業務改善助成金とは|2026年(令和8年度)の50円・70円・90円コース別の助成上限額と申請期限

公開 2026.09.16 更新 2026.09.16 読了 約21分
業務改善助成金とは|2026年(令和8年度)の50円・70円・90円コース別の助成上限額と申請期限

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最低賃金が上がる。パートの時給を上げなければならない。その原資をどこから出すか——毎年この時期、多くの中小企業が同じ問題に直面します。

業務改善助成金は、この「賃上げの原資」の問題に、設備投資の費用を助成するという形で対応する制度です。事業場でいちばん低い時給を一定額以上引き上げ、あわせて生産性向上につながる設備やシステムを入れると、その設備投資にかかった費用の一部が助成されます。

令和8年度(2026年度)は50円・70円・90円の3コースで、助成上限額は最大600万円です。ただしこの制度は、申請できる期間が都道府県ごとに違い、しかも非常に短いという特徴があります。多くの県では、地域別最低賃金の発効日の前日が申請の締切です。

この記事では、コース区分と助成上限額の関係、対象になる設備投資、そして「気づいたときには期限を過ぎていた」を避けるためのスケジュールの見方を、厚生労働省の交付要綱・申請マニュアルにもとづいて整理します。

この記事でわかること
  • 令和8年度の3コース(50円/70円/90円)と、労働者数ごとの助成上限額
  • 助成率が4/5になる事業場と3/4になる事業場の違い
  • 自社が「対象事業場」に当たるかの判定方法
  • 対象になる設備投資等と、はっきり対象外とされている経費
  • 都道府県ごとに異なる申請期限と、事業完了期限
  • 不支給・不交付になりやすいパターン
  • 省力化投資補助金・デジタル化AI導入補助金との違いと、重複の扱い
本記事の情報について

2026年9月時点で厚生労働省が公表している令和8年度の交付要綱・交付要領・申請マニュアル・Q&A(令和8年9月8日作成)にもとづいて記載しています。要件・金額・期限は改定されることがあるため、申請前に必ず厚生労働省「業務改善助成金」で最新の要綱・要領をご確認ください。

業務改善助成金とは

業務改善助成金は、最低賃金の引上げに向けた環境整備を図ることを目的とした助成金です。正式には「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金」といい、厚生労働省労働基準局賃金課が所管しています。

仕組みはシンプルで、次の2つをセットで実施することが条件になります。

  • 事業場内最低賃金を、コースごとに決まった額以上(50円/70円/90円)引き上げる
  • 生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等を行い、その費用を支出する

ここでいう「事業場内最低賃金」とは、その事業場で最も低い時間当たりの賃金額のことです。地域別最低賃金(国が毎年10月以降に改定する都道府県単位の最低賃金)とは別のもので、自社の中でいちばん時給が低い人の額、と考えてください。

この制度の性格をひとことで言えば、「賃上げをする会社の設備投資を国が肩代わりする」という設計です。人件費そのものが助成されるわけではありません。助成されるのは、あくまで設備投資等にかかった費用です。

申請の単位は「会社」ではなく「事業場」

申請は労働者がいる事業所ごとに行います。同じ会社でも、工場Aと事務所Bがあれば別々の申請です。事業場内最低賃金も事業場ごとに見ますので、本社は対象外だが工場は対象になる、という判定もありえます。

なお、同一事業場の申請は年度内1回までです。また、過去年度に業務改善助成金を使った事業者も、あらためて申請できます。

令和8年度(2026年度)はここが変わった

令和8年度の業務改善助成金は、50円コース・70円コース・90円コースの3区分です。厚生労働省の案内では、令和7年度からの主な変更点として次の3点が挙げられています。

変更点内容実務への影響
自動車の特例が廃止助成対象経費の特例となっていた自動車(特種用途自動車を除く)は、助成対象外になりました営業車・運搬車などの購入を前提にした計画は成り立ちません
対象労働者が雇用保険被保険者に限定引き上げる対象労働者は、雇用保険被保険者が対象になりました雇用保険に入っていない短時間労働者は、引上げ人数に算入できません
物価高騰等要件の判定期間が変更利益率の比較が「最近3か月間のうち任意の1月」から「最近6か月間平均」になりました都合のよい1か月を選ぶことができなくなり、要件のハードルが上がりました

3点目は地味に見えますが、影響は小さくありません。物価高騰等要件は、後述する特例事業者の判定に使われ、該当するとパソコン等の新規導入まで助成対象が広がります。「任意の1か月」から「6か月平均」に変わったことで、一時的に利益率が落ちた月をつかまえて要件を満たす、という組み立てはできなくなりました。

なお、交付要綱の規定は令和8年4月22日から適用されています。令和8年3月31日までに申請されたものは、従前の例によります。

対象になる事業場の条件

この制度でいちばん誤解が多いのが、対象事業場の条件です。「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が◯円以内」という形ではなく、令和8年度は次のように定められています。

区分要件
事業者の要件中小企業・小規模事業者であること(大企業と密接な関係を有する「みなし大企業」でないこと)
解雇、賃金引下げなどの不交付事由がないこと
事業場の要件事業場内最低賃金が、令和7年度の地域別最低賃金以上、令和8年度の地域別最低賃金未満であること
労働者を使用している事業場であること(事業場ごとに申請)
引き上げる労働者雇入れ後6か月を経過した労働者であること
申請書の提出日時点で雇用保険被保険者であること(週所定労働時間20時間以上)

この「令和7年度の地域別最低賃金以上、令和8年度の地域別最低賃金未満」という帯が、実務上の判定基準です。かみ砕くと、いまは去年の最低賃金を守れているが、今年の改定額にはまだ届いていない事業場が対象になります。

厚生労働省のQ&Aでも、この点は明確に書かれています。申請時点で事業場内最低賃金が改定後の地域別最低賃金以上になっている場合は、申請できません。逆に、申請時点でその時点の地域別最低賃金(=令和7年度額)を下回っている場合も、助成対象になりません。

つまりこの助成金は、「今年の最低賃金改定に対応して賃上げをする、その場面」に限定して用意されている制度です。すでに高い時給を払っている会社は使えませんし、法令違反状態の会社も使えません。

中小企業事業者の定義

業種①資本金の額又は出資の総額②常時使用する企業全体の労働者数
一般産業(下記以外)3億円以下の法人300人以下
卸売業1億円以下の法人100人以下
サービス業5,000万円以下の法人100人以下
小売業5,000万円以下の法人50人以下

①と②はいずれかを満たせば足ります。医療法人・社会福祉法人・NPO法人など資本金や出資の総額がない場合は、②の労働者数で判断します。

助成上限額は「引上げ額×引き上げる労働者数」で決まる

この制度の助成上限額は、いくら上げるか(コース区分)何人上げるか(引き上げる労働者数)の掛け合わせで決まります。さらに、事業場規模が30人未満かどうかで一部の区分の上限額が変わります。

業務改善助成金の助成上限額マトリクス(引上げ額×引き上げる労働者数) 助成上限額は「引上げ額」×「引き上げる労働者数」で決まる 上段=事業場規模30人以上の事業者/下段の橙字=事業場規模30人未満の事業者 引き上げる労働者数 ↓ コース区分 1人 2〜3人 4〜5人 6〜7人 8人以上 10人以上 ※ 50円コース 引上げ額 50円以上 70円コース 引上げ額 70円以上 90円コース 引上げ額 90円以上 30万円 30人未満 40万円 40万円 30人未満 70万円 70万円 90万円 110万円 130万円 40万円 30人未満 50万円 50万円 30人未満 100万円 130万円 180万円 230万円 300万円 90万円 30人未満 100万円 150万円 30人未満 240万円 270万円 360万円 450万円 600万円 ※「10人以上」の区分は、特例事業者が10人以上の労働者の賃金を引き上げる場合にのみ適用されます。 実際の助成額は「設備投資等の費用 × 助成率(4/5 または 3/4)」と上記の上限額を比べ、低いほうの額になります。
令和8年度 業務改善助成金の助成上限額マトリクス(2026年9月時点の交付要綱別表第1・第2にもとづく)

同じ内容を表でも確認できるようにしておきます。

コース区分引き上げる労働者数助成上限額(事業場規模30人以上)助成上限額(事業場規模30人未満)
50円コース
(50円以上引上げ)
1人30万円40万円
2〜3人40万円70万円
4〜5人70万円70万円
6〜7人90万円90万円
8人以上110万円110万円
10人以上 ※130万円130万円
70円コース
(70円以上引上げ)
1人40万円50万円
2〜3人50万円100万円
4〜5人130万円130万円
6〜7人180万円180万円
8人以上230万円230万円
10人以上 ※300万円300万円
90円コース
(90円以上引上げ)
1人90万円100万円
2〜3人150万円240万円
4〜5人270万円270万円
6〜7人360万円360万円
8人以上450万円450万円
10人以上 ※600万円600万円

この表から読み取ってほしいのは、上限額が上がる「段差」がどこにあるかです。

たとえば90円コースの場合、2〜3人で150万円、4〜5人で270万円。1人増えるだけで上限が120万円動きます。50円コースと90円コースを比べても、4〜5人で70万円と270万円ですから、差は4倍近くあります。

一方で、30人未満の事業場では少人数の区分だけが優遇されている点にも注目してください。90円コースの2〜3人は、30人以上なら150万円、30人未満なら240万円。小さな事業場で数人の時給を大きく上げるケースが、いちばん割のよい設計になっています。

なお、「10人以上」の区分は特例事業者に該当する場合にしか使えません。10人の賃金を引き上げても、特例事業者でなければ「8人以上」の区分(90円コースなら450万円)が適用されます。

助成率は事業場内最低賃金で2段階

引上げ前の事業場内最低賃金助成率自己負担の割合
1,050円未満4/51/5(20%)
1,050円以上3/41/4(25%)

助成額の計算は、「設備投資等にかかった費用 × 助成率」と「助成上限額」を比べ、低いほうの額になります。1,000円未満の端数は切り捨てです。

厚生労働省の案内に載っている計算例で確認します。事業場内最低賃金が1,040円(助成率4/5)の事業場が、8人の労働者を1,130円まで引き上げ(90円コース、上限450万円)、設備投資に600万円をかけた場合。600万円×4/5=480万円ですが、上限額450万円のほうが低いため、支給されるのは450万円です。

この計算構造から、実務上の勘所が2つ出てきます。ひとつは、助成率が4/5でも3/4でも、上限に張り付く規模の投資では助成額が変わらないこと。もうひとつは、上限額にちょうど届く投資額を先に逆算しておくと、設備の選定判断が早くなることです。上限450万円・助成率4/5なら、562.5万円の投資でちょうど上限に達します。

特例事業者に当たると何が変わるか

特例事業者には2つの入口があり、どちらに当たるかで受けられる特例が変わります。

要件内容受けられる特例
①賃金要件申請事業場の事業場内最低賃金が1,050円未満である事業者引上げ労働者数「10人以上」の助成上限額区分を適用できる(50円コース130万円/70円コース300万円/90円コース600万円)
②物価高騰等要件原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等の外的要因により、最近6か月間平均の売上高総利益率または売上高営業利益率が、前年同期と比べて3%ポイント以上低下している事業者上記の上限額特例に加えて、助成対象経費の拡充(パソコン・タブレット・スマートフォン等の端末および周辺機器の新規購入が対象になる)

ここでの「%ポイント」は、パーセントで表された2つの数値の差を指します。利益率が10%から7%に下がった場合が「3%ポイントの低下」です。「3%の低下」(10%→9.7%)ではないので、読み間違えないでください。

また、外的要因という点も要件です。厚生労働省は人件費や役員報酬の変更は外的要因に含まれないと明記しています。自社の判断で人件費を増やした結果として利益率が落ちた、という説明では要件を満たしません。

②に該当する場合のパソコン等の拡充は、新規購入に限られます。既存のパソコンやタブレットの入れ替えは対象になりません。この点はQ&Aで明確に否定されています。

特例事業者でなくてもパソコンが対象になる場合

原則として、パソコン・タブレット・スマートフォンおよびその周辺機器は助成対象外です。ただし交付要領には、POSシステム、会計給与システム等、特定業務専用のシステムを稼働させるための目的で導入することが明らかである場合は助成対象とする場合がある、という定めがあります。

Q&Aでも、業務用高機能プリンターの稼働に必要なスペックのパソコンで、事務作業用の汎用パソコンでは対応できない場合に限り対象になりうる、とされています。「そのシステムを動かすために、その仕様でなければならない」ことを説明できるかどうかが分かれ目です。

「引き上げる労働者数」の数え方

助成上限額を左右するのがこの人数ですが、数え方に独特のルールがあります。

  • 事業場内最低賃金である労働者は算入できる
  • その人の賃金を引き上げた結果、賃金額が追い抜かれる労働者も、申請コースと同額以上引き上げた場合は算入できる
  • 追い抜かれる立場にあっても、申請コースの額以上引き上げていなければ算入できない
  • もともと引上げ後の事業場内最低賃金以上を得ている労働者は、いくら引き上げても算入できない
  • 雇入れ後6か月を経過し、申請書提出日時点で雇用保険被保険者であることが必要

重要なのは、「全ての労働者の賃金を、新しい事業場内最低賃金以上まで引き上げる必要がある」という点です。引上げ人数に算入できるかどうかとは別に、新しい下限を下回る人が1人でも残っていると、そもそも要件を満たしません。

厚生労働省の例で確認します。事業場内最低賃金1,050円の事業場が70円コースを申請する場合、全労働者の賃金を1,120円以上に引き上げる必要があります。そのうえで、実際に70円以上引き上がった人だけが引上げ人数にカウントされます。この例では2名がカウントされ、上限額は50万円(事業場規模30人未満なら100万円)という結論になります。

この構造上、「上限額を上げたいから人数を増やす」という発想は、そのまま人件費の増加に直結します。引上げ人数を1人増やすには、その人の時給を申請コースの額だけ本当に上げなければなりません。上限額の段差と、増える人件費の年額を並べて比較する作業が必要です。

対象になる設備投資等

助成対象となるのは、「生産性の向上、労働能率の増進に資する」と認められる設備投資等で、交付要綱別表第3に区分される経費です。

経費区分内容注意点
機械装置等購入費機器・設備類の購入、製作又は改良の費用特種用途自動車以外の自動車、パソコン(タブレット・スマートフォン・周辺機器を含む)は除く
造作費機械装置据付等の費用助成対象となる機器・設備類に必要な設置費用に限る
経営コンサルティング経費外部専門家やコンサルタント会社による経営コンサルティング費用人員削減、労働条件の引下げを内容とするものは除く。実施者は中小企業診断士・社会保険労務士・1級/2級ファイナンシャル・プランニング技能士等の国家資格を有し、常態としてコンサルティングを業とする者、または金融機関の経営相談に限る
委託費調査会社、システム開発会社等への委託費用就業規則の作成・改正および賃金制度の整備は除く
借損料器具機械借料及び損料、物品借料及び損料等の費用会場借料を除く。リース・ローン・ライセンス・保守契約は当該年度の支出分に限り、上限は契約時から3年分
原材料費資材購入の費用自社施工の場合、原材料費のみを事業費とするものは対象になりうる
謝金外部講師による従業員向けの研修、導入機器の操作研修等に対する謝金1回当たり10万円まで、回数は5回まで
旅費専門家旅費外国旅費・日当・宿泊費を除く。グリーン車、ビジネスクラス等の割増運賃は対象外
印刷製本費機械装置等にかかる研修資料、マニュアル等の作成費用

厚生労働省が挙げている具体例は次のとおりです。

  • POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
  • リフト付き特種車両の導入による送迎時間の短縮
  • 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
  • 国家資格者による経営コンサルティング(顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し)

ここで注目したいのは、「機械」だけでなく「システム」と「コンサルティング」、そして「研修の講師謝金」まで対象に入っていることです。省力化投資補助金のように大型の機械設備を前提にした制度ではないため、受発注・在庫・顧客管理のシステム化や、業務フローの見直しといったソフト面の投資が正面から対象になります。

助成対象経費の下限は10万円

助成対象経費の下限は10万円(税抜)です。税込104,500円(税率10%)は税抜95,000円なので対象になりません。

ただし、1つの価格が10万円未満でも、他の設備投資等と合わせた合計が10万円以上になれば対象になります。また、相互に関連のない複数の設備投資であっても、それぞれが生産性向上に資するのであれば、合計額で申請できます。

ホームページは「受注機能があるか」で分かれる

Q&Aでは、ホームページの作成・改修について「受発注および決済の両方が可能となるもの」「受注機能を付加する作成・改修」は助成対象とされています。一方、ランディングページの作成やマーケティングツールの活用は、広告宣伝費・販売促進費として対象外です。

「集客のためのサイト」は対象外、「業務の受け口になるサイト」は対象。この線引きは、EC構築や受発注のオンライン化を検討している会社にとって実務的に効いてきます。

対象にならない経費

交付要領には、対象から除く経費が具体例つきで列挙されています。ここは申請前に必ず突き合わせてください。

対象外の区分具体例
単なる経費削減を目的とした経費LED電球への交換、通信費削減のためのプラン変更、資料作成の外注 など
職場環境の改善経費(不快感の軽減や動線確保等による快適化が目的のもの)動線確保に伴うレイアウト変更、エアコン設置、執務室の拡大、内装工事等の改築費用、机・椅子の増設、空調服 など
通常の事業活動に伴う経費事務所借料、光熱費、従業員賃金、交際費、消耗品費、通信費、掃除機などの清掃用品、汎用事務機器購入費 など
広告宣伝費・販売促進費パンフレット・動画・写真等の作成および媒体掲載、デジタルサイネージ、展示会出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、ランディングページの作成、マーケティングツール活用 など
建築物構築に関する経費工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス、室内の作業スペース等)の取得費用、組み立て用部材の取得費用
再生エネルギーに係る費用太陽光発電のソーラーパネルなど、発電設備および一体不可分の附属設備
移動に要する費用船舶、航空機等の購入費・修理費・車検費用。特種用途自動車以外の自動車
娯楽性・遊行性が高い設備全自動麻雀機、カラオケ機器、ゲーム機 など
法令等で義務づけられたものの整備費法令上必須の設備整備、事業実施に必須となる資格の取得費用
交付決定前に発生した費用いかなる理由であっても事前着手(発注を含む)は認められません
その他日本国外で実施する事業/生産性向上・労働能率の増進が認められないと労働局長が判断したもの/経費の算出が適正でないと判断したもの/振込手数料

実務でつまずきやすいのは、上から3つです。「エアコンを入れて働きやすくする」「LEDに替えて電気代を下げる」は、どちらもこの助成金の対象になりません。快適化と経費削減は、この制度がいう「生産性向上・労働能率の増進」とは別のものとして整理されています。

もうひとつ見落とされやすいのが「法令等で義務づけられたものの整備に係る経費」です。法令対応として入れざるを得ない設備は、そもそも事業者の裁量による生産性向上投資とは扱われません。

「生産性向上に資する」をどう説明するか

審査で問われるのは、結局この一点です。Q&Aでは「生産性向上には、例えば事業場の売上の増加や収益の改善も含まれます」と説明されており、必ずしも作業時間の短縮だけが認められるわけではありません。

ただし、書き方には明確な作法があります。厚生労働省が示す具体例が、すべて「◯◯の導入による△△の短縮」という形になっていることに注目してください。「POSレジシステム導入による在庫管理の短縮」「リフト付き特種車両の導入による送迎時間の短縮」。設備の名前だけでは計画になりません。設備と、短縮・改善される業務が対で書かれていて初めて計画になります。

  • 対象にする業務を1つに絞る(「全社の効率化」では説明になりません)
  • その業務に、誰が、月に何時間かけているかを実測する
  • 導入後に何時間・何%になるのかを、設備の仕様から見積もる
  • 浮いた時間を何に振り向けるのかを決める(別業務への配置、受注量の拡大など)
  • 売上増や収益改善で説明する場合は、その因果を数字でつなぐ

とくに注意が必要なのが設備の更新です。Q&Aでは、老朽化・破損を機に既存の機器より高い能力を有する上級機器を導入し、生産性向上が認められれば対象になるとされています。一方、同等性能の機器を導入することは、生産性の向上が認められないため対象になりません。更新で申請する場合は、既存機との性能差を具体的な数値と客観的な根拠資料で示す必要があります。

申請期限と事業完了期限

この制度でもっとも事故が多いのが、期限です。申請期限が都道府県ごとに違います。

区分期間・期限
申請期間令和8年9月1日〜、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日まで
賃金引上げ期間交付申請後(申請書が労働局に到達した後)〜、申請事業場に適用される地域別最低賃金の発効日の前日まで
事業完了期限交付決定の属する年度の1月31日(やむを得ない理由があり、申請時に理由書を添えて労働局が認めた場合は3月31日まで)
事業完了日の定義①導入機器等の納品日、②助成対象経費の支払完了日、③賃金引上げ日(就業規則等の改正日)のいずれか遅い日

令和8年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円(改定前1,121円、引上げ額56円)。発効日は都道府県によって令和8年10月1日から12月2日まで幅があります。

都道府県(例)令和8年度の地域別最低賃金発効日(予定)申請期限(発効日の前日と11月30日の早いほう)
東京1,280円(改定前1,226円)令和8年10月1日令和8年9月30日
大阪1,231円(改定前1,177円)令和8年10月1日令和8年9月30日
愛知1,195円(改定前1,140円)令和8年10月1日令和8年9月30日
京都1,180円(改定前1,122円)令和8年11月16日令和8年11月15日
佐賀1,095円(改定前1,030円)令和8年11月15日令和8年11月14日
沖縄1,086円(改定前1,023円)令和8年12月2日令和8年11月30日

発効日が10月1日の都道府県では、申請期限は9月30日です。2026年9月時点でこの記事を読んでいる方にとって、残り時間はほとんどありません。発効日は答申公示後の異議申出の状況等により変更される可能性があるため、必ず厚生労働省のページでご自身の都道府県の発効日を確認してください。

加えて、予算の範囲内で交付するため、申請期間内であっても募集を終了する場合があります。期限まで待つ理由はひとつもありません。

賃金引上げのタイミングが最大の落とし穴

賃金引上げは、交付申請後から地域別最低賃金の改定日の前日までに実施しなければなりません。申請前に引き上げてしまうと対象外、改定日以降に引き上げても対象外です。

Q&Aの例で確認します。交付申請日が9月10日の場合、賃金引上げ日が10月1日(賃金締切10月末日、支払11月15日)なら要件を満たします。しかし賃金引上げ日が9月1日だと、交付申請より前に引き上げたことになり、対象になりません。

さらに厄介なのが就業規則の適用日です。この制度では、就業規則等の改正および適用がなされたことをもって賃金引上げが実施されたこととなると定められています。そのため、賃金引上げ日が10月1日でも、改正就業規則の適用日が9月1日(=申請日より前)になっていると、助成対象になりません。

また、引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を、就業規則等に記載する必要があります。労働者10人未満の事業場で「就業規則に準ずるもの」を提出する場合は、引上げ後の事業場内最低賃金と賃金引上げ日、作成者(事業場名)、作成年月日等を記載した書面を作成し、労働者代表の意見書を添付したうえで労働者に周知します。一般的な労働契約書や労働条件通知書は「就業規則に準ずるもの」には当たりません。

そして、複数回に分けての引上げは認められません。10月1日に1,050円→1,060円、11月1日に1,060円→1,100円と二段階で上げても、合算して50円コースとすることはできません。

交付申請から入金までの流れ

  1. 賃金引上計画と業務改善計画を立てるどのコースで、何人を、いつ引き上げるか。どの設備投資を、いくらで行うか。この2つをセットで設計します。
  2. 見積書を2者以上から取る助成対象経費の見積書は、原則として二者以上必要です(契約予定額10万円未満の場合を除く)。相見積が取れない場合は、その理由と「なぜこの機器でなければならないのか」を示す申立書の提出を求められることがあります。
  3. 交付申請書(様式第1号)を労働局に提出する事業場を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ。郵送(簡易書留等)・来庁・Jグランツによる電子申請から選べます。郵送は消印ではなく到達日で判定されます。
  4. 交付決定を待つここが最重要です。交付決定前に設備の発注・契約・納品を行うと、助成の対象になりません。いかなる理由でも事前着手は認められません。
  5. 賃金を引き上げる(就業規則等を改正する)交付申請後から地域別最低賃金の発効日の前日までに実施します。交付決定を待たずに進める点が、設備投資と逆になるので注意してください。
  6. 設備投資等を実施し、支払いを完了する交付決定後に発注・納品・支払いを行います。支払いは原則として振込払いです。
  7. 事業実績報告書(様式第9号)と支給申請書(様式第10号)を提出する賃金引上げの状況と業務改善計画の実施結果を報告します。
  8. 交付額の確定と助成金の支払い報告内容が適正と認められれば、交付額が確定し、助成金が振り込まれます。概算払いはできません。
  9. 状況報告書(様式第8号)を提出する賃金引上げ後6か月経過時点で提出し、解雇や賃金引下げがなかったかを確認されます。

計画の内容を変更する場合は、軽微な変更を除き、変更後の事業に着手する前に計画変更申請書(様式第3号)で承認を受ける必要があります。総事業費が予定より高くなる場合は軽微な変更とは言えず、承認後に納品・支払いを行う必要があります。承認を受けずに変更したことが実績報告時に判明すると、交付額の確定ができません。

必要になる書類

段階書類注意点
交付申請時交付申請書(様式第1号)賃金引上計画と業務改善計画を記載。指定様式以外は受付不可
別紙1 国庫補助金所要額調書/別紙2 事業実施計画書国庫補助所要額は1,000円未満切り捨て
助成対象経費の見積書の写し契約予定額10万円未満の場合を除き二者以上。見積先の業者が他業者の見積書を用意することは認められません
申請前6か月分の賃金台帳の写し労働基準法施行規則第54条の法定項目(氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外等の時間数・賃金の種類ごとの金額・控除額)を満たす、現に使用しているもの。審査で不備を指摘された後の差替えは認められません
(特例事業者・物価高騰等要件の場合)事業活動の状況に関する申出書月次損益計算書、試算表等の証する書類を添付
事業実績報告時事業実績報告書(様式第9号)/支給申請書(様式第10号)
賃金引上げを証する書面賃金引上げ日から実績報告書提出日の前日までの、賃金を引き上げた労働者の賃金台帳の写し
事業場内最低賃金規程を含む就業規則等の写し引上げ後の事業場内最低賃金額と同額が記載されていることが必要
導入した設備投資等の内容を証する書類納品書の写し、導入物の写真 など
経費の支出を証する書類請求書の写し、領収書の写し、費用の振込記録が客観的に分かる預金通帳等の写し
支給後状況報告書(様式第8号)賃金引上げ後6か月経過時点。解雇等・賃金引下げがないかの確認に使われます

支払いの証憑については、細かい不備が交付額確定を妨げます。次のケースは交付額の確定ができません。

  • 申請事業主とは異なる者が費用を支出した(法人申請なら法人が、個人申請なら個人本人が支出している必要があります)
  • クレジットカード・小切手・約束手形等での支払いで、事業完了期限までに口座から全額が引き落とされていない
  • 信販会社・ファイナンス会社のローン契約を利用し、事業完了期限までに返済代金全額の支払いが完結していない(分割払中は所有権が信販会社等にあるため)
  • ネットバンキングの振込手続依頼を証明する資料のみで、支払元口座名義人が確認できない

なお、振込手数料は助成対象外で、これを相手方が負担した場合は値引きがあったものとして扱われ、助成金支給額が交付決定額より減額されることがあります。

不支給・不交付になりやすいパターン

  • 交付決定前に設備を発注・契約・納品してしまった:もっとも多い失敗です。いかなる理由でも事前着手は認められません。納期の都合で先に押さえたくなりますが、交付決定通知を待ってください。
  • 申請より前に賃上げを実施してしまった:賃金引上げは交付申請後から地域別最低賃金の発効日の前日までです。「10月から上げるつもりで9月に就業規則を改正した」も対象外になります。
  • 改正就業規則の適用日が申請日より前になっていた:賃金引上げ日が適正でも、就業規則の適用日が申請日より前だと対象外です。
  • 就業規則等に引上げ後の額を定めていなかった:引上げ後の事業場内最低賃金額と同額を、就業規則等に記載する必要があります。10人未満の事業場は「準ずるもの」を作成し、労働者代表の意見書を添えて周知します。
  • 賃上げを2回に分けた:二段階の引上げを合算することはできません。
  • 引き上げた賃金を維持できなかった:過去に業務改善助成金の交付を受けた事業場で、助成事業完了日以後の労働者の賃金額が、その助成事業で定めた事業場内最低賃金額を下回った場合は不交付事由に当たります。一度上げた下限は戻せません。
  • 期間内に解雇や賃金引下げがあった:申請書提出日の前日から起算して6か月前の日から、実績報告手続日の前日または賃上げから6か月経過日のいずれか遅い日までの間に、解雇(天災事変や労働者の責に帰すべき事由による場合を除く)、退職勧奨、時間当たり賃金額の引下げ、所定労働時間の短縮による月額賃金の引下げがあると不交付です。対象は引上げ労働者だけでなく、その事業場の全労働者です。
  • 労働保険に未加入、または労働保険料を滞納している:労働者を1人でも雇っている場合、労働保険への加入・納入が必須です。
  • 労働基準監督署の是正勧告を受けていた:申請書提出日の前日から起算して1年前の日から一定期間内に是正勧告を受けている場合、申請できません。
  • 同一の経費・賃金引上げについて他の補助金等を受けている:国または地方公共団体からの補助金等、公益財団法人等からの同一対象への助成がある場合は不交付です。
  • 相見積が取れていなかった:原則二者以上です。見積先の業者が他業者の見積書を用意する形は認められません。
  • 賃金台帳が法定項目を満たしていなかった:返戻の原因になります。審査で不備を指摘された後に「記載が誤っていた」と主張しても差替えは認められません。
  • 書類不備で返戻され、再提出の前に期限が過ぎた:締切直前は申請が集中し、確認・返戻に時間がかかります。返戻されると申請期限が徒過して再提出できなくなるおそれがあります。

最後の項目は、厚生労働省の申請マニュアルがわざわざ紙幅を割いて警告している点です。必要書類が1点でも欠けていると、申請は受理されず、申請書類一式が返戻されます。郵送・来庁・Jグランツのいずれであっても、また賃金引上げ日や申請期限に余裕があるかどうかにかかわらず、同じ扱いです。

省力化投資補助金・デジタル化AI導入補助金との違い

設備投資を支援する制度は複数ありますが、業務改善助成金は出発点が違います。

比較軸業務改善助成金中小企業省力化投資補助金デジタル化・AI導入補助金
所管厚生労働省経済産業省/中小機構経済産業省/中小企業庁
制度の出発点最低賃金の引上げ人手不足の解消ITツールの導入・デジタル化
必須の取組事業場内最低賃金を50円/70円/90円以上引き上げること省力化設備の導入と労働生産性の向上登録ITツールの導入
助成率・補助率4/5または3/4類型により1/2〜2/3枠により1/2〜3/4
上限額最大600万円類型により最大1億円枠により異なる
審査の形要件を満たせば交付(採択率という概念ではない)公募回ごとの審査・採択公募回ごとの審査・採択
申請単位事業場ごと事業者ごと事業者ごと
申請期限都道府県ごとに異なる(最低賃金の発効日の前日等)公募回ごとの締切公募回ごとの締切

実務的にいちばん大きな違いは、業務改善助成金には「採択率」という概念がないことです。要件を満たし、書類が整い、予算が残っていれば交付されます。そのかわり、要件の一つひとつが厳密で、タイミングを外すと機械的に対象外になります。「通るかどうか」より「外さないかどうか」の制度だと考えてください。

重複はできない

交付要綱では、同一の助成対象経費や賃金引上げを対象として、国または地方公共団体から補助金等の交付その他これに類する助成等を受けている場合は不交付とされています。公益財団法人等からの助成も同様です。

ただし、助成対象が同一の設備投資等の費用でなければ、他の助成金等を併せて受けることはできます。複数の制度を検討する場合は、経費をどう切り分けるかを先に整理しておいてください。

もうひとつ、賃上げ側でも重複の制限があります。業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者を、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできません。非正規雇用労働者の処遇改善を両方の制度で進めたい場合は、対象者の切り分けが必要になります。

賃上げの原資を、生産性で作る

ここまで要件を細かく見てきましたが、制度の設計思想はきわめて一貫しています。賃上げと設備投資をセットにすることで、「上げた賃金を払い続けられる状態」を同時に作らせるということです。

この点は、不交付要件を見ると明確です。過去に業務改善助成金を受けた事業場で、助成事業完了日以後の賃金が、その助成事業で定めた事業場内最低賃金を下回った場合は不交付。つまり国は、一度上げた賃金が維持されるかどうかを、次の申請のときに見ています。

だとすると、設備投資の中身の選び方も変わってきます。助成金の上限に合わせて何かを買う、という順序ではありません。上げた時給を来年も再来年も払い続けるために、どの業務を減らす必要があるのか——ここから逆算するのが本筋です。

実務では、次のような順序で整理すると計画が書きやすくなります。

  • 引き上げる人数と引上げ額から、年間で増える人件費の総額を先に計算する(時給+70円×年間総労働時間×人数)
  • その金額に見合う工数削減・売上増が、どの業務から出せるかを洗い出す
  • 洗い出した業務のうち、設備やシステムで置き換えられるものを選ぶ
  • 選んだ投資額を助成率で割り戻し、助成上限額と突き合わせる
  • 残った自己負担額と、削減できる工数の年額を並べて判断する

この計算をすると、助成金の有無にかかわらず投資すべきだったものと、助成金があるから成立するものが分かれます。前者から着手するほうが、制度が終わったあとも残る成果になります。

よくある質問

令和8年度のコースは、なぜ50円からなのですか。30円コースはないのでしょうか。

令和8年度の業務改善助成金は、50円コース・70円コース・90円コースの3区分です。30円コースは設定されていません。令和8年度の地域別最低賃金は全国加重平均で56円の引上げ(1,121円→1,177円)となっており、最低賃金の改定に対応するための引上げ額そのものが50円を超える水準にあることが背景にあると考えられます。最新のコース区分は必ず交付要綱でご確認ください。

すでに時給を高めに払っています。申請できますか。

申請時点で、事業場でいちばん時給が低い労働者(雇用保険被保険者)の賃金が改定後の地域別最低賃金以上になっている場合は、申請できません。対象になるのは、事業場内最低賃金が「令和7年度の地域別最低賃金以上、令和8年度の地域別最低賃金未満」の帯にある事業場です。同じ会社でも事業場ごとに判定しますので、本社と工場で結論が分かれることがあります。

パソコンやタブレットは助成対象になりますか。

原則として対象外です。ただし2つの例外があります。ひとつは、特例事業者のうち物価高騰等要件(最近6か月間平均の利益率が前年同期比で3%ポイント以上低下)に該当する場合で、このときはパソコン・タブレット・スマートフォン等の新規購入が対象になります。ただし既存機器の入れ替えは対象外です。もうひとつは、POSシステムや会計給与システムなど特定業務専用のシステムを稼働させる目的であることが明らかな場合で、この場合は対象になることがあります。

申請の締切はいつですか。

令和8年9月1日から、申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日、または令和8年11月30日のいずれか早い日までです。発効日が令和8年10月1日の都道府県(東京・大阪・愛知など)では、申請期限は9月30日になります。郵送の場合は消印ではなく労働局への到達日で判定され、電子申請(Jグランツ)は申請期間末日までに申請完了が必要です。加えて、予算の範囲内で交付するため、申請期間内でも募集が終了する場合があります。

設備の発注と賃上げは、どちらを先にすればよいですか。

順序が逆になるので注意が必要です。賃金の引上げは交付申請後(申請書が労働局に到達した後)から地域別最低賃金の発効日の前日までに行います。一方、設備投資は交付決定後でなければなりません。交付決定前の発注・契約・納品は、いかなる理由でも助成対象になりません。「申請 → 賃上げ(就業規則改正) → 交付決定 → 設備の発注・納品・支払い」という流れになります。

助成金はいつ入金されますか。前払いはありますか。

概算払いはできません。設備投資等の費用は、いったん全額を自社で支払う必要があります。事業完了後に事業実績報告書と支給申請書を提出し、労働局の審査を経て交付額が確定してから振り込まれます。支払いは原則として振込払いで、クレジットカードやローンを利用する場合は、事業完了期限(原則として交付決定の属する年度の1月31日)までに口座から全額が引き落とされている必要があります。

引き上げた賃金は、あとで下げられますか。

実質的にできません。まず、申請書提出日の前日から起算して6か月前の日から、実績報告手続日の前日または賃上げから6か月経過日のいずれか遅い日までの間に賃金を引き下げると、不交付事由に当たります。さらに、過去に業務改善助成金の交付を受けた事業場で、助成事業完了日以後の賃金額がその助成事業で定めた事業場内最低賃金額を下回った場合も不交付事由です。就業規則等に引上げ後の額を定める仕組みになっているため、事実上その額が事業場の下限として固定されます。

省力化投資補助金やキャリアアップ助成金と併用できますか。

同一の助成対象経費について、国または地方公共団体から補助金等を受けている場合は不交付になります。公益財団法人等からの助成も同じ扱いです。助成対象が別の設備投資等であれば併用できますが、補助目的が重複する場合は併給調整の対象になることがあります。また、業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者を、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者としてカウントすることはできません。

申請を代行してもらうことはできますか。

厚生労働省の申請マニュアルでは、申請者に代わって申請できるのは代行者(社会保険労務士)と代理人(弁護士)に限られると定められています。交付申請書等の作成は社会保険労務士法第2条に規定された業務に該当するため、社会保険労務士が提出代行・事務代理を行うことができます。それ以外の方からの、申請の具体的な内容等についての問い合わせには労働局は回答できない扱いになっています。

まとめ

この記事の要点

業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円・70円・90円のいずれか以上引き上げ、あわせて生産性向上に資する設備投資等を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。令和8年度の助成上限額は最大600万円、助成率は事業場内最低賃金1,050円未満で4/5、1,050円以上で3/4です。

対象になるのは、事業場内最低賃金が「令和7年度の地域別最低賃金以上、令和8年度の地域別最低賃金未満」の事業場に限られます。すでに改定後の額を上回っている事業場は使えません。

最大の注意点は期限です。申請期限は都道府県ごとに異なり、地域別最低賃金の発効日の前日または令和8年11月30日のいずれか早い日まで。発効日が10月1日の都道府県では9月30日が締切です。さらに、書類に不備があると受理されずに返戻され、そのまま期限を過ぎてしまうおそれがあります。

順序も独特です。賃金引上げは交付申請後、設備投資は交付決定後。この2つを取り違えると、要件を満たしていても対象外になります。就業規則等の適用日が申請日より前になっていないかも、必ず確認してください。

そして、この制度は一度上げた賃金を維持できているかを、次の申請のときに見ています。助成上限額に合わせて設備を選ぶのではなく、上げた時給を払い続けるためにどの業務を減らすのか、から逆算してください。

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株式会社Digital&では、業務プロセスの可視化から、業務システムの導入・EC構築・生成AI活用による省力化の設計と実行までを支援しています。「時給を上げたあと、その分をどこで取り戻すのか」——同じ人数で回る仕組みをどう作るかを、投資対象を決める前の段階から一緒に整理できます。
なお、補助金・助成金の申請書類の作成や提出の代行は行っておりません。手続きそのものについては、社会保険労務士など各分野の専門家にご相談ください。

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