介護のキャリアパスで進めるケアマネ・相談員への内部登用

介護職からケアマネジャー(介護支援専門員)や生活相談員への内部登用を進めるには、①職種ごとの資格・経験の要件を一覧にする、②研修や受験の費用、勤務の調整、登用後の賃金をセットで用意する、③登用した人の後任の採用を同時に始める、の3つが欠かせません。キャリアの道筋を示すことは、未経験者の応募や職員の定着の動機づけにもなります。ただし、「誰でも3年でケアマネ」のように約束すると、かえって信頼を失います。この記事では、ヨビコム介護の支援担当への取材と公的資料をもとに、内部登用の進め方と、求人での伝え方を整理します。

内部登用が採用にも関わる理由

ケアマネや生活相談員は、介護の現場経験を持つ人が多い職種です。介護労働安定センターの調査では、中途採用されたケアマネの54.1%、生活相談員の41.8%が、直前の仕事が介護関係でした。同じ調査で、介護事業所のケアマネの不足感は37.0%です(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント)。

外から経験者を採るだけでなく、自法人の介護職を育てて登用できれば、相談職の確保につながります。さらに、介護職の求人で「その先の道」を示せることは、応募を考える人にとっての判断材料にもなります。

登用ルートを一覧にする:資格と経験の要件

支援担当によると、内部登用がうまくいっている事業所は、「介護職→介護福祉士→サービス提供責任者・相談員・ケアマネ」といった道筋を、職務・資格・経験の要件とともに一覧にしています。まずは、各職種の要件を正確に押さえます。

職種 主な要件 確認先
ケアマネジャー 介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、実務研修を修了する。受験には、介護福祉士・社会福祉士などの法定資格に基づく業務や相談援助業務に、通算5年以上かつ900日以上従事していることが必要 都道府県の試験実施機関
生活相談員(特養の場合) 社会福祉法第19条第1項各号のいずれか(社会福祉主事の任用資格)に該当する者、またはこれと同等以上の能力を有すると認められる者 指定権者の自治体

ケアマネの受験要件は、千葉県の案内(千葉県「介護支援専門員実務研修受講試験の受験資格について」)で確認しました。生活相談員の要件は、特養の基準(特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準 第5条)によるものです。「同等以上の能力」として何を認めるかは自治体ごとに扱いが異なります。通所介護など他のサービスの生活相談員の扱いも含めて、登用の前に必ず所管の自治体に確認してください。

処遇改善加算のキャリアパス要件と結びつける

内部登用の仕組みは、介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件とも重なります。厚生労働省の通知では、要件の内容が次のように定められています(厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方」2026年3月13日)。

  • キャリアパス要件Ⅰ:職位・職責・職務内容に応じた任用の要件と、それに応じた賃金体系を定め、就業規則などで書面にして全員に周知する
  • キャリアパス要件Ⅱ:資質向上の目標と計画を立て、研修の機会の提供や資格取得の支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、受講料などの援助)を行う
  • キャリアパス要件Ⅲ:経験や資格に応じて昇給する仕組みなどを設け、書面にして周知する

すでに加算を取得している事業所は、これらの規程があるはずです。内部登用のルートは、まずこの規程と矛盾しない形で整えると、採用での説明にもそのまま使えます。

求人での伝え方:道筋を図にし、断定しない

支援担当が提案している求人での打ち出し方は、次のような流れを図で示すことです。

初任者研修・実務者研修・介護福祉士の取得支援(対象と費用負担を明記)
→ 経験の要件を満たした人へのケアマネ受験支援
→ 合格後の実務研修と、登用の検討

あわせて、次の点も明記します。

  • 研修の日を勤務として扱うか
  • 受験料や受講料の補助の有無と金額
  • 社内公募(職員が自分から手を挙げる仕組み)の有無
  • 登用の基準と、登用後の資格手当・役職手当(賃金規程どおり)

注意したいのは、「資格を取れば必ず昇格・昇給する」と言い切らないことです。実際の登用の基準と給与規程を示し、そのとおりに書きます。求人情報は、誤解を生じさせる表示が禁止されています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。

また、支援担当は、本人の希望を尊重することも重視しています。「経験を積んだら管理者や相談職を目指すべき」という前提で配置を決めると、現場で働き続けたい職員の意欲を下げることがあります。

内部登用で起きやすい問題と対策

支援担当が挙げた、内部登用を進めるときに現場で起きやすい問題は次のとおりです。

起きやすい問題 対策
候補者を相談職に引き上げると、現場の介護職が足りなくなる 登用を決めた時点で、後任の採用を同時に始める
資格や主任の要件を満たしておらず、予定日に登用できない 実務経験の日数などを登用計画の段階で確認する
資格を取っても給与が変わらない 資格手当・役職手当を規程に定め、求人にも同じ内容を書く
登用後の事務の負担が大きすぎる 登用直後の担当件数や業務量を段階的に増やす
育成を担当する職員に時間がない 育成担当の業務時間を確保する

また、次のような進め方は失敗につながりやすいと支援担当は指摘しています。

  1. 「誰でも3年でケアマネになれる」など、要件と合わない約束をする
  2. 本人の希望を聞かずに配置を変える
  3. 役割の変化に研修が追いつかない
  4. 登用後に、上司や管理職に相談できる場がない

キャリアの具体例を求人や採用ページに載せる場合は、社内の規程と実例を確認してから公表します。

効果を測る:内部登用の数字を記録する

支援担当によると、内部登用の仕組みが採用や定着にどう効いているかは、次の数字を継続して集計して確かめます。

  • 社内公募への応募数
  • 研修・資格の取得率
  • 登用後6か月の定着率
  • 採用面接で、志望理由にキャリアの制度を挙げた人の数

これらを半年ごとに見直すと、制度が実際に使われているか、求人での伝え方が届いているかを判断できます。

よくある質問

Q. 介護職からケアマネになれますか?

なれます。ただし、最新の受験要件(資格に基づく業務の経験年数・日数など)を都道府県の試験実施機関で確認したうえで、本人と計画を立ててください。

Q. 資格取得の費用は補助したほうがよいですか?

補助する場合は、対象者・金額・申請の条件を規程にして職員に説明します。処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅱの資格取得支援とも関わります。

Q. 資格を取ると給与は上がりますか、と聞かれたら?

規程上の資格手当・役職手当を示して答えます。規程にないことは約束しないでください。

Q. 内部登用だけで人手不足は解消しますか?

元の部署に欠員が出るため、後任の採用も必要です。登用と採用は同時に進めます。

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この記事を書いた人

ヨビコム介護編集部

介護事業所の採用支援サービス「ヨビコム介護」の編集部です。求人原稿・媒体運用・スカウト・定着など、介護の採用に役立つ情報を、公的な資料をもとにお届けしています。

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