介護のスポットワーク活用と注意点|キャンセル・休業手当・補助

スポットワーク(アプリで募集する短時間・単発の仕事。いわゆるスキマバイト)は、急な欠員や忙しい時間帯を埋める手段として、介護事業所でも使われ始めています。介護労働安定センターの調査では、過去1年間に利用したことがある事業所は8.9%でした(介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」)。

使う前に知っておきたいのは、アプリで応募を受けた時点で労働契約が成立し、事業所が労働基準法を守る義務を負うのが一般的だという点です。成立した後に事業所の都合で仕事をなくせば、休業手当の支払いが必要になります(厚生労働省「『スポットワーク』の労務管理」)。

あわせて、利用者の安全に関わる業務をどこまで任せるか、事業所として線を引いておくことが大切です。この記事では、法律上の注意点、任せる業務の決め方、自治体の補助の例、常勤やパートの採用につなげる方法を順に整理します。

介護事業所でのスポットワークの利用状況

介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」は、スポットワークを「パソコン、スマホ等によりネットで1日単位(日々雇用)で募集・雇用するもの」と定義しています。結果のポイントは次のとおりです(介護労働安定センター)。

  • 過去1年間に利用したことがある事業所:8.9%
  • 介護職員が「大いに不足」の事業所では15.3%、「不足」の事業所では14.8%が利用
  • 利用した理由:「必要とするマンパワー(人数)の確保が容易にできる」47.1%、「繁忙の時間帯にだけ雇うことができる」37.1%、「正社員や日々雇用でない有期雇用職員への雇用につなげられる」27.8%
  • スポットワークで雇用した人を正社員等として雇用したことがある:利用した事業所の28.0%

人手が足りない事業所ほど使っている一方で、常勤などの採用につながった事業所は3割弱にとどまります。あくまで補う手段の一つとして位置づけるのが現実的です。

キャンセルと休業手当:契約が成立する時点を押さえる

厚生労働省は2025年7月、スポットワークを使う事業主向けのリーフレットを公表しました(厚生労働省 報道発表)。介護事業所が特に押さえたいのは、次の4点です(厚生労働省「『スポットワーク』の労務管理」)。

1. 労働契約は事業所とワーカーの間で結ばれる

労働契約を結ぶのは、事業所とスポットワーカーです。アプリを運営する仲介事業者ではありません。労働基準法などを守る義務は、事業所の側にあります。

2. 先着順の求人は「応募した時点」で成立するのが一般的

面接をせず先着順で決まる求人では、特別な合意がなければ、ワーカーが応募した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられています。成立した時点から、労働関係の法令が適用されます。

キャンセルの条件を事前に決めた契約を結ぶ場合も、その理由が合理的で、ワーカーだけに不利な内容にならないよう注意が必要です。リーフレットは、事業所の都合で直前にキャンセルすることは「不適切」としています。

3. 事業所都合の休業・早上がりには休業手当

契約が成立した後に、事業所の都合で丸1日休ませたり、早上がりさせたりした場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたります。所定の支払日までに休業手当を払う必要があります。

事業所の故意や過失で休ませた場合は、民法にもとづき賃金の全額を払う必要があります。「アプリなら直前のキャンセルは無料」と考えないことが大切です。

4. 労働条件の明示と、準備時間も労働時間

就業前に労働条件を明示するのは事業所の義務です。仲介事業者が労働条件通知書の交付を代行することもありますが、交付されているか、内容が正しいかは事業所が確認します。

着替えや片付けなど、事業所の指示で行う準備や後始末の時間も労働時間です。ワーカーから実際の労働時間への修正を求められたときは、予定時間分の賃金を遅れずに払い、差の時間を速やかに確認します。

このほか、スポットワーカーも労災保険の対象で、労働災害の防止やハラスメント対策も事業主の義務とされています(同リーフレット)。

任せてよい業務の線引き:現場での判断基準

ここからは、ヨビコム介護の支援担当が、スポットワークの使い方について事業所に勧めている考え方です。

使いどころ

想定している使いどころは、急な欠勤の補充、忙しい時間帯の補助です。業務としては、レクリエーションの補助、環境整備、清掃、食事の準備など、安全に切り出せる仕事が中心になります。

単独で任せない業務

次のような業務は、スポットワーカーに一人で任せないことを勧めています。

  • 看護の判断が必要な業務
  • 単独での夜勤
  • 利用者の情報が十分に伝わっていない状態での身体介助

資格がある人であっても、その日初めて来た職場で、利用者の状態を知らないまま介助をするのは危険です。即戦力を前提にせず、その日に任せる範囲を先に決めておきます。

受け入れのときに必ず行うこと

  • アプリ上の資格表記だけに頼らず、資格と本人を確認する
  • 当日の指導担当者を決めておく
  • 利用者の情報を守ることを説明し、秘密保持を確認する
  • 感染対策と安全の基本を、短時間で伝える手順をつくる
  • 連絡窓口と、重大な事故・ヒヤリハットの報告方法を決めておく

避けたい使い方

支援担当が注意を促しているのは、次のような使い方です。これらは特定の事業所の事例ではなく、準備段階で確認している注意点です。

  • 資格の確認をせずに、当日いきなり危険を伴う介助を任せる
  • キャンセル時の扱いや休業手当を、契約の前に確認していない
  • 指導の手間が足りず、既存の職員の負担がかえって増える
  • 欠員を埋める手段として常に使い、長期の採用計画を立てない

スポットワークは、緊急時の穴埋めです。固定の職員の適正な配置や、長期の採用計画の代わりにはなりません。

自治体の補助:内容は地域ごとに大きく違う

一部の自治体は、介護事業所のスポットワーク利用を補助しています。2026年度の例を2つ挙げます。

項目 青森県 東京都大田区
名称 青森県介護事業所スポットワーク活用支援事業費補助金 大田区介護人材スポットワーク導入支援補助事業
対象経費 これまでスポットワークを使ったことがない業務で、短期雇用が成立したときに払ったサービス利用料 サービス提供事業者へ払った利用料と、ワーカーへ払った給与(交通費を含む)
補助率・上限 2分の1、1法人あたり20万円 10分の10、1法人あたり最大10万円(1法人1回限り)
主な条件 県内の対象サービスの事業所 ワーカーが介護関連資格を持ち、就業時に他の介護事業所に勤めていないことなど
申請期限 2026年12月28日(予算上限に達し次第終了) 2027年2月15日(予算上限に達し次第終了)

出典:青森県「青森県介護事業所スポットワーク活用支援事業費補助金について」、大田区「令和8年度 大田区介護人材スポットワーク導入支援補助事業のご案内」

このように、対象となる経費も、補助率も、ワーカーの条件も自治体ごとに違います。補助がない地域も多いため、事業所のある都道府県・市区町村のページで、対象と期限を確認してください。

常勤・パートの採用につなげる導線

前述の調査では、スポットワークを利用した事業所の28.0%が、正社員等として雇用したことがあると回答しています。利用の理由を「正社員などへの雇用につなげられる」とした事業所では、その割合は56.2%でした(介護労働安定センター)。

採用につなげたいなら、最初から導線を決めておくことを支援担当は勧めています。

  1. 勤務の終わりに、継続して働く希望があるかを本人に確認する
  2. 希望があれば、改めて職場見学を案内する
  3. 通常の選考(面接と合否の判断は事業所)に進んでもらう

このとき、利用しているサービスの規約で、直接の雇用への切り替えがどう定められているかを必ず確認します。本人の意思を尊重し、通常の選考に進む形を取りましょう。

関連コラム:介護の人手不足をデータで見る|訪問介護員の有効求人倍率と打ち手

よくある質問

スポットワーカーに身体介助をお願いできますか?

資格、経験、任せる業務の範囲、当日の安全管理を個別に確認したうえで判断します。利用者の情報が十分に伝わっていない状態で、一人で介助を任せることは避けましょう。

当日のキャンセルは無料ですか?

労働契約が成立した後に事業所の都合で休ませた場合は、休業手当の支払いが必要です。先着順の求人では、応募した時点で契約が成立すると一般的に考えられています(厚生労働省リーフレット)。アプリの規約とあわせて確認してください。

来てくれた人を常勤として採用できますか?

利用しているサービスの契約条件を守り、本人の意思で通常の選考に進んでもらう形なら可能です。調査でも、利用した事業所の28.0%が正社員等として雇用した経験があると答えています。

スポットワークを常に使う前提にしてもよいですか?

勧めません。配置基準を満たす固定の職員の確保や、職員の育成という面で課題が残ります。緊急時の補完策にとどめ、並行して常勤やパートの採用を進めましょう。

スポットワークに頼りすぎない採用へ

スポットワークで当面の穴を埋めながら、常勤やパートの採用の仕組みを整えることが、職員の負担を減らす近道です。貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。

ヨビコム介護編集部(2026-11-03)

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この記事を書いた人

ヨビコム介護編集部

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