実店舗とECサイトを連携させるメリット
SHARE
実店舗を持つ企業がECを始めると、多くの場合「店舗とECが別々の事業として動いている」状態になります。在庫も顧客情報もポイントも分かれており、社内では売上の取り合いが起きます。
しかし顧客から見れば、同じ会社の同じブランドです。店で見てネットで買う、ネットで調べて店で試すという行き来は日常的に起きており、企業側の都合による分断は不便でしかありません。
本記事では、実店舗とECを連携させることで何が改善するのか、具体的にどんな仕組みが実現できるのか、そして連携を進める際に社内で必ず起きる問題とその対処までを整理します。
この記事でわかること
- 店舗とECを連携させることで改善する3つのこと
- 実現できる具体的な仕組み(7つの施策)
- 連携に必要なデータと、統合の順序
- 社内で必ず起きる「売上の帰属」問題とその対処
- 小規模でも着手できる範囲
連携で改善する3つのこと
店舗とECの連携は、次の3点に効きます。
① 買い物体験が便利になる
サイズや質感を店舗で確認してからECで買う、ECで在庫を確認してから店舗に行く、といった行動が自然にできるようになります。
とくに「店舗に行ったが目当ての商品がなかった」という機会損失は、在庫情報の公開だけで大きく減らせます。
② 顧客の全体像が見える
店舗の購買データとECの行動データを統合すると、「ECで何度も見ているが買っていない商品」を店舗スタッフが把握できるようになります。
逆に、店舗で買った商品の消耗サイクルに合わせてECから案内する、といった接触も設計できます。
③ 売り逃しが減る
店舗で在庫切れの商品をその場でECから取り寄せる、ECで欠品している商品を店舗在庫から引き当てる、といった対応が可能になります。
在庫は同じ会社の資産です。分断されていることで発生する欠品は、本来避けられる損失です。
実現できる7つの仕組み
連携によって実現できる代表的な施策です。すべてを一度に導入する必要はありません。
| 施策 | 顧客の利点 | 導入の難易度 |
|---|---|---|
| 店舗在庫のEC上での確認 | 無駄足を防げる | 中 |
| ネット注文・店舗受け取り | 送料がかからない、早く受け取れる | 中 |
| ポイントの共通化 | どちらで買っても貯まる・使える | 中〜高 |
| EC購入品の店舗返品 | 返送の手間がない | 中 |
| 店舗での取り置き・取り寄せ | 確実に試せる | 低〜中 |
| クーポンによる相互送客 | 双方の利用機会が増える | 低 |
| 店舗スタッフによるライブ配信 | 対面に近い説明が受けられる | 低〜中 |
ネット注文した商品を店舗で受け取る仕組みは、来店のきっかけをつくります。受け取りに来た顧客が別の商品も購入する、という流れが生まれるため、送料削減以上の効果が期待できます。
着手しやすいのはクーポンによる相互送客と、店舗での取り置きです。システム統合をほとんど伴わず、運用ルールの整備で実現できます。
連携に必要なデータと統合の順序
すべてを一度に統合しようとすると、費用も期間も膨らみます。効果の大きいものから順に進めてください。
- 顧客を一意に識別できるようにするすべての出発点です。会員番号、アプリ、電話番号など、店舗でもECでも同じ顧客だと分かる仕組みを先につくります。ここがないと、他の連携はすべて成立しません。
- 在庫情報を共有する店舗在庫をECから確認できる状態にします。リアルタイムでなくても、1日1回の更新から始められます。
- 購買履歴を統合するどちらで何を買ったかを一つの履歴として見られるようにします。これができると、販促の精度が大きく上がります。
- ポイント・会員制度を統一する顧客にとって最も分かりやすい統合ですが、既存制度の移行を伴うため難易度は高くなります。
- 販促を横断で設計する店舗の販促とECの販促を別々に企画するのをやめ、顧客の状態に応じて設計します。
顧客識別の仕組みがないまま他の連携を進めても、効果は限定的です。まだアプリや会員制度がない場合は、そこから着手することをおすすめします。
社内で必ず起きる「売上の帰属」問題
技術的な課題より厄介なのが、この論点です。ECの立ち上げが社内で抵抗にあう最大の理由でもあります。
何が起きるか
店舗で接客した顧客がECで購入した場合、その売上は誰の成果になるのか。ECの売上が伸びると、店舗の売上が減っているように見えます。
この状態で店舗が個店ごとの売上のみで評価されていると、店舗スタッフにはECを勧める動機がありません。むしろ、ECへの流出を防ごうとします。
どう対処するか
評価基準を変える:店舗経由でEC購入につながった売上を、店舗の成果として計上する仕組みをつくります。
商圏単位で見る:個店の売上ではなく、その商圏の顧客が生んだ売上全体で評価します。
役割を再定義する:店舗を「販売する場所」から「体験し、相談できる場所」と位置づけ直します。
制度を変えずに連携だけ進めると、現場が動きません。技術的な準備と並行して、評価制度の設計を進めてください。
小規模でも着手できる範囲
大規模なシステム投資がなくても、始められることはあります。
- 店舗のレジでECの案内をする:会員登録やアプリの案内をその場で行う
- ECの購入者に店舗で使えるクーポンを同梱する:紙のクーポンでも効果があります
- 店舗で取り置きを受け付ける:電話やメッセージでの受付から始められます
- 店舗スタッフがECの商品ページを見せながら接客する:在庫がない商品も提案できます
- 店舗の様子や商品の使い方をECサイトに掲載する:実店舗があること自体が信頼につながります
EC側の設計についてはECサイトの作り方と運営、顧客データの統合についてはECサイトのデータ活用をご参照ください。
実店舗を持っていること自体が、EC専業の競合に対する優位性です。実物を見られる、相談できる、返品しやすいという安心感は、ネットだけでは提供できません。この強みを、ECサイト上で明示してください。
まとめ
顧客から見れば店舗もECも同じブランドです。企業側の都合による分断は、顧客にとって不便でしかありません。
統合の出発点は顧客を一意に識別できる仕組みです。ここがないと、在庫共有もポイント統一も効果が限定されます。
技術より難しいのは売上の帰属問題です。評価制度を変えずに連携だけ進めても、店舗スタッフは動きません。
よくある質問
何から始めればよいですか
顧客を一意に識別できる仕組み(会員制度やアプリ)の整備からです。これがないと、購買履歴の統合もポイントの共通化も成立しません。既にある場合は、店舗在庫のEC上での公開が効果を実感しやすい施策です。
店舗の売上が減るのではないですか
短期的にはそう見える可能性があります。ただし顧客は同じであり、失っているのではなく購入する場所が変わっているだけです。店舗経由のEC購入を店舗の成果として計上するなど、評価制度の見直しが必要になります。
小規模でも連携はできますか
できます。店舗でのEC会員登録の案内、ECの購入者への店舗クーポン同梱、店舗での取り置き受付などは、大きなシステム投資なしで始められます。
在庫のリアルタイム共有は必須ですか
必須ではありません。1日1回の更新でも、「店舗に行ったが商品がなかった」という機会損失は大きく減らせます。まず更新頻度の低い形で始め、必要に応じて精度を上げてください。
実店舗があることはECで不利になりませんか
むしろ優位性です。実物を見られる、相談できる、返品しやすいという安心感は、EC専業の事業者には提供できません。この点をECサイト上で明示することで、購入率が上がります。
現在の店舗体制、ECの状況、顧客管理の仕組みを拝見したうえで、どこから連携を進めるべきかを整理します。まずは無料の経営相談をご利用ください。