Web広告費に補助金は使えるか|2026年の制度別の上限と、対象外になる広告費

公開 2026.09.16 更新 2026.09.16 読了 約28分
Web広告費に補助金は使えるか|2026年の制度別の上限と、対象外になる広告費

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「広告費が重い。Web広告の出稿費に補助金は使えないか」——この検索をされた方に、先に結論をお伝えします。

広告費を対象にしている補助金はあります。ただし上限が小さく、条件が厳しく、そして「広告費だけ」では申請できません。2026年9月時点で、Web広告の出稿費をまとまった規模で継続的に補助してくれる国の制度は存在しません。

これは制度の設計思想から来ています。補助金は「一度きりの投資」を後押しする仕組みであり、毎月発生し続ける運用費用を支えるようには作られていません。広告出稿費はまさに後者にあたるため、制度と構造的に相性が悪いのです。

とはいえ、使える余地がまったくないわけではありません。小規模事業者持続化補助金の「広報費」はインターネット広告・SNS広告を明確に対象に挙げていますし、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「広告宣伝・販売促進費」は、新規事業の売上見込みに連動した上限で数百万円規模になることもあります。自治体には広告掲載費そのものを補助する制度もあります。

この記事では、公募要領・要綱の原文にもとづいて、どの費用がどの制度で対象になり、いくらまで出るのかを金額の試算つきで整理します。そのうえで、広告予算をどう設計すべきかまで踏み込みます。

この記事でわかること
  • 「広告費」が制度上どの費目に分かれ、それぞれ対象になるかならないか
  • 小規模事業者持続化補助金の広報費(上限30万円・単独申請不可)の正確な扱い
  • 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「売上見込み額の5%」上限を、金額で試算した結果
  • デジタル化・AI導入補助金で広告出稿費が対象外になる理由と、ツールという別ルート
  • 自治体が広告掲載費を補助している実例(補助率・上限・対象外)
  • 対象外になりやすい広告費(継続運用費、交付決定前の出稿、全社PR、求人広告 ほか)
  • 広告費を計上したときに実績報告で求められる証憑
  • 広告費を補助金で賄う前提を置かないほうがよい理由と、では何に使うべきか
本記事の情報について

2026年9月時点で公開されている公募要領・公募資料・自治体の要綱にもとづいて記載しています。補助率・補助上限・締切・対象経費の扱いは公募回ごとに変わります。とくに広告関連の経費は、同じ制度でも公募回によって計上する費目が変更されることがあるため、申請前に必ず該当する公募回の公募要領をご確認ください。主な公式サイトは小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>(商工会議所地区)新事業進出・ものづくり商業サービス補助金デジタル化・AI導入補助金2026です。

目次 閉じる

結論:広告費に使える制度はあるが、「広告費だけ」では申請できない

まず全体像です。2026年9月時点で、広告関連の費用を対象にしている主な国の制度は次の3つです。

制度広告費を扱う経費区分広告費の上限広告費だけで申請できるか
小規模事業者持続化補助金
<一般型 通常枠>
広報費30万円(税込)できない(広報費のみの申請は不可)
新事業進出・ものづくり
商業サービス補助金
広告宣伝・販売促進費事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜)の5%できない(機械装置・システム構築費または建物費が必須)
デジタル化・AI導入補助金2026
(旧IT導入補助金)
—(広告出稿費の区分がない)広告出稿費そのものは対象外

この表の3列目と4列目が、この記事の主題です。広告費は「ついでに計上できる経費」であって、「主役になれる経費」ではない——これが制度側の一貫した扱いです。

持続化補助金の広報費は30万円が天井です。補助率2/3ですから、45万円の広告費で上限に達します。月15万円のWeb広告なら3か月分で終わります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は桁が変わりますが、その代わり「新製品・新サービスを新しい市場に出す」事業計画と設備投資が前提になります。

そして共通するのが、広告費だけを理由にした申請は、どの制度でも成立しないということです。持続化補助金は公募要領に「広報費のみによる申請はできません」と明記していますし、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は機械装置・システム構築費または建物費が補助対象経費に含まれていることを必須にしています。

そもそも「広告費」は制度上いくつの費目に分かれるか

広告を出そうとすると、実際には性格の違う費用がまとめて見積書に載ります。ところが補助金の世界では、これらは別々の費目として扱われ、対象になるかどうかも変わります。

実務で発生する費用を5種類に分けると、次のようになります。

費用の種類具体例費用の性格
① サイト・LP制作費広告の受け皿になるランディングページ、商品紹介ページの制作一度きりの投資
② 広告クリエイティブ制作費バナー画像、広告用動画、商品撮影、広告文の制作一度きり(ただし差し替えが発生)
③ 広告出稿費(媒体掲載費)検索連動型広告、ディスプレイ広告、SNS広告の媒体費毎月発生する運用費
④ 広告運用代行費代理店・支援会社への運用手数料毎月発生する運用費
⑤ ツール利用料MAツール、広告管理ツール、CRM・SFAの月額利用料継続課金(初期導入を伴う)

この5つのうち、制度と相性が良いのは①②⑤です。いずれも「導入・構築」という一度きりの性格を持っているためです。反対に③④は毎月出ていく費用で、補助事業期間が終われば自社で負担し続けることになります。制度がここに厳しい上限を置くのは、公金で企業の恒常的な運転費用を賄う形になってしまうからです。

制度別に整理すると、次の図のようになります。

広告関連の費用の種類ごとに、制度で補助対象になるかを整理したマトリクス 広告にかかる費用の種類 / 制度ごとの扱い 持続化補助金 広報費 上限30万円 持続化補助金 ウェブサイト関連費 上限30万円 新事業進出・ものづくり 広告宣伝・販売促進費 売上見込みの5% デジタル化・ AI導入補助金 登録ITツール限定 ① サイト・LP制作費 広告の受け皿となる ページの制作 × ウェブサイト関連費へ 構築・更新・改修 PR等のサイト構築費 登録ITツールのみ ② 広告クリエイティブ   制作費 バナー・動画・商品撮影 宣伝用の画像・動画 サイト掲載分はこちら 広告の作成費 × 対象経費にない ③ 広告出稿費 検索連動型・ディスプレイ ・SNS広告の媒体費 ネット広告・SNS広告 × 広報費で計上 広告の媒体掲載費 × 対象経費にない ④ 広告運用代行費 代理店・支援会社への 運用手数料 SNS広告の運用代行費 × コンサル費は対象外 事務局に要確認 × 対象経費にない ⑤ ツール利用料 MA・広告管理ツール・ CRM/SFAの月額料 × 広報費ではない 補助事業期間分のみ クラウド利用費で計上 クラウド利用料2年分
2026年9月時点の各制度の公募要領・公募資料にもとづく整理。○=対象になりうる/△=条件付き/×=その費目では対象外。オレンジの帯を付けた③④が、毎月発生し続ける費用です。

この図で見ていただきたいのは、右下と左下の対比です。毎月出ていく③広告出稿費と④運用代行費は、○が付いていても上限30万円の枠の中の話にすぎません。一方⑤ツール利用料は、デジタル化・AI導入補助金でクラウド利用料が最大2年分まで対象になります。同じ「継続課金」でも、制度が想定しているのはツールのほうなのです。

小規模事業者持続化補助金の「広報費」:上限30万円・単独申請不可

Web広告費を補助金でまかなうことを考えたとき、最初に検討することになるのがこの制度です。運営は全国商工会連合会と日本商工会議所が地区ごとに分担しています。

2026年9月時点で公募要領が公開されている<一般型 通常枠>第20回の概要は次のとおりです。

項目内容
補助率2/3(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4)
補助上限(基本)50万円
上乗せインボイス特例+50万円/賃金引上げ特例+150万円/両特例+200万円(合計250万円)
対象経費(8区分)機械装置等費/広報費/ウェブサイト関連費/展示会等出展費/旅費/新商品開発費/借料/委託・外注費
広報費の上限30万円(税込)/広報費のみによる申請は不可
申請受付2026年11月5日(木)〜12月15日(火)17:00
事業支援計画書(様式4)発行受付締切2026年12月4日(金)
採択発表2027年3月頃(予定)
見積書等の提出期限2028年2月29日(火)※未提出の場合は採択取消
補助事業実施期限2028年3月31日(金)
実績報告書の提出期限2028年4月10日(月)
申請方法電子申請システムのみ(郵送不可)/gBizIDプライムが必要

この表の5行目が、広告費を考えるうえで決定的です。広報費という区分には、全体の補助上限とは別に30万円(税込)という独自の上限があり、しかも広報費だけでの申請は認められていません

広報費で対象になる広告・ならない広告

第20回公募要領は、広報費を「パンフレット・ポスター・チラシ・インターネット広告・SNS広告等を作成および広報媒体等を活用するために支払われる経費」と定義したうえで、対象例と対象外例を具体的に挙げています。

対象となる経費例対象とならない経費例
インターネット広告、バナー広告の実施商品・サービスの宣伝広告を目的としない広告・看板・会社案内パンフレット作成・求人広告(単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外)
SNS広告、運用代行費補助事業期間外の広告の掲載や配布物の配布
街頭ビジョンやデジタルサイネージ広告への掲載チラシ等配布物のうち未配布・未使用分
新聞・雑誌等への商品・サービスの広告フランチャイズ本部の作製する広告物の購入
インターネットでのプレスリリース配信名刺/金券・商品券
商品・サービスの宣伝のための画像や動画作成チラシ等に使用する画像等における被写体や商品(紹介物等を含む)の購入に係る関連経費
郵送、インターネットを介したDMの発送文房具等の事務用品等の消耗品代(自社でチラシを内製する際の用紙代・インク代を含む)

実務的に重要な発見が3つあります。

1つめは、「SNS広告、運用代行費」が対象例に明記されていることです。広告の媒体費だけでなく、運用を外部に委託する費用も広報費で計上できる余地があります。これは他の制度にはあまり見られない扱いです。

2つめは、「補助事業期間外の広告の掲載」が対象外とされている点です。広告は配信期間があるため、補助事業期間をまたいで配信した場合、期間内の配信分しか認められません。補助事業の手引きにも、DMについて「補助事業期間中に作成・調達したDMだが、補助事業期間後に顧客の手元に届く場合は、補助事業期間外の広報の取組であり補助対象外」というQ&Aが載っています。Web広告でも、配信レポートの期間が補助事業期間内に収まっているかが見られます。

3つめは、求人広告が明確に対象外であることです。手引きのQ&Aでも「求人の広告は補助対象か?」という問いに対し、「商品・サービスの広報を目的としたものではなく、通常の営業活動に係る経費なので補助対象外」と回答されています。採用目的の広告は、この制度では通りません。

加えて、公募要領は「補助事業計画に基づく商品・サービスの広報を目的としたものが補助対象であり、単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費は、補助対象外です」と述べ、その具体例として「販路開拓に繋がる商品・サービスの名称や宣伝文句および事業者名等が付記されていないもの」を挙げています。広告クリエイティブに商品名・宣伝文句・事業者名が入っているかどうかが、そのまま対象可否に効いてくるということです。認知目的のブランド広告で商品名を出さない設計は、この制度とは相性が悪くなります。

広報費とウェブサイト関連費の線引きは公募回で変わる

ここが最も混乱しやすいところです。持続化補助金には広報費とウェブサイト関連費という2つの区分があり、オンライン広告をどちらで計上するかは、公募回によって案内が異なっています

資料オンライン広告の扱い各区分の上限
第20回公募要領(2026年5月27日公開)広報費の対象例に「インターネット広告、バナー広告の実施」「SNS広告、運用代行費」を明記広報費30万円(税込)/ウェブサイト関連費30万円(税込)
補助事業の手引き(第19回向け)「ウェブサイトに使用する画像や動画、またオンライン広告などの経費については、本費目(ウェブサイト関連費)で計上してください」と案内ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の1/4(最大50万円)

この差は、読み飛ばすと申請時に効いてきます。必ず自分が申請する公募回の公募要領と、その回の補助事業の手引きを突き合わせて確認してください。過去回の解説記事をそのまま信じて費目を決めると、交付申請の段階で修正を求められます。

なお街頭ビジョン広告やデジタルサイネージ広告については、手引きが「掲載料は②広報費、掲載する画像や動画の制作費は③ウェブサイト関連費」と切り分けています。同じ広告でも「枠を買う費用」と「素材を作る費用」で費目が分かれるという考え方は、Web広告にも応用が効きます。

30万円の上限が実務でどう効くか

広報費の30万円は、「補助金として受け取れる額」の上限であって、「広告に使ってよい額」の上限ではありません。補助率2/3なので、45万円の広告費で30万円に到達し、それ以上をかけても補助金は増えません。

広告関連費(税込)補助率2/3で計算した額実際に受け取れる補助金自己負担月15万円運用なら
15万円10万円10万円5万円1か月分
30万円20万円20万円10万円2か月分
45万円30万円30万円(ちょうど上限)15万円3か月分
90万円60万円30万円(上限で頭打ち)60万円6か月分
180万円120万円30万円(上限で頭打ち)150万円12か月分

この表の最終列が現実です。月15万円のWeb広告を3か月回すと、広報費の枠は使い切ります。年間で180万円の広告予算を組んでいる会社にとって、30万円は予算の6分の1にすぎません。補助金が広告予算の判断を左右する場面は、実際にはかなり限定的です。

ただし、ウェブサイト関連費にも別枠で30万円の上限があります。広告の受け皿となるLPを作り(ウェブサイト関連費30万円)、そこへ広告を出稿する(広報費30万円)という組み合わせなら、合計60万円まで使えます。広告単体で考えるより、受け皿とセットで設計するほうが制度との相性は良くなります。サイト制作側の詳しい要件は、別記事「ホームページ制作に使える補助金」で整理しています。

そもそも自社は「小規模事業者」に当たるか

この制度は対象者が絞られています。商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)は常時使用する従業員5人以下、宿泊業・娯楽業と製造業その他は20人以下が要件です。従業員数がこれを超える企業は、そもそも申請できません。

また、申請にはgBizIDプライムのアカウントと、地域の商工会・商工会議所が発行する事業支援計画書(様式4)が必要です。様式4は発行のために面談が行われる場合があり、第20回の発行受付締切は2026年12月4日で、申請締切の12月15日より11日早く設定されています。公募要領は「受付締切以降の発行依頼は、いかなる理由があってもできません」と明記しています。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金:上限が売上見込みに連動する

2026年から、従来のものづくり補助金と新事業進出補助金が統合され、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金になりました。広告費という観点では、国の制度のなかでもっともまとまった金額が出る可能性がある制度です。

第1回公募の枠組みは次のとおりです。

事業枠補助金額補助率補助事業実施期間
① 革新的新製品・サービス枠100万〜2,500万円
(賃上げ特例で最大3,500万円)
中小企業者1/2(特例で2/3)
小規模・再生事業者2/3
交付決定日から10か月以内
(採択発表日から12か月以内)
② 新事業進出枠750万〜7,000万円
(賃上げ特例で最大9,000万円)
1/2(特例で2/3)交付決定日から14か月以内
(採択発表日から16か月以内)
③ グローバル枠750万〜7,000万円
(賃上げ特例で最大9,000万円)
2/3交付決定日から14か月以内
(採択発表日から16か月以内)

第1回公募は2026年6月29日に開始、応募申請受付は2026年9月30日から、応募申請締切は2026年10月30日(金)18:00厳守です。

この制度の補助対象経費は12区分あり、そのなかに「広告宣伝・販売促進費」が含まれています。公募資料はこの区分を、「補助事業で開発または提供する製品・サービスに必要な『広告(パンフレット、動画、写真等)の作成費』『広告の媒体掲載費』『PR等に係るウェブサイト構築費』『展示会出展費』『ブランディング・プロモーション費』等」と定義しています。

「広告の媒体掲載費」が明記されている——つまり広告出稿費そのものが対象になるのが、この制度の大きな特徴です。

上限は「事業計画期間1年当たりの新製品等の売上高見込み額(税抜)の5%」

広告宣伝・販売促進費の補助上限額(第1回公募資料)

上限額=事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜き)の5%
※交付決定後の発注・契約が前提。相見積書および価格の妥当性が確認できる証憑の提出が必要。

この計算式が、この制度を理解するうえでの肝です。広告に使える額は、あなたが立てた「新規事業の売上計画」の大きさで自動的に決まります。

ここでいう売上高見込み額は、会社全体の売上ではありません。補助事業で新たに製造・提供する製品やサービスの売上です。既存商品の売上は含められません。また事業計画期間は補助事業終了後3〜5年で設定するため、その期間の売上見込み合計を年数で割った「1年当たり」の金額が基準になります。

具体的な金額で見てみましょう。

事業計画期間1年当たりの
新製品等の売上高見込み額(税抜)
広告宣伝・販売促進費の上限額
(売上見込みの5%)
補助率1/2のときの
補助金額の目安
補助率2/3のときの
補助金額の目安
500万円25万円約12万円約16万円
1,000万円50万円25万円約33万円
3,000万円150万円75万円100万円
5,000万円250万円125万円約166万円
1億円500万円250万円約333万円
2億円1,000万円500万円約666万円
3億円1,500万円750万円1,000万円

この表を見て、判断が変わる方が多いはずです。新規事業の年間売上見込みが1億円なら、広告宣伝・販売促進費として計上できるのは500万円まで。持続化補助金の30万円とは桁が2つ違います。

ただし、この数字は逆から読む必要があります。500万円の広告枠を得るためには、新規事業で年1億円を売るという事業計画を書き、その実現可能性を審査で認めてもらわなければなりません。広告費を確保するために売上計画を膨らませるのは本末転倒で、この制度は補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において付加価値額の年平均成長率+4.0%以上一人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上という目標の策定・達成を求めます。給与支給総額の目標が未達の場合、補助金の返還を求められることがあります。

また、上限額はあくまでその費目に計上できる補助対象経費の枠であり、実際に受け取る補助金は補助率を掛けた額になります。さらに枠全体の補助上限(従業員数によって750万〜7,000万円)も同時に効きます。数字の解釈に迷う場合は、交付申請前に事務局へ確認してください。

実施期間の制約で、上限まで使い切れないことがある

もう一段、実務に踏み込みます。広告宣伝・販売促進費の上限が大きくても、補助事業実施期間内に発注・納入・検収・支払をすべて完了させなければならないという制約があります。新事業進出枠・グローバル枠で交付決定日から14か月以内、革新的新製品・サービス枠で10か月以内です。

Web広告は月額で消化していく費用なので、期間の長さがそのまま使える総額の天井になります。

新製品等の年間売上見込み広告費の上限額
(5%)
月30万円運用
なら何か月分か
月50万円運用
なら何か月分か
月100万円運用
なら何か月分か
3,000万円150万円5か月3か月1.5か月
5,000万円250万円約8か月5か月2.5か月
1億円500万円約16か月
※期間14か月で頭打ち
10か月5か月
2億円1,000万円約33か月
※期間14か月で頭打ち
20か月
※期間14か月で頭打ち
10か月

つまり、売上見込みを大きく立てても、月々の広告予算が小さければ期間内に枠を消化できません。新事業進出枠で実施期間を14か月フルに使い、月30万円で運用した場合、期間内に計上できるのは420万円が上限です。上限額が500万円でも1,000万円でも、そこで止まります。

逆に言えば、この制度で広告費を最大限活かすには、補助事業期間の前半から広告配信を立ち上げ、月額を厚く投下する設計が必要になります。交付決定を待ってから代理店を選定し、クリエイティブを作り、アカウントを構築していると、それだけで2〜3か月が消えます。交付決定前に発注・契約はできませんが、準備と選定は進めておけるという段取りの差が、そのまま使える金額の差になります。

対象外になる広告

公募資料は、広告宣伝・販売促進費の対象外を明確に列挙しています。

  • 補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告:補助事業で新たに製造等する製品に限られます。既存商品の広告は入りません。
  • 会社全体のPR広告:企業ブランディング目的の広告は対象外です。
  • 事業実施期間外に使用・掲載される広告、実施される展示会:配信期間が期間外にはみ出した分は認められません。
  • 映像制作における被写体や、商品(紹介物等を含む)の購入に係る関連経費:撮影のために商品を買う費用は対象外です。

加えて、制度全体の対象外経費として「既存事業に活用する等、専ら補助事業のために使用されると認められない経費」が挙げられています。既存商品と新商品を同じ広告アカウントでまとめて回していると、「専ら補助事業のために使用された」という説明が難しくなります。キャンペーンやアカウントを分け、新商品の配信分だけを切り出せる状態にしておくことが実務上の備えになります。

なお「事業者が行うべき手続きの代行費用」も対象外です。補助金申請そのものを外部に依頼する費用は、補助対象になりません。

デジタル化・AI導入補助金2026:広告出稿費は対象外、ただし別ルートがある

旧IT導入補助金にあたるこの制度は、2026年からデジタル化・AI導入補助金2026という名称になっています。広告費という観点では、まず前提を押さえる必要があります。

この制度の補助対象経費は、事務局に登録されたITツールのソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、および導入に伴う役務(導入コンサルティング、導入設定、マニュアル作成、導入研修、保守サポート)です。広告の媒体掲載費という区分は存在しません。したがって、広告出稿費そのものはこの制度の対象になりません。

通常枠の条件は次のとおりです。

項目内容
補助率1/2以内(低賃金雇用従業員が30%以上の場合は2/3以内)
補助額1プロセス以上:5万円以上150万円未満/4プロセス以上:150万円以上450万円以下
対象経費ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、オプション(機能拡張・データ連携ツール・セキュリティ)、役務(導入コンサル・導入設定・研修・保守サポート)
ITツールの要件事務局に登録されたITツールで、指定の業務プロセス(顧客対応・販売支援/決済・債権債務・資金回収管理/供給・在庫・物流/会計・財務・経営/総務・人事・給与ほか/業種固有プロセス)を1種類以上含むもの。汎用プロセスのみは不可
1次締切2026年9月29日(火)17:00/交付決定日 2026年11月9日(月)予定
事業実施期間交付決定〜2027年4月30日(金)17:00(予定)

ここで注目したいのが、業務プロセスの1つに「顧客対応・販売支援」がある点です。MA(マーケティングオートメーション)ツール、CRM、SFA、広告と連携する顧客管理ツールなどは、この分類に該当しうる領域です。

これらが登録ITツールになっていれば、導入費とクラウド利用料が補助の対象になります。広告の出稿費は自社負担でも、広告で獲得したリードを取りこぼさない仕組みのほうを補助金で整えるという使い方は、制度の設計に素直に沿っています。

ただし注意点があります。対象になるのは事務局に登録された特定のITツールに限られるため、自社に合ったツールが登録されているかを先に確認する必要があります。また、申請にはIT導入支援事業者(登録された販売・支援事業者)との連携が必須です。ツールを選んでから制度を探すのではなく、登録ツールの一覧から選ぶという順序になります。制度全体の詳しい解説は、別記事「デジタル化・AI導入補助金2026」で整理しています。

自治体の広告・販路開拓補助金:金額は小さいが、広告そのものが対象になる

国の制度で広告費が「他の経費のついで」でしか計上できないのに対し、自治体には広告掲載費そのものを名指しで補助する制度があります。金額は10万〜20万円程度が中心ですが、「販路開拓の一環であること」といった重い要件が付かない制度も多く、手続きも簡素です。

2026年9月時点で公開されている代表的な例を挙げます。

制度対象になる広告補助率上限主な対象外・注意点
東京都江東区
中小企業広告宣伝費補助金
(広告掲載費補助)
新聞・書籍などの出版物および電子版/公共交通機関の掲示/建物の掲示/指定SNS(LINE・X・Instagram・Facebook・YouTube)/テレビ・ラジオCM3分の220万円求人広告、チラシ作成料、看板製作・設置料は対象外。広告を掲載する前に申請が必要(掲載済広告は受付不可)。直近2年度に受給実績がある事業者は対象外
鹿児島市
中小企業デジタル広告支援事業補助金
インターネット上のメディアが用意した有償の広告枠に掲出されるもの(タイアップ広告、テキスト広告、動画広告、検索連動型広告、ディスプレイ広告、SNS広告等)。広告代理店への委託料、インフルエンサーへの謝金、宣材制作費も対象2分の1以内20万円以内成果報酬型広告(アフィリエイト)、メール広告、オフライン広告、マスメディア広告は対象外。予算に達し次第終了。実施年度・募集回は要確認
山口市
創業広告支援補助金
ウェブサイトや看板の作成、チラシ作成・配布、SNS広告等(委託費・印刷製本費・広告宣伝費など)2分の1以内10万円「特定創業支援等事業による支援」を受けた、創業前または創業2年以内の事業者に限定。消費税相当額および他の補助金の対象経費は対象外
東京都
展示会出展助成事業
(令和8年度)
展示会参加費(出展小間料・資材費・輸送費・EC出店初期登録料)に加え、販売促進費として印刷物制作費・動画制作費・広告掲載費・サイト制作改修費3分の2以内150万円中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラスの経営分析を受けた都内中小企業のうち、売上減少企業・損失計上企業等に対象を限定。資材費・輸送費のみの申請は不可。令和8年4月1日〜令和9年1月14日に年10回受付
東京都千代田区
中小企業販路拡大事業支援補助
出展小間料、装飾費、備品レンタル費のみ(広告費は対象外)3分の210万円(条件により20万円)設営費・周知費・運送費・人件費・消費税は対象外。一般消費者向け販売目的の展示会は対象外。年度内1回限り

この表で読み取っていただきたい点が3つあります。

1つめは、対象になる広告媒体が制度ごとにまったく違うことです。江東区は指定SNSとマスメディア・交通広告が中心で、検索連動型広告(リスティング広告)は列挙されていません。一方、鹿児島市は検索連動型広告・ディスプレイ広告を明示的に対象にしています。「自治体の広告補助が使える」と一般化はできません。自分の自治体の要綱を、媒体名まで確認する必要があります。

2つめは、申請のタイミングです。江東区の要綱は「申請に係る広告を行う前に」申請することを定めており、すでに掲載済みの広告は受け付けられません。先に出稿してから申請することはできないという点は、国の制度の「交付決定前の発注は対象外」と同じ構造です。

3つめは、東京都の展示会出展助成事業の上限150万円です。この制度は販売促進費として広告掲載費を含んでおり、自治体系としては群を抜いて枠が大きい制度です。ただし対象者が「中小企業活力向上プロジェクトアドバンスプラスの経営分析を受けた企業のうち売上減少企業・損失計上企業等」に限定されているため、誰でも使えるわけではありません。金額の大きい制度ほど、入口の条件が絞られているという関係はここでも同じです。

自治体の制度の探し方

自治体の広告補助は、国の制度のように一覧でまとまっている場所がありません。次の順序で探すのが現実的です。

  1. 中小企業庁の「ミラサポplus」で検索する地域と目的を指定して支援制度を横断的に検索できます。国と自治体の制度がまとめて登録されています。
  2. 中小機構の「J-Net21 支援情報ヘッドライン」を見る全国の補助金・助成金の公募情報が日次で更新されます。都道府県で絞り込めます。
  3. 自分の市区町村のサイトを「広告 補助」「販路開拓 補助」で検索する産業振興課・商工課の所管であることが多く、要綱と様式がそのまま公開されています。制度名は「広告宣伝費補助金」「広告掲載費補助」「デジタル広告支援」など自治体ごとにばらばらなので、複数の語で探してください。
  4. 都道府県と、都道府県の中小企業支援公社の制度も確認する市区町村の制度とは別枠です。東京都の展示会出展助成事業のように、公社が実施している制度は市区町村サイトには載りません。
  5. 商工会・商工会議所に聞く公表前の情報や募集枠の消化状況を把握していることがあります。持続化補助金の相談窓口でもあります。

自治体の制度は予算枠に達した時点で受付を終了するものが多く、年度の早い時期に動くほど確実です。また、国の制度との重複受給はできないのが通例で、江東区の要綱も「国や東京都の同種助成との重複」を対象外と定めています。

海外向けの広告なら、公的機関の支援という選択肢もある

越境ECや海外市場への進出を考えている場合は、補助金とは別に日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援メニューがあります。金銭の補助ではなく、費用の一部負担や無料サービスという形が中心です。

  • 新規輸出1万者支援プログラム:登録は無料。貿易投資相談、専門家による個別面談、海外バイヤー向けマッチングサイト(e-Venue、Japan Street)への登録、越境ECへの参加支援、商社マッチングなどが受けられます。輸出経験がない企業も対象です。
  • 海外見本市・展示会のジャパンブースへの出展支援:ジェトロが主催・参加する海外展示会について、対象となる見本市によって出展経費の一部が補助されます。出展企業・団体は公募制です。
  • 中小企業海外展開現地支援プラットフォーム:現地の専門家に無料で相談できる仕組みです。

また、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠は補助率2/3、補助上限750万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円)で、この枠にのみ海外旅費(補助対象経費総額の1/5かつ1人当たり最大50万円)と通訳・翻訳費(上限30万円・税抜)が対象経費として加わります。ただし翻訳費については「広告宣伝・販売促進に必要な翻訳のみが補助対象」とされ、事業計画に係る契約書の翻訳などは対象外です。海外向けの広告クリエイティブの翻訳は対象になりうるという整理になります。

越境ECの構築費用も含めた全体像は、別記事「ECサイトの構築費用に使える補助金」で整理しています。

対象外になりやすい広告費

ここまでの内容をふまえ、制度をまたいで共通して対象外になりやすい広告費をまとめます。広告の見積書や請求書に入りがちな項目ばかりです。

費用・状況扱い根拠・実務上の注意
交付決定前に出稿・契約した広告費全額対象外制度共通の大原則。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は「交付決定日より前の事前着手は禁止です。交付決定日より前に契約(発注)した経費は、補助対象になりません」と明記。採択通知だけでは着手できません
補助事業期間外に配信された分対象外持続化補助金は「補助事業期間外の広告の掲載や配布物の配布」を対象外に列挙。新事業進出側も「事業実施期間外に使用・掲載される広告」を対象外に明記。配信レポートの期間で判定されます
補助事業終了後も続く運用費対象外補助事業期間が終われば自社負担。継続的な広告運用を制度で賄い続けることはできません
会社全体のPR広告・企業ブランディング広告対象外新事業進出側は「会社全体のPR広告」を対象外に明記。持続化側も「単なる会社のPRや営業活動に活用される広報費」を対象外と規定
商品名・宣伝文句・事業者名が入っていない広告対象外になりうる持続化補助金の公募要領が対象外の例として「販路開拓に繋がる商品・サービスの名称や宣伝文句および事業者名等が付記されていないもの」を明示。認知目的の広告は説明が難しくなります
求人広告対象外持続化補助金の対象外例に明記。手引きのQ&Aも「通常の営業活動に係る経費なので補助対象外」と回答。江東区の広告掲載費補助でも対象外
補助事業と関係ない既存商品の広告対象外新事業進出側は「補助事業以外の自社の製品・サービス等の広告」を対象外に明記。アカウント・キャンペーンを分けて配信実績を切り出せるようにしておくのが実務上の備え
成果報酬型広告(アフィリエイト)制度により対象外鹿児島市のデジタル広告支援事業は明示的に対象外。国の制度でも、掲載内容と金額の対応関係を証憑で示しにくいため、事前確認が必要です
他社と共同で出した広告のうち他社帰属分対象外持続化補助金の手引きは「広告の半分が補助事業者に帰属するものであれば、広告費のうち半分までが補助対象」と回答
撮影の被写体や紹介する商品そのものの購入費対象外両制度とも明記。クリエイティブ制作費は対象でも、写す対象の購入は対象外
汎用性が高く目的外使用になりうるものの購入対象外撮影用のカメラ、編集用パソコン、タブレット等。新事業進出側の対象外経費に「カメラ」が名指しで挙げられています
補助金申請の代行費用対象外新事業進出側は「事業者が行うべき手続きの代行費用」を対象外に明記
消費税および地方消費税原則対象外新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は税抜きベース。自治体制度も同様の扱いが多い(山口市の例など)

この一覧で最も取り返しがつかないのは、交付決定前の出稿です。広告は「良い枠が空いているうちに」「キャンペーンに間に合わせて」と急ぎたくなる性質の施策ですが、交付決定通知書に記載された交付決定日より前に行った発注・契約・支出は、すべて補助の対象外になります。持続化補助金では採択発表から交付決定までおおむね1〜2か月かかります。この間に出稿してしまうと、その分は補助金が一切出ません。

次に効いてくるのが補助事業期間外の配信です。Web広告は月末締めで請求が来るため、請求書の対象期間と補助事業期間がずれることが起こります。月をまたぐ配信は、期間内の消化分だけを切り出せるように、媒体のレポートを月次ではなく日次で取得しておくのが安全です。

広告代理店への手数料はどう扱われるか

Web広告の請求書は、媒体費と運用手数料が合算されているケースが多くあります。この扱いは制度によって異なります。

持続化補助金の第20回公募要領は、広報費の対象例に「SNS広告、運用代行費」を明記しており、運用代行費が対象になりうることが読み取れます。一方、ウェブサイト関連費については「ウェブサイトおよびシステムに関連するコンサルティング、アドバイス費用」を対象外に挙げています。「運用を代行する費用」と「助言する費用」で扱いが分かれると理解しておくのが安全です。

実務上は、請求書で媒体費と手数料の内訳が分かれていることが重要になります。合算の一式請求では、どの部分が何の費用かを事務局に説明できません。代理店には、補助金で計上する旨を伝えたうえで、内訳の明示された請求書と、期間・媒体・消化金額のわかる配信レポートの発行を依頼してください。

広告費を計上したときに求められる証憑

広告費が補助対象になったとしても、実績報告で証憑がそろわなければ補助金は確定しません。広告は「モノが残らない経費」であるため、証憑の準備が他の経費区分よりも難しいという特性があります。

小規模事業者持続化補助金の補助事業の手引きは、広報費について実績報告時に必要な証拠書類を次のように定めています。

順番証拠書類Web広告の場合に何を用意するか
[1]見積書(すべての取引において必要)
発注総額が税込100万円を超える発注は2者以上の相見積が必要(困難な場合は選定理由書)
代理店からの見積書。媒体費・手数料・クリエイティブ制作費の内訳を分けて記載してもらう
[2]発注書(参考様式あり)または契約書運用委託契約書。契約日が交付決定日以降であることが必須
[3]納品書または完了報告書配信完了報告書。期間・媒体・配信実績が記載されたもの
[4]請求書媒体費と手数料の内訳が分かれた請求書。対象期間の記載があること
[5]銀行振込(明細)受領書または領収書
口座引き落としの場合は銀行預金通帳の写し等
広告アカウントのクレジットカード決済の場合は、カード明細と引き落としが確認できる通帳の写し
[6]成果物(コピー、写真等でも可)
補助事業者の商品・サービスの販路開拓につながることが判明する成果物/事業者名、サービス(宣伝文句)が確認できるもの
実際に配信された広告クリエイティブのスクリーンショット、広告掲載画面の画像、配信レポート

この表の[6]が、Web広告で最も注意すべきところです。手引きは「事業者名、サービス(宣伝文句)が確認できるものを提出」と指定しています。広告のスクリーンショットに商品名も会社名も宣伝文句も写っていなければ、その広告は「単なる会社のPR」と判断されかねません。配信開始後すぐに、掲載面のキャプチャを取っておいてください。広告は差し替えや配信終了で見られなくなるため、後から取得できません。

自治体の制度でも同様の証憑が求められます。鹿児島市の中小企業デジタル広告支援事業補助金は、実績報告に必要な書類として補助事業等実績報告書、事業実績及び収支決算書、領収書等に加えて、「広告掲載画面写真や広告レポート」を挙げています。

「実際に配信された分」しか認められない

もう1つ、広告特有の論点があります。持続化補助金の手引きには、チラシについて次のQ&Aがあります。

補助事業の手引きより

Q.新商品のチラシを1,000枚作成し、事業終了日までに500枚配布した。補助対象経費としては、500枚分が認められるのか?
A.そのとおりです。チラシ等の印刷費は、実際に配布もしくは使用した数量分が補助対象となります。

この考え方はWeb広告にもそのまま当てはまります。広告費を前払いでチャージしたが、補助事業期間内に使い切らなかった残高は、「未使用分」として対象外になると考えるのが自然です。事前にまとめてデポジットを入れる運用は、精算のときに問題になりやすいので避けたほうが無難です。

実務上の備えをまとめると次のようになります。

  • 交付決定日以降の日付で契約書・発注書を交わす(交付決定前は準備と選定までにとどめる)
  • 広告アカウントを補助事業用のキャンペーンで分け、対象商品の配信分だけを切り出せるようにする
  • 配信レポートは日次で取得し、補助事業期間内の消化額を正確に示せるようにする
  • 請求書は媒体費・運用手数料・制作費の内訳を分けて発行してもらう
  • 配信中の広告クリエイティブと掲載面のスクリーンショットを、配信開始直後に保存する
  • クリエイティブに商品・サービス名、宣伝文句、事業者名が入っていることを確認する
  • 前払いのチャージ残高を補助事業期間終了時点で残さない

必要書類と、申請から入金までの期間

持続化補助金<一般型 通常枠>第20回を例に、そろえる書類を整理します。

区分書類取得先・注意点
共通gBizIDプライムのアカウント電子申請に必須。取得に日数がかかるため早めに着手
事業支援計画書(様式4)地域の商工会・商工会議所が発行。商工会地区は発行のために面談を行う。受付締切(2026年12月4日)以降の発行依頼は、いかなる理由があってもできない
法人貸借対照表および損益計算書(直近1期分)損益計算書がない場合は確定申告書の表紙・別表四の写し
現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書法務局。決算期を一度も迎えていない場合のみ提出
個人事業主直近の確定申告書(第一表・第二表と、収支内訳書または青色申告決算書)決算期未到来の場合は開業届の写しと売上台帳等。マイナンバーは黒塗り
特例を使う場合適格請求書発行事業者の登録通知書の写し等/賃金引上げ特例に係る誓約・同意書(様式7)インボイス特例は登録手続中なら受信通知の写し。赤字事業者(法人)は法人税申告書の別表一・別表四の写しも必要
採択後見積書等提出期限は2028年2月29日。未提出の場合は採択取消

次に、お金が実際に入ってくるまでの期間です。第20回のスケジュールで追ってみます。

段階時期この時点で広告を出せるか
事業支援計画書(様式4)発行受付締切2026年12月4日(金)出せない
申請締切2026年12月15日(火)17:00出せない
採択発表2027年3月頃(予定)まだ出せない(採択=着手可ではない)
交付決定採択発表からおおむね1〜2か月
(2027年4〜5月頃の見込み)
ここから出せる
補助事業実施期限2028年3月31日(金)この日までに配信・支払を完了
実績報告書の提出期限2028年4月10日(月)
補助金額の確定・請求・交付実績報告の内容確認後

この表が示す現実は明快です。2026年12月に申請した広告費が、実際に入金されるのは2028年の年央以降になります。申請から入金まで、1年半近くかかることも珍しくありません。

そして、補助金は後払いです。広告費はいったん全額を自社で支払うことになります。「補助金が出てから広告を出す」という順序は制度上あり得ませんし、「補助金が入る前提の資金繰り」も危険です。

不採択・対象外になりやすいパターン

持続化補助金の採択率は、直近3回で次のように推移しています。

公募回申請件数採択件数採択率採択発表日
第17回23,365件11,928件約51.1%2025年9月26日
第18回17,318件8,330件約48.1%2026年3月17日
第19回16,576件7,819件約47.2%2026年7月29日

おおむね2社に1社は通らない水準で、緩やかに厳しくなっています。審査は提出資料のみで行われ、提案内容に関するヒアリングは実施されません。

広告費を含む申請で、要件の構造から避けられる失敗を整理します。

  • 広報費だけで申請した:この時点で要件を満たしません。機械装置等費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費など、ほかの区分の経費を必ず組み合わせる必要があります。
  • 「広告を出して売上を増やしたい」で計画が止まっている:誰に、何を、なぜその媒体で届けるのかが説明されていない計画は、販路開拓の取組として評価されません。
  • 売上高・売上総利益の増加が数字で示されていない:補助対象事業の要件そのものです。客観的なデータを用いた市場や顧客ニーズの分析が求められます。
  • 広告クリエイティブに商品名・宣伝文句・事業者名が入っていない:公募要領が対象外の例として明示しています。
  • 事業支援計画書(様式4)の発行依頼が締切に間に合わなかった:受付締切以降の発行は、いかなる理由があってもできません。
  • 交付決定前に出稿・契約した:その費用は全額が対象外になります。採択通知では着手できません。
  • 配信期間が補助事業期間をはみ出した:期間外の掲載分は対象外です。
  • 加点項目を3つ以上選んでしまった:重点政策加点・政策加点から各1種類、合計2種類までです。2種類を超えて選択すると、加点審査の対象から外れます。
  • 前回の事業効果報告書を出していない:様式第14が未提出の事業者は、そもそも補助対象外です。
  • 過去の採択時と同じ内容で申請した:過去の補助事業と同じ事業と見受けられる場合は不採択になります(採択後に判明した場合は遡って取消)。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の場合は、さらに構造的な注意点があります。公募資料は「一過性の支出と認められるような支出が補助対象経費の大半を占めるような場合には、本補助金の支援対象にはなりません」と述べています。広告費の比率が高い計画は、この一文に抵触するおそれがあります。そもそも機械装置・システム構築費または建物費が補助対象経費に含まれていることが必須要件であり、広告中心の計画はこの制度の想定外です。

現実的な結論:広告費を補助金で賄う前提は置かないほうがよい

ここまでの内容を、意思決定の観点から整理します。広告費に補助金を当てにしないほうがよい理由は3つあります。

  1. 後払いで、入金まで1年以上かかる持続化補助金の第20回なら、2026年12月に申請して入金は2028年の年央以降。広告費は先に全額を自社で支払います。キャッシュフロー上、補助金は「あとから戻ってくるかもしれないお金」でしかありません。
  2. 上限が小さく、広告予算のごく一部にしかならない持続化補助金の広報費は30万円が天井です。月15万円の運用なら3か月分。年間の広告予算が100万円を超える会社にとって、判断を左右する金額ではありません。
  3. 継続的な運用費は構造的に対象外になる補助事業期間外の配信は対象外です。広告は「出して終わり」ではなく回し続ける施策なので、制度と時間軸が合いません。補助事業期間が終われば、100%自社負担に戻ります。

では、補助金は使わないほうがよいのかというと、そうではありません。使うべき場所が違うだけです。

費用性格補助金との相性推奨する資金の当て方
LP・商品ページ・ECサイトの構築一度きりの投資良い持続化補助金のウェブサイト関連費(上限30万円)、デジタル化・AI導入補助金(登録ITツールの場合)、自治体のホームページ作成費補助
広告クリエイティブの制作(バナー・動画・商品撮影)一度きりの投資良い持続化補助金の広報費/ウェブサイト関連費、新事業進出側の広告宣伝・販売促進費
MA・CRM・SFA等のツール導入初期導入+継続課金良いデジタル化・AI導入補助金(クラウド利用料は最大2年分)
計測環境の整備(計測タグ、コンバージョン設計、データ連携)一度きりの投資良いウェブサイト関連費、デジタル化・AI導入補助金のオプション(データ連携ツール)
広告出稿費毎月発生する運用費悪い事業の売上から回収する設計にする。補助金は初期の立ち上げ分に限定して考える
広告運用代行費毎月発生する運用費悪い同上。補助対象になる制度もあるが、期間と上限の制約が大きい

この表の考え方はシンプルです。補助金は「立ち上げの一押し」に使い、広告出稿費は事業のなかで回収する。広告費は、投じた金額に対してどれだけの売上・利益が返ってくるかで判断すべき投資であり、補助金の有無で回すかどうかを決める性質のものではありません。

言い換えれば、補助金が出なければ回せない広告は、補助金が出ても続きません。補助事業期間が終わった翌月から自己負担100%になるからです。広告を始める判断は、CPA(顧客獲得単価)とLTV(顧客生涯価値)が合うかどうかで行い、補助金はそこに乗せる「初期の受け皿づくりの原資」と位置づけるのが、実務的にも制度の趣旨にも合っています。

よくある質問

Web広告の出稿費に使える補助金はありますか?

あります。小規模事業者持続化補助金の「広報費」は、対象となる経費例に「インターネット広告、バナー広告の実施」「SNS広告、運用代行費」を明記しています。ただし補助金交付申請額の上限は30万円(税込)で、広報費のみによる申請はできません。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「広告宣伝・販売促進費」も「広告の媒体掲載費」を対象にしていますが、上限は事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜)の5%です。いずれも広告費だけを理由にした申請はできません。

補助率が2/3なら、100万円の広告費で約66万円もらえますか?

持続化補助金の広報費では、いいえ。補助金として受け取れる額が30万円(税込)で頭打ちになります。補助率2/3で30万円に達するのは広告費45万円のときで、それ以上をかけても補助金は増えません。100万円の広告を出した場合、受け取れるのは30万円、自己負担は70万円です。なおウェブサイト関連費にも別枠で30万円の上限があるため、LP制作と広告出稿を組み合わせれば合計60万円まで使える余地があります。

毎月の広告運用費をずっと補助してもらうことはできますか?

できません。持続化補助金は「補助事業期間外の広告の掲載」を対象外に列挙しており、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も「事業実施期間外に使用・掲載される広告」を対象外に明記しています。補助の対象になるのは補助事業期間内に配信された分だけで、期間が終われば全額自社負担に戻ります。恒常的な運用費を補助金で賄い続ける制度は、2026年9月時点で存在しません。

採択されたら、すぐに広告を出してよいですか?

出さないでください。着手できるのは交付決定日以降です。交付決定通知書に記載された交付決定日より前に行った発注・契約・支出は、すべて補助の対象外になります。持続化補助金では採択発表から交付決定までおおむね1〜2か月かかります。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金も「交付決定日より前の事前着手は禁止」と明記しています。代理店の選定やクリエイティブの検討は進めておけますが、契約日と発注日は交付決定日以降にしてください。

広告代理店への運用手数料は対象になりますか?

制度によります。持続化補助金の第20回公募要領は、広報費の対象となる経費例に「SNS広告、運用代行費」を明記しています。一方、ウェブサイト関連費では「ウェブサイトおよびシステムに関連するコンサルティング、アドバイス費用」が対象外です。鹿児島市のデジタル広告支援事業補助金は広告代理店への委託料を対象に含めています。いずれの場合も、請求書で媒体費と手数料の内訳が分かれていることが実務上重要です。合算の一式請求では説明ができません。

採用のための求人広告に使える補助金はありますか?

持続化補助金では対象外です。公募要領は広報費の対象外の例として「求人広告」を明示し、「単なる会社の営業活動に活用されるものとして対象外」と説明しています。補助事業の手引きのQ&Aでも「商品・サービスの広報を目的としたものではなく、通常の営業活動に係る経費なので補助対象外」と回答されています。江東区の広告掲載費補助でも求人広告は対象外です。採用に関する支援は、補助金ではなく厚生労働省系の助成金の領域になりますが、そちらも広告費そのものを補助する設計にはなっていません。

実績報告では何を提出すればよいですか?

持続化補助金の補助事業の手引きは、広報費について見積書(すべての取引で必要。発注総額が税込100万円超の場合は2者以上の相見積)、発注書または契約書、納品書または完了報告書、請求書、銀行振込受領書または領収書、そして成果物を求めています。成果物は「補助事業者の商品・サービスの販路開拓につながることが判明するもの」「事業者名、サービス(宣伝文句)が確認できるもの」と指定されています。Web広告の場合は、配信された広告クリエイティブと掲載面のスクリーンショット、期間・媒体・消化金額のわかる配信レポートを用意してください。配信終了後は取得できないため、配信開始直後に保存しておく必要があります。

まとめ

この記事の要点

2026年9月時点で、広告費を対象にしている補助金はあります。ただし上限が小さく、条件が厳しく、広告費だけでの申請はできません。広告出稿費や運用代行費のような「毎月発生し続ける費用」は、制度と構造的に相性が悪いためです。

小規模事業者持続化補助金の広報費は、インターネット広告・バナー広告・SNS広告・運用代行費を対象例に明記していますが、補助金交付申請額の上限は30万円(税込)で、広報費のみによる申請はできません。補助率2/3なので、広告費45万円で上限に達します。第20回の申請受付は2026年11月5日から12月15日17:00、事業支援計画書(様式4)の発行受付締切は12月4日です。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の広告宣伝・販売促進費は、広告の作成費・媒体掲載費・PR等に係るウェブサイト構築費・展示会出展費を対象にしています。上限は事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜)の5%。新製品の年間売上見込みが1億円なら500万円、3,000万円なら150万円が枠になります。ただし補助事業実施期間(新事業進出枠で交付決定日から14か月以内)内に消化しきる必要があり、機械装置・システム構築費または建物費が必須です。第1回の応募申請締切は2026年10月30日18:00厳守です。

デジタル化・AI導入補助金2026には広告の媒体掲載費という区分がなく、広告出稿費は対象外です。ただしMA・CRM・SFAなど「顧客対応・販売支援」プロセスに該当するツールが登録ITツールであれば、導入費とクラウド利用料(最大2年分)が対象になります。1次締切は2026年9月29日17:00です。

自治体には、江東区の広告掲載費補助(3分の2・上限20万円)、鹿児島市のデジタル広告支援事業補助金(2分の1以内・上限20万円以内)のように、広告掲載費そのものを対象にする制度があります。ただし対象媒体は制度ごとに大きく異なり、江東区は指定SNSとマスメディアが中心、鹿児島市は検索連動型・ディスプレイ広告も対象という違いがあります。多くが広告を出す前の申請を条件にしています。

共通する大原則は2つ。交付決定前の出稿・契約は全額対象外であること、そして補助金は後払いであることです。持続化補助金では申請から入金まで1年半近くかかることもあります。広告費は補助金を前提にせず、CPAとLTVが合うかどうかで判断し、補助金はLP・クリエイティブ・ツールといった初期の受け皿づくりに充てる——これが、制度の設計と実務の双方に合った考え方です。

補助金は初期構築に、広告費は事業の中で回収する設計に

広告は、出し続けなければ効果が続かない施策です。だからこそ、補助金で賄えるのは立ち上げのごく一部にすぎません。補助金は受け皿となるLPやECサイト、クリエイティブ、計測環境の整備に使い、広告出稿費は事業の売上から回収できる設計にする。この順番で組み立てるほうが、結果的に長く続きます。
株式会社Digital&では、Web広告の運用とWebマーケティングの実行支援を行っています。「いくらの広告費を、どの媒体に、どれだけの期間投じれば採算が合うのか」を数字で設計するところからご相談いただけます。
なお、補助金・助成金の申請書類の作成や提出の代行は行っておりません。手続きそのものについては、社会保険労務士・行政書士など各分野の専門家にご相談ください。

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