処遇改善手当の求人での書き方|誤解を招かない表記と例文

処遇改善手当を求人に書くときは、「毎月必ず払う分」と「条件や時期で変わる分」を分け、金額の内訳と支給条件を並べて書くのが基本です。月給の数字に一時金や夜勤手当を混ぜたり、加算率を個人の昇給率のように見せたりすると、職業安定法が禁じる「誤解を生じさせる表示」にあたるおそれがあります。

制度は2024年6月に一本化され、2026年6月の算定分から対象と区分が広がりました。ただし、制度が広がっても、職員一人ひとりの手当が自動的に一定額増えるわけではありません。求人に書けるのは、事業所の賃金規程と実際の支給方法で裏付けられる内容だけです。

この記事では、厚生労働省の通知とリーフレットで制度を確認したうえで、求人原稿の書き方と例文、掲載前に照らし合わせる資料を順に整理します。

処遇改善加算と「処遇改善手当」の関係を先に整理する

求人の書き方を考える前に、言葉の関係を押さえておきます。「処遇改善加算」は、事業所が介護報酬に上乗せして受け取る加算です。「処遇改善手当」は、事業所がその加算を原資に職員へ支払う賃金の、給与明細上の呼び名の一つにすぎません。

厚生労働省の通知では、事業所は加算の算定額に相当する賃金改善を行う必要があり、その対象は「基本給、手当、賞与等」とされています。そのうえで、対象とする項目を特定して改善すること、安定的な処遇改善のために基本給による改善が望ましいことが示されています(老発0313第6号)。

つまり、処遇改善の分を「手当」で払うか、「基本給」に入れるか、「賞与・一時金」で払うかは、事業所ごとに違います。求人で「処遇改善手当あり」とだけ書いても、求職者には毎月いくら入るのかが伝わりません。

もう一つ押さえたいのが、加算率の意味です。加算率は、サービスごとの1か月の総単位数に掛ける率です。たとえば2026年6月以降、訪問介護の加算Ⅰイは27.0%ですが、これは職員の給与が27%上がるという意味ではありません(老発0313第6号 別紙1)。

2024⁠年6⁠月の一本化と2026⁠年6⁠月の拡充(厚労省資料で確認)

求人に制度の話を書くなら、時期と中身を取り違えないことが大切です。2つの変更を、一次資料の記載どおりに整理します。

時期 変更の内容 出典
2024年6月 処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算の3つを「介護職員等処遇改善加算」(Ⅰ〜Ⅳ)に一本化し、加算率を引き上げ 厚労省リーフレット
2026年6月の算定分から 対象を「介護職員」から「介護従事者」に拡大。生産性向上や協働化に取り組む事業者向けに上乗せ区分Ⅰロ・Ⅱロを新設。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等に加算を新設 令和8年度介護報酬改定について、老発0313第6号

2024年の一本化では、算定要件が「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つに整理されました。月額賃金改善要件は、加算Ⅳ相当額の2分の1以上を、基本給または決まって毎月支払われる手当の改善に充てるというものです(老発0313第6号)。

2026年度の改定について、厚生労働省は次のように説明しています。介護従事者を対象に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員に月0.7万円(2.4%)を上乗せする措置です。定期昇給0.2万円を含め、介護職員について最大月1.9万円(6.3%)の賃上げが実現する措置とされています(令和8年度介護報酬改定について)。

ここで注意したいのは、これらは国の「措置」の規模だという点です。個々の職員の支給額は、事業所の加算区分と配分のルールで決まります。求人に「国の改定で月1.9万円アップ」と書くと、全員が確実に受け取れる額のように読めてしまいます。

なお、新設のⅠロ・Ⅱロを取るための要件(ケアプランデータ連携システムの利用など)は、関連コラム:処遇改善加算のロ区分とICTを採用で伝える書き方で整理しています。

求人で誤解を生むのはどんな書き方か

職業安定法は、求人情報について「虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示」を禁じ、募集する事業所には情報を正確で最新の状態に保つことを求めています(職業安定法第5条の4)。厚生労働省のリーフレットでは、モデル収入例を必ず支払われる基本給のように表示することや、固定残業代を基本給に含めて表示することが、避けるべき例として挙がっています(労働者の募集ルールが変わります)。

処遇改善の書き方で、ヨビコム介護の支援担当が「避けたい」と挙げる表現は次のとおりです。

  • 加算率を、個人の昇給率のように書く
  • 配分のルールが職種や勤務形態で違うのに、全員に一律で支給するように書く
  • 支給が確定していない賞与や一時金を、毎月の月給に含めて書く
  • 夜勤ありの給与例を、夜勤なしの求人にそのまま転記する
  • 2024年5月以前の旧3加算の名称や、古い区分を新しい制度のように書く
  • 「年収400万円可能」のように、達成の条件を書かずに上限だけを見せる

典型的なのは「月給30万円(処遇改善あり)」のような書き方です。内訳が「基本給25万円+毎月は確定しない一時金と夜勤手当」だと、求職者は毎月30万円が入ると受け取ります。固定残業代を基本給に含めて見せる書き方と、構造は同じです。

もう一つの落とし穴は、求人だけを直して、ほかの書類と食い違うことです。採用原稿は最新にしたのに、賃金規程や面接での説明、雇用契約書では計算方法が違う。処遇改善加算の「見える化」で公表した内容と、採用ページの内容が合わない。こうしたずれは、入職後の不信感につながります。

掲載前に照らし合わせる資料と確認の手順

ヨビコム介護では、処遇改善の表記を直すとき、担当者の口頭の説明だけで上乗せ額を書くことはしません。次の資料を事業所から出してもらい、求人の数字と一つずつ照らし合わせます。

  • 給与規程(賃金規程)と就業規則
  • 雇用契約書・労働条件通知書のひな型
  • 処遇改善計画書と実績報告書
  • 算定している加算の区分(2026年6月以降はⅠイ・Ⅰロなど)
  • 賃金改善の実施方法(基本給・手当・一時金の内訳)
  • 給与明細の支給項目の名称
  • 夜勤手当の支給要件
  • 賞与の規定と過去の支給実績

確認は、経営者、労務の担当者、介護報酬の請求担当者の3者でそろえるのが理想です。加算区分を知っているのは請求担当、配分のルールを知っているのは労務担当、というように情報が分かれていることが多いためです。

2026年6月の拡充を求人に反映するときは、次の順で判断しています。

  1. 加算の区分を確認する。申請中や取得予定の区分は、取得済みとして書かない
  2. 適用が始まる年月と、職員への配分方法を確認する
  3. 確定した支給規程と実績がある分だけを、求人に書く
  4. 求人サイト、自社の採用ページ、ハローワークの求人票を同じ内容にそろえる
  5. 掲載日(いつ時点の情報か)を明記し、制度や規程が変わったら速やかに直す

5は職業安定法の「正確かつ最新の内容に保つ」義務に関わる部分です。厚生労働省のリーフレットも、いつの時点の求人情報かを明らかにすること、内容を変えたら速やかに更新することを挙げています(労働者の募集ルールが変わります)。

なお、処遇改善加算の通知では、事業所は賃金改善の方法を職員に周知し、職員から照会があれば書面などで分かりやすく答えるよう努めることとされています(老発0313第6号)。職員向けに説明できる資料があれば、それが求人の表記をそろえる土台になります。

求職者が知りたいことに答える書き方

面接や問い合わせで、求職者から処遇改善について聞かれる点はおおむね決まっています。支援の現場で多い質問は次の6つです。

  • 基本給はいくらか
  • 処遇改善手当は毎月固定か
  • 夜勤なしでも受け取れるか
  • 賞与や退職金の計算の基礎に含まれるか
  • 加算の区分が変わったら減ることがあるか
  • 資格を取るとどれだけ昇給するか

求人原稿は、この6つに先回りして答える形にすると、問い合わせの往復が減ります。書き方のポイントは3つです。

1つ目は、月給を「基本給」「毎月決まって払う手当」「回数や実績で変わる手当」「賞与・一時金」に分けることです。2つ目は、手当ごとに支給の条件(職種、勤務形態、夜勤の有無など)を書くことです。3つ目は、給与例を「夜勤0回」「夜勤月4回」のように条件別に分けて示すことです。

給与例を出すときは、その金額がどの条件の人の例かを必ず添えます。前出のリーフレットでも、同じ職種の社員の給与の平均をモデル給与として示す書き方は「適切な例」とされています(労働者の募集ルールが変わります)。

Before/Afterで見る例文

ここでは、表記を直すときの考え方を例文で示します。金額は説明用のサンプルで、実在する事業所の給与条件ではありません。

Before

月給28万円〜(処遇改善・夜勤手当含む)

この書き方では、28万円のうちどこまでが毎月確実に払われるのか、夜勤をしない人はいくらになるのかが分かりません。

After

【給与】基本給22万円+資格手当1万円+処遇改善手当2万円(毎月支給。支給条件は当法人の賃金規程による)+夜勤手当6,000円/回
【月収例】夜勤月4回の場合 27.4万円(夜勤なしの場合 25万円)
【賞与・一時金】別途支給(年○回。前年度実績は面接時にご説明します)
【掲載日】2026年○月○日時点の内容です

Afterでは、毎月固定の部分(基本給・資格手当・処遇改善手当)と、回数で変わる部分(夜勤手当)を分けました。月収例は計算の前提を書き、賞与は月給とは別に記載しています。

処遇改善分を一時金で払っている事業所なら、「処遇改善手当」ではなく次のように書くと誤解を防げます。

【処遇改善の支給方法】処遇改善加算による賃金改善は、毎月の基本給への上乗せと、年○回の一時金で行っています(一時金は月給に含みません)

加算の区分を書く場合は、事実として取得している区分だけを書き、個人の支給額と結びつけないようにします。

介護職員等処遇改善加算Ⅰイを算定しています(2026年○月時点)。職員への配分方法は面接時に書面でご説明します

職種別・施設形態別の書き換え例は、資料「処遇改善加算『求人での伝え方』テンプレート集」と「職種別 求人原稿Before/After集」にまとめています。

よくある質問

処遇改善手当は全員同じ金額だと書いてよいですか?

配分の方法は、事業所の判断で職種や経験に応じて決められます。通知でも、事業所内で柔軟な配分を認めつつ、職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分はしないこととされています(老発0313第6号)。全員一律でないなら、「職種・勤務形態により異なる」と書き、自法人の規程どおりに説明します。

夜勤なしの人も対象ですか?

制度上、夜勤の有無で一律に決まるものではありません。事業所の支給規程で夜勤を条件にしているかどうかで変わります。規程を確認し、条件があるなら求人に明記します。

加算の区分は求人に書いたほうがよいですか?

取得している区分は事実として書いて構いません。ただし、区分が上位であることと、個人の給与額は別の話です。区分を書くときは、配分の方法や手当の金額と並べて、加算率を月給と混同されないようにします。

2026⁠年6⁠月の拡充で、求人の給与を上げて書いてよいですか?

書けるのは、事業所として配分方法を決め、支給規程に反映した分だけです。申請中や取得予定の区分を前提にした金額は書かず、確定してから更新します。

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この記事を書いた人

ヨビコム介護編集部

介護事業所の採用支援サービス「ヨビコム介護」の編集部です。求人原稿・媒体運用・スカウト・定着など、介護の採用に役立つ情報を、公的な資料をもとにお届けしています。

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