少人数の介護職場で早期離職を防ぐには、新人の相談先を「業務を教わる先輩」と「勤務条件や人間関係を相談できる別の管理者」の2つに分け、入職7日・30日・90日に面談する体制を先に決めておくことが効果的です。
少人数の職場では、教える人が日によって変わる、人間関係が閉じやすい、早く一人前として扱われる、といったことが起きやすくなります。どれも、個人の頑張りではなく体制で防げるものです。
この記事では、介護事業所の採用を支援するヨビコム介護の現場の知見をもとに、少人数の職場でもできる入職後フォローの体制づくりを整理します。入職後1か月の日ごとの進め方は、関連コラム:介護職員の早期離職を防ぐ入職後1か月のフォロー|日別の手順で扱っています。
介護事業所の多くは「少人数の職場」
公益財団法人介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」では、事業所で介護サービスに従事している従業員数は「10〜19人」が33.1%で最も多く、「4人以下」10.2%、「5〜9人」17.5%と合わせると、19人以下の事業所が約6割(60.8%)を占めます(令和7年度介護労働実態調査 事業所調査 報告書、図表6-1-1)。
つまり、少人数の職場での定着は、一部の事業所だけの課題ではありません。同じ調査では、訪問介護員と介護職員の離職率は全体で12.4%ですが、29歳以下では17.3%と、ほかの年齢層より高くなっています(同調査 結果のポイント)。若い職員や業界未経験の職員を迎える事業所ほど、入職直後の支えが重要になります。
少人数の職場で入職後すぐ辞める理由
ヨビコム介護の支援担当が、少人数の職場での早期離職の理由として挙げるのは次のようなものです。
- 人間関係が閉じていて、新人が輪に入りにくい
- 教える人が日によって変わり、やり方の違いに戸惑う
- 人手が少ないため、一人前として早く扱われる
- 誰に相談すればよいか、何ができれば評価されるのかが分からない
- 面接で聞いていた勤務と、実際の勤務が違う
- 夜勤や休憩の負担が想像より大きい
調査の数値も、同じ方向を示しています。直前の介護の仕事を辞めた理由で最も多いのは「職場の人間関係に問題があったため」で27.3%です(n=6,163、複数回答)。その具体的な内容は、「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」45.8%、「仕事の進め方に関する上司や同僚との意思疎通がうまくいかなかった」38.0%、「上司の業務指示が不明確、リーダーシップがなかった」37.4%、「職場内の仲間はずれや、疎外感・孤独感を感じた」16.5%と続きます(同調査 結果のポイント、図表3-2-1・3-2-2)。
指導の仕方、指示の明確さ、意思疎通。いずれも、少人数の職場ほど一人の言動の影響が大きくなる部分です。
体制づくりの基本は「相談先を2つ」用意すること
少人数の職場では、新人の相談先が直属の管理者一人に集中しがちです。その管理者と合わなかったり、忙しくて声をかけにくかったりすると、新人は相談先を失います。
ヨビコム介護では、次の2つの相談先を最初に決めておく「二重メンター」の体制をおすすめしています。
| 役割 | 担当する |
決め方の |
|---|---|---|
| 業務の相談役(先輩1名) | 日々の介助や記録の手順、分からない点の確認 | 新人と勤務が重なりやすい職員。教え方を統一できる人 |
| 勤務・人間関係の相談役(別の管理者1名) | シフト、休憩、体力面、人間関係、求人との違い | 直属の上司以外。法人内の別事業所の管理者でもよい |
1つの事業所に管理者が一人しかいない場合は、法人内の別事業所の管理者や本部の担当者を「勤務・人間関係の相談役」にする方法があります。
調査でも、勤務先で「悩み、不満、不安などを上司以外に相談できる担当者・相談窓口の設置」が行われていると答えた労働者は35.8%で、そのうち43.5%が「働き続けることに役立っている」と回答しています(n=20,675、同調査 結果のポイント、図表2-5-1)。
運用のルール
二重メンターは、決めただけでは機能しません。支援の現場では、次の3つを基本の運用にしてもらっています。
- 週
1回10分の :業務の相談役が、その週に教わったことと困ったことを聞く確認 - 習得項目の
チェックリスト :何を、いつまでに、誰が教えるかを一枚にまとめ、教える人が変わっても同じ内容を引き継げるようにする - 勤務表の
早期共 :翌月の勤務表を早めに渡し、生活の見通しを立てやすくする有
相談内容の秘密を守ること、相談役が合わない場合は変更できることも、あらかじめ新人に伝えておきます。
7日・30日・90日の面談で確認すること
3か月目の面談だけでは、入職直後の不安を見逃してしまいます。ヨビコム介護では、入職7日・30日・90日の3回の面談を設定するよう事業所にお願いしています。
| 時期 | 主に |
|---|---|
| 7日 | 職場に慣れたか、困っていることはないか、相談役が分かっているか |
| 30日 | 教わったこと/まだ習っていない業務、夜勤や送迎などの不安、人間関係、体力・休憩、求人で聞いた内容との違い |
| 90日 | 一人でできるようになった業務、資格取得の希望、希望するシフト、相談のしやすさ、今後のキャリアのイメージ |
30日の面談では、各項目を5段階で聞き、自由記述も添えてもらうと、変化を追いやすくなります。面談の担当は、直属の上司以外も選べるようにしておくと、本音が出やすくなります。
大切なのは、面談で出た課題に「誰が、いつまでに対応するか」を決めることです。面談をしても改善担当が決まらず放置されると、新人は「言っても変わらない」と感じ、次から話さなくなります。
採用の段階でできること
入職後のつまずきの多くは、採用の段階での期待のずれから始まります。支援担当が事業所に提案しているのは次のような工夫です。
- 職場見学で、一緒に働くメンバーを紹介する
- 面接に、直属の上司と実際に一緒に働く先輩が同席する
- 1日のうち忙しい時間帯や、大変な点も説明する
- 候補者が質問できる時間をしっかり取る
- 「アットホームな職場」のようなあいまいな表現ではなく、役割分担、休憩の取り方、フィードバックの頻度で職場を説明する
- 面接で約束した入職後の面談を、入社1か月目に必ず実施する
調査では、勤続1年未満の介護労働者が今の法人に就職した理由として「職場の人間関係がよさそうだったため」を挙げた人が41.7%いました(同調査 結果のポイント、図表2-4-1)。人間関係を期待して入職する人が多いからこそ、選考時の説明と入職後の実態をそろえることが欠かせません。
よくある失敗
支援の中で見かける失敗には、次のようなものがあります。
- 選考時に「みんな仲が良い」と説明したが、指導者が固定されず新人が孤立した
- 3か月目の面談だけを予定していて、初週の不安を見逃した
- 「相談すると評価が下がる」と感じた新人が、何も言わずに辞めた
対策は、7日・30日・90日の面談、相談内容の秘密保持、そして職場ごとの定着の指標を持つことです。
定着の状況を数字で見る
少人数の職場では、一人の離職が大きく響きます。感覚ではなく、次のような数字で状況を見ておくと、打ち手を判断しやすくなります。
- 入職30日・90日の時点で在籍している人数
- 7日・30日・90日の面談の実施率
- 面談で出た課題と、その対応状況
- 退職した人の理由(本人の負担にならない範囲で、個人が特定されない形で集計)
求職者から「辞める人は多いですか」と聞かれたときも、入職後3か月・6か月の定着の状況を正確に説明できると、信頼につながります。
少人数の職場の入職後フォロー チェックリスト
- 業務の相談役(先輩1名)を入職前に決めた
- 勤務・人間関係の相談役(直属以外の管理者1名)を決めた
- 習得項目のチェックリストを用意した
- 7日・30日・90日の面談日を入職前に予定に入れた
- 面談で出た課題の対応担当と期限を決めるルールがある
- 相談内容の秘密保持と、相談役を変更できることを伝えた
- 翌月の勤務表を早めに共有している
- 入職30日・90日の在籍状況を記録している
よくある質問
小さな職場は人間関係が不安、と求職者に言われたらどう答えますか?
それぞれの役割、困ったときの相談先、職場見学の機会を具体的に示すのがおすすめです。「仲が良い」と伝えるより、相談役が2人いることや、面談の時期を伝えるほうが安心につながります。
新人は何日で独り立ちさせればよいですか?
日数で一律に決めず、業務ごとの習得チェックで判断します。とくに夜勤や一人で対応する業務は、技能を確認してから任せるようにしましょう。
先輩と新人の相性が合わない場合は?
相談役を変更できる仕組みと、直属の上司以外の相談窓口を用意しておきます。変更できることを最初に伝えておくと、新人が言い出しやすくなります。
管理者が1人しかいない事業所でもできますか?
できます。法人内の別事業所の管理者や本部の担当者に、勤務・人間関係の相談役をお願いする方法があります。法人が1事業所のみの場合は、管理者以外の経験の長い職員に役割を分けることも検討してください。
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早期離職は、入職後のフォローだけでなく、求人原稿や面接での説明とのずれからも起きます。ヨビコム介護では、求人原稿から応募対応、入職後の定着まで、介護事業所の採用をつなげて支援しています。
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