訪問看護の求人で「オンコールあり」とだけ書くと、看護師は「毎晩呼ばれるのでは」と最悪の働き方を想像します。オンコール(営業時間外に利用者や家族からの電話を受け、必要に応じて訪問する待機当番)について求人に書くべきなのは、当番の回数、電話対応と実際の出動の回数、その集計期間と幅、待機と出動それぞれの手当、当番明けの勤務の扱いです。
オンコールの実態はステーションごとに大きく違います。だからこそ、自分のステーションの実績を数字で示すことが、合う看護師に選ばれる近道です。この記事では、ヨビコム介護の支援担当への取材をもとに、求人に書く数値のひな型と、誤解を生みやすい表現をまとめます。介護施設の看護師のオンコールは事情が異なるため、ここでは訪問看護に絞ります。
看護師がオンコールについて気にしていること
取材によると、訪問看護のオンコールについて、求職者が気にしているのは次の点です。
- 当番が月に何回あるか
- 電話で答えるだけか、訪問(出動)まであるか
- 直近の実際の出動回数
- 深夜に出動する先と、移動の安全
- 当番明けのシフトはどうなるか
- 判断に迷ったとき、複数の人に相談できるか
- 手当が「待機」と「実際の出動」で分かれているか
「オンコールあり」だけでは、働き方も拘束の度合いも分かりません。上のどれに答えていないかを点検するだけでも、求人の改善点が見えてきます。
求人に書く数値のひな型
取材で共有されたひな型は次のとおりです。○は事業所の実績・規程を確認してから入れます。
当番:月○〜○回/直近3か月の1人あたりの実際の出動:月平均○回(0〜○回)/電話の一次対応:月平均○件/当番手当○円/回。実際に出動した時間の労働時間・時間外手当・深夜手当は規程どおり支給/緊急時は管理者・主治医と連携
ポイントは、集計期間と最大の幅を必ず添えることです。1か月の平均だけを示して「ほぼ出動なし」と言い切ると、忙しい月に入職した人は裏切られたと感じます。
「平均」の定義をはっきりさせる
支援担当は、「月平均1回」という書き方にも注意が必要だと指摘します。次の点が書かれていないと、数字の意味が変わってしまうためです。
| あいまいな |
明確に |
|---|---|
| 誰の平均か | 「当番を担当した看護師1人あたり」か「全職員の平均」か |
| 何の回数か | 電話の対応か、現場への出動か |
| いつの数字か | 「2026年○月〜○月の3か月」など集計期間 |
| ばらつき | 最小と最大(例:0〜○回) |
手当と労働時間の考え方
オンコールの手当を書くときは、「待機」と「実際の出動」を分けて考えます。
待機の時間が労働時間にあたるかは、拘束の実態によって個別に判断されます。厚生労働省のガイドラインは、「使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)」を労働時間としています(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。自宅での待機の扱いは、行動の制約の程度などで変わるため、社会保険労務士など労務の専門家と確認してから規程と求人に反映します。
実際に出動して働いた時間は労働時間です。午後10時から午前5時までの間に働かせた場合は、2割5分以上の割増賃金(深夜手当)の支払いが必要です(労働基準法 第37条)。
給与の表示にも注意します。職業安定法にもとづく募集ルールでは、モデル収入の例を必ず支払われる基本給のように表示することや、固定残業代の時間数などを示さずに基本給に含めて表示することが禁じられています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。「オンコール手当込み月給○円」のように合算して書くと、当番の回数によって変わる金額が固定給のように見えてしまいます。基本給、当番手当、出動時の賃金は分けて書きます。
誤解を生みやすい表現
取材で挙がった、誤解を招く表現と書き換えの例です。
| 誤解を |
何が |
書き換えの |
|---|---|---|
| 電話が鳴ることはありません | 実績と違えば虚偽になる。鳴った月の説明がつかない | 直近○か月の電話の件数(最小〜最大) |
| 実質、待機だけです | 出動の可能性と、出動時の支給を隠している | 出動の回数の実績と、出動時の手当・割増 |
| オンコール手当込み月給○円 | 当番回数で変わる額が固定給に見える | 基本給、当番手当、出動時の賃金を分ける |
| 月平均1回 | 誰の平均か、電話か出動かが不明 | 「当番1人あたりの出動 月平均○回(0〜○回)」 |
負担軽減の取組は、そのまま求人の材料になる
2024年度の診療報酬改定では、訪問看護ステーションの24時間対応体制加算について、看護業務の負担軽減の取組を行っている場合とそうでない場合で評価が分けられました。取組の項目は次の6つで、「ア又はイを含む2項目以上」を満たすことが要件とされています(厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」)。
- ア 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保
- イ 夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで
- ウ 夜間対応後の暦日の休日確保
- エ 夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
- オ ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減
- カ 電話等による連絡及び相談を担当する者に対する支援体制の確保
これらに取り組んでいるステーションなら、求人に「出動した翌日は勤務開始を遅らせる」「当番は2日連続まで」のように書けます。求職者が気にする「当番明けのシフト」「一人で判断する不安」への直接の答えになります。加算の要件は改定で変わることがあるため、最新の告示・通知もあわせて確認してください。
やりがちな失敗と、施策の進め方
取材で挙がった失敗は次のとおりです。
- 採用時は「たまに出動」と説明したが、忙しい月には連続で出動している
- 当番明けの勤務の調整がない
- 利用者の家族からの連絡の経路があいまい
- 手当の計算で、支払われていない時間が生じている
対策は、看護管理者と給与の担当者が、オンコールの実績・ルール・求人の3つを突き合わせることです。
求人を公開する前に、次の項目を確認します。
- 当番の回数を「月○〜○回」と幅で書いた
- 電話の一次対応と、実際の出動の回数を分けて書いた
- 実績の集計期間と、最小・最大を書いた
- 平均が「当番1人あたり」か「全職員」かを書いた
- 当番手当と、出動時の賃金・深夜手当を分けて書いた
- 当番明けの勤務の扱い(勤務間隔、休日)を書いた
- 夜間に判断に迷ったときの相談先を書いた
- 実績・規程・求人の3つが一致している
施策の方向性として、支援担当は、「毎晩呼ばれるのでは」という不安を、実際の当番回数と出動の記録に置き換えれば、ステーションに合う看護師の面談率を改善できると見ています。これは見込みであり、必要に応じて「オンコールあり」と「オンコールなし」の職種を分けて募集し、反応を比べて確かめます。
よくある質問
Q. 月に
A. 過去3〜6か月の当番回数と出動回数を、両方示して答えます。
Q. 子どもが
A. 当番の回数や曜日を調整できる範囲を、正確に伝えます。できないことを「大丈夫」と言わないことが、入職後の信頼につながります。
Q. 夜間に
A. 管理者や主治医との連絡の流れを示します。判断に迷ったときの相談先が決まっていることを、具体的に説明します。
Q. 待機中も
A. 拘束の実態に応じて個別の判断が必要です。ステーションの規程でどう扱っているかを説明します。待機中に求められること(電話にすぐ出る、自宅から○分以内に出られるようにするなど)も具体的に伝えると、応募者は自分の生活と両立できるかを判断できます。
訪問看護の求人を、オンコールの実績から組み立て直します
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