介護職員の早期離職を防ぐ入職後1か月のフォローは、「入社前の案内」「1〜3日目の研修」「1週目の固定指導者と毎日5分の面談」「2週目の介助・記録の確認」「30日目の三者面談」の順に、誰が何をするかを先に決めておくのが基本です。
入職1か月以内の離職は、多くの場合、採用時に聞いていた内容と実際の仕事との差から生まれます。人手不足を理由に初日から通常の戦力としてシフトに入れてしまうと、研修が途切れ、新人は「誰が教えてくれるのか分からない」状態になります。
この記事では、介護事業所の採用を支援するヨビコム介護が事業所にお願いしている進め方をもとに、入職後1か月の手順を日ごとに整理します。少人数の職場での相談体制の作り方は、関連コラム:早期離職を防ぐ入職後フォロー|少人数の介護職場の体制づくりで扱っています。
入職直後の離職は、介護でも起きている
厚生労働省が公表した資料では、有料職業紹介を通じて無期雇用で就職した人のうち、就職後6か月以内に離職した人の割合は、介護で19.9%でした(令和5年度実績。厚生労働省「全国及びブロック別 職種別離職率」)。同じ資料の看護は12.9%、保育は14.5%です。
この数値は職業紹介経由の就職に限ったものですが、入職から半年以内の定着が介護の採用で大きな課題になっていることがうかがえます。採用にかけた費用と時間を生かすためにも、最初の1か月の過ごし方を事業所の側で設計しておく必要があります。
入職1か月以内に辞める理由
ヨビコム介護の支援担当が、入職1か月以内の離職の理由として多いと見ているのは次のようなものです。
- 想像より、介助・記録・夜勤の負担が重い
- 誰が教えてくれるのかが分からない
- 勤務の希望が、面接で聞いていた内容と違う
- 同僚の接し方が合わない
共通しているのは、採用時の期待と実際の仕事との差です。逆にいえば、採用の段階と入職後1か月の間で情報をそろえることで、防げる離職があります。
入職後1か月のフォロー手順(日別)
ヨビコム介護では、次の流れを基本形として事業所に提案しています。サービスの種類や配置に合わせて調整してください。
| 時期 | やる |
担当の |
|---|---|---|
| 入社前 | 初日の案内(集合時間・場所)、持ち物、制服、資格の確認、入職後30日の予定を共有 | 管理者・採用担当 |
| 1〜3日目 | 施設・事業所の案内、安全・感染対策・個人情報の研修 | 管理者・研修担当 |
| 1週目 | 固定の指導者を決め、毎日5分の振り返り面談 | 固定指導者 |
| 2週目 | 介助と記録の手順を確認(チェック表で習得状況を記録) | 固定指導者 |
| 3〜4週目 | 習得した業務から段階的に担当。未習得の業務を洗い出す | 固定指導者・管理者 |
| 30日目 | 本人・指導者・管理者の三者面談(負担、勤務条件、相談先、業務の習熟) | 管理者 |
ポイント1:初日から通常の戦力として数えない
支援の中でよく見かける失敗が、人員不足を理由に初日から通常のシフトに入れてしまうことです。研修が分断され、新人は基本を教わらないまま現場に立つことになります。受け入れる人数や配置を見直してでも、最初の数日は研修として確保してください。
ポイント2:「教育完了」を日数で決めない
独り立ちの時期を「2週間」「1か月」と日数で決めると、習得が追いついていない新人に負担がかかります。業務ごとにチェック項目を作り、できるようになった業務から任せます。とくに夜勤や、訪問介護で一人で利用者宅を訪れる業務は、技能を確認してから任せるようにしましょう。
ポイント3:1週目は毎日5分の振り返り
1週目は、固定の指導者がその日の終わりに5分だけ「今日教わったこと」「分からなかったこと」「困ったこと」を聞きます。短い時間でも毎日続けることで、新人は「聞いてもらえる」と感じ、小さな不安が大きくなる前に拾えます。
ポイント4:指導者を一人に固定し、負担も見ておく
1か月の間は、教える人をできるだけ一人に固定します。教える人が日によって変わると、やり方の違いに新人が戸惑い、「誰の言うとおりにすればよいか」が分からなくなるためです。指導者が休みの日は、誰が代わりに見るかもあらかじめ決めておきます。
あわせて、指導者自身の業務量にも気を配ってください。通常の業務に指導が上乗せされるだけでは、指導者の負担が増え、新人への接し方にも余裕がなくなります。指導の時間を勤務の中に確保しておくことが、結果として新人の定着を支えます。
30日目の面談で聞くこと
30日目は、本人・指導者・管理者の三者で面談します。確認したい項目は次のとおりです。
- 仕事の負担:介助・記録・夜勤などで、想像と違った点はあるか
- 勤務条件:シフトや休憩は、面接で聞いた内容どおりか
- 相談先:困ったときに誰に相談すればよいか分かっているか
- 業務の習熟:できるようになった業務、まだ不安な業務はどれか
- 求人との違い:求人原稿や面接の説明と違うと感じた点はあるか
面談で出た課題には、対応する人と期限を決めます。面談をしても改善の担当者が決まらず放置されると、新人は次から本音を話さなくなります。支援担当は、初期育成の責任者・期限・チェック項目を一枚で管理することをすすめています。
同じ介護労働実態調査で、事業所が「職場定着に効果があった」とした方策の最上位は「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」で、行っている事業所の57.9%が効果ありと答えています(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント、図表2-3-1)。30日面談で勤務条件の希望を聞き、調整できる点は早めに反映することも、定着につながります。
30日面談シート(例)
- 想像と違った業務とその理由を聞いた
- シフト・休憩が説明どおりか確認した
- 相談先(指導者・管理者以外も含む)を本人が把握している
- 習得済みの業務と未習得の業務をチェック表で確認した
- 求人原稿・面接の説明との違いを聞いた
- 出た課題ごとに、対応する人と期限を決めた
- 次回の面談日(90日目など)を決めた
採用の段階で、期待のずれを減らす
入職後1か月のつまずきは、採用の段階で減らせます。支援担当が事業所にすすめているのは次のような工夫です。
- 求人原稿に、大変な業務や負担の大きい業務も書く
- 面接で、送迎・夜勤・入浴介助の有無と、必要な資格をお互いに確認する
- 面接官と現場の職員の説明をそろえる
- 職場見学や、職員と話せる場を設ける
- 内定前に「入職後30日の予定」を共有する
また、求人票と雇用条件通知書の内容(給与、勤務地、配置、変更の可能性)を一致させることも欠かせません。2024年4月からは、労働条件を明示する際に「就業場所の変更の範囲」と「従事すべき業務の変更の範囲」も示すことが必要になっています(厚生労働省 2024年4月施行 改正職業安定法施行規則リーフレット)。法人内に複数の事業所がある場合は、異動の可能性も含めて説明しておきましょう。
求人原稿を直す意味は、応募を増やすことだけではありません。入職前に正しく伝えることで、入職後の「聞いていた話と違う」を減らせます。
取り組みの効果を確かめる
入職後1か月のフォローを整えたら、効果を数字で確かめます。支援担当がすすめる方法は次のとおりです。
- 導入前と導入後で、入職90日時点の定着の状況を比べる
- 早期に離職した人の理由を、本人の負担にならない範囲で記録し、個人が特定されない形で集計する
- 採用原稿と実際の仕事の違いとして挙がった点を一覧にし、原稿を直す
「改善した」と判断するのは、こうした測定をしたあとにしましょう。
よくある質問
新人が独り立ちするのは何日目が目安ですか?
日数ではなく、業務ごとの習得状況で判断します。チェック表で一つずつ確認し、できるようになった業務から任せてください。夜勤や一人での訪問は、技能の確認を終えてからにします。
人手不足で、新人に同行する時間が取れません。
受け入れる人数や配置を見直してでも、最初の期間の同行は確保することをおすすめします。安全を優先することが、結果として早期離職を防ぎ、再び採用にかかる手間を減らします。
辞めそうな新人を事前に見分けられますか?
完全に予測することはできません。7日目・30日目の面談での発言や、欠勤の変化などを、早めに支援するためのきっかけとして使ってください。
入職後の定着まで見据えた採用を
入職後1か月のフォローは、求人原稿・面接・内定後の案内とつながってはじめて機能します。ヨビコム介護では、応募対応から入職後の定着まで、介護事業所の採用を一連で支援しています。
貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。
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