処遇改善加算のⅠ・Ⅱ(2026年6月以降はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ)を算定する事業所は、職場環境等の改善の取組を外部から見える形で公表する必要があります。これがいわゆる「見える化要件」です。公表した取組は、求人に書く研修制度や休暇、ICTの内容と同じ事実・同じ条件でそろえるのが原則です。
公表では「資格取得を支援」とあるのに求人には何も書いていない、逆に求人では「研修費全額補助」とうたっているのに実際は条件付き。こうしたずれは、求職者の不信を招くうえ、求人情報の「誤解を生じさせる表示」を禁じる職業安定法の考え方にも反します。
この記事では、厚生労働省の通知で見える化要件の中身を確認し、求人とそろえるための資料と手順を整理します。
見える化要件とは何か(厚労省通知の記載)
見える化要件は、処遇改善加算の「職場環境等要件」の一部です。令和8年度の通知では、加算Ⅰ・Ⅱと、2026年6月以降のⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを算定する場合に、職場環境等の改善の取組をホームページへの掲載などで公表することとされています(老発0313第6号)。
公表の方法も具体的に示されています。介護サービスの情報公表制度を使い、処遇改善加算の算定状況を報告するとともに、職場環境等要件を満たすために実施した取組項目と、その具体的な取組内容を「事業所の特色」欄に記載します。情報公表制度の報告対象でない場合は、自社のホームページなどで外部から見える形で公表します(同通知)。
加算Ⅲ・Ⅳは、取組の実施は必要ですが、この公表までは求められていません(同通知 別紙1 表2-2)。
| 算定する |
5つの |
生産性向上の |
取組内容の |
|---|---|---|---|
| Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ(2026年5月まではⅠ・Ⅱ) | 2以上 | 3以上(⑰または⑱は必須) | 必要 |
| Ⅲ・Ⅳ | 1以上 | 2以上 | 不要 |
出典:老発0313第6号。生産性向上推進体制加算を算定している場合や、1法人1事業所などの小規模事業者が協働化の取組(㉔)を実施している場合の扱いなど、例外もあります。
2026年度は特例があります。令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの利用など)を満たす事業所は、職場環境等要件の取組を2027年3月末までに行うと誓約すれば、申請時点から要件を満たすものとして扱われます(同通知)。誓約の段階の取組を、求人で「実施済み」と書かないよう注意が必要です。
職場環境等要件の6区分と、求人で書ける内容
職場環境等要件は、6つの区分に28の取組が並んでいます(老発0313第6号 別紙1 表4)。多くは、求職者が求人で知りたい「働きやすさ」の情報そのものです。
| 区分 | 取組の |
求人に |
|---|---|---|
| 入職促進に向けた取組 | 他産業からの転職者など、経験・資格にこだわらない採用の仕組み | 無資格・未経験から入職した職員向けの研修の期間と内容 |
| 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 実務者研修などの受講支援、エルダー・メンター制度 | 受講費の補助の範囲と条件、勤務扱いかどうか |
| 両立支援・多様な働き方の推進 | 短時間正規職員制度、有給休暇の取得目標 | 選べる勤務時間、有給の取得目標と実績 |
| 腰痛を含む心身の健康管理 | 腰痛対策の研修、相談窓口の設置 | 導入している移乗の補助具、相談窓口の有無 |
| 生産性向上(業務改善及び働く環境改善) | 介護ソフトやタブレット、インカムなどの導入 | 記録の方法、使っている端末の種類と台数 |
| やりがい・働きがいの醸成 | ミーティングによる改善、理念を学ぶ機会 | 定例の会議の頻度、改善の事例 |
求人では「取組あり」とだけ書くより、対象者、回数、金額、条件まで書くほうが伝わります。ただし、公表した内容から広げて書くのは避けます。公表で「受講支援」と書いた取組を、求人で「全額補助」と書くと、条件の食い違いが生まれます。
生産性向上の取組を求人でどう伝えるかは、関連コラム:処遇改善加算のロ区分とICTを採用で伝える書き方でも扱っています。
ずれが起きやすいパターン
ヨビコム介護の支援担当は、公表内容と求人のずれとして、次のようなパターンに注意しています。いずれも特定の事業所の事例ではなく、起こりやすい形として挙げるものです。
- 公表には「資格取得支援・生産性向上・賃金改善の取組あり」とあるが、求人には研修費の支給条件やICT機器の使い方が書かれていない
- 公表した取組が、現場の実際の運用と合っていない
- 求人では「資格研修は全額補助」とうたっているが、実際は勤続年数などの条件付き
- 加算の区分が変わったのに、採用サイトは古い情報のまま
- 加算の加算率と、職員個人の給与の増加率を混同して書いている
最後の点は、見える化とは別の論点ですが、同じ時期に起こりやすい失敗です。加算率は事業所の報酬に掛ける率で、個人の昇給率ではありません。処遇改善手当の書き方は、関連コラム:処遇改善手当の求人での書き方|誤解を招かない表記と例文で詳しく整理しています。
表記をそろえる手順と照合する資料
ずれを防ぐには、「公表した取組」と「求職者に約束する制度」の主語と適用範囲を一致させることが基本です。ヨビコム介護では、次の資料を並べて照らし合わせています。
- 処遇改善計画書と実績報告書(選んだ取組の項目)
- 算定している加算の区分と、算定状況
- 情報公表制度の「事業所の特色」欄、または法人サイトの公表ページ
- 就業規則・賃金規程
- 資格取得支援の規程(対象者、補助の範囲、返還の条件など)
- ICT機器の導入と稼働の記録
- 求人サイト、採用サイト、ハローワークの求人票
確認の手順は次のとおりです。
- 公表している取組を一覧にし、それぞれの根拠となる規程や記録を確認する
- 求人の記載のうち、公表した取組に関わる部分に印をつける
- 対象者・条件・金額の書き方が、規程と公表と求人で一致しているかを見る
- 一致しない部分は、規程に合わせて求人と公表の両方を直す
- 直した日付を記録し、求人には掲載時点を明記する
点検は、人事(労務)、介護報酬の請求、採用広報の担当者が一緒に行うのが理想です。時期は年に1回に加え、加算の区分を変えたときや制度改定のときに行います。職業安定法は、募集する事業所に求人情報を正確で最新の内容に保つことを求めています(職業安定法第5条の4)。
求職者は公表情報を見ているか
求職者が介護サービス情報公表システムの「事業所の特色」欄をどの程度読んでいるかについて、ヨビコム介護として集計したデータはありません。そのため、公表しているから求人には書かなくてよい、とは考えていません。
支援の中での見立てとしては、介護の経験者や処遇改善の仕組みに詳しい人ほど、給与と職場環境の情報が合っているかを気にします。一方で、初めて介護の仕事を探す人には、求人サイトの中で具体的に示すほうが伝わります。公表は「裏付け」、求人は「伝える場」と役割を分けて考えると整理しやすくなります。
効果を確かめたい場合は、面接で「どこで当事業所の情報を見たか」を聞き、記録しておく方法があります。
よくある質問
公表した内容を、求人にそのまま転載してよいですか?
転載自体は可能ですが、まず実態と支給条件が今も合っているかを確認してください。そのうえで、求職者が知りたい対象者、条件、金額を足して具体化すると伝わりやすくなります。
上位の加算区分を取っていれば、給与が高いと書いてよいですか?
区分の高さは、職員個人の給与水準を一律に保証するものではありません。区分は事実として書き、給与は規程に基づく金額と条件で示します。
公表内容の確認は誰が担当すべきですか?
加算の請求担当、人事(労務)担当、採用広報の担当が共同で確認するのが確実です。1人で見ると、自分の担当外の変更を見落としやすくなります。
公表内容と求人のずれ、点検してみませんか
貴事業所の場合、どこから直すとよいか。無料採用相談で、求人原稿・媒体の使い方・応募対応を点検し、優先して見直したい項目をお伝えします。
関連ページ:採用サイト制作/採用ブランディング/求人媒体運用・スカウト代行
