新規事業計画書の書き方のコツ
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新規事業計画書は、体裁を整えるための書類ではなく、事業が成立するかを自分で検証するための道具です。金融機関や投資家、社内の決裁者に説明する資料であると同時に、書く過程で「何が確かめられていないか」が明らかになります。
項目を埋めることが目的になると、もっともらしい数字が並んだだけの計画書ができあがります。実際に審査や決裁で見られているのは「売れるか」「勝てるか」「儲かるか」「できるか」の4点であり、それ以外は補足にすぎません。
本記事では、この4つの論点を軸に、計画書の構成と各項目の書き方、そして説得力を下げてしまう典型的な書き方を整理します。
この記事でわかること
- 新規事業計画書で必ず見られる4つの論点
- 計画書の標準的な構成と、各項目で書くべきこと
- 数字に説得力を持たせるための前提条件の示し方
- 説得力を下げる典型的な書き方と、その直し方
- 計画書を書いた後に必要になること
計画書で見られている4つの論点
読み手が確認しているのは、次の4点です。どれか1つでも答えられていない計画書は、そこで止まります。
| 論点 | 問われていること | 弱いと言われる典型 |
|---|---|---|
| ① 売れるか | 需要が実在し、十分な規模があるか | 「市場は拡大しています」だけ |
| ② 勝てるか | なぜ他社ではなく自社なのか | 「高品質なサービスを提供します」 |
| ③ 儲かるか | 利益が残る構造になっているか | 売上計画はあるが原価構造が曖昧 |
| ④ できるか | 実行する人・資金・時間があるか | 体制が「今後採用予定」のみ |
順番にも意味があります。売れないものは、勝っても儲かりません。儲かる構造でも実行できなければ絵に描いた餅です。この順で検討し、この順で書いてください。
① 売れるか:需要と市場規模
最初に示すべきは、その困りごとが実在し、お金を払う人がいるという根拠です。
市場規模は「自社が取れる範囲」で書く
「国内市場は◯兆円」という数字は、読み手にほとんど意味を持ちません。自社が実際に販売できる商圏、対象、チャネルに絞った規模を示してください。
大きな数字より、積み上げた小さな数字のほうが信用されます。「商圏内に対象となる事業者が◯社、そのうち◯%が導入すると仮定して年間◯円」という形です。
需要の根拠は一次情報で示す
調査レポートの引用だけでは、自社の事業の需要の証明にはなりません。実際にヒアリングした件数、その中で「使いたい」と答えた数、試作品への反応といった自分で確かめた情報が最も強い根拠になります。
「すでに◯社から、この条件なら購入したいという回答を得ています」。この一文があるかどうかで、計画書の説得力は大きく変わります。
② 勝てるか:競争優位性
競合は必ず存在します。「競合なし」と書かれた計画書は、調べていないと受け取られます。
競合分析は強みと弱みを並べる
主要な競合を3社程度挙げ、価格、品質、対応範囲、ブランド、弱点を表に整理してください。
そのうえで、競合が手を出していない領域、あるいは競合の弱点が顧客の不満になっている点を特定します。ここが自社の入る余地です。
優位性は「真似されにくさ」で語る
品質が高い、丁寧に対応する、といった要素は真似されます。
評価されるのは、特許、独自の調達ルート、蓄積されたデータ、地域での関係性、既存事業とのシナジーなど、他社が短期間では再現できない資産です。
優位性が見つからない場合、それは参入すべきでないというシグナルかもしれません。計画書を書く過程でそれに気づけること自体が、書く価値です。
③ 儲かるか:収益構造
売上計画だけでは不十分です。利益が残る構造かどうかを示す必要があります。
- 収益モデルを明示する:売り切り、継続課金、従量課金、仲介など、どの形で収益を得るか
- 原価を分解する:材料費、外注費、人件費、物流費を項目ごとに
- 固定費と変動費を分ける:損益分岐点を算出するために必須
- 顧客獲得にかかる費用を入れる:広告費、営業人件費を1件あたりで計算
- 入金と出金の時期を示す:黒字でも資金が尽きることがある
- 価格の根拠を書く:原価積み上げか、競合基準か、価値基準か
損益計算だけでは不十分です。仕入れの支払いが先、入金が後という取引では、黒字でも手元資金が尽きます。月次の資金繰り表を添えることをおすすめします。
最も見落とされるのは顧客獲得費用です。1件受注するのに広告費と営業工数がいくらかかるかを計算に入れないと、売れば売るほど赤字という構造を見逃します。
④ できるか:実行体制と資金
最後に問われるのは、この計画を誰が実行するのかです。
体制は「今いる人」で書く
「今後採用予定」ばかりの体制図は、実行可能性が低いと判断されます。
誰が責任者で、どの業務を誰が担当するのかを、現在いる人材で示せる範囲を明確にしてください。不足する機能は、採用ではなく外部との連携で埋める計画のほうが現実的に映ります。
資金調達の選択肢を複数示す
自己資金、金融機関からの借入、補助制度の活用など、複数の手段を検討していることを示します。
1つの資金源に依存した計画は、そこが通らなかった時点で止まります。補助制度を前提にする場合は、採択されなかった場合の代替案も書いてください。
スケジュールは検証の区切りで区切る
「企画3か月、開発6か月」という作業の区切りではなく、「◯月までに◯社から受注できなければ計画を見直す」という検証の区切りで書くと、実行力が伝わります。
説得力を下げる典型的な書き方
よく見られる、避けるべき書き方を挙げます。
- 市場全体の数字だけを載せる:自社が取れる範囲に絞らないと、根拠になりません
- 「ニーズがあると考えられる」:考えではなく、確かめた事実を書いてください
- 右肩上がりのグラフだけ:なぜその伸び方になるのかの前提が必要です
- 競合を書かない、または「なし」と書く:調べていないと判断されます
- 強みが抽象的:「高品質」「丁寧」は、他社も同じことを書いています
- リスクの記載がない:リスクを認識していない計画は、かえって信用されません
- 撤退基準がない:どうなったらやめるかを書くと、逆に信頼されます
数字は、前提条件とセットで書いてください。「どの仮定にもとづく数字か」が分かる状態にしておけば、実績とずれたときに何を見直せばよいかが判断できます。
計画書を書いた後が本番
計画書の完成は、スタート地点です。
- 計画を仮説として扱う新規事業が計画通りに進むことはほぼありません。数字がずれること自体は問題ではなく、ずれた理由を特定できるかが重要です。
- KPIを設定し、定期的に確認する売上だけでなく、その手前の指標(問い合わせ数、商談数、成約率)を追ってください。売上がずれたときの原因が特定できます。
- 資金繰りを月次で確認するとくに立ち上げ期は、損益より資金の残高が事業の継続を左右します。
- 前提が崩れたら計画を書き換える市場や競合の状況が変わったら、計画書も更新してください。古い計画を握り続けるほうが危険です。
- 撤退基準に達したら止めるあらかじめ決めた基準に達した場合は、感情を挟まず判断してください。この基準を事前に決めておくことが、損失を限定する唯一の方法です。
事業の組み立て方は新規事業開発の4つのステップ、実行段階の進め方は新規事業における高速PDCAサイクル、アイデアの探索は新規事業の探し方もご参照ください。
まとめ
計画書で見られているのは「売れるか」「勝てるか」「儲かるか」「できるか」の4点です。この順で検討し、この順で書いてください。
市場規模は全体の数字ではなく、自社が実際に取れる範囲を積み上げて示してください。大きな数字より説得力があります。
撤退基準を書くと、かえって信頼されます。リスクを認識していない計画は、実行可能性が低いと判断されます。
よくある質問
計画書はどのくらいの分量が必要ですか
分量より、4つの論点に答えているかが重要です。金融機関や補助制度の申請では所定の様式がある場合が多いため、まず提出先の要件をご確認ください。社内向けであれば、論点が明確なら十数ページでも十分です。
市場規模のデータはどこで調べればよいですか
官公庁の統計、業界団体の資料、調査会社のレポートが基本です。ただし全体の市場規模をそのまま載せても根拠になりません。自社の商圏と対象顧客に絞って積み上げ直してください。
競合が見つからない場合はどうすればよいですか
「競合なし」と書くのは避けてください。顧客はその課題を現在なんらかの方法で解決しているはずです。その代替手段(他社製品、内製、我慢して放置など)が実質的な競合になります。
売上予測はどう立てればよいですか
結果から逆算するのではなく、「顧客数 × 単価 × 頻度」のように分解して積み上げてください。各要素の根拠を示せる状態にしておけば、実績とずれたときに原因を特定できます。
補助金の申請に使えますか
制度によって様式と求められる記載事項が異なります。本記事の4つの論点は共通して求められる内容ですが、申請にあたっては必ず最新の公募要領をご確認ください。
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