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採用課題とは何か?
採用活動に潜む「課題」の定義とは
採用課題とは、企業が採用活動を行う中で成果が得られない、または効率が低下している状態に生じる問題や障害を指します。たとえば、「応募が集まらない」「選考が長引く」「内定辞退が多い」など、採用プロセスのどの段階にも課題は存在します。重要なのは、こうした課題が一時的な現象ではなく、構造的・継続的に発生している点を見極め、原因を明確化することです。
課題が多様化・複雑化する背景要因
課題が多様化・複雑化する背景要因 採用課題が複雑化する背景には、以下の2点が見落とされがちです。
1点目は、採用課題が採用活動の全工程に及ぶという点です。 例えば、内定辞退や早期離職は入社後に表面化しますが、その原因は募集時の情報設計や面接段階の魅力づけ不足にさかのぼることがよくあります。採用活動はすべての段階が連動しているため、課題も連鎖的に発生しやすく、単一の対応では解決できません。
2点目は、採用活動が外部環境の影響を大きく受けるという点です。 経済状況や採用市場の変化により、求職者の行動や志向性が変化する中で、従来通りの採用手法では通用しなくなる場面が増えています。この変化に柔軟に対応できないと、採用課題はさらに深刻化します。
採用環境を左右するトレンドと市場変化の影響
求人手法の変化と売り手市場の加速
2024年現在、労働市場は依然として売り手市場が続いており、企業が人材を確保することが難しい状況です。従来の「求人広告を出して応募を待つ」というマス採用型では母集団形成が困難になり、今ではダイレクトリクルーティングやリファラル採用といった“攻めの採用”へとシフトが進んでいます。
採用手法の多様化とオンライン活用の現在地
新型コロナウイルス以降、オンライン面接やWeb説明会が一気に普及し、採用手法は多様化しました。現在は対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型の採用活動が一般化しており、より柔軟で効率的な運用が求められています。企業の採用力は、こうした変化に対応できる体制の有無によって大きく左右されます。
新卒・中途それぞれに見る変化の兆し
新卒採用では、採用活動の早期化とともに、就業体験型インターンシップが注目されています。2025年卒からは新しいインターン制度が導入され、実質的に選考への活用が可能になります。一方、中途採用では専門スキルをもつ即戦力人材のニーズが高まっており、給与や働き方の柔軟性が重要なアピールポイントになっています。
採用フロー別に見る代表的な課題とその発生要因
募集段階:母集団形成の課題と向き合う
最も多くの企業が直面するのが「応募が集まらない」という課題です。これは求人票の内容、掲載媒体の選定ミス、競合他社との待遇差など複数の要因が絡み合っています。特に訴求力のある情報(例:働き方やキャリア支援)を打ち出せていない企業では、ターゲット層へのリーチが難航します。
選考段階:辞退や不一致をどう防ぐか
書類通過率が低い、一次面接辞退が多い、内定後の辞退率が高いといった問題は、採用ターゲットとのミスマッチや選考プロセスの長さ・不透明さが原因であるケースが多く見られます。企業文化の共有や面接での情報提供の質も選考離脱に直結するため、見直しが必要です。
入社後:定着・戦力化の壁とその打ち手
採用のゴールは内定ではなく、入社後に活躍してもらうことです。早期離職が発生する背景には、入社前後のギャップ、オンボーディングの不備、マネジメント層との相性などが挙げられます。配属前の研修制度やフォロー面談、キャリア面談などを設けることで、定着と戦力化を支援する体制づくりが求められます。
求人手法の変化と売り手市場の加速
2024年現在、労働市場は依然として売り手市場が続いており、企業が人材を確保することが難しい状況です。求人広告を出して応募を待つ従来のマス型採用では母集団形成が困難になっており、企業は自らが採用ターゲットに直接アプローチする、“攻めの採用”にシフトしています。
近年注目されている個別採用の手法には以下のようなものがあります。
- ダイレクトリクルーティング:企業が求める人材に直接スカウトを送る
- リファラル採用:自社の社員や関係者から人材を紹介してもらう
- アルムナイ採用:かつての退職者を再雇用する仕組み
こうしたアプローチはターゲット人材に直接リーチできるため、特に専門人材や経験者採用で有効です。
また、コロナ禍を経てオンライン面接や説明会が定着した一方で、最近では対面への回帰も見られ、オンラインとオフラインを併用したハイブリッド型採用が主流になりつつあります。
さらに、新卒採用では「早期接触」の重要性が高まっており、2025年卒から導入される新しいインターンシップの定義では、一定の条件を満たせば取得した学生情報を選考活動に活用することも可能になります。
中途採用においても、特にITや専門スキルを持つ人材の需要は増加傾向にあり、今後はスキルの高度化に見合った処遇制度や柔軟な勤務環境の整備が不可欠となります。
採用フロー別に見る代表的な課題とその発生要因募集段階:母集団形成の課題と向き合う
課題① 応募が集まらない
求人広告を出しても応募が来ない、あるいは形成したい母集団に必要な人数を確保できない状態です。原因としては、求人広告の訴求力不足や企業認知度の低さ、求める人材要件の設定が厳しすぎることなどが挙げられます。
課題② 応募が多すぎる
応募者が多すぎて対応が追いつかないケースです。リソース不足や要件が広すぎることで母集団の質がばらつき、結果として選考効率が落ちる原因になります。
課題③ 求める人材からの応募がない
応募は来ているが、自社が求める人物像から外れている場合です。採用ターゲットの定義が曖昧だったり、採用媒体や方法が適していなかったりすることが原因です。
中途採用では特に、採用部署が求めるスキルや人物像を正確に把握し、それを求人広告やスカウト文面などに的確に反映させることが不可欠です。 そうしなければ、ターゲット外の応募者対応に時間とコストを取られ、結果的に採用効率が下がってしまいます。
さらに、中途採用は新卒採用と比べて採用期間が短い傾向にあり、短期間で最適な人材にアプローチする必要があります。そのため、訴求力の高い求人設計や、精度の高いスカウト運用など、効率的にターゲット層へ届ける仕組みづくりが重要です。
選考段階:辞退や不一致をどう防ぐか
課題①:選考中の辞退者が多い
選考に進んでも、途中で辞退する応募者が多く、母集団の質と量が確保できない問題です。
背景には、選考期間の長期化や連絡の遅れなどがあり、応募者が他社に流れてしまう要因になります。
また、魅力づけが不十分で、「条件面に大差がなくても印象の良い企業を選ばれる」といったケースも見られます。
中途採用では特に、選考スピードと応募者へのフォロー体制が重要です。
課題②:面接の不合格者が多い
書類選考を通過したにも関わらず、面接で不合格になる応募者が多く、歩留まりが低下する課題です。
この背景には、人事と現場、役員間で採用ターゲットの認識がずれていることが挙げられます。
基準のバラつきにより、意図せず不合格者を増やしてしまうケースが多く見られます。
評価ポイントや人物像を事前に共有し、面接官の足並みを揃えることで、スムーズな選考につながります。
入社後:定着・戦力化の壁とその打ち手
課題① 内定辞退が多い 内定を出しても承諾に至らないケースです。内定後のフォロー不足、面接内容と求人情報とのギャップが主な要因です。
課題② 入社後の定着率が低い 早期離職が多く、採用の成果が持続しない問題です。事前の情報と入社後の実態とのギャップ、現場との相性が悪いことなどが影響しています。
課題③ 配属先での活躍が見られない スキルがあるはずの人材がパフォーマンスを発揮できない状況です。主に企業文化との相性や配属ミスマッチが要因で、フォロー体制の構築が求められます。
入社後:定着・戦力化の壁とその打ち手
課題①:内定辞退が多い
内定を出しても承諾に至らず、採用が成立しないケースです。
主な原因は、内定後のフォロー不足や連絡対応の遅れです。
さらに、選考中に伝えた内容と求人広告の記載にギャップがあると、信頼を損ない辞退の引き金になります。
面接段階で十分な魅力づけを行い、内定後も定期的な接点を持つことで、辞退率の低下につながります。
課題②:入社後の定着率が低い
採用後すぐに離職してしまう、いわゆる早期離職の問題です。
背景には、入社前のイメージと現実のギャップがあります。
「聞いていた職場環境と違った」「仕事の進め方が想像と異なる」といったミスマッチが原因となります。
採用段階からありのままの職場の雰囲気や課題も開示し、リアルな情報を届けることで、定着率の改善が見込めます。
課題③:配属先での活躍が見られない
期待していたスキルや経験が現場で活かされず、成果につながらないケースです。
中途採用に多く見られ、原因は企業風土との不一致や配属部署との相性の悪さにあります。
配属時には、入社者のスキル・意向だけでなく、社風やチームとの親和性も加味することが重要です。
また、人事と配属部署が連携し、入社後の受け入れ準備や業務サポート体制をしっかり整えることで、社員が早く職場に馴染み、スムーズに活躍できるようになります。
採用課題を可視化するためのフレームワークと考え方
歩留まり率の算出で課題の発生地点を特定する
採用活動における課題の発生地点を把握するには、「歩留まり率」の算出が有効です。 歩留まり率とは、各採用ステップにおいて次のステップへ進んだ候補者の割合をパーセンテージで示したものです。 歩留まり率が高ければ、候補者がスムーズに通過している状態であり、採用活動の効率が良好であることを意味します。一方で、想定よりも歩留まり率が低い場合、その段階で多くの候補者が離脱していることを示しており、具体的な改善ポイントの発見につながります。 各工程ごとの通過率を見える化することで、母集団形成・選考・面接・内定・入社といったプロセスのどこにボトルネックがあるかを可視化し、優先して改善すべき領域を明確にできます。
ロジックツリーを活用した課題分析と解決策の導出
自社の採用課題をより深く分析し、解決策を導き出すためには「ロジックツリー」の活用が効果的です。ロジックツリーとは、1つのトピックから課題や原因を分岐的に整理する思考のフレームワークで、主に以下の3つの目的に活用されます。
① 課題の全体像を把握する 例:「当社の採用課題」をテーマにし、採用フローに沿って問題点を枝分かれで整理します。
② 課題の原因を掘り下げる 例:「内定辞退の原因は?」と設定し、「通知の遅れ」「コミュニケーション不足」などを深掘りしていきます。
③ 解決策を洗い出す 例:「候補者対応をスピードアップするには?」
というテーマで、思いつく限りの手法やツールをブレスト的に展開します。ロジックツリーは、課題が複雑に絡み合っている場合でも全体を構造的に整理できるため、会議や現場との認識共有にも役立ちます。特に、採用課題が属人化しているケースや、明確な優先順位がつけにくい状況において有効です。
加えて、「課題の全体像」「原因の深掘り」「解決策のブレーンストーミング」という3段階の整理を通じて、現象と本質を切り分けながら、実行性の高い打ち手まで落とし込むことが可能になります。採用フロー別に枝分かれで書き出すことで、改善ポイントをチーム全体で共有しやすくなるのも大きなメリットです。
採用課題を解決するための9つのアプローチ
① 採用ターゲットを明確にする
採用活動の起点として、まず「誰を採用したいのか」を明確にしましょう。求める人物像をペルソナとして言語化し、人事部門・現場・経営層で共通認識を持つことが、ミスマッチや歩留まり悪化の予防につながります。スキルや経験だけでなく、価値観や志向性まで具体的に設定するのがポイントです。
(h3) ② ターゲットに向けて自社の魅力を発信する
ターゲット像が明確になったら、その人物に刺さる情報を選び、求人媒体やSNS、自社サイトなどを通じて魅力を届けましょう。訴求ポイントは自社の「全部」ではなく「ターゲットが響く」ものに絞るのが効果的です。採用ターゲットと年齢の近い社員の声を活用するのも共感を得やすい手法として有効です。
③ 最適な採用手法・チャネルを選ぶ
採用ターゲットによって有効な採用手法を使い分けましょう。たとえば、校スキルの人材が欲しい場合にはダイレクトリクルーティングや人材紹介、スカウト活用が有効です。オンライン面接やSNS採用など、コストを抑えスピードを重視したい場合に有用です。
④ 求職者視点で採用体験を設計する(採用CX)
数ある候補のなかから自社を選んでもらうには、採用プロセスにおいて求職者によい体験を提供し、企業のファンになってもらうことが重要です。この取り組みは「採用CX(Candidate Experience)」と呼ばれ、近年注目されています。
たとえば、募集要項を見た候補者が「業務内容に興味はあるけれど、要件のレベルが高すぎる」「ノウハウも実績も必要なら、あきらめよう」と感じてしまうような場合には、採用CXの改善が必要です。
一方で、採用CXがうまく機能している場合には、「研修やサポート体制が充実しており、未経験者にも開かれている」「学びながらチャレンジしてみたい」「業界は違うけれど、前職の経験が活かせそうだ」など、ポジティブな感情や行動を引き出すことができます。
採用CXを高めるには、以下のポイントを意識しましょう:
- 採用ターゲットを明確にしたうえで、候補者のニーズをリサーチする
- 候補者のニーズに応えるコンテンツや表現を工夫する
- 合否に関わらず、企業の魅力をポジティブに印象づける
この企業に関わりたいと思うファン層の形成は、長期的に見て採用ミスマッチの予防や定着率の向上にもつながります。
⑤ 選考スピードと対応品質を改善する
他社と比較される採用競争の中では、スピードが命です。連絡の遅延や書類対応の手間は、離脱を招く主因です。あらかじめスケジュールを明示し、進捗の見える化やこまめな連絡で安心感を与えることが重要です。
⑥ 面接官の意識とスキルを向上させる
面接官は選考者であると同時に「会社の顔」です。魅力づけの役割を持つことを理解したうえで、評価基準の擦り合わせやトレーニングを実施することが、面接の品質と歩留まり向上につながります。
⑦ 内定者・入社者フォローを強化する
内定承諾後〜入社までの期間は、離脱や不安が起きやすい時期です。定期連絡や交流機会の提供により、安心感と帰属意識を高めましょう。中途採用では特に「転職してよかった」と感じられる環境づくりが重要です。
⑧ 外部パートナー(RPO)を活用する
採用業務が属人化・煩雑化している場合は、採用代行(RPO)の活用も検討に値します。工数削減に加え、採用戦略や歩留まり改善のプロによる支援を受けることで、採用の質を高めることができます。
⑨ 採用力そのものを強化する
一時的な改善だけでなく、仕組みとしての採用力を底上げすることも重要です。RPOのノウハウを吸収し、社内で運用を自立化させていくことで、中長期的に競争力ある採用活動が可能になります。
まとめ:自社の採用課題を的確に見極め、継続的な改善を
採用課題とは、採用活動全体の成果や効率を妨げる要因のことであり、経済状況や業界動向、採用市況の変化など、外部環境の影響も大きく受けやすいのが特徴です。
そのため、常に自社と求職者を取り巻く状況を踏まえ、どの段階にどんな課題が潜んでいるのかを可視化し、的確に対処することが不可欠です。
本記事では、採用活動の各段階でよく見られる課題とその背景、解決に向けた9つのアプローチを紹介しました。また、課題を発見・分析・整理するためのフレームワークとして、歩留まり率の算出やロジックツリーの活用についても解説しています。
採用課題の解決は、一度きりの取り組みではなく、継続的な見直しと改善が求められます。今一度、自社の採用活動を多角的に振り返り、強みと弱みを把握することから始めてみてはいかがでしょうか。