訪問介護の採用で応募を増やすには、時給や「アットホーム」を前に出すより、求職者が応募前に抱く不安に求人で先に答えることが近道です。中心になる不安は「一人で利用者宅に行って対応できるか」「移動時間やキャンセル時に賃金はどうなるか」「希望の曜日・時間で働けるか」の3つです。
訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍(2023年度)で、施設介護の3.24倍を大きく上回ります(厚生労働省 第242回介護給付費分科会 資料2)。この記事では、ホームヘルパー(常勤・登録)とサービス提供責任者(以下、サ責)の求人をどう書き分けるかを、ヨビコム介護の支援担当への取材をもとに全体像として整理します。
数字で見る訪問介護の人手不足
まず、訪問介護の採用がほかの介護職種より難しい理由を数字で確認します。
| 指標 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 有効求人倍率(訪問介護の職業) | 14.14倍(2023年度) | 厚生労働省「職業安定業務統計」(第242回介護給付費分科会 資料2) |
| 有効求人倍率(施設介護の職業) | 3.24倍(2023年度) | 同上 |
| 訪問介護員の不足感 | 82.9%(7職種で最も高い) | 介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」 |
| 訪問介護員の採用率/離職率 | 14.5%/11.6% | 同上 |
有効求人倍率は、ハローワークで仕事を探す人1人に対して何件の求人があるかを示す値です。14.14倍は、求職者1人を14件以上の求人が取り合う状態を意味します。ただし資料自身が、訪問介護の倍率は求職者数が実態より小さく出る分類があると注記しているため、規模感をつかむ目安として読むのが適切です。
同じ資料で厚生労働省は、訪問介護事業者への就労希望が少ない理由として「1人で訪問してケアを提供することに対する不安が大きいこと」「サービス内容ややりがいを伝える機会が少ない」ことを挙げています(第242回介護給付費分科会 資料2)。求人の書き方で手を打てるのは、まさにこの2点です。
求職者が応募前に確かめたい5つのこと
ヨビコム介護の支援担当によると、訪問介護の求職者が応募前に最も不安に思うのは「一人で利用者宅に行き、急変や介助に対処できるか」です。続いて次の点が気にされます。
| 求職者の |
求人で |
|---|---|
| 一人で対応できるか | 同行訪問の回数の目安、独り立ちの判断方法、緊急時の連絡先 |
| 移動時間は賃金が出るか | 訪問間の移動・待機・記録の扱い、交通費・車両の扱い |
| 訪問件数は安定するか | 1日の訪問件数の例と幅、担当エリア |
| キャンセル時に収入が減るか | 利用者キャンセル時の扱い |
| 相談できる相手はいるか | サ責・管理者への連絡手段と時間帯 |
優先順位は地域や事業所で変わるため、支援の際は事業所との面談で実態を確認してから原稿に反映します。大事なのは、どの項目も「あります」ではなく、回数・時間・連絡先など確かめられる形で書くことです。
ホームヘルパーの求人は「常勤」と「登録」で書き分ける
同じホームヘルパーでも、常勤と登録ヘルパー(働ける曜日・時間を登録し、訪問の予定に応じて勤務する非常勤)では、応募前に知りたいことが違います。取材では、次のように打ち出しを分けているとのことでした。
| 区分 | 前に |
|---|---|
| 常勤 | 月間の勤務時間、固定給、社会保険、研修、キャリアパス、担当エリア |
| 登録ヘルパー | 曜日固定の可否、週何時間・何件から働けるか、キャンセル時の収入、移動の扱い、扶養内やブランク復帰の可否、仕事を紹介するペース |
登録ヘルパーの求人では「希望どおり必ず働ける」とは書かないことも重要です。働ける枠と利用者のニーズが合ったときに仕事を割り当てる、という仕組みを正直に書くほうが、入職後のずれを防げます(詳しくは関連コラム:登録ヘルパーの求人原稿のつくり方|応募が集まる書き方と例)。
記載テンプレート(○は実態を確認してから記入)
取材で共有された記載例を、そのまま使える形に整えました。
- 入職後○回の同行訪問。独り立ちのタイミングは管理者と相談して決める
- 緊急時はサ責へ電話。救急対応の基準を整備している
- 担当エリアは拠点から半径○km、1日○〜○件
- 訪問間の移動の賃金の扱い、交通費、キャンセル時の扱いを明記
- 直行直帰の可否
○の数字は、事業所の実績を確認してから入れます。実態より良く見せた数字は、職業安定法で禁じられている「虚偽の表示」「誤解を生じさせる表示」にあたるおそれがあります(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。
移動時間の扱いは法令に合わせて書く
訪問間の移動時間について、厚生労働省は「事業場から利用者宅への移動に要した時間や一の利用者宅から次の利用者宅への移動時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当する」としています(介護保険最新情報Vol.912)。求人で「訪問時給○円」だけを大きく出し、移動・記録・待機の扱いを書かないと、求職者は「移動は無給」と受け取りがちです。書き方の具体例は関連コラム:訪問介護の移動時間は求人にどう書く?賃金の扱いと記載例、で扱います。
「一日の流れ」と勤務枠の表を載せる
支援で取り入れている見せ方は次の3つです。
- 訪問ヘルパー専用の原稿を作り、「一日の時系列例」(出勤、訪問、移動、記録、退勤)を載せる
- 曜日×時間帯の選択表を載せ、どの枠で人を求めているかを見せる
- 同行研修の様子を、利用者のいない場面で撮影して写真・動画にする
利用者や応募者の個人が分かる写真・情報は載せません。研修の場面でも、利用者宅の様子が写り込まないよう撮影場所を選びます。
「一日の時系列例」は、たとえば次のような形で載せます。時刻と件数は書き方を示すための記載例で、実際の数字は事業所の勤務実績から入れてください。
| 時刻 |
内容 | 時間の |
|---|---|---|
| 8:30〜8:40 | 事業所に出勤、申し送りを確認 | 勤務時間 |
| 8:40〜9:00 | 1件目へ自転車で移動 | 移動(勤務時間として記録) |
| 9:00〜10:00 | 1件目の訪問(身体介護) | サービス提供 |
| 10:00〜10:20 | 2件目へ自転車で移動 | 移動(勤務時間として記録) |
| 10:20〜11:20 | 2件目の訪問(生活援助) | サービス提供 |
| 11:20〜11:40 | 記録をアプリで入力 | 記録(勤務時間) |
| 11:40〜12:40 | 休憩 | 休憩 |
この表のよさは、サービス提供・移動・記録・休憩の区分が一目で分かり、「移動や記録は無給なのでは」という疑問に先回りして答えられる点です。曜日によって件数が変わる場合は、忙しい日と落ち着いた日の2パターンを載せると、実態に近い印象を持ってもらえます。
サービス提供責任者の求人は「業務範囲」をはっきり書く
サ責は、訪問介護計画の作成、利用申込みの調整、サービス担当者会議への出席、ヘルパーへの指示・研修などを担う職種です。これらは運営基準で定められた業務です(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第24条・第28条)。配置は、原則として利用者40人またはその端数を増すごとに1人以上と定められています(同 第5条)。
取材では、事業所と求職者の認識がずれやすい点として、「現場の訪問が中心」と想像される一方で、実際は計画作成・調整・会議・ヘルパー指導・実績管理・急な欠勤時の代行などが多い場合があることが挙がりました。求人には次を示すのが有効です。
- 事務と現場訪問の時間の割合
- 担当する利用者数、事業所のサ責の人数
- 1か月の会議の回数、残業、オンコール(時間外の電話当番)の有無
- 管理者との役割分担
サ責になれる資格には要件があり、介護職員初任者研修修了者で3年以上の実務経験がある人は、2018年4月以降は原則として任用要件に該当しなくなりました(厚生労働省 老企第25号 改正新旧対照表)。資格の書き方は最新の基準で確認します。サ責採用の論点は関連コラム:サービス提供責任者の求人で見落としがちなこと|採用前の確認、で詳しく扱います。
媒体の選び方と応募対応の組み立て
取材では、媒体を「検索している人」と「まだ探していない人」に分けて考えているとのことでした。
- 求人を検索している人:ハローワーク、福祉のお仕事、Indeed、ジョブメドレーなど
- まだ探していない人:地域の交流会、職員からの紹介、研修修了者との接点、SNSでの仕事内容の発信
介護労働安定センターの調査でも、介護労働者が今の職場に就いた経路は「友人・知人からの紹介」33.8%、「ハローワーク」19.4%が上位です(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント)。紹介は地域密着の訪問介護と相性がよい経路です。
媒体名だけで優劣を決めず、地域別の候補者数、応募単価、面接率、採用率、90日後の定着率を2〜3か月比べてから配分を決めます。応募数が多くても、訪問エリアの外に住む人や希望の時間帯が合わない人ばかりなら、配置できる採用にはつながりません。訪問介護では「応募数」より「担当エリアと時間帯に合う人を何人採れたか」を見るほうが、判断を誤りにくくなります。媒体ごとに地域名と訪問エリアの表記をそろえることも、検索で見つけてもらうための基本です。
応募後は、応募→15分程度の説明→見学→選考と段階を分けると、「いきなり面接」のハードルが下がります。ヨビコム介護が応募対応を代行する場合、応募への一次連絡は当日中、遅くとも営業日24時間以内に行います。面接の実施と合否の判断は事業所が行います。
やりがちな失敗と、公開前のチェックリスト
取材で挙がった、訪問介護の求人でやりがちな失敗は次のとおりです。
- 訪問中の時給だけを大きく表示し、移動・報告書作成・キャンセル・待機の扱いを書かない
- 「未経験歓迎」と書きながら、入職後すぐに単独訪問を任せる
- 担当エリアが広すぎる、同行研修がない、「直行直帰」の意味があいまい
対策は、応募前に勤務例・時間の区分・同行期間を明示し、管理者が求人原稿を確認することです。経験の浅いヘルパーへの同行訪問の経費は、都道府県の「訪問介護等サービス提供体制確保支援事業」で補助対象とされている例があります(宮崎県 令和8年度の公募ページ)。実施の有無や要件は都道府県ごとに違うため、所在地の担当窓口で確認してください。
公開前に、次の項目を確認します。
- 同行訪問の回数の目安と、独り立ちの判断方法を書いた
- 緊急時の連絡先(誰に、どの手段で)を書いた
- 訪問間の移動・記録・待機・キャンセル時の扱いを書いた
- 1日の訪問件数の例と、担当エリアを書いた
- 登録ヘルパーに「必ず希望どおり働ける」と書いていない
- サ責の事務・現場の割合、担当人数、管理者との分担を書いた
- 就業場所・業務の「変更の範囲」を書いた(2024年4月からの明示事項)
- 募集を締め切った媒体の掲載を終了した
よくある質問
Q. 未経験の
A. 訪問介護員として働くには、介護福祉士の資格か、介護職員初任者研修などの介護員養成研修の修了が必要です(介護保険法施行令 第3条)。そのうえで、同行訪問の回数や独り立ちまでの流れ、相談先を具体的に書くと、経験の浅い人も応募を検討しやすくなります。無資格の人を受け入れる場合は、資格取得の支援と従事できる業務の範囲を書き分けます。
Q.
A. 事業所から利用者宅、利用者宅から次の利用者宅への通常程度の移動は、労働時間に該当するとされています(介護保険最新情報Vol.912)。賃金の算定方法は就業規則と雇用契約で具体的に定め、求人にもその内容を書きます。
Q. 急変した
A. 求職者にはこの質問への答えがいちばん響きます。緊急時は誰に電話するか、救急要請の基準はあるか、迷ったときに独断で処理しないルールがあるかなど、事業所の実態どおりに説明します(関連コラム:訪問介護の未経験者が抱く「一人で訪問」の不安を求人で解消)。
Q. 常勤と
A. 知りたいことが違うため、原稿は分けるのがおすすめです。常勤は月の勤務時間と固定給、登録ヘルパーは働ける枠とキャンセル時の扱いを中心に書きます。
訪問介護の採用をどこから直すか、無料で点検します
貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。
ヨビコム介護の支援内容は、訪問介護の採用支援、ホームヘルパーの採用、求人媒体運用・スカウト代行、採用業務代行でご覧いただけます。求人媒体の費用は、事業所から媒体へ直接お支払いいただきます(上乗せはありません)。
出典
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第242回(2024年9月12日)資料2「訪問介護事業への支援について」
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント」
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.912「訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)」(2021年1月15日)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」改正新旧対照表
- 厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」(職業安定法、2022年10月施行)
- 厚生労働省 2024年4月からの労働条件明示のルール変更(求人企業向け)
- 介護保険法施行令(e-Gov法令検索)
- 宮崎県「令和8年度訪問介護等サービス提供体制確保支援事業費補助金の公募について」
