新卒職員の1年目の育成計画は、「誰が、何を、いつまでに教えるか」を月ごとに決め、夜勤や独り立ちを日程ではなく技術の評価で判断する形にするのが基本です。あわせて、入職1週目から定期的に面談し、困りごとを早く拾う仕組みを用意します。
若い職員の定着は、介護の現場で大きな課題です。介護労働安定センターの調査では、29歳以下の離職率は17.3%で、ほかの年齢層より高くなっています(介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」)。
ただし、この数字は29歳以下の職員全体の値で、新卒1年目の離職率そのものではありません。この記事では、統計の読み方を確認したうえで、ヨビコム介護の支援担当が事業所と一緒に作っている1年目の育成計画の型を紹介します。
データで見る若手の離職と、その理由
介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」から、若手の定着に関わる数字を確認します(同調査)。
- 訪問介護員と介護職員を合わせた離職率は12.4%、29歳以下では17.3%
- 前の介護の仕事を辞めた理由で最も多いのは「職場の人間関係に問題があったため」(27.3%)
- そのうち約半数(45.8%)が、具体的な内容として「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」を挙げている
- 定着に効果があった方策として、実施した事業所の割合が最も高かったのは「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」(57.9%)
辞めた理由の数字は、介護の仕事から転職してきた人に聞いたもので、新卒職員に限った調査ではありません。それでも、指導する側の関わり方が定着を左右することは読み取れます。
1年目に起きやすい不安
支援担当は、新卒職員が1年目につまずく理由として、次のような点を想定して計画を作っています。
- 介護の技術に自信が持てない
- 夜勤など、不規則な勤務に体と生活が慣れない
- 職場の人間関係
- 「思っていた介護と違う」と感じる
- 資格やキャリアの先が見えない
これは支援担当が計画づくりで想定している候補で、調査で確かめた理由ではありません。自事業所の新卒職員に面談で聞きながら、計画を直していくことが大切です。
1年目の育成計画:12か月の段階別の例
ここからは、支援担当が事業所と育成計画をつくるときの型です。特定の事業所で実施して効果を確かめたものではなく、計画づくりの出発点として使っている設計例です。
| 時期 | 目標と |
|---|---|
| 入職前 | 必要書類の確認、不安なことの聞き取り |
| 1か月目 | 基本の介助、感染対策、記録、報告・連絡・相談。固定のプリセプター(新人を担当する先輩)を付ける |
| 2〜3か月目 | 日勤の業務に慣れる。担当する利用者のケースを共有する |
| 4〜6か月目 | 資格取得や研修と、本人の適性を確認する。夜勤などは安全の基準を満たした場合のみ始める |
| 7〜12か月目 | 担当する範囲を広げる。キャリアについて面談する |
計画には、職種や資格ごとのチェック表と、指導担当者の負担の配分をあわせて用意します。資格を持たない職員には、認知症介護基礎研修を採用後1年以内に受講させる必要があるため、その時期も計画に書き込みます(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.14)」)。
夜勤と独り立ちは「技術の評価」で決める
夜勤を始める時期は、「入職から何か月」という日程だけで決めないことを勧めています。何ができるようになったら夜勤に入るのか、評価の基準を先に決めておきます。
18歳未満の人を深夜(午後10時〜午前5時)に働かせることは、労働基準法で原則として禁止されています(兵庫労働局「年少者・女性の労働条件」)。年齢の確認もあわせて行いましょう。
プリセプターに負担を集中させない
プリセプターを固定すると、新人は相談先がはっきりして安心できます。一方で、一人に現場の仕事と育成のすべてが集中すると、指導する側が疲れてしまいます。
支援担当は、主担当と代わりの担当を決め、指導にかける時間を勤務の中で確保することを勧めています。新卒職員を早い段階で「人員1名」として数に入れないことも大切です。
面談の頻度と聞くこと
面談の頻度は、入職1週目、2週目、1か月、3か月、6か月、12か月を目安にしています。これはヨビコム介護が勧めている設計で、法令で決められた頻度ではありません。
面談で聞くことの例です。
- 教わった業務と、まだ不安な業務
- 体調、生活のリズム、シフトの負担
- 相談しやすい人がいるか
- 求人や説明会で聞いていた内容と、違うと感じることはないか
- これから学びたいこと
直属の上司だけでなく、別の部署の先輩など、第三者の相談先も用意しておきます。相談を受けたら、いつまでに対応するかを決めて本人に伝えることも、信頼につながります。
育成計画を採用でどう伝えるか
育成計画は、定着のためだけでなく、採用の場面でも役立ちます。支援担当は、計画を採用広報に次のように「翻訳」することを勧めています。
- 採用サイトに「1年目の成長カレンダー」を載せる
- 「誰が、どこまで、いつ教えるか」を示す
- 「独り立ちと夜勤の開始は、技術の評価で決める」と書く
- 月ごとの面談、研修、資格取得の支援を示す
内定者にも、研修の予定表を共有し、先輩に質問できる機会をつくります。
ただし、採用サイトや求人に書くのは、実際に行っている制度だけです。求人情報は、虚偽や誤解を生む表示が禁止されています(厚生労働省「労働者の募集ルールが変わります」)。なお、育成計画の公開が応募や内定辞退にどれだけ効くかは、ヨビコム介護でもまだ検証していません。
関連コラム:介護の新卒採用|社会福祉法人の説明会から入職までの設計
育成計画でやりがちな失敗
支援担当が注意を促している失敗は、次のとおりです。これらは特定の事業所の事例ではなく、計画づくりで確認している注意点です。
- 研修の表を作っただけで、指導担当者の勤務と合っていない
- 夜勤を始める時期を、日程だけで決める
- プリセプター1人に、現場と育成の負担がすべて集中する
- 入職から3か月たつまで、面談が一度もない
よくある質問
夜勤はいつから任せればよいですか?
職種、年齢の制限、習熟度で判断します。18歳未満の深夜業は原則禁止です。18歳以上でも、日程ではなく「何ができたら夜勤に入るか」の基準で決めましょう。
プリセプターは1人に固定すべきですか?
主担当を固定しつつ、休みや勤務の都合に備えて代わりの担当も決めておきます。新人には、誰に相談すればよいかを最初に伝えましょう。
仕事についていけない新人には、どう対応しますか?
再研修、面談、任せる業務の見直しを組み合わせます。できないことを責めるのではなく、どこでつまずいているかを一緒に確認します。
1年間の研修の時間は、給料が出ますか?
研修が業務として行われる場合の扱いは、就業時間と給与の規程で決め、求人や内定時の説明で明示しておきます。
育成と採用をつなげる仕組みづくりを
1年目の育成計画は、新卒職員の定着と、次の年の採用の両方を支えます。貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。
ヨビコム介護編集部(2026-11-03)
