リファラル採用の報酬と出戻り採用|介護事業所の仕組みづくり

介護事業所で職員紹介(リファラル採用)と出戻り採用(退職者の再入職)を仕組みにするには、①紹介の報酬を「賃金」として就業規則・賃金規程に定める、②紹介された人も通常と同じ選考で判断し、紹介者に選考の詳細を伝えない、③円満に退職した人には本人の同意を得て連絡の窓口を残す、の3つが土台になります。職業安定法は、募集に関わった職員に賃金以外の報酬を払うことや、応募者から報酬を受け取ることを禁じています。この記事では、法律上の注意点と、ヨビコム介護の支援担当への取材にもとづく運用の進め方を整理します。

介護の採用で、職員紹介と出戻りが使われている理由

介護労働安定センターの調査では、介護労働者が今の勤務先に就職した経路は「友人・知人からの紹介」が33.8%で最も高く、勤続1年未満の人に限っても29.3%で最多でした。事業所側も、66.0%が「職員に対して友人・知人などの紹介を依頼」しており、そのうち47.3%が採用に効果があったと答えています。「過去の離職者に再雇用を打診」は18.2%の事業所が行い、そのうち35.2%が効果があったとしています(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント)。

ただし、「友人・知人からの紹介」の33.8%は、事業所が制度として行う職員紹介だけでなく、知り合いからの口コミ全般を含む数字です。自社の紹介制度の成果としてそのまま使えるものではありません。

紹介報酬と職業安定法:押さえておきたい3つの条文

職員紹介に報酬(紹介手当)を出すときは、職業安定法の次の条文に注意します(職業安定法)。

条文 内容 職員紹介での意味
第40条(報酬の供与の禁止) 募集を行う者は、募集に従事する被用者に対し、賃金・給料その他これに準ずるものを支払う場合などを除き、報酬を与えてはならない 自法人の職員に払う紹介手当は、賃金として扱える形で設計する
第36条(委託募集) 被用者以外の者に報酬を与えて募集に従事させるには、厚生労働大臣の許可が必要 退職者や職員の家族など、雇用していない人に紹介の謝礼を払う形は避ける
第39条(報酬受領の禁止) 募集を行う者などは、募集に応じた労働者から、いかなる名義でも報酬を受けてはならない 入職した人に、紹介手当の分配や謝礼を求めさせない

厚生労働省の資料では、第40条の趣旨について、募集に従事する人への報酬が応募者の人数に比例して支払われやすく、応募者を増やすために甘言を用いるなどの弊害が生じやすいため、賃金等以外の報酬の支払いを禁止していると説明しています(厚生労働省「職業紹介事業以外の雇用仲介事業 その他の検討項目(参考資料)」)。

このため、紹介手当は就業規則や賃金規程に定め、給与として支払う形で設計するのが基本です。具体的な規程の書き方や、課税・社会保険での扱いは、社労士・税理士や労働局に確認してください。

紹介手当の設計で決めておくこと

支援担当が、紹介手当を設計するときに確認している項目は次のとおりです。

  • 対象となる紹介者と入職者(職種・資格・雇用形態)
  • 支給の時点(入職後○か月在籍したときなど)と金額
  • 紹介者・入職者が支給前に退職した場合の扱い
  • 就業規則・賃金規程への記載
  • 紹介を強制しないこと(ノルマにしない)
  • 紹介者・応募者の個人情報の扱い
  • どの職員にも同じ条件で適用すること

支援担当は、法人の外に向けて「誰でも紹介すれば報酬がもらえる」と無条件に広報することは避けるよう勧めています。

職員紹介を回す仕組み

支援担当によると、職員紹介がうまく回っている事業所には共通点があります。職員が友人に、職場の良い点だけでなく大変な点も説明できること、制度がわかりやすく押し付けがないこと、の2つです。

そのための運用は次のとおりです。

  1. 募集の情報を全員に共有する:募集している職種、必要な資格、勤務条件、選考の手順を、職員がいつでも見られる形にする。
  2. 選考は通常と同じにする:紹介された人も、ほかの応募者と同じ基準で判断する。紹介者が合否に関わらないようにする。
  3. 個人情報は本人から受け取る:紹介者経由で履歴書や電話番号を預からず、応募者本人から応募してもらう。
  4. 紹介者に選考の詳細を伝えない:合否の理由や面接の内容は応募者本人の情報です。

職業安定法でも、募集を行う者は求職者の個人情報を、目的を明らかにしたうえで必要な範囲で集め、使わなければならないと定められています(第5条の5)。厚生労働省のリーフレットでは、求職者の個人情報をみだりに第三者に提供してはならないことも示されています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。

職員紹介で起きやすいトラブル

支援担当が挙げたトラブルの例と、その対策をまとめました。

トラブル 対策
紹介者が友人に応募を強く迫る 紹介は任意と明示し、ノルマにしない
紹介者が入職者に謝礼の分配を求める 職業安定法第39条の趣旨も含めて、事前に職員へ説明する
候補者の同意なく、履歴書や電話番号が共有される 応募は本人から受け付ける
紹介者が採用結果を詮索する 選考の詳細は伝えないと最初に決めておく
入職後に紹介者との人間関係が悪化する 配属や相談先を、紹介者と分けて考える
紹介手当の支給条件で争いになる 条件を規程に書き、紹介時に紹介者へ渡す

出戻り採用の仕組み

介護の現場では、家庭の事情や転居で退職した人が、状況が変わって働ける状態になることがあります。支援担当は、こうした人が戻りやすい仕組みを、次の3段階で整えることを勧めています。

  1. 退職時:円満に退職する人に、今後も募集情報を送ってよいか確認し、本人の同意を得た連絡手段だけを残す。
  2. 在籍していない間:募集の情報を定期的に共有する(同意を得た範囲で)。
  3. 再応募のとき:今の勤務条件、資格の更新、必要な研修、前回の退職理由が改善されているかを、お互いに確認する。

前回の退職理由の確認は特に大切です。同じ調査では、直前の介護の仕事を辞めた理由で最も多かったのは「職場の人間関係に問題があったため」(27.3%)でした(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント)。辞めた原因が残ったままでは、戻ってもまた辞めてしまいます。

よくある失敗と、効果の測り方

支援担当が挙げた失敗は、紹介の数をノルマにする、入職後の定着を見ずに高額の紹介手当を出す、職員の知り合いだからと資格や安全の確認を緩める、労務・税務の確認をせずに現金で払う、の4つです。支援担当は、謝礼の額よりも、職場への信頼と働き方の魅力を先に整えることが大切だと話しています。

効果は、次の数字で測ります。

  • 紹介による応募数と採用数
  • 紹介・出戻りで入職した人の180日後の在籍
  • 職員の満足度(紹介したいと思える職場か)

よくある質問

Q. 職員に紹介の謝礼を出してもよいですか?

自法人の職員に対して、就業規則・賃金規程に定めた賃金として支払う形で設計するのが基本です。具体的な規程や課税の扱いは、社労士・税理士などの専門家に確認してください。

Q. 不採用だったことを紹介者に伝えてもよいですか?

選考の結果や理由は応募者本人の情報なので、原則として紹介者には伝えません。

Q. 退職した人に声をかけてもよいですか?

退職時などに本人が同意した連絡手段で行います。同意のない連絡先を使うことは避けてください。

Q. どこまで成果を測ればよいですか?

紹介による応募・採用、180日後の在籍、職員の満足度まで見ると、制度の効果を判断しやすくなります。

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この記事を書いた人

ヨビコム介護編集部

介護事業所の採用支援サービス「ヨビコム介護」の編集部です。求人原稿・媒体運用・スカウト・定着など、介護の採用に役立つ情報を、公的な資料をもとにお届けしています。

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