWebサイト掲載のみ」は除外されており、あくまで出展とセットの場合に限られます。2026年9月時点で「予算額が残りわずか」と告知されている点も、この種の制度の性格をよく表しています。
自治体の補助金は予算枠に達した時点で締め切られます。年度末まで待っていると、要件を満たしていても申請できません。年度が替わったら早めに動くのが原則です。
自治体の採用支援制度の探し方
自治体の制度は数が多く、網羅的にまとめたサイトがありません。次の順番で探すのが現実的です。
- 自治体サイトを直接見る市区町村の公式サイトで「中小企業支援」「産業振興」のカテゴリを開き、補助金・助成金の一覧を確認します。担当は商工課・産業振興課であることが多く、電話で「採用にかかる費用の補助はありますか」と聞くのが最も早い方法です。
- 都道府県の制度も確認する市区町村の制度がなくても、都道府県が人材確保支援の奨励金を設けていることがあります。市区町村と都道府県は別枠なので、両方を確認してください。
- 支援情報の横断検索を使う中小機構のJ-Net21の支援情報ヘッドラインや、jGrants(電子申請システム)、中小企業庁のミラサポplusで地域と分野を絞って検索します。ただし掲載は網羅的ではないため、ここで見つからないことは「制度がない」ことを意味しません。
- 商工会議所・商工会に聞く地域の商工会議所・商工会は、地元自治体の制度を最も把握している窓口のひとつです。会員であれば個別相談も受けられます。
探すときのコツは、「採用 助成金」ではなく「人材確保」「雇用促進」「就職フェア出展」といった行政側の言葉で検索することです。自治体の制度名に「採用」という語が入っていないことは珍しくありません。
雇用関係助成金に共通する受給の前提条件
個別のコースの要件を満たしていても、事業主側の共通要件で落ちることがあります。厚生労働省の「雇用関係助成金共通要領」に規定されている主な内容です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険 | 雇用保険適用事業所の事業主であり、支給申請日および支給決定日の時点で雇用保険被保険者が存在すること |
| 労働保険料 | 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度について、労働保険料の未納がないこと |
| 労働関係法令 | 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反により送検されていないこと |
| 不正受給 | 不支給とされた日または支給を取り消された日から起算して5年間は支給されない |
| 書類の整備・保管 | 審査に必要な書類を整備し、支給決定日の翌日から起算して5年間保管すること |
| 調査協力 | 労働局等が行う実地調査に協力し、求められた書類を期日までに提出すること |
| その他 | 暴力団関係、性風俗関連営業(指定助成金で該当業務従事者が対象の場合)、破壊活動防止法関係、倒産している場合は不支給 |
| 申請期限 | 原則として、各助成金ごとに定める日の翌日から起算して2か月以内 |
これに加えて、雇入れ系の助成金には解雇に関する要件があります。特定求職者雇用開発助成金の場合、対象労働者の採用日前後6か月間に事業主都合による解雇をしていないこと、そして同じ期間に倒産や解雇など特定受給資格者となる理由で離職した被保険者の数が、採用日における被保険者数の6%を超えていないこと(特定受給資格者が3人以下の場合を除く)が必要です。
この要件は実務上かなり重く効きます。人員整理をしたあとに「補充のために助成金を使って採用しよう」と考えても、直前に会社都合の離職者を出していれば対象になりません。組織再編を伴う採用計画では、離職と採用の時期を必ず確認してください。
なお郵送で申請する場合は、簡易書留等の配達記録が残る方法で送り、申請期間内に到達している必要があります。消印ではなく到達日で判断されます。
不支給になりやすいパターン
雇入れ系の助成金でつまずきやすいのは、金額の計算ではなく手続きの順番です。
- ハローワーク等の紹介を経ていない。特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金は、いずれもハローワークまたは要件を満たす職業紹介事業者の紹介による雇入れが要件です。自社の求人サイトからの直接応募や、知人の紹介では対象になりません
- 令和8年5月1日以降、60歳以上の紹介で「対象労働者であることの明示」がない。原則として明示した職業紹介を行った場合のみ支給申請が可能です
- 対象者の要件確認が採用後になっている。過去5年間の正規雇用期間、過去2年以内の離転職回数といった要件は、本人の履歴に依存します。採用を決めてから調べても変えられません
- 計画届の後出し。トライアル雇用実施計画書はトライアル雇用開始日から2週間以内、雇用管理制度等整備計画は計画開始日の6か月前〜1か月前、中途採用計画は取り組み前に届出が必要です
- 離職者要件に引っかかっている。採用日前後6か月間の事業主都合の解雇、特定受給資格離職者の割合が被保険者数の6%超
- 賃金台帳・出勤簿の不備。特定求職者雇用開発助成金では、令和8年4月以降の申請分から賃金台帳の提出が確認できない場合は不支給と明記されています
- 支給対象期の途中で離職した。特定求職者雇用開発助成金では、対象労働者が支給対象期の途中に離職した場合、その支給対象期については原則として支給を受けられません
- 支払賃金が支給額を下回っている。支給対象期ごとの支給額は、その期に支払った賃金額が上限になります
- 申請期限の徒過。原則として各支給対象期の末日の翌日から2か月以内。郵送は到達日で判断されます
- 自治体の補助金で、着手後に申請している。足立区の例では求人掲載日の14日前まで、四日市市の例では出展前までに申請が必要です。掲載してから申請しても受け付けられません
- 自治体の補助金で予算が尽きていた。年度途中で受付終了になります
共通しているのは、お金を使う前・人を採る前に手続きが必要だという点です。採用が終わってから助成金を調べ始めるパターンが、最も高い確率で空振りに終わります。
採用計画から逆算して、いつ何をするか
2027年4月入社を目標に採用活動を行う場合の例です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026年10月ごろ | 採用したい人物像を決める。そのうえで、対象になり得る助成金(特定就職困難者コース/中高年層安定雇用支援コース/トライアル雇用助成金/中途採用拡大コース)を洗い出す |
| 2026年11月ごろ | 自治体の採用支援補助金の有無を確認する。次年度(令和9年度)の実施が未定の場合もあるため、今年度分の予算残額も同時に確認する |
| 2026年12月ごろ | ハローワークに求人を出す前に相談する。助成金の対象労働者としての紹介を受けられるかを確認し、求人票の条件を調整する |
| 2027年1月ごろ | 中途採用拡大コースを使う場合は中途採用計画を労働局へ届出。雇用管理制度の整備も同時に進める。求人媒体への掲載は、自治体補助金を使う場合掲載日の14日前までに申請 |
| 2027年2〜3月 | 選考。トライアル雇用を使う場合は、ハローワークにトライアル雇用求人として登録しておく |
| 2027年4月1日 | 雇入れ。トライアル雇用の場合は開始日から2週間以内に実施計画書を提出 |
| 2027年7月ごろ | トライアル雇用終了。終了日の翌日から2か月以内に支給申請 |
| 2027年10月ごろ | 特定求職者雇用開発助成金の第1期(雇入れから6か月)の支給対象期が終了。末日の翌日から2か月以内に支給申請 |
| 2027年10月以降 | 入社した人の教育に人材開発支援助成金を検討。非正規で採用した場合は、6か月経過後にキャリアアップ助成金(正社員化コース)の準備に入る |
この表で強調したいのは、助成金のための行動が、採用活動の開始前に集中していることです。求人を出す前のハローワーク相談、掲載14日前の補助金申請、取り組み前の計画届。応募が集まり始めてから助成金の話をしても、間に合うものはほとんど残っていません。
助成金より先に、応募が来るかどうか
ここまで制度を細かく見てきましたが、最後に前提の話をします。
これらの助成金はすべて「人を雇い入れたこと」に対して支給される制度です。裏を返せば、雇い入れができなければ1円も出ません。要件を調べ、計画届を出し、ハローワークに相談しても、応募がゼロなら何も起こりません。
そして採用の難易度は、助成金の有無では変わりません。特定求職者雇用開発助成金で60万円が出るとしても、その60万円は「就職困難者に該当する方を、ハローワーク等の紹介で採用できた場合」にしか出ません。応募が来ない企業は、そもそも母集団を持てないので、対象者に出会う機会自体がありません。
実務の順番としては、まず応募が来る状態を作ることが先です。求人票の条件と表現、応募の導線、応募後のレスポンス速度。ここが整っていない状態で助成金の要件だけを詰めても、使える場面が訪れません。助成金は採用できた後の話であって、そもそも応募が来なければ始まらないということです。
そのうえで、応募が来るようになったら「どういう人を採れば助成の対象になるか」を採用要件に織り込む。この順番であれば、助成金は採用予算を確実に軽くします。逆の順番では、要件に振り回されて採用そのものが止まります。
よくある質問
求人広告費や人材紹介手数料に使える国の助成金はありますか?
2026年9月時点では、求人広告費や人材紹介手数料を直接の助成対象とする国の雇用関係助成金はありません。採用活動の経費(募集・採用パンフレットの作成、自社ホームページ・PR動画の作成改修、就職説明会、外部専門家によるコンサルティング)を対象としていた「早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)」は、令和8年3月31日をもって廃止されています。一方で、東京都足立区のように求人広告費を2分の1(上限40万円)、人材紹介の成功報酬を2分の1(上限60万円)で補助する自治体制度は実在します。まず自社の所在地の自治体制度を確認してください。
自社の採用サイトから応募してきた人を採用した場合、助成金は使えますか?
雇入れ系の主要な助成金では使えません。特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、地域雇用開発助成金は、いずれもハローワークまたは要件を満たす職業紹介事業者等の紹介により雇い入れることが要件です。自社サイトからの直接応募や、知人の紹介では対象になりません。一方、早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)はハローワークの紹介以外の中途採用も対象ですが、中途採用計画の事前届出や中途採用率の上昇、雇入れ前賃金からの5%以上の上昇といった別の要件があります。
1人採用すると、いくらもらえますか?
対象者の属性で大きく変わります。中小企業が特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)を使う場合、高年齢者(60歳以上)や母子家庭の母等で60万円(1年、30万円×2期)、重度障害者等を除く身体・知的障害者で120万円(2年)、重度障害者等で240万円(3年)です。35歳以上60歳未満で正規雇用に就くことが困難な方を正社員として採用する場合は中高年層安定雇用支援コースで60万円(30万円×2期)。一般的な中途採用の拡大であれば早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)で1人20万円(成長性が認められる場合は+10万円)です。トライアル雇用助成金は月額4万円×最長3か月です。なお、支給対象期ごとの支給額はその期に支払った賃金額が上限になります。
新卒採用に使える助成金はありますか?
この記事で扱った雇入れ系の助成金は、いずれも新規学卒者を主な対象にしていません。早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)は「新規学卒者や新規学卒者と同一の枠組みで採用された方以外」が対象です。キャリアアップ助成金(正社員化コース)も、新規学卒者は雇い入れから1年を経過するまで支給対象外とされています。新卒採用そのものへの助成は限定的で、地域雇用開発助成金(沖縄若年者雇用促進コース)や人材確保等支援助成金の建設分野のコースなど、地域・業種が限られた制度が中心になります。
助成金の申請はいつまでにすればよいですか?
雇用関係助成金の支給申請は、原則として各助成金ごとに定める日の翌日から起算して2か月以内です。特定求職者雇用開発助成金は各支給対象期の末日の翌日から2か月以内、トライアル雇用助成金はトライアル雇用終了日の翌日から2か月以内、人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)は評価時離職率算定期間の末日の翌日から2か月以内です。これとは別に、支給申請より前に提出が必要な計画届があります。トライアル雇用実施計画書は開始日から2週間以内、雇用管理制度等整備計画は計画開始日の6か月前から1か月前までです。郵送の場合は簡易書留等で送り、申請期間内に到達している必要があります。
令和8年度に廃止されたコースはありますか?
あります。令和8年3月31日で、早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)、特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)、キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の3つが廃止されました。いずれも廃止前に計画届等を提出済みの事業主については経過措置があります。また令和7年3月31日には特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)、高年齢労働者処遇改善促進助成金などが廃止されています。厚生労働省の「廃止済みで経過措置中の助成金一覧」で確認してください。
複数の助成金を同時に使えますか?
制度の組み合わせによります。同一の措置について複数の助成金を申請した場合、一方しか支給されない併給調整が働くことがあります。厚生労働省が「雇用関係助成金の併給調整早見ツール」を公開しているので、事前に確認してください。ただしこのツールは基本的な併給の可否を示したものなので、個別の申請では管轄の労働局への相談が必要です。時期がずれる組み合わせ(雇入れ時に特定求職者雇用開発助成金、入社後の訓練に人材開発支援助成金、6か月後の正社員化にキャリアアップ助成金)であれば、設計次第で重ねられる可能性があります。
申請の手続きを代行してもらえますか?
雇用関係助成金の申請書類の作成・提出を業として代行できるのは社会保険労務士です(事業主本人が申請することもできます)。株式会社Digital&は社会保険労務士事務所ではないため、申請書類の作成や提出の代行は行っておりません。手続きそのものについては、社会保険労務士にご相談ください。なお、電子申請を社会保険労務士等の代理人に依頼する場合も、GビズIDの申請・取得が必要です。
まとめ
日本の雇用関係助成金は、採用にかかった費用を補助する制度ではありません。「特定の状況にある人を、ハローワーク等の紹介で雇い入れ、一定期間定着させたこと」に対して定額が支給される設計です。求人広告に100万円かけても助成額は増えず、ハローワークの無料求人で採用しても満額が出ます。
2026年度で押さえるべき時期の論点は、採用活動の経費(募集パンフレット・自社ホームページ・PR動画・説明会・コンサルティング)を対象としていた早期再就職支援等助成金(UIJターンコース)が、令和8年3月31日で廃止されたことです。同じ日に特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)とキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)も廃止されています。また令和8年5月1日以降、特定求職者雇用開発助成金で60歳以上を採用する場合は「対象労働者であることを明示した職業紹介」が原則必要になり、令和8年4月以降の申請分からは賃金台帳の提出がないと不支給になります。
使える制度は、中小企業なら特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース60万〜240万円、中高年層安定雇用支援コース60万円)、トライアル雇用助成金(月額4万円×最長3か月)、早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース、令和8年4月8日から1人20万円)、地域雇用開発助成金(対象地域で50万〜800万円を最大3回)です。求人広告費や人材紹介手数料そのものは、自治体の補助金で探してください。足立区のように求人広告費2分の1・上限40万円、人材紹介手数料2分の1・上限60万円という制度が実在します。ただし予算枠に達し次第終了で、掲載日の14日前までなど着手前の申請が必須です。
共通するのは、お金を使う前・人を採る前に手続きが必要だという点です。求人を出す前にハローワークへ相談し、自治体の補助金は掲載の14日前までに申請し、計画届は取り組みの前に出す。この順番を外すと、要件を満たしていても受け取れません。制度は年度途中でも変わるため、取り組みを行う時点の公式資料で必ず確認してください。
株式会社Digital&では、採用支援サービス「ヨビコム」「ヨビコム建設」を提供しています。この記事で紹介した助成金は、すべて「人を雇い入れたこと」に対して支給される制度です。裏を返せば、応募が集まらなければ対象者に出会う機会そのものがありません。求人票の条件や表現、応募導線の設計、応募後のレスポンス体制といった「母集団をつくる側」からご相談いただけます。
なお、補助金・助成金の申請書類の作成や提出の代行は行っておりません。手続きそのものについては、社会保険労務士にご相談ください。