訪問看護ステーションで理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)を採用するときに見落とされやすいのは、①職種ごとに仕事の中身を分けて書くこと、②訪問件数とインセンティブ(件数に応じた手当)を実績と条件つきで示すこと、③移動・記録・キャンセルの扱いと、入職直後の収入を書くこと、の3つです。「訪問件数が多いほど稼げる」だけの求人は応募を集めても、入職後のギャップで辞める原因になります。この記事では、ヨビコム介護の支援担当への取材と公的資料をもとに、求人原稿で押さえる点を整理します。
前提:リハ職の多くは医療機関から来る
介護労働安定センターの調査では、介護事業所に中途で入ったPT・OT・ST等の51.9%は、直前の仕事が「医療関係の仕事」でした。同じ調査で、PT・OT・ST等の不足感は39.7%です(令和7年度介護労働実態調査 結果のポイント)。訪問看護ステーションに限った値ではありませんが、候補者の多くが病院や老健などで働いてきた人だと考えて、違いが伝わる原稿にする必要があります。
見落としがち1:PT・OT・STを同じ原稿で募集している
支援担当によると、リハ職の求職者が気にしているのは次のような点です。
- 職種ごとの対象(どんな疾患・生活機能の利用者を担当するか)
- 1日・1か月の訪問件数と、移動する地域の広さ
- 車両、記録、会議の扱い
- 主治医や看護師との連携の仕方
- 一人で訪問するときに、判断を相談できる相手がいるか
- インセンティブの条件と、訪問がキャンセルになったときの収入
PT・OT・STをひとまとめに「リハビリスタッフ募集」とすると、職種ごとの仕事が見えません。支援担当は、「STが担当するケース」「PTの1日」「OTの生活支援の例」のように職種別に分けて書くことを提案しています。病院や老健との違い(一人で訪問する、生活の場で訓練するなど)もあわせて説明します。
見落としがち2:インセンティブを「上限の金額」だけで見せている
訪問看護のリハ職の求人では、件数に応じた手当を設けている事業所が少なくありません。ここで起きやすいのが、「月収40万円も可能」のように、条件のわからない上限の金額だけを大きく見せることです。
求人情報では、モデル収入例を必ず支払われる基本給のように表示することは「誤解を生じさせる表示」にあたるとされています。厚生労働省のリーフレットでは、社内で特に給与が高い人の例をすべての人の給与のように示すことを、避けるべき例として挙げています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」、職業安定法第5条の4)。
支援担当が示した表記の型は次のとおりです。○の部分は事業所の実績と規程に置き換えます。
訪問件数:1日○〜○件(直近3か月の平均○件)、1回○分
給与:基本給○円+訪問件数が月○件を超えた分について1件○円(支給条件は面接で説明)
モデル収入:入職○か月目・月○件訪問の場合の例。全員の金額ではありません
訪問エリア:事業所から半径○km程度。直行直帰の可否:○
記録:記録時間は勤務時間に含む/含まない
あわせて、平均と繁忙期の件数の幅、新人で件数が少ない時期の収入、研修日の扱いも書きます。支援担当は、「月収○万円可能」と書く場合は、訪問件数・稼働の割合・入職何か月目の実例かを必ず添えるよう勧めています。
なお、件数に応じた手当の設計は、労働時間・最低賃金・割増賃金のルールを満たしていることが前提です。給与制度そのものの適法性は、社労士などの専門家に確認してください。
見落としがち3:移動・記録・キャンセルの扱いを書いていない
支援担当が挙げた、リハ職の求人でうまくいかない例は次のとおりです。
| うまく |
起きる |
対策 |
|---|---|---|
| 件数だけで給与が決まるように書き、新規の担当が少ない月の収入を書かない | 入職直後の収入が想定より低く、早期離職につながる | 件数が少ない時期の収入の例を書く |
| 移動や記録が勤務時間外のように読める | 誤解のまま入職し、不満になる | 勤務時間としての扱いを明記する |
| 訪問の経験がない新人に、すぐ多い件数を求める | 一人で判断する場面で負担が大きくなる | 件数の増やし方の目安を書く |
| 資格ごとの業務の違いを混同する | 職種に合わない仕事を任される不安が残る | 職種別に担当範囲を書く |
対策として支援担当は、原稿を公開する前に、看護・リハの管理者と給与の担当者の両方に確認してもらうことを勧めています。
見落としがち4:入職直後の同行と、件数の増え方を書いていない
病院から転職するリハ職にとって、最初の不安は「いつから一人で訪問するのか」「件数はどう増えるのか」です。支援担当は、初月の同行の進め方と、月ごとの訪問件数の増え方の目安、給与の内訳を示すことを提案しています。
あわせて、履歴書を送る前に15分ほど話を聞ける場を用意し、資格・経験の条件でスカウトの送り先を絞る進め方も挙げています。応募の前に疑問を解消できると、面接に進む人が増えることが期待できます。
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2026年度から訪問看護にも処遇改善加算が新設
2026年度(令和8年度)の介護報酬改定で、これまで処遇改善加算の対象外だった訪問看護(加算率1.8%)や訪問リハビリテーション(1.5%)に、処遇改善加算が新設されました。算定には、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと職場環境等要件(加算Ⅳに準ずる要件)または令和8年度の特例要件を満たす必要があります(厚生労働省老健局「令和8年度介護報酬改定について」)。
なお、この加算は介護保険の訪問看護についてのものです。求人に処遇改善として書く場合は、加算率ではなく、職員に支払う方法(毎月の手当か一時金か)と金額を、法人の賃金規程に合わせて書いてください。
よくある質問
Q. 「1日何件訪問しますか」と聞かれたら?
過去3か月の平均と、多い日・少ない日の幅で答えます。
Q. インセンティブについてはどう説明すればよいですか?
基本給、手当が付く条件、キャンセルになったときの扱いを分けて説明します。
Q. 病院からの転職でも大丈夫ですか、と聞かれたら?
同行の進め方と、一人で訪問するときの相談体制を具体的に説明します。
Q. 車は必要ですか、と聞かれたら?
社用車か自家用車か、自家用車の場合の手当、運転の条件を明記して答えます。
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