UIJターンを活用した地方採用の進め方
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「募集をかけても応募が来ない」「地元の若者が都市部へ出ていったまま戻らない」——地方で採用を担う方から、こうした声を繰り返し伺います。
一方で、都市部で暮らす人の関心は確実に地方へ向かっています。この流れを自社の採用につなげる手段がUIJターン採用です。ポイントは、仕事の条件だけでなく「その土地で暮らす未来」までを一体で伝えることにあります。
本記事では、UIJターンの基本的な考え方から、地方採用を成功させる3つのステップ、活用できる公的支援制度までを実務目線で整理します。
この記事でわかること
- U・I・Jターンそれぞれの違いと、応募者が地方に目を向ける理由
- 都市部と地方で異なる採用環境の構造と、地方で最初に越えるべき壁
- 認知獲得・魅力訴求・情報設計という地方採用の3ステップ
- 移住支援金など、応募者の不安を和らげる公的制度の使い方
地方採用とUIJターン採用の基礎知識
地方採用とは、地域に根ざした企業が、その地域または周辺で働く人材を募集・雇用する取り組みを指します。地域限定採用・エリア採用とも呼ばれ、地方の中小企業や地方拠点を持つ企業が積極的に導入しています。
なかでも近年注目されているのが、都市部で暮らす人材を地方に迎え入れるUIJターン採用です。
UIJターン希望者の動向と、その背景にあるもの
内閣官房の調査によると、東京圏に住む20〜50代のおよそ5割が「地方暮らしに関心がある」と回答しています。とりわけUターンに該当する層では61.7%が地方での生活に前向きな意向を示しており、東京圏出身者よりも高い割合です。
背景にあるのは、働き方と暮らし方に対する価値観の変化です。テレワークの定着によって「働く場所」の制約が緩み、通勤時間や住環境、家族と過ごす時間を基準に住まいを選び直す人が増えました。
ただし、関心があることと実際に動くことの間には距離があります。多くの希望者は「給与水準はどの程度下がるのか」「自分のスキルを活かせる仕事があるのか」「子どもの教育環境はどうか」といった不安を抱えたままです。この不安に先回りして答える情報提供こそが、採用成功の分かれ目になります。
都市部と地方で異なる採用環境の現実
都市部では求人数・求職者数ともに多く、企業間の人材獲得競争が激しいのが実情です。これに対し地方では、そもそも労働力人口自体が限られており、条件に合う人材と出会う機会そのものが少なくなります。
つまり、都市部の課題は「数ある選択肢の中から選ばれること」であり、地方の課題は「まず見つけてもらうこと」です。この構造の違いを理解せずに都市部と同じ手法を持ち込むと、媒体費だけがかさんで成果が出ない、という結果になりがちです。
| 類型 | 定義 | 企業から見た特徴 |
|---|---|---|
| Uターン | 生まれ育った地域を離れて進学・就職した人が、再び故郷に戻って働く | 地域への理解が深く、家族や人間関係の基盤があるため定着しやすい |
| Iターン | 生まれ育った地域とは別の地域へ移り住んで働く | 都市部で培ったスキルや異なる視点を持ち込んでくれる可能性が高い |
| Jターン | 故郷を離れて暮らしていた人が、故郷に近い地方都市などへ移り住んで働く | 都市機能と地元への近さの両立を求める層。県庁所在地などが受け皿になりやすい |
応募が集まらない原因は、①そもそも求人が見られていない(認知の問題)、②見られているが応募に至らない(訴求の問題)、③応募はあるが要件と合わない(設計の問題)のいずれかです。媒体のPV数と応募数を分けて見るだけでも、どこに手を打つべきかが見えてきます。
地方採用を成功させる3つのステップ
- ステップ1:自社を知ってもらう導線をつくる最初の関門は「存在に気づいてもらうこと」です。求人広告に加えて、地方移住イベントへの出展、スカウト型サービスの活用、SNSでの継続的な情報発信など、認知を広げる経路を複数持つことが有効です。近年は、会社や地域の様子をオンラインで紹介する「バーチャル会社見学」「地域案内動画」も好評です。遠方に住む人ほど現地の情報が不足しているため、雰囲気が伝わる素材を用意しておくだけで、応募への心理的ハードルは大きく下がります。
- ステップ2:仕事の魅力と地域の暮らしやすさを一体で伝えるUIJターン採用では、仕事内容や給与だけでなく、その地域で暮らす魅力を合わせて伝えることが欠かせません。医療・教育の体制、通勤時間、家賃や物価の水準、自然との距離感——生活全体の像を言葉にすることで、応募者は入社後の日常を具体的にイメージできるようになります。自治体の移住支援金や住宅補助制度が使える場合は、求人票の段階で明記しておきましょう。金銭面の不安を先に解消できるかどうかが、応募の有無を左右します。
- ステップ3:入社したいと思わせる情報設計に見直す「自社に合う人はどんな人か」を明確にすることが、情報設計の起点になります。年齢層やスキルに加えて、志向性——地域に貢献したい、家族との時間を大切にしたい、裁量のある仕事がしたい——まで描き切ると、届けるべきメッセージが定まります。求人票を「条件を並べる書類」から「入社後の未来を想像させるツール」へと作り替えることが、地方採用における最大の差別化になります。
応募者の不安に応える:活用できる公的支援制度
UIJターン希望者にとって、移住に伴う初期費用は現実的な障壁です。国と自治体が用意している支援制度を求人情報に組み込むことで、この障壁を下げられます。
- 移住支援金:東京圏から地方へ移住し、対象求人への就業などの要件を満たす場合に支給される制度。世帯で最大100万円、単身で最大60万円が目安で、18歳未満の子ども1人につき最大100万円の加算が設けられています(金額・要件は自治体により異なります)
- 自治体独自の住宅支援:家賃補助、空き家バンク、住宅取得助成など。地域によって内容の幅が大きいため、自社の所在自治体の制度を必ず確認しておきます
- 就業支援・研修助成:移住者の受け入れに関する助成を設けている自治体もあり、企業側が活用できるケースがあります
支援金の対象になるには、自治体のマッチングサイトに掲載された求人であることなど、条件が定められている場合があります。制度の対象求人として登録しておけば、それ自体が応募動機になり得ます。詳細は所在地の自治体窓口へご確認ください。
採用力を補う外部視点と、これからの追い風
外部の支援を味方につける
すべてを自社だけで完結させる必要はありません。UIJターン層を得意とする人材紹介会社、自治体の移住相談窓口、地域の企業団体との連携——外部の力を借りることで、募集の土台づくりにかかる負担を大きく減らせます。
とくに人材紹介会社を使う場合は、求める人物像と自社の魅力を、担当者にどれだけ具体的に共有できるかが成果を左右します。「地域に根ざして長く働きたい人」といった抽象的な伝え方ではなく、実際に活躍している社員の経歴やエピソードまで共有しておくと、マッチングの精度が上がります。
時代の変化を採用戦略に取り込む
テレワークの普及、地方移住への関心の高まり、若年層の働き方重視の流れ——これらはいずれも地方企業にとっての追い風です。
重要なのは、この変化を「待つ」のではなく採用設計に組み込むことです。たとえば週数日の在宅勤務を認めるだけで、応募可能な人材の範囲は大きく広がります。フルリモートでの試用期間を設ける、まず副業や業務委託から関係を始めるといった段階的な入り口も、移住の決断を後押しする有効な手段になります。
- 自社の求人が、移住検討者の目に触れる場所に置かれているか
- 求人票に「地域での暮らし」に関する情報が含まれているか
- 移住支援金など、使える制度を応募者に案内できる状態か
- オンラインで会社の雰囲気が伝わる素材(動画・写真・社員インタビュー)があるか
- 応募から内定までの期間が、遠方在住者でも無理なく進められる設計になっているか
地方採用の最初の壁は「選ばれること」ではなく「見つけてもらうこと」。都市部と同じ手法では成果が出にくい
東京圏の20〜50代のおよそ5割が地方暮らしに関心を持ち、Uターン該当層では61.7%に達する(内閣官房調査)
成功の鍵は、仕事の条件と「その土地で暮らす未来」を一体で伝えること
移住支援金は世帯最大100万円・子ども1人につき最大100万円加算が目安。求人票に明記して不安を先に解消する
テレワークや段階的な関わり方を用意することで、移住の決断のハードルを下げられる
よくある質問
UIJターン採用は、どの職種でも有効ですか?
専門性が高くリモート勤務と相性のよい職種(企画・開発・バックオフィスなど)は特に成果が出やすい傾向があります。一方、現場勤務が前提の職種でも、地域の暮らしやすさや住宅支援を丁寧に伝えることで応募につながるケースは多くあります。
都市部と比べて給与水準が低いことが不安です。どう伝えればよいですか?
額面だけでなく、家賃・駐車場代・通勤時間を含めた「可処分所得と可処分時間」で比較できる情報を示すのが有効です。同じ年収でも、住居費の差で手元に残る金額が変わることは少なくありません。数字で示せる範囲を整理しておきましょう。
移住支援金は企業側が申請するのですか?
原則として移住者本人が自治体に申請します。ただし、支援金の対象となる求人として自治体のマッチングサイトに掲載しておく必要がある場合が多いため、企業側の事前登録が前提になります。要件は自治体ごとに異なるため、所在地の窓口にご確認ください。
遠方の応募者との選考は、どう進めるのが一般的ですか?
一次〜二次面接はオンライン、最終面接で来社してもらう形が一般的です。来社時に職場見学や地域の案内を組み合わせると、入社後のイメージが具体化し、内定承諾率が上がりやすくなります。交通費の扱いは事前に明示しておきましょう。
採用してもすぐに戻ってしまわないか心配です。
移住を伴う採用では、入社後の生活立ち上げ支援が定着率を左右します。住まい探しの手伝い、地域コミュニティへの橋渡し、入社後3か月の定期面談——こうしたフォローを設計に組み込むことで、早期離職のリスクは大きく下がります。
求人票の作り替え、採用サイトの情報設計、認知を広げるための発信施策まで、地方企業の採用を一貫して支援しています。「何から始めればよいか分からない」段階でのご相談も歓迎です。