介護施設の看護職員の求人では、「オンコールあり」の一語ではなく、当番の回数、電話だけで済んだ回数と施設へ駆けつけた回数、手当、連絡の流れを数字で書くことが大切です。看護職員が不安に思うのは、オンコールがあること自体より、「どのくらい呼ばれるのか」「一人で判断を背負うのか」が見えないことだからです。
この記事では、訪問看護とは違う施設のオンコールの特徴を整理したうえで、求人の記載例、「オンコールなし」と書くときの注意、待機と出動の時間の扱いをまとめます。訪問看護のオンコールは別のコラムで扱います。
施設のオンコールは、訪問看護と何が違うか
ヨビコム介護の支援担当は、施設のオンコールの特徴を次のように整理しています。
訪問看護のオンコールは、利用者の自宅への緊急訪問をともなうことがあります。これに対して介護施設の看護職員のオンコールは、夜勤の介護職からの電話相談、受診が必要かの判断、必要に応じた施設への駆けつけが中心になる場合があります。
ただし、その中身は施設ごとに大きく違います。医師や協力医療機関、夜勤の介護職との役割分担や、「電話だけで済む」と「施設に出動する」の割合が施設によって違うためです。求人では、施設の外で待機しているときに、どこまでの判断を求められるのか(責任の範囲)も書きます。
夜間に看護職員が施設にいるかどうかも、施設によって違います。特別養護老人ホームの夜勤の基準は「介護職員又は看護職員」の数で定められています(厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準)。介護付き有料老人ホームなどの特定施設でも、常に1人以上の確保が定められているのは介護職員です(指定居宅サービス等基準 第175条)。
このため、夜間は看護職員が常駐せず、オンコールで対応する施設もあれば、夜勤の看護職員を置く施設もあります。求人に書かれていなければ、求職者はどちらなのかを区別できません。
求人に書く項目と記載例
支援担当が使っている記載例は次のとおりです。数字はすべて、施設の実際の記録に置き換えてください。
看護職員の夜間オンコール 月○回
直近3か月の電話対応 月平均○回、施設への出動 月平均○回
オンコール待機手当 1回○円。出動した場合は、実際に働いた時間を別に計算して支払います
連絡の流れ:夜勤の介護職 → 看護職員 → 協力医療機関
あわせて、次の3点も書きます。
- 緊急時に、誰が最終的な判断をするのか
- 当番の看護職員に連絡がつかないとき、二番目に連絡する人は誰か
- 夜間に出動したとき、翌日の勤務をどう調整するのか
ポイントは、電話と出動を分けて書くことです。「月1回程度」と書いても、それが電話の回数なのか、駆けつけた回数なのかで、負担はまったく違います。
実績の数字は、月ごとの集計表から取る
記載例の「月平均○回」を埋めるには、オンコールの記録が必要です。記録がない施設では、まず次のような集計表を3か月分つくることから始めます。
| 月 | 当番の |
電話の |
出動の |
出動して |
|---|---|---|---|---|
| ○月 | ○回 | ○件 | ○件 | ○時間 |
| ○月 | ○回 | ○件 | ○件 | ○時間 |
| ○月 | ○回 | ○件 | ○件 | ○時間 |
この表があれば、求人の数字に根拠ができ、面接で聞かれたときも同じ数字で答えられます。出動して働いた時間の記録は、後で述べる賃金の計算にも使います。看護職員の個人名は、求人や面接で見せる資料には載せません。
「オンコールなし」と書くときの注意
「オンコールなし」は求人の大きな打ち出しになりえます。そのぶん、書くときには注意が必要です。支援担当が挙げる注意点は次のとおりです。
- 常勤とパートのどちらなら、またどの配属ならオンコールがないのかを明記する
- 欠員時などに例外があるなら、その条件も書く
- 夜間は夜勤の看護職員が常駐しているのか、外部の訪問看護などが対応しているのか、オンコールがない理由を説明できるようにしておく
- 制度も実態もないのに「一切なし」と言い切らない
入職後に当番をお願いする可能性があるなら、労働条件の明示にも注意します。2024年4月から、求職者に明示する労働条件に「従事すべき業務の変更の範囲」が加わりました。将来の配置転換などの見込みも含めた範囲です(厚生労働省リーフレット「求職者への労働条件明示のルールなどが変わります」)。「オンコールなし」で採用した人に、後から当番を命じることがこの範囲と合っているかを、事前に確かめてください。
待機と出動の時間をどう扱うか
オンコールの求人では、待機の時間と出動した時間の扱いも整理しておきます。
厚生労働省のガイドラインは、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しています。呼ばれたらすぐ対応することを求められ、労働から離れることが保障されていない待機は「手待時間」として労働時間にあたります(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。
自宅などでの待機がこれにあたるかどうかは、義務づけの内容や拘束の程度などから、個別具体的に判断されるとされています(同ガイドライン)。施設のルールで判断がつかない場合は、社会保険労務士など専門家に確認してください。
少なくとも、次の2点は施設として記録しておきます。
- 電話で対応した時間と、施設に出動して働いた時間
- 待機中に求めている行動(電話に何分以内に出るか、施設から何分以内の場所にいるか など)
午後10時から午前5時までの間に働いた時間には、通常の賃金の25%以上の深夜割増賃金が必要です(労働基準法 第37条第4項)。夜間に出動した時間は、この点もふまえて計算します。
よくある失敗と、効果の確かめ方
支援担当が挙げる「避けたい失敗」は次のとおりです。特定の施設で確かめた事例ではなく、点検のための項目です。
- 夜間に看護職員がいないのに、「看護師常駐」と書く
- 電話相談と出動を合わせて「月1回程度」と説明する
- オンコールの手当を月給に一律に含めてしまい、内訳が分からない
- 待機中の拘束や、出動したときの労働時間を把握していない
求人には、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならない義務があります(職業安定法の的確表示義務、厚生労働省リーフレット)。防ぐには、採用担当と看護管理者の2人で、求人の文言を二重に確認することです。採用担当は媒体や自社サイトに載っている表記を、看護管理者は当番表とオンコールの記録を持ち寄り、数字と言葉が一致しているかを確かめます。体制が変わったときも、同じ2人で求人を直します。
支援担当は、「オンコールあり」だけの書き方から、当番の回数、電話と駆けつけの別、実績の数字、手当を書く形に変えることで、看護職員の漠然とした不安を減らせる可能性があると見ています。これは効果を約束するものではありません。
書き方を変えたら、応募数だけでなく、次の数字も記録して比べてください。
- 応募から面接に進んだ割合
- 内定を辞退した人の理由
- 入職30日後に在籍している割合
ヨビコム介護では、看護職員を含む職種別の求人原稿の作成、媒体の運用とスカウト、応募への一次連絡を代行しています。一次連絡は当日中、遅くとも営業日24時間以内に行います。面接の実施と合否の判断は施設が行います。
よくある質問
Q. 応募者に
A. 夜勤として施設に泊まる勤務と、自宅などで待機するオンコールを分けて答えます。両方ある場合は、それぞれの回数を伝えます。
Q.
A. 過去3か月の実績と、今後の予定の幅を示します。「直近3か月は月4〜5回。欠員が出た月は最大○回」のように答えます。
Q.
A. 電話で済んだ回数と、出動した回数を分けて答えます。出動したときの移動手段や、到着までにかかる時間の目安も伝えます。
Q.
A. 調整のルールと、実際の例で答えます。「夜間に出動した場合は、翌日の始業を遅らせる」などのルールがあるなら、具体的に伝えます。
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