介護の入門的研修と就職支援金|未経験者採用に使える公的制度

介護未経験者の採用には、国の制度として「介護に関する入門的研修」「介護分野就職支援金貸付事業」「再就職準備金貸付事業」が使えます。入門的研修は都道府県・市区町村が行う最長21時間の研修で、就職支援金は最大20万円、再就職準備金は最大40万円の貸付です。

就職支援金と再就職準備金は、もらえるお金ではなく「貸付」です。介護職員等として2年間勤務すると返還が全額免除されます(厚生労働省「介護分野就職支援金貸付事業等について」)。

研修の日程や受付の状況は、地域ごとに違います。求人で紹介するときは「必ずもらえる」と書かず、条件と窓口を添えて案内することが大切です。この記事では、3つの制度の中身と、事業所が求人や面接でどう扱えばよいかを整理します。

3つの制度を一覧で比べる

制度 内容 主な対象 金額・時間 実施・窓口
介護に関する入門的研修 介護の基本を学ぶ研修 介護未経験者(定年前後の人、子育てが一段落した人など) 基礎講座3時間+入門講座18時間、合計21時間 都道府県・市区町村(民間委託あり)
介護分野就職支援金貸付事業 介護の仕事に就くための費用の貸付 所定の研修を修了し、介護職員等として就職した介護未経験者など 20万円以内(2年勤務で返還全額免除) 各都道府県の指定団体
再就職準備金貸付事業 介護の仕事に戻るための費用の貸付 資格等があり、介護の勤務経験1年以上で再就職した人 40万円以内(2年勤務で返還全額免除) 各都道府県の指定団体(福祉人材センターへの届出が必要)

出典:厚生労働省「介護に関する入門的研修の実施について」(平成30年3月30日)、厚生労働省「介護分野就職支援金貸付事業等について」

介護に関する入門的研修:未経験者の「最初の一歩」

入門的研修は、介護に関心がある未経験者の不安を減らし、介護分野への参入を促すための研修です。主な対象として、定年退職を予定している人、中高年齢者、子育てが一段落した人などが想定されています(厚生労働省 通知)。

研修は、基礎講座(介護に関する基礎知識1.5時間、介護の基本1.5時間)と、入門講座(基本的な介護の方法、認知症の理解、障害の理解、介護における安全確保)に分かれ、合計21時間です。働いている人向けに、基礎講座だけを開くこともできます(同通知)。

実施主体は都道府県と市区町村です。修了者には修了証明書が発行されます。都道府県の判断で、介護職員初任者研修などの一部の科目が免除されることもあります(同通知)。

採用の面で見逃せないのは、通知が研修後のマッチング支援を求めている点です。介護分野で働きたい修了者については、事業者団体や都道府県福祉人材センターと連携して、事業所とのマッチングを支援するよう定めています(同通知)。

入門的研修を修了しただけでは、訪問介護員として働くことはできません。修了者が働けるのは、通所・居住・施設系サービスの介護職員です(厚生労働省「入門的研修の概要」)。

地域の開催予定を確認する

厚生労働省は、都道府県・市区町村ごとの入門的研修の実施予定を一覧で公表しています(厚生労働省「介護分野への参入促進」)。事業所のある地域で、いつ、どこで開催されるかを確認しておくと、見学や説明会の案内と組み合わせやすくなります。

介護分野就職支援金と再就職準備金:返還免除付きの貸付

介護分野就職支援金貸付事業(20⁠万⁠円以内)

対象は、介護未経験者、無資格で働いていた人、無職の人などで、介護職員初任者研修などの所定の研修を修了し、介護保険サービス事業所等に介護職員等として就職した人です。就職支援金利用計画書の提出が必要です(厚生労働省)。

貸付額は20万円以内で、介護の仕事に就くための費用に充てます。介護分野で介護職員等として2年間勤務すると、返還が全額免除されます。

再就職準備金貸付事業(40⁠万⁠円以内)

対象は、次のすべてを満たす人です(厚生労働省)。

  • 介護福祉士、実務者研修、介護職員初任者研修のいずれかを修了している
  • 介護保険サービス事業所等での勤務経験が1年以上ある
  • 介護保険サービス事業所等に介護職員等として再就職した
  • 都道府県福祉人材センターに氏名・住所などを届け出て、利用計画書を提出した

貸付額は40万円以内で、介護職員等として2年間勤務すると返還が全額免除されます。いったん介護の仕事を離れた経験者に戻ってきてもらう採用で役立つ制度です。

申込みと問い合わせの窓口は、都道府県ごとの指定団体です。厚生労働省のページに、各都道府県の窓口の一覧が掲載されています(同ページ)。

求人での紹介の仕方:事業所の判断基準

ここからは、ヨビコム介護の支援担当が、公的制度を求人で扱うときに事業所に勧めていることです。

「必ずもらえる」と書かない

支援担当が最も注意しているのは、「国から20万円もらえます」と断定してしまうことです。就職支援金は返還免除付きの貸付で、対象となる研修や勤務の条件があります。審査もあります。

また、事業所が独自に払う資格手当と国の制度を合算して、「必ず支給」と訴えるのも避けます。求人情報は、虚偽や誤解を生む表示が禁止されています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。

書き方の例

求人原稿では、次のように書くことを勧めています。

初任者研修の費用補助について相談できます。介護未経験の方向けの入門的研修や、就職支援金の貸付などの公的制度もご紹介します。対象となる資格・地域・申請期限・返還免除の条件は、都道府県の実施機関で個別に確認が必要です。

制度名や金額を具体的に書くのは、事業所のある都道府県で、その制度の要件と受付状況を確認できたときだけにします。「初任者研修の費用補助」は、事業所が実際に行っている場合だけ書きます。

事業所が手間取りやすい点

支援担当によると、制度を使うときに事業所が手間取りやすいのは次の点です。

  • 制度の運用が都道府県ごとに違う
  • 募集した時点では受付中でも、入職する時点では受付が終わっている
  • 本人の過去の介護の勤務歴や資格が、要件に合わない
  • 貸付と給付(返さなくてよいお金)を混同する
  • 2年間の勤務や返還免除の条件を、本人に十分説明していない
  • 研修の日程と、学校や研修機関との調整が合わない

これを防ぐため、使えそうな制度を「申請窓口・要件・期限・必要な証明・本人の負担」の5項目で表にまとめておくことを勧めています。原稿を作るときと面接のときに、最新のページを見直すことも欠かせません。

入職後の研修義務もあわせて確認する

未経験者を採用したら、入職後の研修義務も確認します。介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関係の資格を持たない人には、認知症介護基礎研修を受講させる必要があります(訪問系サービスの一部、福祉用具貸与、居宅介護支援などを除く)(厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」)。

経過措置は2024年3月31日で終わっています。新卒・中途を問わず、新たに採用した資格のない職員には、採用後1年間の猶予があります(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)」)。

同じQ&Aによると、認知症介護基礎研修には英語やベトナム語などの外国語教材と、日本語能力試験N4レベルを基準にした教材も用意されています。未経験者を迎える育成計画に、受講の時期を書き込んでおきましょう。

関連コラム:介護の新人教育|新卒職員が辞めない1年目の育成計画のつくり方

よくある質問

資格がなくても応募してもらえますか?

通所・居住・施設系サービスの介護職員なら、資格がなくても働けます。ただし、訪問介護員として働くには初任者研修などの修了が必要です(厚生労働省「入門的研修の概要」)。入職後は、認知症介護基礎研修を1年以内に受講してもらいます。

就職支援金は必ずもらえますか?

必ずではありません。返還免除付きの貸付で、研修の修了や就職先などの要件と、指定団体の審査があります。2年間介護職員等として勤務すると返還が全額免除されます。

申請は誰がしますか?

貸付の申込みは、基本的に働く本人が都道府県の指定団体に行います。必要な書類や事業所が出す証明は制度と地域ごとに違うため、窓口で確認し、事業所としてどこまで手伝えるかを決めておきましょう。

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公的制度は、未経験者が介護の仕事に踏み出すきっかけになります。ただし、伝え方を誤ると、入職後の不信につながります。貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。

ヨビコム介護編集部(2026-11-03)

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この記事を書いた人

ヨビコム介護編集部

介護事業所の採用支援サービス「ヨビコム介護」の編集部です。求人原稿・媒体運用・スカウト・定着など、介護の採用に役立つ情報を、公的な資料をもとにお届けしています。

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