介護施設がSNSを採用に使うときは、「利用者さんを映り込ませない」ことを基本ルールにし、撮影場所・背景の確認・公開前のチェックの手順を先に決めておくことが出発点です。顔を隠すだけでは不十分で、声や部屋の様子、掲示物からも人が特定されることがあります。
そのうえで、投稿のネタは施設の紹介よりも「仕事の中身」と「働き方」に寄せると、求職者に伝わりやすくなります。この記事では、ヨビコム介護の支援担当の知見をもとに、撮影ルール、職員の出演同意、投稿ネタ、続けるための運用体制を整理します。
介護のSNS採用は「単独」より「組み合わせ」で考える
最初に、SNSが採用でどんな役割を持つのかを確認しておきます。公益財団法人介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」では、SNSで自事業所のアピールポイントを発信している事業所は16.3%で、そのうち27.6%が「採用に効果があった」と回答しています(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント、図表2-1-1)。
一方、労働者に「今の法人に就職した主な経路」を聞くと、「法人又は施設・事業所が発信するSNS」は全体で0.2%、勤続1年未満でも0.4%でした(同 図表2-2-1)。SNSを見て直接応募する人はまだ少ないのが実態です。
このため、SNSは求人サイトや採用サイトに来た人が「どんな職場か」を確かめる場所として設計し、プロフィールや投稿から採用ページ・求人へ移動できる導線を用意しておくことが大切です。
ヨビコム介護が支援した株式会社ideinさま(介護・福祉、ナーシングホームの新規立ち上げ)では、採用サイトや求人運用とあわせてInstagramでの情報発信に取り組み、導入当初10名程度の体制から累計35名以上が新たに加わりました(導入事例)。同様の成果を保証するものではありません。
利用者さんが写らない撮影ルール
支援担当が事業所にすすめている撮影ルールは次のとおりです。
撮影する場所と時間を先に決める
- 利用者さんがいない事務室やバックヤード、職員の休憩室などで撮影する
- 撮影する時間と区域を事前に決め、その時間はその区域に利用者さんが入らないよう調整する
背景に写りやすいものを確認する
顔が写っていなくても、次のようなものから個人が特定されることがあります。
- 氏名の入った表、予定表、掲示物
- 電子カルテや記録システムの画面
- ナースコールの表示
- 利用者さんの声
- 利用者さんの私物
「ぼかせばよい」ではなく「映り込ませない」
後ろ姿やぼかしを入れた映像でも、服装や場所、文脈から誰か分かる場合があります。個人情報保護委員会のガイドラインでも、本人が判別できる映像情報や、特定の個人を識別できる音声録音情報は個人情報の例として挙げられています(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。編集で隠すより、最初から撮らない設計にするほうが安全です。
3段階でチェックし、事故時の削除手順も決める
- 撮影前:場所・時間・写り込みやすいものを確認する
- 編集後:背景、音声、字幕に個人が分かる情報がないか確認する
- 公開前:責任者が最終確認する
万一、写り込みが見つかった場合に、誰が、どの手順で投稿を削除するかも決めておきます。
撮影ルール チェックリスト
- 撮影してよい場所と時間を決めた
- 撮影中は利用者さんが入らないよう調整した
- 背景の表・画面・掲示物・私物を確認した
- 音声に利用者さんの声や名前が入っていない
- 編集後と公開前に、別の人が確認した
- 写り込みが見つかったときの削除手順と担当を決めた
職員の出演同意と、退職した職員の投稿
出演する職員からは、本人の任意による、具体的な内容の書面同意を取ります。支援担当がすすめる同意書の項目は次のとおりです。
- 使用する媒体(どのSNS、採用サイトなど)
- 使用する期間と目的
- 顔・声を使うかどうか
- 動画の切り抜きや再編集をしてよいか
- 同意を撤回したいときの方法と連絡先
出演しなくても不利益がないことも明記してください。職員が出演を断りにくい雰囲気にしないことが大切です。
退職した職員が写っている過去の投稿は、同意の範囲、投稿した時期、退職後の撤回の希望をもとに対応方針を決めます。一度同意をもらえば無期限に使える、と考えないようにしましょう。判断に迷う場合は、法人の個人情報管理の責任者と相談してください。
反応を得やすい投稿ネタ
支援担当が、介護事業所の採用向けのネタとしてすすめているのは、施設の紹介よりも仕事と働き方を具体的に伝えるものです。いずれも利用者さんが写らない形で作れます。
| ネタ | 形式の |
伝わる |
|---|---|---|
| 職員の出勤から退勤まで(利用者さんなし) | 短い動画 | 1日の流れ、仕事のイメージ |
| 夜勤体制の説明 | 図解のカルーセル(複数枚の画像) | 夜勤の人数、休憩、相談先 |
| 新しく入った職員の1か月の研修 | 短い動画・カルーセル | 未経験でも始められる道筋 |
| 職員が選んだ職場の良い点・大変な点 | カルーセル | 職場の実際の雰囲気 |
| 休憩場所・制服・通勤 | 写真・短い動画 | 働く環境の細部 |
「大変な点」もあえて出すと、入職後の「聞いていた話と違う」を減らせます。介護労働実態調査では、勤続1年未満の人の就職理由として「通勤が便利だから」が52.1%で最も多かったので(同調査 結果のポイント、図表2-4-1)、通勤の様子や駐車場の情報も立派なネタになります。
SNSを続けられない事業所の共通点と、続ける体制
支援担当が見てきた、SNSが続かない事業所の共通点は次のとおりです。
- 撮影・編集・承認を現場の職員に丸投げしている
- 撮影できる場所がない
- 個人情報の確認をする責任者が決まっていない
- 投稿の目的が再生数だけになっている
- 投稿から求人や採用ページへの導線がない
続けるための体制として、ヨビコム介護では次のような分担をすすめています。
- 月1回の
企画会議で、 6〜8本を まとめて 企画する - 現場の
素材提供は 1回15分 以内に 収める - 撮影・
編集などの と役割を分ける運用は 外部、 内容の 承認は 施設の 管理者
やりがちな失敗
- 利用者さんや住所が動画の背景に写っていた
- 退職した職員の動画を、同意の範囲を超えて使い続けた
- 今の求人条件と違う給与を、字幕に載せていた
- 撮影に現場の業務時間を使いすぎた
- フォロワー数だけで成果を判断した
給与などの条件は、求人と同じく正確で最新の内容に保つ必要があります(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。条件が変わったら、過去の投稿も見直しましょう。
成果は、応募の前の接点(プロフィールや投稿からの採用サイト訪問)、見学の申し込み、応募で判断します。
投稿から応募までの導線を用意する
投稿を見た人が次に何をすればよいかが分からないと、SNSは採用につながりません。最低限、次の3つを整えておきましょう。
- プロフィール欄に、採用ページや求人へのリンクを置く
- 投稿の最後に、募集している職種と、見学・応募の方法を一言添える
- 研修や夜勤体制など、よく聞かれる内容の投稿をまとめて見られるようにしておく
リンク先の採用ページに、通勤・1日の流れ・夜勤体制・給与の内訳が載っていれば、SNSで興味を持った人がそのまま応募を判断できます。
よくある質問
利用者さんの顔を隠せば、撮影してもよいですか?
声、場所、文脈から特定できる場合があるため、撮影そのものを避ける設計をおすすめします。利用者さんがいない場所と時間で撮影するのが安全です。
職員の出演は必須にしてよいですか?
任意にしてください。出演しなくても不利益がないことを書面で示し、同意の範囲と撤回の方法も決めておきます。
どのくらいの頻度で投稿すればよいですか?
承認と素材の確保が無理なく続く頻度から始めましょう。月1回の企画会議でまとめて企画すると、頻度を保ちやすくなります。
SNSの効果はどう測ればよいですか?
フォロワー数より、採用サイトへの訪問、見学の申し込み、応募の数で判断します。求人や採用ページへの導線を用意しておくことが前提です。
SNSを採用につなげる設計を
SNSは、求人や採用サイトと組み合わせてはじめて採用の力になります。ヨビコム介護では、撮影ルールの整備から投稿の企画・運用、採用サイトへの導線づくりまで、介護事業所の採用SNSを支援しています。
貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。
